The Magic of Mr. Misra(魔術)の挿絵
Level 3 Pre-Intermediate日本の昔話と名作

The Magic of Mr. Misra

魔術

  • 📖 667 words
  • ⏱ 約6分
  • 🔊 3:55
  • YL 1.5–2.4
  • 英検準2級目安
  • 📝 全訳つき

あらすじ雨の夜、「私」はインド人の魔術師ミスラ君の家をたずね、本物の魔術を見せてもらいます。ミスラ君は、ある条件を守れるなら魔術を教えてもよいと言いますが……。

芥川龍之介『魔術』(1920年)をもとに再話

キーワード(8語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • rickshaw人力車
  • freedom自由・独立
  • pattern模様
  • topこま
  • condition条件
  • greed欲・強欲
  • coals石炭
  • bet賭ける
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On a rainy evening in autumn, I rode in a rickshaw to a small house in Omori, near Tokyo. A rickshaw is a light cart with two wheels that a man pulls by hand. The house stood alone in a dark bamboo forest. It belonged to Mr. Matiram Misra, a young man from India. He was working for the freedom of his country, and he was also a great master of magic.

ある秋の、雨の晩のことだ。私は人力車に乗って、東京に近い大森の小さな家へ向かった。人力車というのは、人が手で引く、二輪の軽い車のことだ。その家は、暗い竹やぶの中にぽつんと建っていた。家の主は、インドから来た若い男、マティラム・ミスラ君だ。ミスラ君は祖国の独立のために働いている人で、同時に、魔術の大家でもあった。

Mr. Misra welcomed me into his small Western-style room. An old Japanese woman who kept house for him brought us tea. A lamp burned on the table, and we could hear the rain falling on the bamboo leaves outside.

ミスラ君は私を、小さな西洋風の部屋に迎え入れてくれた。家の世話をしている日本人のおばあさんが、お茶を運んできてくれた。テーブルの上ではランプがともり、外の竹の葉に雨の降る音が聞こえていた。

"Will you show me some of your magic tonight?" I asked.

「今夜は、魔術を見せていただけますか?」と、私はたずねた。

Mr. Misra smiled. He pointed at the carpet on the floor. There was a pattern of flowers on it. He lifted his hand, and one of the flowers rose up from the carpet like a real flower. Then another, and another. Soon dozens of flowers were floating in the air around us. When he waved his hand, they fell back into the carpet and became a pattern again.

ミスラ君はほほえんだ。そして、床のじゅうたんを指さした。じゅうたんには、花の模様があった。ミスラ君が手をあげると、その花のひとつが、本物の花のようにじゅうたんから浮かび上がった。次の花も、またその次の花も。やがて何十もの花が、私たちのまわりの空中にただよいはじめた。ミスラ君が手をふると、花はじゅうたんにもどって、また模様になった。

Next, he made the lamp on the table spin around like a top, without dropping any oil. Then he lifted his finger, and the books on his shelf flew out one by one. They flew around the room like bats, opening and closing their pages, and then went back to their places in perfect order.

次にミスラ君は、テーブルの上のランプを、こまのようにくるくる回してみせた。油は一滴もこぼれない。それから指を一本立てると、本棚の本が一冊ずつ飛び出した。本はページを開いたり閉じたりしながら、コウモリのように部屋の中を飛びまわった。そして、きちんと順番どおりに元の場所へもどっていった。

I was amazed. "Is it difficult to learn magic like this?" I asked.

私はすっかりおどろいてしまった。「こんな魔術を習うのは、むずかしいのですか?」と、私はたずねた。

"No," said Mr. Misra. "Anyone can learn it. But there is one condition. A person with greed cannot use magic. Can you throw away all your greed?"

「いいえ」と、ミスラ君は言った。「だれにでも習えます。ただし、ひとつ条件があります。欲のある人には、魔術は使えないのです。あなたは、欲をすっかり捨てられますか?」

"I can," I answered. "I promise."

「捨てられます」と、私は答えた。「約束します」

Mr. Misra looked at me for a long time. Then he called to the old woman in the next room. "Grandmother, our guest will stay here tonight. Please prepare a bed for him." Then he began to teach me.

ミスラ君は、長いあいだ私を見つめていた。それから、となりの部屋のおばあさんに声をかけた。「おばあさん、今夜はお客様がお泊まりになるから、寝床の用意をしておいてください」そしてミスラ君は、私に魔術を教えはじめた。

About a month later, I was sitting by the fire at a club in Ginza with some friends. They had heard that I could do magic, so I showed them a trick. I picked up some burning coals from the fireplace in my bare hand. Then I dropped them on the table, and they turned into shining gold coins.

ひと月ほどたったころ、私は銀座のクラブで、友だちと暖炉のそばに座っていた。友だちは私が魔術を使えると聞いていたので、私はひとつ術を見せてやった。暖炉から燃えている石炭を素手でつかみ出し、テーブルの上に落としたのだ。すると石炭は、ぴかぴか光る金貨に変わった。

My friends could not believe their eyes. "That is real gold!" one of them said. "Don't throw it away. Give it to us!"

友だちは、自分の目が信じられないようだった。「本物の金だ!」と、ひとりが言った。「捨てないで、ぼくたちにくれよ!」

"No," I said. "I am going to turn it back into coal. I can't use magic for greed."

「だめだ」と、私は言った。「これはまた石炭にもどすんだ。欲のために魔術を使うことはできないんだよ」

"Then let's play cards for it," said one of my friends. "If we win, the gold is ours. If you win, we'll give you whatever you want." I did not want to play, but they would not stop asking. At last I agreed.

「それなら、これを賭けてトランプをしよう」と、友だちのひとりが言った。「ぼくたちが勝ったら、金貨はぼくたちのものだ。きみが勝ったら、何でもほしいものをやろう」私は勝負などしたくなかったが、友だちはしつこく頼みつづける。とうとう、私は承知した。

Strangely, I won every game. My pile of money grew bigger and bigger. At last, my friend became angry. "One more game!" he said. "I'll bet everything I own, my land, my house, my horses and my car. And you bet all your gold."

ふしぎなことに、私は勝負に勝ちつづけた。私の前のお金の山は、どんどん大きくなっていく。とうとう、その友だちは腹を立てた。「もうひと勝負だ!」と、友だちは言った。「おれの持っているものを全部賭ける。土地も、家も、馬も、自動車もだ。そのかわり、きみは金貨を全部賭けろ」

At that moment, greed rose up in my heart. If I used a little magic, I could win everything. I drew a card and threw it on the table. "I win!" I shouted.

その瞬間、私の心に欲がわき上がった。少し魔術を使えば、全部手に入れられる。私はカードを一枚引いて、テーブルにたたきつけた。「ぼくの勝ちだ!」と、私はさけんだ。

But then something strange happened. The king on the card lifted his head and smiled at me. Then he spoke, in a voice I knew well. "Grandmother, our guest is going home after all. You don't need to prepare a bed for him."

ところが、そのときふしぎなことが起こった。カードの王様が頭を上げて、私にほほえみかけたのだ。そして、聞きおぼえのある声で言った。「おばあさん、お客様はやっぱりお帰りになるそうだから、寝床の用意はしなくてもいいですよ」

Suddenly, everything around me disappeared. I was sitting in Mr. Misra's room again. The lamp was burning on the table, and the rain was still falling on the bamboo. It seemed that only a few minutes had passed.

とつぜん、まわりのものがすべて消えた。私はまた、ミスラ君の部屋に座っていた。テーブルの上ではランプがともり、雨はまだ竹やぶに降りつづいている。ほんの数分しかたっていないようだった。

Mr. Misra was looking at me sadly. "A person who wants to learn my magic must have no greed," he said quietly. "You are not ready yet." I lowered my head. I had nothing to say.

ミスラ君は、悲しそうに私を見ていた。「わたしの魔術を習いたい人は、欲を持っていてはいけないのです」と、ミスラ君は静かに言った。「あなたには、まだ魔術を習う心がまえができていません」私はうなだれた。何も言うことはなかった。

📖 全訳をまとめて読む 読み終わってからの答え合わせに

ある秋の、雨の晩のことだ。私は人力車に乗って、東京に近い大森の小さな家へ向かった。人力車というのは、人が手で引く、二輪の軽い車のことだ。その家は、暗い竹やぶの中にぽつんと建っていた。家の主は、インドから来た若い男、マティラム・ミスラ君だ。ミスラ君は祖国の独立のために働いている人で、同時に、魔術の大家でもあった。

ミスラ君は私を、小さな西洋風の部屋に迎え入れてくれた。家の世話をしている日本人のおばあさんが、お茶を運んできてくれた。テーブルの上ではランプがともり、外の竹の葉に雨の降る音が聞こえていた。

「今夜は、魔術を見せていただけますか?」と、私はたずねた。

ミスラ君はほほえんだ。そして、床のじゅうたんを指さした。じゅうたんには、花の模様があった。ミスラ君が手をあげると、その花のひとつが、本物の花のようにじゅうたんから浮かび上がった。次の花も、またその次の花も。やがて何十もの花が、私たちのまわりの空中にただよいはじめた。ミスラ君が手をふると、花はじゅうたんにもどって、また模様になった。

次にミスラ君は、テーブルの上のランプを、こまのようにくるくる回してみせた。油は一滴もこぼれない。それから指を一本立てると、本棚の本が一冊ずつ飛び出した。本はページを開いたり閉じたりしながら、コウモリのように部屋の中を飛びまわった。そして、きちんと順番どおりに元の場所へもどっていった。

私はすっかりおどろいてしまった。「こんな魔術を習うのは、むずかしいのですか?」と、私はたずねた。

「いいえ」と、ミスラ君は言った。「だれにでも習えます。ただし、ひとつ条件があります。欲のある人には、魔術は使えないのです。あなたは、欲をすっかり捨てられますか?」

「捨てられます」と、私は答えた。「約束します」

ミスラ君は、長いあいだ私を見つめていた。それから、となりの部屋のおばあさんに声をかけた。「おばあさん、今夜はお客様がお泊まりになるから、寝床の用意をしておいてください」そしてミスラ君は、私に魔術を教えはじめた。

ひと月ほどたったころ、私は銀座のクラブで、友だちと暖炉のそばに座っていた。友だちは私が魔術を使えると聞いていたので、私はひとつ術を見せてやった。暖炉から燃えている石炭を素手でつかみ出し、テーブルの上に落としたのだ。すると石炭は、ぴかぴか光る金貨に変わった。

友だちは、自分の目が信じられないようだった。「本物の金だ!」と、ひとりが言った。「捨てないで、ぼくたちにくれよ!」

「だめだ」と、私は言った。「これはまた石炭にもどすんだ。欲のために魔術を使うことはできないんだよ」

「それなら、これを賭けてトランプをしよう」と、友だちのひとりが言った。「ぼくたちが勝ったら、金貨はぼくたちのものだ。きみが勝ったら、何でもほしいものをやろう」私は勝負などしたくなかったが、友だちはしつこく頼みつづける。とうとう、私は承知した。

ふしぎなことに、私は勝負に勝ちつづけた。私の前のお金の山は、どんどん大きくなっていく。とうとう、その友だちは腹を立てた。「もうひと勝負だ!」と、友だちは言った。「おれの持っているものを全部賭ける。土地も、家も、馬も、自動車もだ。そのかわり、きみは金貨を全部賭けろ」

その瞬間、私の心に欲がわき上がった。少し魔術を使えば、全部手に入れられる。私はカードを一枚引いて、テーブルにたたきつけた。「ぼくの勝ちだ!」と、私はさけんだ。

ところが、そのときふしぎなことが起こった。カードの王様が頭を上げて、私にほほえみかけたのだ。そして、聞きおぼえのある声で言った。「おばあさん、お客様はやっぱりお帰りになるそうだから、寝床の用意はしなくてもいいですよ」

とつぜん、まわりのものがすべて消えた。私はまた、ミスラ君の部屋に座っていた。テーブルの上ではランプがともり、雨はまだ竹やぶに降りつづいている。ほんの数分しかたっていないようだった。

ミスラ君は、悲しそうに私を見ていた。「わたしの魔術を習いたい人は、欲を持っていてはいけないのです」と、ミスラ君は静かに言った。「あなたには、まだ魔術を習う心がまえができていません」私はうなだれた。何も言うことはなかった。

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理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. What did Mr. Misra say a person must not have to use magic?

Q2. What did the writer turn into gold at the club?

Q3. What did the writer find when the king on the card spoke?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

聞き読みの効果とやり方/多読三原則

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