The Secret of the Old Bookshop, Episode 5: The Woman in the Red Scarf(古書店の秘密 第5話:赤いスカーフの女性)の挿絵

📕 古書店の秘密 全8話の 5番目 目次 ↓

The Secret of the Old Bookshop, Episode 5: The Woman in the Red Scarf

古書店の秘密 第5話:赤いスカーフの女性

  • 📖 692 words
  • ⏱ 約6分
  • YL 1.5–2.4
  • 英検準2級目安
  • 📝 全訳つき

あらすじ【連載第5話】けがで入院した店主に代わり、ひとりで店を守るレン。4通目のカードは『クリスマス・キャロル』へとつながります。そして雨の夜、あの赤いスカーフの女性がふたたび店にあらわれて……。

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キーワード(9語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • castギプス
  • ankle足首
  • customers客(複数)
  • ghosts幽霊(複数)
  • whisperedささやいた
  • pale青ざめた
  • paper lanternsちょうちん
  • flyerちらし
  • translator翻訳家

🔊 音声は準備中です。もうしばらくお待ちください。

Ren ran all the way to the hospital. Mr. Tachibana was lying in a white bed with his leg in a cast. Without his brown vest, he looked smaller than usual, but his eyes were as sharp as ever.

レンは病院までずっと走り続けた。立花さんは白いベッドに横たわり、足にギプスをはめていた。茶色のベストを着ていないせいか、いつもより小さく見えた。けれど目つきは、あいかわらず鋭かった。

"It's nothing," the old man said. "I slipped on the stairs and broke my ankle, that's all. The doctor says I have to stay here for a week. Can you take care of the shop while I'm away?"

「たいしたことはない」と老人は言った。「階段で足をすべらせて、足首の骨を折っただけだ。医者は一週間入院しろと言う。そのあいだ、店をたのめるかね?」

"Of course," said Ren.

「もちろんです」とレンは言った。

Mr. Tachibana looked out of the window for a while. "Ren," he said at last. "Are you still playing that game?"

立花さんはしばらく窓の外を見ていた。やがて口を開いた。「レンくん。まだ、あのゲームをつづけているのか?」

Ren didn't want to lie. "Yes," he said. "I'm sorry."

うそはつきたくなかった。「はい」とレンは答えた。「すみません」

He waited for the old man to get angry, but he didn't. He only said, "Sachiko was always better with words than I was." Then he turned his face to the wall and closed his eyes.

老人が怒りだすのを、レンは覚悟して待った。でも、立花さんは怒らなかった。ただ「さちこは昔から、わたしよりずっと言葉が上手だった」とだけ言った。そして壁のほうへ顔を向け、目を閉じた。

For the next few days, Ren kept the shop open by himself. When there were no customers, he read the fourth card again and again. It had been waiting inside the priest's copy of Alice for thirty years.

それから数日、レンはひとりで店を開けた。客がいないときは、四枚目のカードを何度も読み返した。このカードは三十年間、お坊さんの『不思議の国のアリス』の中で待っていたのだ。

"My dear Hana, Do you know A Christmas Carol? Old Scrooge had a heart as cold as ice. But three ghosts showed him his past, his present, and his future, and his heart became warm again. Now, look at your past. The last key is in the place where your father read to you every Sunday. Sit there and look up. Love, Mom."

「愛するハナへ。『クリスマス・キャロル』を知っている? スクルージじいさんは、氷のように冷たい心の持ち主だったの。でも三人の幽霊に、自分の過去と現在と未来を見せられて、その心はふたたび温かくなったの。さあ、あなたも自分の過去を見つめなさい。最後のかぎは、お父さんが毎週日曜日に本を読んでくれた場所にあります。そこにすわって、上を見なさい。愛をこめて、母より」

Ren found a copy of A Christmas Carol in the shop and finished it in two nights. It was December, so it was the perfect time for the story. He loved the part where Scrooge wakes up on Christmas morning and laughs like a child, because he still has time to change. "It's never too late," Ren thought. "That's what the book is saying."

レンは店で『クリスマス・キャロル』を見つけ、ふた晩で読み終えた。ちょうど十二月で、この物語を読むにはぴったりの季節だった。いちばん好きなのは、クリスマスの朝に目をさましたスクルージが、子どものように笑う場面だった。まだ自分を変える時間があると気づいたからだ。「遅すぎることなんてない」とレンは思った。「この本は、そう言っているんだ」

But where had Mr. Tachibana read to Hana every Sunday? Ren had no idea. He read Hana's poems again. One of them talked about "the round window where the sky comes in," but it didn't say where the window was.

だが、立花さんが毎週日曜日にハナに本を読んでやった場所とは、どこだろう。レンには見当もつかなかった。ハナの詩をもう一度読んでみた。その中のひとつに「空が入ってくる、まるい窓」という言葉があった。けれど、その窓がどこにあるのかは書かれていなかった。

On Thursday evening, it was raining hard. The shop was empty, and Ren was writing prices in some old books. Then the bell over the door rang. The woman in the gray coat and the red scarf came in, shaking the water off her umbrella.

木曜日の夕方、雨がはげしく降っていた。店に客はいない。レンが古い本に値段を書きこんでいると、ドアの上のベルが鳴った。灰色のコートに赤いスカーフのあの女の人が、かさの水をはらいながら入ってきた。

This time, Ren looked at her face carefully. She was in her late forties, and her shoulder-length dark hair had a few gray hairs in it. Her eyes were the same shape as Mr. Tachibana's.

今度は、レンはその顔をよく見た。四十代の後半くらい。肩までの黒い髪に、白いものが少しまじっている。目の形が、立花さんとそっくりだった。

"Excuse me," she said. "The owner of this shop, Mr. Tachibana... I haven't seen him for a few days. Is he all right?"

「すみません」と女の人は言った。「こちらのご主人の立花さん……ここ何日か、お見かけしないのですが。お変わりありませんか?」

"He's in the hospital," said Ren. "He broke his ankle. But he's going to be fine."

「入院しているんです」とレンは言った。「足首を骨折して。でも、ちゃんと治るそうです」

The woman's face turned pale. She put her hand on the edge of a bookshelf. "The hospital," she whispered.

女の人の顔が青ざめた。本棚のはしに手をついて、「入院……」とささやいた。

Ren took a deep breath. His heart was beating fast. "Excuse me, but... are you Hana?"

レンは深く息を吸った。心臓がどきどきしている。「失礼ですが……あなたは、ハナさんですか?」

For a second, she looked at him with wide eyes. Then she said, "I'm sorry. I'm so sorry," and she ran out into the rain.

一瞬、女の人は目を見開いてレンを見つめた。それから「ごめんなさい。本当にごめんなさい」と言うと、雨の中へ飛び出していった。

"Wait!" Ren ran after her without his umbrella. The cold rain hit his face and his glasses. She was walking very fast toward Kawaramachi Street, and her red scarf was bright among the dark umbrellas. Ren followed her past little restaurants with paper lanterns. But at the busy street, she jumped into a taxi, and it drove away.

「待ってください!」レンはかさも持たずに追いかけた。冷たい雨が顔と眼鏡を打った。女の人は河原町通りのほうへ足早に歩いていく。暗いかさの波の中で、赤いスカーフだけがあざやかだった。ちょうちんの灯る小さな飲食店の前を、レンは追いかけて走った。けれど大通りに出たところで、女の人はタクシーに飛び乗り、そのまま行ってしまった。

Ren stood in the rain, breathing hard. Then he saw something on the wet ground. It was a piece of paper that she had dropped. He picked it up and held it under a streetlight.

レンは雨の中で、肩で息をしながら立ちつくした。そのとき、ぬれた地面に何かが落ちているのに気づいた。女の人が落としていった一枚の紙だった。拾い上げて、街灯の下にかざした。

It was a flyer for a talk at his own university on December 20th. The title was "Bringing Japanese Children's Books to the World." Under it, there was a name: "Translator Hana Evans, London." Next to the name, there was a small photo.

それは、レンの通う大学で十二月二十日に開かれる講演会のちらしだった。演題は「日本の子どもの本を世界へ」。その下に名前があった。「翻訳家 ハナ・エヴァンズ(ロンドン)」。名前の横には、小さな顔写真がのっていた。

It was her.

あの人だった。

"Hana Evans," Ren said to himself. "She lives in London now. And in five days, she will be at my university."

「ハナ・エヴァンズ……」とレンはつぶやいた。「今はロンドンに住んでいるんだ。そして五日後には、ぼくの大学に来る」

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レンは病院までずっと走り続けた。立花さんは白いベッドに横たわり、足にギプスをはめていた。茶色のベストを着ていないせいか、いつもより小さく見えた。けれど目つきは、あいかわらず鋭かった。

「たいしたことはない」と老人は言った。「階段で足をすべらせて、足首の骨を折っただけだ。医者は一週間入院しろと言う。そのあいだ、店をたのめるかね?」

「もちろんです」とレンは言った。

立花さんはしばらく窓の外を見ていた。やがて口を開いた。「レンくん。まだ、あのゲームをつづけているのか?」

うそはつきたくなかった。「はい」とレンは答えた。「すみません」

老人が怒りだすのを、レンは覚悟して待った。でも、立花さんは怒らなかった。ただ「さちこは昔から、わたしよりずっと言葉が上手だった」とだけ言った。そして壁のほうへ顔を向け、目を閉じた。

それから数日、レンはひとりで店を開けた。客がいないときは、四枚目のカードを何度も読み返した。このカードは三十年間、お坊さんの『不思議の国のアリス』の中で待っていたのだ。

「愛するハナへ。『クリスマス・キャロル』を知っている? スクルージじいさんは、氷のように冷たい心の持ち主だったの。でも三人の幽霊に、自分の過去と現在と未来を見せられて、その心はふたたび温かくなったの。さあ、あなたも自分の過去を見つめなさい。最後のかぎは、お父さんが毎週日曜日に本を読んでくれた場所にあります。そこにすわって、上を見なさい。愛をこめて、母より」

レンは店で『クリスマス・キャロル』を見つけ、ふた晩で読み終えた。ちょうど十二月で、この物語を読むにはぴったりの季節だった。いちばん好きなのは、クリスマスの朝に目をさましたスクルージが、子どものように笑う場面だった。まだ自分を変える時間があると気づいたからだ。「遅すぎることなんてない」とレンは思った。「この本は、そう言っているんだ」

だが、立花さんが毎週日曜日にハナに本を読んでやった場所とは、どこだろう。レンには見当もつかなかった。ハナの詩をもう一度読んでみた。その中のひとつに「空が入ってくる、まるい窓」という言葉があった。けれど、その窓がどこにあるのかは書かれていなかった。

木曜日の夕方、雨がはげしく降っていた。店に客はいない。レンが古い本に値段を書きこんでいると、ドアの上のベルが鳴った。灰色のコートに赤いスカーフのあの女の人が、かさの水をはらいながら入ってきた。

今度は、レンはその顔をよく見た。四十代の後半くらい。肩までの黒い髪に、白いものが少しまじっている。目の形が、立花さんとそっくりだった。

「すみません」と女の人は言った。「こちらのご主人の立花さん……ここ何日か、お見かけしないのですが。お変わりありませんか?」

「入院しているんです」とレンは言った。「足首を骨折して。でも、ちゃんと治るそうです」

女の人の顔が青ざめた。本棚のはしに手をついて、「入院……」とささやいた。

レンは深く息を吸った。心臓がどきどきしている。「失礼ですが……あなたは、ハナさんですか?」

一瞬、女の人は目を見開いてレンを見つめた。それから「ごめんなさい。本当にごめんなさい」と言うと、雨の中へ飛び出していった。

「待ってください!」レンはかさも持たずに追いかけた。冷たい雨が顔と眼鏡を打った。女の人は河原町通りのほうへ足早に歩いていく。暗いかさの波の中で、赤いスカーフだけがあざやかだった。ちょうちんの灯る小さな飲食店の前を、レンは追いかけて走った。けれど大通りに出たところで、女の人はタクシーに飛び乗り、そのまま行ってしまった。

レンは雨の中で、肩で息をしながら立ちつくした。そのとき、ぬれた地面に何かが落ちているのに気づいた。女の人が落としていった一枚の紙だった。拾い上げて、街灯の下にかざした。

それは、レンの通う大学で十二月二十日に開かれる講演会のちらしだった。演題は「日本の子どもの本を世界へ」。その下に名前があった。「翻訳家 ハナ・エヴァンズ(ロンドン)」。名前の横には、小さな顔写真がのっていた。

あの人だった。

「ハナ・エヴァンズ……」とレンはつぶやいた。「今はロンドンに住んでいるんだ。そして五日後には、ぼくの大学に来る」

日本語訳:多読ベスト

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理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. Why was Mr. Tachibana in the hospital?

Q2. What did the fourth card tell Hana to do?

Q3. What did the woman drop in the rain?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

聞き読みの効果とやり方/多読三原則

📕 古書店の秘密 The Secret of the Old Bookshop

全8話・5,181語。1話ずつ、音声と全訳つきで読めます。

目次(全8話)
  1. 古書店の秘密 第1話:『秘密の花園』のメモ 558語
  2. 古書店の秘密 第2話:川辺のコマドリ 518語
  3. 古書店の秘密 第3話:ジョーの夢 527語
  4. 古書店の秘密 第4話:別の世界への井戸 579語
  5. 古書店の秘密 第5話:赤いスカーフの女性 692語
  6. 古書店の秘密 第6話:日曜日の物語 735語
  7. 古書店の秘密 第7話:翻訳家 734語
  8. 古書店の秘密 第8話:最後のページ 838語

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