The Secret of the Old Bookshop, Episode 4: The Well to Another World(古書店の秘密 第4話:別の世界への井戸)の挿絵

📕 古書店の秘密 全8話の 4番目 目次 ↓

The Secret of the Old Bookshop, Episode 4: The Well to Another World

古書店の秘密 第4話:別の世界への井戸

  • 📖 579 words
  • ⏱ 約7分
  • YL 1.0–1.4
  • 英検3級目安
  • 📝 全訳つき

あらすじ【連載第4話】「もうやめろ」と店主に言われ、なぞ解きをやめたレン。でもミカの言葉で、3通目のカードを開きます。『不思議の国のアリス』が導く先は、東山の古いお寺。そこで聞いた話とは……。

多読ベストのオリジナル連載

キーワード(9語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • business関係のあること
  • aloud声に出して
  • followed追いかけた
  • well井戸
  • priest僧侶・お坊さん
  • world of the deadあの世・死者の世界
  • sweeping掃いている
  • instead of~の代わりに
  • hospital病院

🔊 音声は準備中です。もうしばらくお待ちください。

"I'm sorry," Ren said. "I didn't want to hurt you. I only wanted to know..."

「すみません」とレンは言った。「傷つけるつもりはなかったんです。ただ、知りたかっただけで……」

"There is nothing to know," said Mr. Tachibana. "My daughter left. She chose England, not her family. That is all. The past is closed, like an old book. Please don't open it again."

「知ることなど何もない」と立花さんは言った。「娘は出ていった。家族を捨てて、イギリスを選んだんだ。それだけのことだ。過去は、閉じた古い本と同じだ。どうか、二度と開かないでくれ」

For a week, Ren did not open the third envelope. At the shop, he and Mr. Tachibana spoke only about work. The shop felt colder than the December wind.

それから一週間、レンは三通目の封筒を開けなかった。店でも、立花さんとは仕事の話しかしなかった。店の中は、十二月の風よりも冷たく感じられた。

On Friday evening, Mika came to Ren's apartment with two cups of hot chocolate. "You look terrible," she said. "Is it because of the game?"

金曜日の夕方、ミカがホットチョコレートをふたつ持って、レンのアパートにやって来た。「ひどい顔してるよ」とミカは言った。「あのゲームのせい?」

"He told me to stop," said Ren. "It's his family. It's not my business."

「やめろって言われたんだ」とレンは言った。「あの人の家族のことだよ。ぼくが口を出すことじゃない」

Mika put the little blue book of poems on the table. "Ren, did you see his face when he talked about her? He isn't angry. He's sad. And Sachiko-san made this game for a reason. She wanted somebody to finish it." She opened the book to the last poem and read it aloud. It was about a girl who walked away from home, and then waited and waited for a door to open again.

ミカは小さな青い詩集をテーブルに置いた。「レン、娘さんの話をしたときの、あの人の顔を見た? 怒ってるんじゃない。悲しんでるんだよ。それに、さちこさんがこのゲームを作ったのには、わけがあるはず。だれかに最後までやりとげてほしかったんだよ」ミカは詩集の最後の詩を開き、声に出して読んだ。家を出ていった少女が、もう一度扉が開く日を待って、待ちつづける詩だった。

Ren looked at the poem for a long time. Then he opened the third envelope.

レンは長いあいだ、その詩を見つめていた。それから、三通目の封筒を開けた。

"My dear Hana, Do you remember Alice? She followed the White Rabbit down a deep hole into another world, because she was curious. Be curious, Hana. In our city, there is an old well that goes to another world. Ask the priest there. Love, Mom."

「愛するハナへ。アリスを覚えている? アリスは好奇心にかられて、白ウサギを追いかけ、深い穴を下りて別の世界へ行ったわね。ハナ、好奇心を持ちなさい。わたしたちの町には、別の世界につながる古い井戸があります。そこのお坊さんにたずねなさい。愛をこめて、母より」

That weekend, Ren read Alice's Adventures in Wonderland again. He laughed at the Mad Tea Party and the cat with the big smile. "Alice was always curious," he thought. "That's how she found her way."

その週末、レンは『不思議の国のアリス』を読みなおした。めちゃくちゃなお茶会や、にやにや笑うネコの場面では声を出して笑った。「アリスはいつも好奇心でいっぱいだった」とレンは思った。「だから、道を見つけられたんだ」

Mika knew the place right away. "There's a famous old story in Higashiyama," she said. "It is said that a man named Ono no Takamura went down an old well at a small temple every night. He went to the world of the dead to help the king there, and he came back every morning."

ミカには、すぐに場所がわかった。「東山に、有名な言い伝えがあるの。小野篁という人が、毎晩、小さなお寺の古井戸からあの世へ下りていったんだって。あの世の王さまの仕事を手伝って、朝になるともどってきたそうだよ」

On Sunday, they went to the temple. It was small and quiet, between old wooden houses. In the garden, there was an old well behind a little fence. An old priest was sweeping the leaves.

日曜日、ふたりはそのお寺へ行った。古い木造の家々にはさまれた、小さく静かなお寺だった。庭には、低い柵に囲まれた古い井戸があった。年老いたお坊さんが落ち葉を掃いていた。

When Ren said the name "Sachiko Tachibana," the priest stopped sweeping. "Ah," he said. "So, at last, someone has come." He went inside and came back with an old copy of Alice's Adventures in Wonderland. Inside the cover was a fourth blue envelope.

レンが「立花さちこ」という名前を口にすると、お坊さんはほうきを止めた。「ああ……とうとう、どなたか来てくださいましたか」お坊さんは中へ入り、古い『不思議の国のアリス』を持ってもどってきた。表紙の内側に、四通目の青い封筒がはさまっていた。

"Sachiko-san came here every spring," the priest said. "Every time, she asked me, 'Has my daughter come?' And every time, I said no. The last time was six years ago. She was already sick. She said, 'If a young person comes instead of Hana, please help them. Maybe that person can bring her home.'"

「さちこさんは、毎年春になるとここへ見えました」とお坊さんは言った。「そのたびに『娘は来ましたか?』とおたずねになる。そして、わたしはそのたびに『いいえ』とお答えしました。最後に見えたのは六年前です。もうご病気でした。そのとき、こうおっしゃったのです。『もしハナの代わりに若い人が来たら、その人を助けてあげてください。もしかしたら、その人が娘を家に連れて帰ってくれるかもしれません』と」

Ren held the book carefully. Suddenly it felt very heavy in his hands.

レンはその本を大切に抱えた。急に、手の中の本がずしりと重く感じられた。

They thanked the priest and walked out of the gate. Across the narrow street, a woman in a gray coat and a red scarf was standing still. She was looking at them. When Ren looked at her, she turned and walked away quickly.

ふたりはお坊さんにお礼を言い、門を出た。細い通りのむこう側に、灰色のコートに赤いスカーフの女の人がじっと立っていた。こちらを見ている。レンが目を向けると、女の人はさっと背を向け、足早に去っていった。

"Mika," Ren said. "That woman. She came to the shop!"

「ミカ」とレンは言った。「あの人だ。店に来た人だよ!」

But before he could follow her, his phone rang. It was a number he did not know. "Is this Ren Aoki?" a voice said. "I'm calling from the hospital. Mr. Tachibana fell down in his shop. He is asking for you."

ところが、あとを追おうとしたそのとき、レンのスマホが鳴った。知らない番号だった。「青木レンさんですか?」と電話の相手が言った。「病院からお電話しています。立花さんがお店でたおれられました。あなたを呼んでほしいとおっしゃっています」

📖 全訳をまとめて読む 読み終わってからの答え合わせに

「すみません」とレンは言った。「傷つけるつもりはなかったんです。ただ、知りたかっただけで……」

「知ることなど何もない」と立花さんは言った。「娘は出ていった。家族を捨てて、イギリスを選んだんだ。それだけのことだ。過去は、閉じた古い本と同じだ。どうか、二度と開かないでくれ」

それから一週間、レンは三通目の封筒を開けなかった。店でも、立花さんとは仕事の話しかしなかった。店の中は、十二月の風よりも冷たく感じられた。

金曜日の夕方、ミカがホットチョコレートをふたつ持って、レンのアパートにやって来た。「ひどい顔してるよ」とミカは言った。「あのゲームのせい?」

「やめろって言われたんだ」とレンは言った。「あの人の家族のことだよ。ぼくが口を出すことじゃない」

ミカは小さな青い詩集をテーブルに置いた。「レン、娘さんの話をしたときの、あの人の顔を見た? 怒ってるんじゃない。悲しんでるんだよ。それに、さちこさんがこのゲームを作ったのには、わけがあるはず。だれかに最後までやりとげてほしかったんだよ」ミカは詩集の最後の詩を開き、声に出して読んだ。家を出ていった少女が、もう一度扉が開く日を待って、待ちつづける詩だった。

レンは長いあいだ、その詩を見つめていた。それから、三通目の封筒を開けた。

「愛するハナへ。アリスを覚えている? アリスは好奇心にかられて、白ウサギを追いかけ、深い穴を下りて別の世界へ行ったわね。ハナ、好奇心を持ちなさい。わたしたちの町には、別の世界につながる古い井戸があります。そこのお坊さんにたずねなさい。愛をこめて、母より」

その週末、レンは『不思議の国のアリス』を読みなおした。めちゃくちゃなお茶会や、にやにや笑うネコの場面では声を出して笑った。「アリスはいつも好奇心でいっぱいだった」とレンは思った。「だから、道を見つけられたんだ」

ミカには、すぐに場所がわかった。「東山に、有名な言い伝えがあるの。小野篁という人が、毎晩、小さなお寺の古井戸からあの世へ下りていったんだって。あの世の王さまの仕事を手伝って、朝になるともどってきたそうだよ」

日曜日、ふたりはそのお寺へ行った。古い木造の家々にはさまれた、小さく静かなお寺だった。庭には、低い柵に囲まれた古い井戸があった。年老いたお坊さんが落ち葉を掃いていた。

レンが「立花さちこ」という名前を口にすると、お坊さんはほうきを止めた。「ああ……とうとう、どなたか来てくださいましたか」お坊さんは中へ入り、古い『不思議の国のアリス』を持ってもどってきた。表紙の内側に、四通目の青い封筒がはさまっていた。

「さちこさんは、毎年春になるとここへ見えました」とお坊さんは言った。「そのたびに『娘は来ましたか?』とおたずねになる。そして、わたしはそのたびに『いいえ』とお答えしました。最後に見えたのは六年前です。もうご病気でした。そのとき、こうおっしゃったのです。『もしハナの代わりに若い人が来たら、その人を助けてあげてください。もしかしたら、その人が娘を家に連れて帰ってくれるかもしれません』と」

レンはその本を大切に抱えた。急に、手の中の本がずしりと重く感じられた。

ふたりはお坊さんにお礼を言い、門を出た。細い通りのむこう側に、灰色のコートに赤いスカーフの女の人がじっと立っていた。こちらを見ている。レンが目を向けると、女の人はさっと背を向け、足早に去っていった。

「ミカ」とレンは言った。「あの人だ。店に来た人だよ!」

ところが、あとを追おうとしたそのとき、レンのスマホが鳴った。知らない番号だった。「青木レンさんですか?」と電話の相手が言った。「病院からお電話しています。立花さんがお店でたおれられました。あなたを呼んでほしいとおっしゃっています」

日本語訳:多読ベスト

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理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. Why did Ren open the third envelope at last?

Q2. What did Sachiko ask the priest every spring?

Q3. What happened at the end?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

聞き読みの効果とやり方/多読三原則

📕 古書店の秘密 The Secret of the Old Bookshop

全8話・5,181語。1話ずつ、音声と全訳つきで読めます。

目次(全8話)
  1. 古書店の秘密 第1話:『秘密の花園』のメモ 558語
  2. 古書店の秘密 第2話:川辺のコマドリ 518語
  3. 古書店の秘密 第3話:ジョーの夢 527語
  4. 古書店の秘密 第4話:別の世界への井戸 579語
  5. 古書店の秘密 第5話:赤いスカーフの女性 692語
  6. 古書店の秘密 第6話:日曜日の物語 735語
  7. 古書店の秘密 第7話:翻訳家 734語
  8. 古書店の秘密 第8話:最後のページ 838語

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