🎓 多読の超絶講義

第12講 多読をアウトプットにつなぐ――要約・感想・英作文・スピーキングへの橋渡し

多読でためた英語は、そのままでは「わかる」止まりです。少しの工夫で、それを「書ける」「話せる」に変えられます。超絶講義の最終回、第12講では、多読の楽しさをこわさずにアウトプットへ橋をかける、しくみと具体的なメニューを伝授します。

インプットとアウトプットは「両輪」

語彙研究の Nation(2007)は、語学の学習を4本の柱で考えることを提案しました。意味に集中したインプット(多読・多聴)、意味に集中したアウトプット(話す・書く)、言語そのものに注目する学習(文法・語彙の勉強)、流暢さを伸ばす練習の4つで、これらにおおよそ同じくらいの時間をかけるのがよいとしています。多読は1本目の柱の主役ですが、それだけでは車輪が1つ足りません。

しくみ:アウトプットは「気づき」のスイッチ

では、アウトプットは何をしてくれるのでしょうか。Swain と Lapkin(1995)は、学習者が英語を書こうとすると、ときどき「言いたいのに言えない」という問題に気づき、それが表現を直す方向へと学習者を押し出すことを、データを示しながら論じました。そして、そのとき学習者は、読んで意味をとるだけのときよりも、文の組み立て(文法)に目を向けた処理をせざるをえなくなる、と述べています。

読むときは、多少あいまいでも意味がとれれば先に進めます。ところが書くときは、冠詞を a にするか the にするか、動詞を何形にするか、すべて自分で決めなければなりません。アウトプットは、インプットで素通りしていた部分を照らす光なのです。

さらに Izumi(2002)は、英語を第二言語として学ぶ大人を対象に、関係代名詞の学習を調べました。英文を書き直す活動とインプットを組み合わせたグループは、同じ英文を理解のためだけに読んだグループより、学習の伸びが大きくなりました。一方で、英文中の形を太字などで目立たせただけのグループには、測れるほどの伸びは見られませんでした。第9講で紹介した「リバース気づき」は、この研究から生まれた技です。

読むことは、書く力の土台になる

一方で、多読そのものが書く力を伸ばすことも、研究で示されています。

  • 英国で英語を学ぶ学習者を対象に、3か月の多読プログラムを行った Hafiz と Tudor(1989)では、多読をしたグループの成績がはっきり伸び、特に書く力の伸びが目立ちました
  • 台湾の大学生211名を対象にした Mermelstein(2015)では、授業中に15〜20分の多読を1年間続けたグループが、内容・構成・語彙・言語使用・表記・流暢さの作文の6項目すべてで、対照グループより大きく伸びました。この研究では、多読にともなう課題の負担を軽くしていたことも特徴です

この2つから言えるのは、アウトプットのために多読の量を減らしてはいけないということです。この講義のメニューは、どれも多読の時間を食わないよう、1回5〜15分に収まるように作ってあります。

読む→使うへの5段の橋

いきなり英作文や英会話に飛ぶのではなく、次の5段の橋を一段ずつ渡ります。

段やること多読ベストの道具
1. 声に出す読んだ文を音読・シャドーイングシャドーイング、音読カウンター
2. 写す気に入った文を書き写す第9講の気づきノート
3. まとめる1文〜3文で要約する語数カウンター
4. 語る感想・意見を書く英語で感想ジェネレーター
5. 話す何も見ずに話を語り直すスマホの録音

今の自分がどの段にいるかを確かめ、1つ上の段を足していきましょう。

メニュー1:英語で1文要約(5分)

読み終わったら、次の型に入れて、話を英語1文にまとめます。

In this story, (だれ) wants (望み), but (問題). In the end, (結末).

第8講の物語の型(設定→事件→山場→結末)が、そのまま要約の骨組みになります。本文の単語を借りてかまいません。というより、借りるのがコツです。2024年度からは英検の一部の級のライティングに要約の問題が加わったので、試験対策としても役立ちます。

手順:①型の空欄を日本語で考える(1分)→②本文の語を借りて英語にする(2分)→③語数カウンターで語数を見ながら、20〜30語に整える(2分)。

メニュー2:英語で感想(5分)

感想は、長い感想文ではなく、2〜3文で十分です。次の型が使えます。

  • I liked (人物/場面) because (理由).
  • I was surprised when (出来事).
  • If I were (人物), I would (行動).

最初は英語で感想ジェネレーターで選ぶだけのひな形を作り、そこに自分の言葉を1文だけ足すところから始めると楽です。3つ目の型は、第9講で扱った仮定法の練習にもなります。

メニュー3:借りて書く「ボロウ・ライティング」(10分)

作家の文章をまねて書く、昔からある練習法の多読版です。

  1. 読んだ話から、気に入った表現を3つ選ぶ
  2. その3つを使って、自分の生活について3〜5文を書く
  3. 語数カウンターで語数を確かめ、回を重ねるごとに少しずつ長くしていく

物語の中で何度も見た表現は、自分の文に入れても不自然になりにくく、しかも記憶に残ります。

メニュー4:サンドイッチ法(書く→読む→書き直す、15分)

Izumi(2002)の「アウトプットとインプットの組み合わせ」を、多読に取り入れた方法です。

  1. 書く(5分):これから読む話のタイトルを見て、自分ならどう話を始めるか、英語で2〜3文書いてみる。書けなかった部分に印をつける
  2. 読む(その話を普通に多読):印をつけた部分を、作者はどう書いているかが自然に目に入ってくる
  3. 書き直す(5分):本を閉じて、最初の2〜3文を書き直す。借りた表現には下線を引く

パンの間に具をはさむように、読む時間を「書く」ではさむので、サンドイッチ法と呼んでいます。週1回で十分です。

メニュー5:4/3/2リテリング(話す、10分)

話す力には、同じ話を、時間を短くしながら3回語る練習が効きます。

Arevart と Nation(1991)は、同じ話を3人の相手に、1回ごとに短くなる時間で語らせる方法を試し、話す速さが大きく上がり、言いよどみが減ったことを報告しました。de Jong と Perfetti(2011)は、英語を第二言語として学ぶ24名に、4分・3分・2分のスピーチを3回させる練習を行いました。練習中はどのグループも流暢さが伸びましたが、事後テストまで伸びを保てたのは、同じ話題をくり返し話したグループだけでした。くり返し話したグループは、話題に直接関係しない語も含めて、同じ語を何度も使っていたことがわかり、著者らは、知識が「すぐに使える形」に変わったと考えています。

ひとりでもできるやり方は次のとおりです。

  1. 読み終わった話を1つ選ぶ(今の多読レベルより1つ下の、よく知っている話がベスト)
  2. 本を閉じて、スマホで録音しながら2分で英語で語り直す
  3. 同じ話を1分30秒で、もう一度
  4. 最後に1分で、もう一度
  5. 3回目を聞き返し、言えなかった語を本で確かめる

時間を短くすると、言い回しを工夫するしかなくなり、同じ表現を何度も口にすることになります。それが流暢さにつながります。

実例:1つの話で全メニューを回す

メニューのイメージをつかむために、L0 のウサギとカメを使ってみます。本文には、たとえば次の文があります。

Hare looks back. Tortoise is far, far away.
Tortoise does not stop. Step, step, step.

1文要約

In this story, a fast hare wants to show that he is the best, but he sleeps during the race.

英語で感想

I liked the tortoise because she did not stop. I was surprised when the hare went to sleep. If I were the hare, I would run to the end first.

ボロウ・ライティング(借りた表現:look back、far away、does not stop)

When I look back on my first year of high school, my goal felt far away. But I did not stop.

4/3/2リテリング(1回目の録音を文字にした例)

Hare is fast... and Tortoise is slow. Hare says, um, you are slow. They have a race. Hare runs fast, but... he sleeps under a tree. Tortoise walks and walks...

1回目は言葉に詰まっても、3回目になると Hare runs fast, but he sleeps under a tree. がすっと出てくるようになります。本文の表現が、自分の口から出る表現に変わった瞬間です。ここまでで、かかった時間は合計20分ほど。1日に全部やる必要はありません。1日1メニューで十分です。

メニュー6:聞いて書く・聞いて話す(10分)

耳から入った英語を手と口に通す練習です。ディクテーションで1文ずつ書きとると、聞けていない音や、書けない語がはっきりします。そのあと読み物ページの🔁1文リピートで、同じ文をシャドーイングします。読む・聞く・書く・話すの4つが、1つの話の上でつながります。

試験への橋:ライティングとスピーキングの本番に向けて

多読から生まれたアウトプットは、試験にもそのまま生きます。

  • 要約問題:1文要約に慣れたら、「設定・事件・山場・結末」の4文要約に広げます。説明文なら「問題・原因・解決」の3文要約。本文の語をそのまま写すのではなく、本文の語を借りながら、文の形を変える練習をすると、要約らしい英文になります
  • 意見を書く問題:英語で感想の「I liked ... because ...」は、意見文の「I think ... because ...」とほぼ同じ形です。理由を2つにふやし、「First, ... Second, ...」で並べれば、意見文の骨組みになります。語数の確認には語数カウンターが使えます
  • 面接・スピーキング:4/3/2リテリングで鍛えた「止まらずに話し続ける力」は、面接で話を説明する場面に直結します。本番前は、自分のことを話すテーマ(好きな本、最近うれしかったこと)でも 4/3/2 を練習しておくと安心です

試験と多読の関係は多読は英検・TOEIC・大学入試に効く?でもくわしく説明しています。

誤解をくつがえす:アウトプットをめぐる4つの思いこみ

誤解1:たくさん読めば、そのうち自然に話せるようになる

多読は書く力の土台にもなりますが(Hafiz & Tudor, 1989; Mermelstein, 2015)、Nation(2007)の4本柱の考え方では、アウトプットと流暢さの練習にも時間を割くことが勧められています。アウトプットは、インプットで素通りしていた部分への気づきも生みます(Swain & Lapkin, 1995)。

誤解2:アウトプットは上級者になってからでよい

4/3/2リテリングは、よく知っているやさしい話でこそ力を発揮します。L0 のウサギとカメでも、十分な練習になります。

誤解3:感想文は長く書くほど力がつく

Mermelstein(2015)の多読プログラムは、課題の負担を軽くしたまま、作文の力を伸ばしました。長い課題で多読の量が減っては逆効果です。

誤解4:同じ話を何度も話すのはムダ

de Jong と Perfetti(2011)では、同じ話題をくり返し話したグループだけが、流暢さの伸びを事後テストまで保てました。くり返しこそが力になります。

プロの1週間メニュー(多読30分の人)

曜日多読+アウトプット(5〜15分)
月30分1文要約
火30分音読・シャドーイング
水30分英語で感想
木30分サンドイッチ法(書く→読む→書き直す)
金30分ボロウ・ライティング
土20分4/3/2リテリング(録音)
日好きなだけお休み、または好きな話の再読

アウトプットは、多読の時間を削らずに足すのが原則です。忙しい日は、アウトプットのほうを休みましょう。

今日からやる練習

  • 今日:読み終わった1話で、1文要約を書く
  • 今週:英語で感想を3回書く。ジェネレーターのひな形に自分の1文を足す
  • 今月:週1回、4/3/2リテリングを録音し、1週目と4週目の録音を聞き比べる

よくある罠

  • アウトプットを重くして、多読の量が減る:主役はあくまで多読です
  • 完璧な英文を目指す:まちがいを恐れて書かないより、短くても書くほうがずっと力になります
  • むずかしい本でアウトプットする:内容があやふやな話は、要約も感想も書けません。よくわかった、やさしい話を使いましょう
  • 毎回ちがうメニューに手を出す:1つのメニューを最低2週間は続けてみてください

まとめのチェックリスト

  • インプットとアウトプットは両輪で、アウトプットは気づきのスイッチだと知っている
  • 多読の時間を削らず、5〜15分のアウトプットを足している
  • 物語の型を使って、英語で1文要約ができる
  • 読んだ話から表現を借りて、自分のことを書いている
  • 同じ話を時間を短くしながら3回語る練習をしている

超絶講義をふり返って

12回の講義、おつかれさまでした。第1講の「レベルを下げる技」から始まり、第2講の返り読みゼロ、第3講の内なる音読とスピード、第4講の多聴多読、第5講の選書、第6講の再読、そして第7講から第12講まで、わからない語の処理、物語の型、文法への気づき、データ活用、スランプ脱出、アウトプット。どの技も、根っこにあるのは「やさしい英語を、楽しく、たくさん読む」という多読の基本です。技に迷ったら、いつでも基本に戻ってください。次の1冊は、ライブラリーで待っています。

よくある質問

多読をしていれば、英作文や会話も自然にできるようになりますか?

多読は書く力の土台になることが研究で示されていますが、話す・書くには、実際に使う練習を少し足すとより効果的です。多読の時間を削らずに、1回5〜15分のアウトプットを足すのがおすすめです。

英語で感想を書くとき、まちがいが気になります。

最初はまちがいを気にせず、短い文を書くことを優先しましょう。英語で感想ジェネレーターのひな形に自分の1文を足すところから始めると、無理なく続けられます。

ひとりでスピーキングの練習をするにはどうすればよいですか?

読み終わった話を、スマホで録音しながら2分→1分30秒→1分と時間を短くして3回語り直す「4/3/2リテリング」がおすすめです。よく知っているやさしい話を使うと、話すことに集中できます。

参考文献

  1. Nation, P. (2007). The four strands. Innovation in Language Learning and Teaching, 1(1), 2–13. doi.org/10.2167/illt039.0
  2. Swain, M., & Lapkin, S. (1995). Problems in output and the cognitive processes they generate: A step towards second language learning. Applied Linguistics, 16(3), 371–391. doi.org/10.1093/applin/16.3.371
  3. Izumi, S. (2002). Output, input enhancement, and the noticing hypothesis. Studies in Second Language Acquisition, 24(4), 541–577. doi.org/10.1017/S0272263102004023
  4. Hafiz, F. M., & Tudor, I. (1989). Extensive reading and the development of language skills. ELT Journal, 43(1), 4–13. doi.org/10.1093/elt/43.1.4
  5. Mermelstein, A. D. (2015). Improving EFL learners’ writing through enhanced extensive reading. Reading in a Foreign Language, 27(2), 182–198. doi.org/10.64152/10125/66890
  6. Arevart, S., & Nation, P. (1991). Fluency improvement in a second language. RELC Journal, 22(1), 84–94. doi.org/10.1177/003368829102200106
  7. de Jong, N., & Perfetti, C. A. (2011). Fluency training in the ESL classroom: An experimental study of fluency development and proceduralization. Language Learning, 61(2), 533–568. doi.org/10.1111/j.1467-9922.2010.00620.x

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