Witches' Loaves(魔女のパン)の挿絵
Level 2 Elementary名作文学

Witches' Loaves

魔女のパン

  • 📖 641 words
  • ⏱ 約8分
  • YL 1.0–1.4
  • 英検3級目安
  • 📝 全訳つき

あらすじ小さなパン屋のマーサさんは、いつも古いパンだけを買っていく貧しそうな客が気になってしかたがありません。きっと売れない画家にちがいない、と思った彼女は、ある日こっそり親切をしますが……。

O・ヘンリーの短編集 Sixes and Sevens(1911年、パブリックドメイン)をもとに多読ベストが再話

キーワード(8語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • bakeryパン屋
  • loaves(パンの)かたまり(loaf の複数形)
  • stale古くなった、固くなった
  • accentなまり
  • palace宮殿
  • fire engine消防車
  • architect建築家
  • eraser消しゴム

🔊 音声は準備中です。もうしばらくお待ちください。

Miss Martha Meacham owned a small bakery on a corner in New York. She was forty years old. She had two thousand dollars in the bank and a kind heart. But she was still alone.

ミス・マーサ・ミーチャムは、ニューヨークの街角で小さなパン屋を営んでいた。年は四十。銀行には二千ドルの預金があり、心のやさしい女性だった。それなのに、いまだにひとり身だった。

Two or three times a week, a man came into her bakery. He was middle-aged and wore glasses. He had a short brown beard and spoke English with a German accent. His clothes were old, but they were clean, and he had good manners.

週に二、三度、ひとりの男が店にやって来た。中年で、めがねをかけていた。短い茶色のあごひげを生やし、ドイツなまりの英語を話した。服は古かったが清潔で、物腰はていねいだった。

He always bought the same thing: two loaves of stale bread. Fresh bread was five cents a loaf. Stale bread was two loaves for five cents. He never bought anything else.

男が買うのは、いつも同じものだった。古くなったパンを二つ。焼きたてのパンは一つ五セント。古いパンなら、二つで五セントだった。男は、それ以外のものを買ったことがなかった。

One day Miss Martha saw a red and brown spot on his fingers. "Paint," she thought. "He must be an artist, and a very poor one. He lives in a cold little room and paints pictures. He eats stale bread and dreams of the good things in my bakery."

ある日、ミス・マーサは、男の指に赤と茶色のしみがついているのに気がついた。「絵の具だわ」とミス・マーサは思った。「きっと画家なのね。それも、ひどく貧乏な画家。寒くて小さな部屋に住んで、絵をかいているんだわ。古いパンをかじりながら、うちの店のおいしいものを夢に見ているのよ」

Miss Martha often thought about this man. When she sat down to her dinner of meat and jam and tea, she sighed. She wished he could share her good meals.

ミス・マーサは、よくこの男のことを考えた。肉とジャムと紅茶の夕食をとろうと席につくと、ため息が出た。このおいしい食事を、あの人にも分けてあげられたらいいのに。

To test her idea, she brought a painting from her room. It was a picture of a beautiful palace in Venice. She put it on the shelf behind the counter.

自分の考えが当たっているか確かめようと、ミス・マーサは、部屋から一枚の絵を持ってきた。ベネチアの美しい宮殿の絵だった。ミス・マーサは、それをカウンターのうしろの棚に飾った。

Two days later the man came in. "Two loaves of stale bread, please," he said. Then he saw the painting. "You have a fine picture, madam."

二日後、男がやって来た。「古いパンを二つください」と男は言った。そして、絵に目をとめた。「りっぱな絵をお持ちですね、奥さん」

"Thank you," said Miss Martha. "I love art. Do you think it's a good picture?"

「ありがとうございます」とミス・マーサは言った。「わたし、芸術が大好きなんです。いい絵だとお思いになります?」

"The palace is not drawn well," he said. "The lines are not true. Good morning, madam." He took his bread and hurried out.

「宮殿がうまくかけていませんね」と男は言った。「線が正確じゃない。では、ごきげんよう、奥さん」男はパンを受けとると、急いで出ていった。

Yes, he must be an artist! Now Miss Martha was sure. But he looked thinner every week. How sad that a great artist had to live on stale bread! She began to wear her blue silk dress in the shop. She also bought a special cream for her face.

やっぱり画家なんだわ! ミス・マーサは、もうまちがいないと思った。でも男は、週ごとにやせていくように見えた。偉大な芸術家が古いパンで命をつながなければならないなんて、なんてかわいそうなんでしょう! ミス・マーサは、店で青い絹のドレスを着るようになった。顔にぬる特別なクリームも買った。

One day the man came in and asked for his stale bread as usual. While Miss Martha was getting it, a fire engine went past with a loud noise. The man ran to the door to look, as everyone does.

ある日、男がやって来て、いつものように古いパンをたのんだ。ミス・マーサがパンを取っていると、消防車がけたたましい音を立てて通りすぎた。男は、誰でもそうするように、戸口へ走っていって外をのぞいた。

Suddenly Miss Martha had a wonderful idea. On the shelf behind her was some fresh butter. Quickly she took a knife and made a deep cut in each loaf. She pushed a lot of butter inside and closed the loaves again. Then she wrapped them in paper.

そのとき、ミス・マーサはすばらしいことを思いついた。うしろの棚に、新鮮なバターがあった。ミス・マーサはすばやくナイフを手にとり、パンの一つ一つに深い切れ目を入れた。その中にバターをたっぷりつめこみ、またぴったりと閉じた。それから、紙に包んだ。

The man took the bread and left. Miss Martha smiled to herself. She imagined him at his little table. He would open the bread and find the butter. Would he know who put it there? Her heart beat fast.

男はパンを受けとって帰っていった。ミス・マーサはひとりでほほえんだ。小さなテーブルにすわった男の姿が目に浮かんだ。パンを割ると、バターが出てくる。誰が入れたのか、わかってくれるかしら? ミス・マーサの胸は高鳴った。

An hour later the bell over the door rang loudly. Two men came in. One was a young man with a pipe. The other was the artist. His face was red, and his hair was wild. He shook both fists at Miss Martha.

一時間後、戸口の上のベルがけたたましく鳴った。ふたりの男が入ってきた。ひとりは、パイプをくわえた若い男。もうひとりは、あの画家だった。顔はまっ赤で、髪はふり乱れていた。男は、ミス・マーサに向かって両方のこぶしをふりまわした。

"You foolish woman!" he shouted. "You have spoiled everything!"

「このばか女め!」と男はどなった。「何もかも台なしにしてくれたな!」

The young man pulled him back to the door. Then he came back to Miss Martha. "I'm sorry, madam," he said. "That's Mr. Blumberger. He's an architect. He draws plans for buildings. He worked on a plan for the new city hall for three months. It was for a big prize. Yesterday he finished the lines in ink. After the ink is dry, he rubs out the pencil lines with stale bread. It works better than an eraser."

若い男は、画家を戸口のほうへ引きもどした。それから、ミス・マーサのところへもどってきた。「すみません、奥さん」と若い男は言った。「あの人はブルムバーガーさんといって、建築家なんです。建物の設計図をかく仕事です。この三か月、新しい市庁舎の設計図にかかりきりでした。大きな賞のかかったコンクールに出すものです。きのう、線をインクでなぞり終えたところでした。インクがかわいたら、古いパンで鉛筆の線を消すんです。消しゴムより、よく消えるんですよ」

"He always bought that bread here. But today, the butter... Well, you understand. Now his plan is good for nothing but wrapping sandwiches."

「あの人は、いつもここでそのパンを買っていました。ところが今日は、バターが……。まあ、おわかりでしょう。もうあの設計図は、サンドイッチを包むくらいにしか使えません」

Miss Martha went into the back room. She took off the blue silk dress and put on her old brown one. Then she threw the face cream into the garbage.

ミス・マーサは奥の部屋へ入った。青い絹のドレスをぬぎ、古い茶色の服に着がえた。それから、顔のクリームをごみ箱に捨てた。

📖 全訳をまとめて読む 読み終わってからの答え合わせに

ミス・マーサ・ミーチャムは、ニューヨークの街角で小さなパン屋を営んでいた。年は四十。銀行には二千ドルの預金があり、心のやさしい女性だった。それなのに、いまだにひとり身だった。

週に二、三度、ひとりの男が店にやって来た。中年で、めがねをかけていた。短い茶色のあごひげを生やし、ドイツなまりの英語を話した。服は古かったが清潔で、物腰はていねいだった。

男が買うのは、いつも同じものだった。古くなったパンを二つ。焼きたてのパンは一つ五セント。古いパンなら、二つで五セントだった。男は、それ以外のものを買ったことがなかった。

ある日、ミス・マーサは、男の指に赤と茶色のしみがついているのに気がついた。「絵の具だわ」とミス・マーサは思った。「きっと画家なのね。それも、ひどく貧乏な画家。寒くて小さな部屋に住んで、絵をかいているんだわ。古いパンをかじりながら、うちの店のおいしいものを夢に見ているのよ」

ミス・マーサは、よくこの男のことを考えた。肉とジャムと紅茶の夕食をとろうと席につくと、ため息が出た。このおいしい食事を、あの人にも分けてあげられたらいいのに。

自分の考えが当たっているか確かめようと、ミス・マーサは、部屋から一枚の絵を持ってきた。ベネチアの美しい宮殿の絵だった。ミス・マーサは、それをカウンターのうしろの棚に飾った。

二日後、男がやって来た。「古いパンを二つください」と男は言った。そして、絵に目をとめた。「りっぱな絵をお持ちですね、奥さん」

「ありがとうございます」とミス・マーサは言った。「わたし、芸術が大好きなんです。いい絵だとお思いになります?」

「宮殿がうまくかけていませんね」と男は言った。「線が正確じゃない。では、ごきげんよう、奥さん」男はパンを受けとると、急いで出ていった。

やっぱり画家なんだわ! ミス・マーサは、もうまちがいないと思った。でも男は、週ごとにやせていくように見えた。偉大な芸術家が古いパンで命をつながなければならないなんて、なんてかわいそうなんでしょう! ミス・マーサは、店で青い絹のドレスを着るようになった。顔にぬる特別なクリームも買った。

ある日、男がやって来て、いつものように古いパンをたのんだ。ミス・マーサがパンを取っていると、消防車がけたたましい音を立てて通りすぎた。男は、誰でもそうするように、戸口へ走っていって外をのぞいた。

そのとき、ミス・マーサはすばらしいことを思いついた。うしろの棚に、新鮮なバターがあった。ミス・マーサはすばやくナイフを手にとり、パンの一つ一つに深い切れ目を入れた。その中にバターをたっぷりつめこみ、またぴったりと閉じた。それから、紙に包んだ。

男はパンを受けとって帰っていった。ミス・マーサはひとりでほほえんだ。小さなテーブルにすわった男の姿が目に浮かんだ。パンを割ると、バターが出てくる。誰が入れたのか、わかってくれるかしら? ミス・マーサの胸は高鳴った。

一時間後、戸口の上のベルがけたたましく鳴った。ふたりの男が入ってきた。ひとりは、パイプをくわえた若い男。もうひとりは、あの画家だった。顔はまっ赤で、髪はふり乱れていた。男は、ミス・マーサに向かって両方のこぶしをふりまわした。

「このばか女め!」と男はどなった。「何もかも台なしにしてくれたな!」

若い男は、画家を戸口のほうへ引きもどした。それから、ミス・マーサのところへもどってきた。「すみません、奥さん」と若い男は言った。「あの人はブルムバーガーさんといって、建築家なんです。建物の設計図をかく仕事です。この三か月、新しい市庁舎の設計図にかかりきりでした。大きな賞のかかったコンクールに出すものです。きのう、線をインクでなぞり終えたところでした。インクがかわいたら、古いパンで鉛筆の線を消すんです。消しゴムより、よく消えるんですよ」

「あの人は、いつもここでそのパンを買っていました。ところが今日は、バターが……。まあ、おわかりでしょう。もうあの設計図は、サンドイッチを包むくらいにしか使えません」

ミス・マーサは奥の部屋へ入った。青い絹のドレスをぬぎ、古い茶色の服に着がえた。それから、顔のクリームをごみ箱に捨てた。

日本語訳:多読ベスト

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理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. What did the man always buy?

Q2. Why did Miss Martha think the man was an artist?

Q3. What did the man really use the stale bread for?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

聞き読みの効果とやり方/多読三原則

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