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英語のマジか!?ホント

微積分も結石も、英語では同じ calculus。電卓 calculator も、もとは「小石」

微積分も結石も、英語では同じ calculus。電卓 calculator も、もとは「小石」

読む前に予想してみよう!

英語の calculus は「微積分」の意味しかない

研究カード(どんな研究?)
対象
ラテン語・英語の辞書の語源記述と古典の用例
規模
古代ローマ〜17世紀の用例
研究の種類
歴史言語学(辞書・文献の調査)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

数学の「微積分」も、体にできる「結石」も英語では calculus。もとはラテン語で「小石」。古代ローマでは小石を動かして計算したので、calculate や calculator も生まれた。

ひとことで言うと「微積分」と「結石」は、英語だと同じ calculus。もとの意味は「小石」!

もくじ
  1. 英語の calculus には、まったく別の意味が3つある
  2. ローマでは「計算する」=「小石を置く」
  3. 結石も、ゲームの駒も、投票も「小石」
  4. 英語のおまけ:チョーク、カルシウム、そして「良心の小石」
  5. どんでん返し:ニュートンの呼び名は「流率法」だった
  6. まとめ

高校数学のラスボス「微積分」。病院で見つかる「腎臓結石」。

まったく関係なさそうなこの2つ、英語ではどちらも calculus(カルキュラス)です。歯医者さんで取ってもらう「歯石」も、英語の辞書では calculus の意味の一つです。

正体はラテン語の calculus=「小石」。古代ローマの人は、小石を動かして計算していました。だから計算する calculate も、電卓の calculator も、もとをたどれば「小石」なのです。

01英語の calculus には、まったく別の意味が3つある

アメリカの代表的な辞書『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』(第5版)で calculus を引くと、まず次の3つが並んでいます。

  • 医学:体の中にできる異常なかたまり。胆のう・腎臓・膀胱などにできる「結石」
  • 歯科:歯石(tartar のこと)
  • 数学:極限・微分・積分をあつかう分野。differential calculus(微分)と integral calculus(積分)を合わせたもの

4番目には「計算のしかた、計算の体系」という意味もあります。複数形は calculi(カルキュライ) または calculuses。ラテン語の複数形がそのまま残っています。

語源の欄には「ラテン語。計算に使った小石」とあり、calculate を見よ、と書いてあります。calculate の欄を開くと、ラテン語の calculus は calx(カルクス)の小さいもの、つまり「小さな石ころ」だと説明されています。

02ローマでは「計算する」=「小石を置く」

この辞典には、計算にまつわる言い回しがいくつも載っています。

  • calculos ponere:小石を置く=計算する
  • calculos subducere:(小石で)合計を出す、計算する
  • amicitiam ad calculos vocare:友情を小石の勘定に呼び出す=友だちづきあいを損得で細かく計算する(キケロの用例)

この辞典は calculus の意味を「計算盤で使う石」と説明し、そこから「計算」そのものの意味が生まれたとしています。小石を動かすことが、そのまま計算でした。

英語の calculate は、「計算する」という意味の、ローマ時代の終わりごろのラテン語 calculare から来ています。calculare は calculus(小石)から作られた動詞です。Dictionary.com(ランダムハウス大辞典)によると、英語に記録が現れるのは1560〜70年ごろ。名詞の calculus のほうは1610〜20年ごろです。

ローマの人は、計算盤の上で小石(calculus)を動かして計算した
ローマの人は、計算盤の上で小石(calculus)を動かして計算した

03結石も、ゲームの駒も、投票も「小石」

ラテン語の calculus は、計算以外の「小石」にも広く使われました。

体の中の石:ローマの百科事典を書いたプリニウスは、結石を「くだく」「出す」といった言い方で calculus を何度も使っています。英語の医学用語の calculus(結石)も、同じ「体の中の石」です。

ゲームの駒:「十二本線(duodecim scripta)」という盤上ゲームの駒も calculus でした。calculum reducere(駒を戻す)は、指した手を取り消すこと。日本の将棋でいう「待った」です。キケロは「打った手を後悔したら駒を戻してよい」という、ゲームのたとえを使って話をしています。

投票の石:白い石を入れれば賛成や無罪、黒い石なら反対や有罪。「白い小石を加える」は「賛成する」という意味の言い回しになりました。

幸せな日のしるし:プリニウス(博物誌)によると、トラキアの人たちは、よい日を白い石で、悪い日を黒い石で記録していました。手紙集を残した小プリニウスは、うれしい日のことを「いちばん白い小石で印をつけるべき日だ」と書いています。

雄弁家のデモステネスが、家で小石(calculi)を舌の上で転がしながら話す練習をしていた、という話も、ローマの弁論家クインティリアヌスの本にあります。

04英語のおまけ:チョーク、カルシウム、そして「良心の小石」

calculus のもとになった calx は、「小石」のほかに「石灰、石灰岩」という意味も持っていました。ここから、身近な英語がいくつも生まれています。

  • chalk(チョーク):古い英語(古英語)の cealc を経て、ラテン語 calx(石灰)から。黒板のチョークと calculus は親戚
  • calcium(カルシウム):ラテン語 calx(石灰)+元素を表す -ium。石灰岩に多くふくまれる元素
  • causeway(土手道):中世ラテン語 calciata (via)=「舗装した(道)」から。この calciata も calx(石灰岩)から出た語

黒板の chalk、牛乳の calcium、歯の calculus(歯石)。どれも同じ「石ころ・石灰」の calx から出た語です。アメリカン・ヘリテージ英語辞典は、歯石を、分泌物や食べかすが炭酸カルシウムなどの塩類とともに固まったものと説明しています。歯石とカルシウムは、中身の上でも縁があるわけです。

もう一つ、英語の scruple(良心のとがめ) も小石の仲間です。ラテン語 scrupus は「ごつごつした石」、scrupulus はその小さいもの。英語では「良心がちくちくして、ためらう気持ち」を表します。He had no scruples about lying.(彼は平気でうそをついた)。昔、薬の調合に使われた重さの単位(約1.3グラム)の名前でもあります。形容詞の scrupulous(きちょうめんな、良心的な)も同じ仲間です。

05どんでん返し:ニュートンの呼び名は「流率法」だった

微積分を作ったのはニュートンとライプニッツの2人、と習います。でも、ニュートンが自分の方法につけた名前は calculus ではありませんでした。

ニュートンの呼び名は「流率法(method of fluxions)」。書き上げたのは1671年ですが、本として世に出たのは、1736年の英訳が最初でした。

ライプニッツは、もっと早く発表しています。スコットランドのセント・アンドルーズ大学の数学史サイト MacTutor によると、1684年に微分の方法を、1686年に積分の方法を、学術誌に載せました。今も使う d の記号は1684年の論文に出てきます。∫(インテグラル)の記号が初めて活字になったのは、1686年の論文です。

発表の時期がこれだけずれたため、のちに「どちらが先に見つけたか」をめぐる争いが起きました。ちなみにライプニッツは、初期の計算機を発明した人としても知られています。

もう一つ、つづりのわなもあります。ラテン語には、calculus のもとになった calx とまったく同じつづりの calx がもう一つあり、こちらの意味は「かかと」です。英語の recalcitrant(反抗的な、手に負えない) は、「かかとでけり返す」というラテン語から来た語で、こちらの仲間。つづりは同じでも、チョークや calculus とは別の言葉です。

06まとめ

微積分の calculus、結石の calculi、電卓の calculator、黒板の chalk、牛乳の calcium。英語の教科書で別々に覚えた単語が、「小石」という一つの言葉でつながっていました。

次に計算機をたたくときは、ローマの商人が盤の上で小石をすべらせていた音を想像してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerStudents who take calculus may be surprised to find the same word in a doctor's notes. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

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この研究を英語で読もう

Students who take calculus may be surprised to find the same word in a doctor's notes. In medicine, a calculus is a stone that forms in the kidney or another organ, and dentists use the word for the hard layer that builds up on teeth. All of these go back to the Latin word for a small stone.

Romans did their sums by sliding pebbles across a counting board, so the word for a pebble came to mean a calculation. English took "calculate" from this source in the 1500s. Romans also used small stones as game pieces and for voting. A white stone meant yes, and a black one meant no. "Chalk" and "calcium" come from a related Latin word for limestone.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

微積分(calculus)をとっている学生は、医者のメモに同じ単語を見つけて驚くかもしれない。医学では、calculus は腎臓などの臓器にできる石のことで、歯医者は歯にたまる硬い層のことをこの語で呼ぶ。これらはすべて、小石を意味するラテン語にさかのぼる。

ローマ人は計算盤の上で小石をすべらせて計算したので、小石を表す語が「計算」の意味になった。英語は1500年代に、ここから「calculate」を取り入れた。ローマ人は小石をゲームの駒や投票にも使った。白い石は賛成、黒い石は反対を意味した。「chalk(チョーク)」や「calcium(カルシウム)」は、石灰岩を表す、関連したラテン語から来ている。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. According to the passage, what did a black stone mean in a Roman vote?

Q3. Why did the Latin word for a pebble come to mean a calculation?

重要単語

  • calculusB2
    名詞微積分;(医学)結石;(歯科)歯石My sister is taking calculus in college this year. 複数形は calculi または calculuses。数学の意味のときは数えない名詞として使う。
  • calculateB1
    動詞計算する;見積もるCan you calculate how much paint we need? be calculated to do で「〜するようねらって作られている」。calculator(電卓)、calculation(計算)も同じ仲間。
  • pebbleB1
    名詞小石The kids threw pebbles into the pond. 川原や浜辺の丸い小石。ラテン語ではこれが calculus だった。
  • chalkA2
    名詞チョーク;白亜(石灰岩の一種)The teacher wrote the date in chalk on the board. in chalk「チョークで」。chalk up で「(点や勝利を)あげる」。ラテン語 calx(石灰)から。
  • calciumB1
    名詞カルシウムMilk and small fish are good sources of calcium. calx(石灰)+元素を表す -ium。sodium、potassium も同じ -ium。
  • scrupleC1
    名詞良心のとがめ、ためらいHe had no scruples about copying my homework. have no scruples about -ing「平気で〜する」。ラテン語 scrupulus(ごつごつした小石)から。形容詞は scrupulous(きちょうめんな)。
  • kidney stoneB2
    名詞腎臓結石My uncle was in the hospital with a kidney stone. kidney(腎臓)+stone(石)。辞書の calculus の「結石」の意味を、ふだんの言葉で言うとこうなる。
  • recalcitrantC1
    形容詞反抗的な、手に負えないThe recalcitrant goat refused to leave the garden. ラテン語「かかとでけり返す」から。calculus の calx(小石)とは別の calx(かかと)の仲間。
数学の「微積分」と、体にできる「腎臓結石」。英語ではどちらも calculus です。もとはラテン語で「小石」。古代ローマでは小石を動かして計算したので calculate(計算する)も同じ語から。歯石も calculus。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「calculus」ahdictionary.com
  2. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「calculate」ahdictionary.com
  3. Lewis & Short (1879) A Latin Dictionary「calculus」(Perseus Digital Library, Tufts University)perseus.tufts.edu
  4. Lewis & Short (1879) A Latin Dictionary「calx」(Perseus Digital Library, Tufts University)perseus.tufts.edu
  5. O'Connor & Robertson「Gottfried Wilhelm von Leibniz」MacTutor History of Mathematics(セント・アンドルーズ大学)mathshistory.st-andrews.ac.uk

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