この指導案の特色

中教審の審議まとめ(2026年10月5日)で示された、必履修科目「英語コミュニケーション(総合)Ⅰ(仮称)」の趣旨(5つの領域を総合的に扱い、領域統合を一層重視する)と、高校の入学初期に生徒の学習状況を把握しつつ中学校の既習事項を繰り返し活用する方向性を先取りした試案である。科目名を含め次期学習指導要領はまだ告示前であり、本案は審議まとめと資料編のイメージをふまえた一つの例である。中学校で学んだ文法や表現で書いた自作の短い文章を、聞く・読む・話す・書くという一続きの活動で扱い、来年度の新入生へのメッセージという目的に向かわせる。
| 次期の方向性 | この指導案での具体化 |
|---|---|
| 高校では入学初期に生徒の学習状況を適切に把握し、中学校の既習事項を繰り返し活用しながら「思考・判断・表現」を発揮する活動を重視する P281 | 第1時のCan-doチェックと中学時代についてのペアトークで学習状況をつかみ、本時の読み物は中学校の既習事項(when・if の文、It's ~ to ~、動名詞、助動詞など)だけで書いた自作の文章にする。 |
| 英語コミュニケーション(総合)(仮称)では、中学校の学習内容の確実な習熟を図りながら、5つの領域を総合的に扱い、領域統合を一層重視する P281資料(外㉓)P23 | 1時間の中で、聞く(教師の体験談)→読む(先輩のアドバイス)→話す[やり取り](どのアドバイスが役立つか)→書く(理由を添えた短い文章)を、一つの目的でつなげる。 |
| 読んだり聞いたりしたことを基に話したり書いたりできるよう、発信に活用できる言語材料で教材を構成する 資料(外㉓)P23 | 読み物を、生徒が自分の考えを話したり書いたりする際にそのまま借りて使える表現(My advice is ~. / If you ~, it will ~. / It's OK to ~.)で構成し、支える活動で取り出して整理する。 |
| 科目目標のイメージ:基本的な構成や論理の展開を用いている文章から情報や考えを捉え、自分の考えを形成し、内容のまとまりなどを意識しながら表現等を工夫して伝える 資料(外㊺)P45資料(外㊼)P47 | 3つの文章を「困ったこと(体験)→工夫・アドバイス→結果・考え」という共通の流れで書き、その構成に気付かせたうえで、自分の考えも同じ流れで伝えさせる。 |
| 学習方略の指導と、「外国語の習得に継続して取り組もうとする態度」(高校の学びに向かう力の目標イメージ) P281資料(外⑥)P6資料(外⑮)P15 | 単元の最後に、自分に合う英語の学び方(例:毎日15分の音読、通学時間の復習)を一つ選んで1学期の学習計画を立て、学期の途中で見直す。 |
1 単元名・単元の目標
単元名:Tips for a Great Start ~先輩のアドバイスを読み、自分の高校生活を語ろう~(全7時間(本時は第2時))
単元の目標:【コミュニケーションの目的・場面・状況】来年度入学する中学3年生に、高校生活をよいスタートで始めるためのアドバイスを届けるために(目的)、学校説明会で掲示・配布する英語のメッセージを書き、クラスで紹介し合う場面で(場面)、高校生活をまだ知らない相手に、自分の体験を例にして分かりやすく伝える(状況)。【目標】①中学校で学んだ文法事項や、アドバイスを伝える表現の意味や使い方の理解を深め、話したり書いたりする際に適切に活用する技能を身に付ける。②先輩の体験談や教師・ALTの話から情報や考えを捉えて整理し、自分の考えを形成したうえで、内容のまとまりを意識しながら、理由や体験を添えて話したり書いたりして伝え合う。③高校での英語学習に関心をもち、友達との対話を通して考えを広げたり深めたりするとともに、自分の学習を振り返って学び方を調整しようとする。
2 単元の評価規準
| 知識・技能 | 思考・判断・表現 | 主体的に学習に取り組む態度 |
|---|---|---|
| 【知識】アドバイスを伝える表現(My advice is ~. / If you ~, it will ~. / It's OK to ~. / Why don't you ~? など)や、中学校で学んだ文法事項の意味や使い方を理解している。【技能】高校生活のスタートについて、これらの表現や文法事項を用いて、自分の考えや体験を話したり書いたりする技能を身に付けている。 | 来年度の新入生によいスタートを切ってもらうために、先輩の体験談や教師・ALTの話から必要な情報や考えを捉え、自分にとって役立つアドバイスとその理由を、体験を添えて、内容のまとまりを意識しながら話したり書いたりして伝え合っている。 | 来年度の新入生によいスタートを切ってもらうために、先輩の体験談や教師・ALTの話から必要な情報や考えを捉え、自分にとって役立つアドバイスとその理由を、体験を添えて、内容のまとまりを意識しながら話したり書いたりして伝え合おうとしている。 |
審議まとめでは、各学校が単元の目標(評価規準)を作る際に、科目の目標をふまえつつ「内容」を基に作る方向や、「内容のまとまりごとの評価規準例」は国が示して学校の作成は不要とする方向が示されている(本体P69、本体P285)。高校の「内容」は資料編にイメージが示されているが、文言は告示や解説に向けて引き続き検討されるため、本試案の評価規準は現行の書き方をベースに、英語コミュニケーション(総合)Ⅰ(仮称)の内容イメージ(「内容のまとまりなどを意識しながら」など)を取り入れた(資料編P45(外㊺))。入学初期は学習状況の把握と指導に生かす評価を中心とし、記録に残す評価は単元後半に絞った(形成的評価の充実。本体P70)。「主体的に学習に取り組む態度」は現行制度でも評価する観点であるため置いた。一方、次期は「学びに向かう力」を総合所見欄での個人内評価と「思考・判断・表現」への「◯」の付記で扱う方向である(本体P63、本体P64)。単元計画の◎は記録に残す評価、○は指導に生かす評価を表す。
3 単元の指導と評価の計画
| 時 | 主な学習活動 | 評価 |
|---|---|---|
| 1 | オリエンテーション。中学校までの英語学習をCan-doチェックリストで振り返る。ペアで中学時代の思い出(部活動・行事など)を英語で2分間話し、相手を替えて繰り返す。教師は、生徒が使えている表現や文法を記録する。 | ○知・思:中学校の既習事項をどの程度使えているか(行動観察・Can-doチェック。学習状況の把握) |
| 2(本時) | 教師の体験談を聞き、先輩3人のアドバイス(自作の短い文章)を読んで概要や要点を捉える。アドバイスを伝える表現を整理し、どのアドバイスが自分に役立つかを理由とともに伝え合い、短く書く。 | ○思:【読むこと】【話すこと[やり取り]】アドバイスと理由を捉え、体験を添えて伝え合っているか(行動観察・ワークシート) |
| 3 | ALTの高校時代の体験談(教師とALTで作成)を聞いてメモを取り、メモを基に内容を友達に伝え直す(リテリング)。 | ○思:【聞くこと】必要な情報を聞き取っているか(メモ) |
| 4 | 【支える活動】助言や提案の表現(should / It's a good idea to ~ / Why don't you ~? / Try ~ing.)の意味や使い方の違いを、場面ごとに整理する。読み物を意味のまとまりで区切って音読し、最後は顔を上げて言う(Read and Look up)。 | ○知:表現の使い分けを理解しているか(ワークシート) |
| 5 | 新入生へのメッセージの構想を練る(伝えたいアドバイスを一つ選ぶ→理由と体験を書き出す→構成メモを作る)。下書きを書く。 | ○思:内容のまとまりを意識して構成しているか(構成メモ) |
| 6 | ペアで下書きを読み合い、「新入生に伝わるか」の観点で質問やコメントをし合う。それをふまえて書き直し、メッセージを完成させる。 | ◎知・思:【書くこと】アドバイスと理由・体験を、まとまりを意識して書いているか(完成したメッセージ) |
| 7 | 完成したメッセージを小グループで発表し合い、質問に答える。ALTが新入生役になって質問する。単元を振り返り、自分に合う英語の学び方を一つ選んで1学期の学習計画を立てる。 | ◎知・思:【話すこと[発表]】アドバイスと理由・体験を、相手に伝わるよう工夫して話しているか(発表の様子)/態(現行制度に基づき発表・振り返り・学習計画で評価する。審議まとめで示された次期の方向では長い期間で見取る) |
4 本時の展開(50分)
本時の目標:高校生活を始めるための先輩のアドバイスを読んで概要や要点を捉え、自分にとって役立つと考えるアドバイスを、理由や体験を添えて伝え合うことができる。
| 過程・時間 | 学習活動 | 指導上の留意点・支援 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 導入 5分 | 挨拶をする。教師の体験談(高校1年生の最初の1か月)を聞き、'How did I feel?' 'What happened?' などの質問に答える。 When I was a first-year high school student, I was very nervous. I didn't know anyone in my class. But one day, a classmate asked me, 'Do you like music?' We talked about our favorite songs, and we became good friends.高校1年生のとき、先生はとても緊張していました。クラスに知り合いが一人もいなかったからです。でもある日、クラスメイトが『音楽は好き?』と話しかけてくれました。好きな曲の話をして、仲良くなりました。 | 中学校の既習事項だけを使って1分程度で話す。聞き取れたことをペアで確かめてから全体で答えさせ、聞く力の差をつかむ。 | |
| 導入 3分 | 本時のめあてを確かめる。単元のゴール(来年度の新入生へのメッセージ)と、本時がその材料集めであることを確認する。 Today, you will read some advice from high school students. Find good ideas for your message to new students.今日は高校生のアドバイスを読みます。新入生へのメッセージに使えるアイデアを見つけよう。 | 単元のゴールを掲示し、毎時間の活動がどの部分につながっているかを示す。 | |
| 展開 12分 | 【読むこと】先輩3人(Riko・Daiki・Mei)のアドバイス(各70語程度の自作の文章)を読む。①3つをざっと読み、それぞれに合う見出しを選ぶ(概要)。②一つを選んで詳しく読み、「アドバイス」「その理由・体験」を表に書く(要点)。③同じ文章を選んだ人同士で確かめ合う。 First, read all three quickly. Choose the best title for each one. You don't have to understand every word.まず3つともざっと読んで、それぞれに一番合う見出しを選ぼう。全部の単語が分からなくても大丈夫。 | ①は時間を区切って(1分30秒)読ませ、全部の語を理解しなくてよいことを伝える。分からない語は、前後から意味を推測してから辞書で確かめる順にする。3つの文章はいずれも「困ったこと(体験)→工夫・アドバイス→結果・考え」の流れで書いてあり、③でその共通点にも気付かせる。 | ○思:【読むこと】アドバイスと理由を捉えているか(ワークシート) |
| 展開 8分 | 【支える活動】文章から、アドバイスを伝える表現(My advice is ~. / If you ~, it will ~. / It's OK to ~. / Don't ~.)を探して下線を引き、中学校で学んだ文法と結び付けて整理する。意味のまとまりで区切って音読し、最後は顔を上げて言う(Read and Look up)。 Underline the sentences that give advice. Which grammar points did you learn in junior high school?アドバイスを伝えている文に下線を引こう。中学校で学んだどの文法が使われているかな。 | 文法用語の確認は短くし、「この形を使うと、どんなアドバイスができるか」に焦点を当てる。既習事項の定着に差がある場合は、中学校の教科書の該当ページを示し、家庭学習で見直せるようにする。 | ○知:表現の意味や使い方を理解しているか(ワークシート) |
| 展開 12分 | 【話すこと[やり取り]】3人組で「どのアドバイスが自分に一番役立つか」を、理由や自分の体験を添えて伝え合う。聞き手は質問を一つする。相手を替えて2回行い、2回目は1回目でうまく言えなかったことを言い直す。 Which advice is the most useful for you? Why? Tell your group. Use your own experience.どのアドバイスが一番役に立つかな。なぜ?グループに伝えよう。自分の経験も使ってね。 | 1回目と2回目の間に、全体で「言いたかったけれど言えなかった表現」を2〜3個取り上げ、既習の表現での言い換えを示す。質問が出ない場合は、'Why do you think so?' 'Have you ever ~?' などを例示する。 | ○思:【話すこと[やり取り]】理由や体験を添えて伝え合っているか(行動観察) |
| 展開 6分 | 【書くこと】伝え合ったことを基に、「自分に一番役立つアドバイスとその理由」を4〜5文で書く(Quick Write)。 Write four or five sentences. Which advice is useful for you, and why?4〜5文で書こう。どのアドバイスが役立つか、そしてその理由は? | 書けた文の数より、理由や体験が入っているかを大切にさせる。書いたものは単元後半のメッセージの材料として保存する。 | |
| まとめ 4分 | 振り返りシートに、中学校で学んだ表現で使えたもの、うまく言えなかったことを書く。次時の予告を聞く。 What could you say well today? What was difficult? Write it down. It will help you with your next step.今日うまく言えたことは何かな。難しかったことは?書いておこう。次の一歩に役立つよ。 | うまく言えなかったことを次時以降の支える活動の材料にすることを伝え、振り返りが自分の学習の調整につながるようにする。 |
5 板書計画・準備物
- めあて:先輩のアドバイスを読み、自分に役立つものを理由とともに伝え合おう
- 単元のゴール:来年度の新入生へのメッセージ(学校説明会で掲示)
- 3つの文章の流れ:困ったこと(体験)→工夫・アドバイス→結果・考え
- アドバイスの表現:My advice is ~. / If you ~, it will ~. / It's OK to ~. / Don't ~.
- やり取りの表現:I think ~'s advice is the most useful for me, because ~. / Why do you think so? / Have you ever ~?
- 言えなかった表現 → 既習の英語での言い換え(生徒の発言から書き足す)
- ふり返りの視点:使えた中学校の表現・言えなかったこと
- 読み物(自作)Riko:When I started high school, I felt nervous every morning. My advice is simple: talk to one new person every day. It doesn't have to be a long conversation. You can just say 'Good morning' or ask about homework. After a month, I had a lot of friends. Those small conversations really helped me. Try it. It's easier than you think!
- 読み物(自作)Daiki:In junior high school, I studied only before tests. In high school, that didn't work. There is a lot to learn, and classes move fast. So I started reviewing for fifteen minutes on the train every day. If you make a small habit early, it will be easier later. My advice is: don't wait until the week before a test!
- 読み物(自作)Mei:I joined the brass band, and I was very busy. At first, I tried to do everything perfectly, but I got very tired. One day, my teacher told me, 'It's OK to ask for help.' Now I ask my friends and teachers when I have a problem. I think asking for help is not a weakness. It is a smart way to grow.
- 見出しカード(Say hello to someone new / Make a small habit / Don't do everything alone / 選ばれない見出し:Join as many clubs as you can)
- ワークシート(見出し選び・アドバイスと理由の表・Quick Write 欄)
- Can-doチェックリスト(第1時で使用したもの)
- 振り返りシート
6 授業後のふり返り
Quick Write と行動観察から、中学校の既習事項のうち使えていたもの(例:when の文、It's ~ to ~)と、使えていなかったもの(例:if の文での時制、動名詞を主語にした文)を記録し、第4時の支える活動で重点的に扱う。読むことに時間がかかった生徒には、次時以降も同じ程度の長さの文章を、時間を区切って読む機会を続ける。Quick Write は第5時のメッセージづくりの材料として返却する。第1時のCan-doチェックと本時の様子を合わせて学級全体の学習状況を英語科で共有し、英語コミュニケーション(発信)(仮称)を並行して履修する場合は、扱った話題や表現を担当者間で伝え合う。
※ この指導案は、次期学習指導要領の告示前に、審議まとめ(2026年10月5日)の方向性をふまえて原田英語.comが作成した試案です。評価規準は現行の3観点で書いています。