締切間近 審議まとめへの意見募集(パブコメ)は 11月5日(木)23:59 まで(受付中) くわしく →
指導案(試案)・高等学校第1学年

アルバイトから考える「働くルール」 ~雇用と労働問題(職業選択を含む)を基本的な原理から考える~

公共/全6時間(本時は第3時)/本時 50分

もくじ(7項目)
  1. この指導案の特色
  2. 1 単元名・単元の目標
  3. 2 単元の評価規準
  4. 3 単元の指導と評価の計画
  5. 4 本時の展開(50分)
  6. 5 板書計画・準備物
  7. 6 授業後のふり返り

この指導案の特色

アルバイトから考える「働くルール」 ~雇用と労働問題(職業選択を含む)を基本的な原理から考える~

中央教育審議会教育課程部会の審議まとめ(2026年10月5日)で示された、「公共」のBとCで扱う事柄や課題を13から10に精選し、「職業選択」と「雇用と労働問題」を「雇用と労働問題(職業選択を含む)」にまとめる案と、他者と協働して主題を追究する活動では詳細な制度の解説ではなく基本的な原理に焦点化する方向を先取りした試案である。次期学習指導要領はまだ告示前であり、本案は審議まとめの方向性をふまえた一つの例である。高校生に身近なアルバイトをめぐる「よくある話」(自作の投稿)を、契約自由の原則と労働者保護という原理から吟味するとともに、高校で重視する方向が示された「その妥当性を吟味しながら」調べまとめる技能を育てる。

次期の方向性この指導案での具体化
「公共」のB・Cで扱う13の事柄や課題を10に精選し、主題を設定しやすくする案。例として「職業選択」と「雇用と労働問題」を「雇用と労働問題(職業選択を含む)」にまとめる P152P154資料(社⑩-1)P171職業選択(何のために働くのか・仕事の選び方)と雇用・労働問題を一つの単元にまとめ、「高校生が安心して働き、将来の仕事を選べる社会にするには」という問いで全6時間を貫いた。
A「公共の扉」で学ぶ概念や理論、公共的な空間における基本的な原理をB・Cでより効果的に用いられるようにし、他者と協働して主題を追究したり解決したりする活動では、詳細な制度や仕組みの解説ではなく、基本的な原理に焦点化し利益衡量を図るよう示す方向 P152労働基準法などの条文を覚えることを目的にせず、A「公共の扉」で学んだ「契約」の考え方を手がかりに、「本人が納得した約束でも無効になる場合があるのはなぜか」という問いで、契約自由の原則と、交渉力の差を補う労働者保護の原理に焦点化した。店の事情と働く側の事情の利益衡量も考えさせる。
高等学校では、批判的に情報を扱う視点を一層重視し「その妥当性を吟味しながら」調べまとめる技能を身に付ける方向。収集した情報の信ぴょう性等を確認する「情報の妥当性の確認」に関する技能を新たに位置付ける P148P159資料(社⑫)P175SNS風の投稿(自作)を出発点に、公的機関のウェブページや教科書・資料集で確かめる。情報カードに表題・発信者・更新日を記録させ、地域や年によって変わる情報(最低賃金の額など)は「いつの、どこの情報か」を必ず確かめさせる。
見方・考え方で扱う対象を「社会的事象や言説」とし、よりよい社会の形成に向けて課題を「多面的・多角的」に考えるとともに、確かな根拠に基づき「公正に判断」することとして整理する(言説はあくまで思考の契機であり、事象との関係の中で扱う) P149投稿という「言説」を入り口にしつつ、それが実際の制度(事象)と合っているかを確かめる流れにした。さらに、店長・アルバイトの高校生など複数の立場から、そのルールがなぜ必要かを考えさせる。
AI活用は、最終的に生徒が自ら考え、判断し、成果物の内容を自らの言葉で説明し、自ら責任を持つという考え方を当面の基本とし、AIに頼って自らの思考を経ていない成果物は通用しないような評価の工夫(口頭試問の要素、端末のテストモードでブラウザを使えない環境での記述など)を進める P146P159本時のまとめの記述は端末を閉じて紙に書かせる。単元最後の発表では、提案の根拠について教師やほかの生徒が質問し、自分の言葉で答える口頭試問の要素を入れる。調べる段階でも、検索結果の上に出るAIの要約をそのまま写さず、元のページで確かめることを約束にする。

1 単元名・単元の目標

単元名:アルバイトから考える「働くルール」 ~雇用と労働問題(職業選択を含む)を基本的な原理から考える~(全6時間(本時は第3時))

単元の目標:【目標】①職業選択の意義、雇用と労働をめぐる問題、働く人の権利を保障する法や制度について、契約自由の原則や労働者保護の考え方と関連付けて理解するとともに、諸資料から情報の妥当性を吟味しながら調べまとめる技能を身に付ける。②高校生が安心して働き、将来の仕事を選べる社会にするために、雇用と労働に関わる課題を多面的・多角的に考察し、複数の立場の利益を比べながら、根拠をもって解決の方向を構想し、表現する。③働くことに関わる身近な課題を自分のこととして捉え、よりよい社会の形成に参画しようとする。

2 単元の評価規準

知識・技能思考・判断・表現主体的に学習に取り組む態度
職業選択の意義や、雇用と労働をめぐる問題、働く人の権利を保障する法や制度について、契約自由の原則と労働者保護の考え方と関連付けて理解している。公的機関の資料や統計などから、発信者・時期などを確かめ、情報の妥当性を吟味しながら調べまとめている。高校生が安心して働き、将来の仕事を選べる社会にするために、雇用と労働に関わる課題を多面的・多角的に考察し、使用者と働く側など複数の立場の利益を比べながら、根拠をもって解決の方向を構想し、表現している。働くことに関わる身近な課題を自分のこととして捉え、よりよい社会の形成に向けて、他者と協働して課題を追究しようとしている。
次期で評価はどうなる?

審議まとめでは、国が「内容のまとまりごとの評価規準例」を示して各学校の作成は不要とし、単元の目標をそのまま評価規準として用いる方向が示されている(本体P69)。本試案の評価規準は現行の3観点で書いた。記録に残す評価は単元の終わり(第6時の提案と口頭での質疑、端末を使わない記述)にしぼり、本時を含む途中は形成的評価を中心にした(本体P70)。社会科等では、「学びに向かう力の3要素」を思考・判断・表現の過程で一体的に見取り、評価期間を通じて「継続的な発揮」を見取れた場合に「思考・判断・表現」の観点別評価に「○」を付記する方向で、「見取る姿」は改訂後に速やかに検討するとされている(本体P161、本体P63、本体P64)。本試案では現行制度に基づき「主体的に学習に取り組む態度」を置いた。単元計画の◎は記録に残す評価、○は指導に生かす評価を表す。

3 単元の指導と評価の計画

時主な学習活動評価
1【職業選択】「何のために働くのか」「仕事を選ぶとき何を大切にするか」を考え、身近な大人へのインタビュー(事前の課題)の結果を共有する。単元を貫く問い「高校生が安心して働き、将来の仕事を選べる社会にするには」を確かめ、疑問を出し合う。○態:自分の問題として問いをもっているか(ワークシート)
2【雇用の変化】公的な統計資料(雇用形態別の雇用者数の推移など)を読み取り、正規雇用と非正規雇用の違い、働き方の多様化を捉える。資料の出典・調査年・単位を確かめて読む。○知:資料の出典や時期を確かめて読み取っているか(ワークシート)
3(本時)高校生のアルバイトをめぐるSNS風の投稿(自作)の真偽を公的機関の資料などで確かめ、「本人が納得した約束でも無効になる場合があるのはなぜか」を、契約自由の原則と労働者保護の原理から考える。○知:発信者や時期を確かめて情報を集めているか(情報カード)/○思:基本的な原理を用いて、複数の立場から考察しているか(ワークシート・行動観察)
4【労働問題と権利】長時間労働や賃金の未払いなどの問題と、労働基本権・労働組合・相談窓口の役割を調べる。可能であれば、労働行政や労務の専門家による出前授業を行い、事前に考えた質問をする。○知:働く人の権利を保障する仕組みを理解しているか(ワークシート)
5【主題の追究】グループで「高校生が安心して働ける地域にするために、店・学校・行政・高校生自身は何ができるか」を構想する。それぞれの立場の利益と負担を表に整理し、提案をまとめる。○思:複数の立場の利益を比べて解決の方向を構想しているか(構想シート)
6【提案と振り返り】グループの提案を発表し、根拠について質問に答える(口頭試問の要素)。その後、端末を閉じて、単元を貫く問いへの自分の答えを、根拠を示して記述する。◎知・思:原理と根拠に基づいて解決の方向を構想し、説明しているか(発表・質疑、記述)/◎態:自分のこととして課題を追究しようとしているか(記述・振り返り。現行制度に基づき評価)

4 本時の展開(50分)

本時の目標:高校生のアルバイトをめぐる情報の真偽を公的な資料で確かめ、本人が納得した約束でも無効になる場合がある理由を、契約自由の原則と労働者保護の考え方を用いて説明することができる。

過程・時間学習活動指導上の留意点・支援評価
導入
5分
高校生のアルバイトをめぐるSNS風の投稿(自作)4つを読み、それぞれ「正しい/誤り/分からない」を直感で選ぶ。
主な発問:この4つの投稿のうち、信じてよいものはどれだろうか。どうすれば確かめられるだろうか。
投稿は実在の人物・企業を連想させない自作のものとする。直感の判断は記録だけしておき、根拠はこの後で確かめることを伝える。
展開
10分
【情報を確かめる】4人グループで投稿を1人1つ担当し、厚生労働省や都道府県労働局などの公的機関のウェブページ、教科書・資料集で確かめる。情報カードに、確かめた内容、表題、発信者、更新日を記録する。
主な発問:その情報は、誰が、いつ発信したものか。投稿の内容と、どこが同じでどこが違うか。
検索結果の上に表示されるAIの要約をそのまま写さず、必ず元のページで確かめることを約束にする。参照先の例を示したリンク集を配り、検索に時間がかかる生徒を支える。最低賃金のように地域や年によって変わる情報は、自分の都道府県の最新の情報を確かめさせる。○知:発信者や時期を確かめて情報を集めているか(情報カード)
展開
12分
【共有】グループ内で担当した投稿の真偽と根拠を説明し合い、4つの結果を表にまとめる。全体で確かめる(ア:条件を満たせばアルバイトにも年次有給休暇がある/イ:6時間を超えて働く場合は少なくとも45分の休憩が必要/ウ:18歳未満は原則として午後10時から午前5時まで働かせてはならない/エ:本人が納得しても、地域の最低賃金を下回る時給の約束はその部分が無効)(根拠:労働基準法第39条・第34条・第61条、最低賃金法第4条。授業の前に厚生労働省の最新の資料で確かめておく)。
主な発問:4つの投稿の誤りには、どんな共通点があるだろうか。
説明の際は情報カードを見せながら「どこに書いてあったか」も伝えさせる。細かい要件(日数の計算方法など)には深入りせず、「どんな考え方でそのルールがあるのか」に目を向けさせる。
展開
13分
【基本的な原理から考える】A「公共の扉」で学んだ「契約は当事者の合意によって成り立つ」(契約自由の原則)を振り返り、「本人が納得しているのに、なぜ無効になるのか」をグループで考える。使用者と働く人の交渉力の差に気付き、法が労働条件の最低基準を定めて働く人を守っていることを捉える。続けて、店の事情(人手不足・人件費)と働く高校生の事情(健康・学業・安全)を比べ、ルールが何と何のバランスをとっているかを話し合う。
主な発問:本人が納得して結んだ約束なのに、法がそれを認めないのはなぜだろうか。このルールは、誰のどんな利益と、誰のどんな利益のバランスをとっているのだろうか。
交渉力の差に気付きにくいグループには、「アルバイトを始めたい高校生が、店長に時給の交渉をする場面」を想像させる。ルールが店にとって負担だけではないこと(安心して働ける職場には人が集まりやすい等)にも触れ、一つの立場に偏らないようにする。○思:基本的な原理を用いて、複数の立場から考察しているか(ワークシート・行動観察)
まとめ
10分
端末を閉じ、本時の問いへの答えを、情報カードの根拠を一つ以上挙げて紙に書く(5〜6行)。数人が発表する。次時(労働問題と働く人の権利、専門家への質問づくり)の予告を聞く。
主な発問:本人が納得した約束でも無効になる場合があるのはなぜか。今日確かめた根拠を一つ以上使って説明しよう。
書く段階では端末を使わず、自分の言葉で書かせる。書き出せない生徒には「〜という原則があるが、〜なので、法は〜」という文型を示す。○思:原理と根拠を結び付けて自分の言葉で説明しているか(記述)

5 板書計画・準備物

板書
  • めあて:アルバイトの「ルール」を確かめ、なぜそのルールがあるのかを考えよう
  • 単元を貫く問い:高校生が安心して働き、将来の仕事を選べる社会にするには
  • 投稿ア〜エの真偽と根拠(確かめた情報源・更新日)
  • 情報を確かめる観点:誰が(発信者)・いつ(更新日)・何に基づいて(根拠)
  • 契約自由の原則 ⇔ 交渉力の差 → 法が最低基準を定めて働く人を守る(労働者保護)
  • 店の事情(人手不足・人件費)/働く高校生の事情(健康・学業・安全)のバランス
  • 本時の問い:本人が納得した約束でも無効になる場合があるのはなぜか
教材・準備物
  • SNS風の投稿カード4枚(自作):ア「バイトに有給休暇なんてないよ。正社員だけの話」/イ「休憩なしで6時間半働けば、その分早く帰れてラッキー」/ウ「高1だけど、夜11時までシフトに入れば稼げる」/エ「時給が最低賃金より低くても、自分がOKしたなら問題なし」
  • 情報カード(確かめた内容・表題・発信者・更新日の記入欄)
  • 参照先の例を示したリンク集(厚生労働省、都道府県労働局など公的機関のページ)
  • 教科書・資料集
  • 1人1台端末
  • ワークシート(真偽の表、原理を考える欄、立場別の利益の表、本時のまとめの記述欄)

6 授業後のふり返り

情報カードから、発信者や更新日を確かめずに検索結果の要約や個人のブログを根拠にした生徒がどの程度いたかを把握し、第4時の調べ学習の前に確かめ方を再確認する。まとめの記述で「法で決まっているから」で止まり、交渉力の差や働く人を守る理由まで書けていない生徒が多ければ、第4時の冒頭で労働基本権の学習と結び付けて扱い直す。アルバイトの経験がある生徒の具体的な話は、個人が特定されないよう配慮して第5時の構想に生かす。アルバイト先で困っていることを打ち明けた生徒がいた場合は、相談窓口を伝えるとともに、担任や関係の教職員と連携して対応する。

※ この指導案は、次期学習指導要領の告示前に、審議まとめ(2026年10月5日)の方向性をふまえて原田英語.comが作成した試案です。評価規準は現行の3観点で書いています。