この指導案の特色

中教審の審議まとめ(2026年10月5日)では、中学校の技術・家庭科の技術分野を適切な時数を確保したうえで「情報・技術科」とし、家庭科を独立した教科とすることが適当とされた。新教科は「情報技術」と「情報を基盤とした生産技術」の2領域で構成する方向である。本案は、その内容項目「プログラミングと自動化」(仮称)と「技術の統合」(仮称)の方向性、そしてAIが生成したプログラムも論理的・批判的に確かめて改善するというプログラミング的思考の捉え直しを先取りした試案である。次期学習指導要領はまだ告示前であり、本案は審議まとめの方向性をふまえた一つの例である。現行の「D情報の技術」(3)計測・制御のプログラミングを、学級で育てている植物の世話という生活の問題と結び付けて扱う(現行でも、第3学年で取り上げる内容ではこれまでの学習をふまえた統合的な問題を扱うこととされている)。
| 次期の方向性 | この指導案での具体化 |
|---|---|
| 技術分野は、適切な時数を確保したうえで「情報・技術科」とし、家庭科は独立した教科とすることが適当とされた。中学校の全面実施は令和13年度からを想定し、新教科・領域は中学校で令和11年度から段階的に先行実施する経過措置を講ずることが適当とされている(具体は今後検討) P74P79P262 | 先行実施の時期にもそのまま使えるよう、現行の内容(D(3))の題材で、新教科の内容項目の考え方(仕組みを知る→問題を解決する→技術を俯瞰する)に沿って単元を組み立てた。 |
| 「情報技術」領域は「情報の表現とデジタル化」「プログラミングと自動化」「情報基盤とシステム化」(いずれも仮称)の3項目で構成する案。「プログラミングと自動化」(仮称)の中学校の「統合的な理解」のイメージは、情報技術により情報処理の手順を自動化することが、人の判断や活動を支え、生活や社会の利便性を高めることを理解する(現時点のイメージ) P241P252資料(情技⑥)P130 | 「水やりを忘れる」という人の困りごとを、土の水分を計測して知らせる仕組みで支えることを単元の課題にする。最後に、水やりそのものを自動化して任せきりにしてよいか(正負の側面)を話し合う。 |
| 「プログラミング的思考」を、目的や課題を構想し、AIへの指示やプログラミングを通じて解決策を実現するとともに、生成・作成したものを論理的・批判的に評価・改善し、責任を持って活用するまでを含む考え方として捉え直す。AIが生成したコードには誤りが含まれる場合もあり、プログラミングの学習が不要になると捉えるのは適当でないとされている P249 | 本時に、教師が事前に生成AIに作らせて動作を確かめたプログラム例を示し、フローチャートと照らして動きを予想し、実機で試して意図と違う点を見つけて直す。生徒が生成AIを直接操作する場面は設けず、出力を確かめる力に焦点を当てる。 |
| 資料編の学習イメージ(第2学年の「プログラミングと自動化」)では、センサのどの値で動作を切り替えるか、閾値を分析したうえで試行錯誤しながら調整して組み立てることや、AIを補助的に用いて計測・制御システムのプログラムを制作することが例示されている 資料(情技㊲)P172 | 前時に計測した乾いた土と湿った土のセンサの値をもとに、班で閾値を決めてその理由を説明させる。資料編では第2学年のイメージだが、現行で第3学年に扱う本単元に取り入れた。 |
| 新しい内容項目「技術の統合」(仮称)では、両領域で学んだ知識・技能を相互に関連付け、課題解決の構想から具体化までを一体的に実践する。学習イメージには、育てている植物の水やり忘れという課題に対し、センサと通知のプログラムを組み合わせる例が示されている P252P253資料(情技㊲)P175 | 第2学年の生物育成の学習で育てた植物(または学級のプランター)を題材にし、単元の後半で装置を実際に取り付けて使ってもらい、記録と意見をもとに評価・改善する。 |
1 単元名・単元の目標
単元名:計測・制御のプログラミング ~育てている植物の「水やり忘れ」を知らせる装置をつくろう~(全8時間(本時は第4時))
単元の目標:【目標】①計測・制御システムの仕組みを理解し、安全・適切なプログラムの制作、動作の確認及びデバッグ等ができる。②植物の水やり忘れという生活の問題を見いだして課題を設定し、入出力されるデータの流れを元に計測・制御システムを構想して情報処理の手順を具体化するとともに、制作の過程や結果の評価、改善及び修正について考える。③よりよい生活の実現に向けて、課題の解決に主体的に取り組んだり、振り返って改善したりしようとする。
2 単元の評価規準
| 知識・技能 | 思考・判断・表現 | 主体的に学習に取り組む態度 |
|---|---|---|
| 計測・制御システムの仕組み(センサ、コンピュータ、出力装置の働きと、入出力されるデータの流れ)を理解しているとともに、安全・適切なプログラムの制作、動作の確認及びデバッグ等ができる技能を身に付けている。 | 植物の水やり忘れという問題を見いだして課題を設定し、入出力されるデータの流れを元に計測・制御システムを構想して情報処理の手順を具体化するとともに、制作の過程や結果の評価、改善及び修正について考えている。 | よりよい生活の実現に向けて、課題の解決に主体的に取り組んだり、自らの問題解決とその過程を振り返って改善・修正したりしようとしている。 |
評価規準は現行の3観点で書いた。審議まとめでは、単元を見通して総括的評価の場面を精選し、学習の途中で見取ってフィードバックする形成的評価を充実する方向が示されている(本体P63、本体P70)。そこで本試案では、本時を含む第1〜6時は指導に生かす評価(○)とし、記録に残す評価(◎)は第7時の評価・改善レポート(第8時に書き加える振り返り欄を含む)と第8時の動作テスト・確認問題に絞った(振り返り欄は態度の評価に使い、単元を通して見取った姿と合わせて判断する)。本時の「生成AIが作ったプログラムを確かめて直す」活動は、記録のための評価ではなく、確かめ方を身に付けるための形成的評価として扱う。評価規準は単元の目標をそのまま用いる方向(本体P69)、「学びに向かう力」は総合所見欄での個人内評価と「思考・判断・表現」への「◯」の付記を組み合わせる方向が示されている(本体P63〜P66)。現行制度で評価する「主体的に学習に取り組む態度」は、うまく動かないときに値を確かめて粘り強く修正する姿や、使った人の意見をもとに改善しようとする姿を中心に見取る。単元計画の◎は記録に残す評価、○は指導に生かす評価を表す。
3 単元の指導と評価の計画
| 時 | 主な学習活動 | 評価 |
|---|---|---|
| 1 | 身の回りの計測・制御システム(自動ドア、エアコン、街灯など)を調べ、センサ・コンピュータ・出力装置の役割と、入力→処理→出力のデータの流れを整理する。 | ○知:計測・制御システムの仕組みを理解しているか(ワークシート) |
| 2 | 教育用マイコンボードとセンサの使い方を知り、明るさや温度の値を表示する、値によってLEDの点灯を切り替える、などの簡単なプログラムを作る。順次・分岐・反復の構造を確かめる。 | ○知:安全・適切にプログラムを制作し、動作を確かめているか(行動観察) |
| 3 | 学級で育てている植物の水やり当番が忘れがちだという問題から、「土が乾いたことを知らせる装置」という課題を設定する。土壌水分センサで、乾いた土・少し湿った土・十分に湿った土の値を計測して記録する。装置の動きをフローチャートに表す。 | ○思:問題を見いだして課題を設定し、情報処理の手順を図に表しているか(フローチャート) |
| 4(本時) | 計測した値から閾値を決める。教師が示す「生成AIが作ったプログラム例」を、フローチャートと照らして読み、動きを予想し、実際に動かして意図と違う点を見つけて直す。自分たちのプログラムに閾値を反映する。 | ○思:データをもとに閾値を決め、プログラムを評価して修正を考えているか(ワークシート)/○知:動作の確認とデバッグをしているか(行動観察) |
| 5 | 知らせ方(LED・音・画面表示)や、何秒ごとに測るかなどを工夫して装置を完成させる。センサの取り付け方や、水がかからない置き方を考える。 | ○知:安全・適切にプログラムを制作しているか(行動観察) |
| 6 | 装置を植物に取り付けて動作を確かめ、記録の方法(知らせた回数、そのとき土は本当に乾いていたか)と、使った人に聞くことを決める。その後の数日間、休み時間などに記録を集める。 | ○思:評価の観点を決めて動作を確かめているか(記録表) |
| 7 | 集めた記録と、水やり当番など使った人の意見をもとに、閾値・センサの位置・知らせ方を評価し、改善・修正する。 | ◎思:制作の過程や結果を評価し、改善・修正について考えているか(評価・改善レポート) |
| 8 | 改善した装置の動作テストを行う。水やりそのものを自動化するとよいか、自動化の利点と、任せきりにすることの問題(故障・電池切れ・植物の様子を見る機会が減る など)を話し合い、これからの技術との関わり方をまとめる。単元を振り返る。 | ◎知:計測・制御システムの仕組みを理解し、動作の確認やデバッグができているか(動作テスト・確認問題)/◎態:振り返って改善しようとしているか(第7時の評価・改善レポートに第8時に書き加える振り返り欄。現行制度に基づく評価。次期の方向では長い期間を通して見取る) |
4 本時の展開(50分)
本時の目標:計測したデータをもとに閾値を決めて理由を説明するとともに、生成AIが作ったプログラム例をフローチャートと照らして確かめ、実際に動かして不具合を見つけて修正することができる。
| 過程・時間 | 学習活動 | 指導上の留意点・支援 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 導入 5分 | 前時に計測した土壌水分センサの値(乾いた土・少し湿った土・十分に湿った土)を班の記録表で確かめ、本時のめあてを知る。 主な発問:乾いた土と湿った土で、センサの値はどれくらいちがいましたか。 | 班ごとに値が少しずつちがうこと(センサを差し込む深さ、土の量など)にも気付かせる。 | |
| 展開 10分 | 班で閾値を決める。「この値をこえたら(または下回ったら)知らせる」という条件と、その値にした理由を、計測データをもとに書く。 主な発問:どの値を境にすれば、「水やりが必要」を正しく知らせられますか。値を高くしすぎたり低くしすぎたりすると、どうなりますか。 | 知らせすぎ(まだ湿っているのに知らせる)と知らせ忘れ(乾いているのに知らせない)の両方を考えさせる。センサの種類によって、乾くと値が大きくなるものと小さくなるものがあるので、自分たちのセンサの値の向きを確かめさせる。 | ○思:計測データをもとに閾値を決め、理由を説明しているか(ワークシート) |
| 展開 15分 | 教師が事前に生成AIに「土が乾いたらLEDで知らせるプログラム」を作らせた例を示す。班で、前時のフローチャートと照らして動きを予想し、実機で試して、意図と違う動きを見つけて直す。 主な発問:このプログラムは、フローチャートと同じ動きになっていますか。どこを確かめれば分かりますか。 | 教材にするプログラム例は、教師が事前に動かして確かめ、そのままでは意図どおりに動かない点(比較の向きが逆、閾値が自分たちのセンサに合っていない、測る間隔がなく表示がちらつく など)を含むものを選んでおく。生成AIの出力を正しいとも誤りとも決めつけず、「確かめてから使う」姿勢を大切にする。生徒が生成AIを直接操作する場面は設けない。 | ○知:動作を確かめ、不具合の原因を見つけて修正しているか(行動観察) |
| 展開 12分 | 自分たちの閾値を反映したプログラムを作り、乾いた土と湿った土を入れたカップで動作を確かめる。うまくいかない場合は、センサの値を画面に表示させて原因を探す。 主な発問:乾いた土と湿った土で、それぞれ意図どおりに動きましたか。うまくいかないとき、どの値を見れば原因が分かりますか。 | ボードは土のカップから離して置き、ぬれた手で触らないことを確認する。電源は電池ボックスか端末からのUSB給電に限る。 | |
| まとめ 8分 | 2班程度が、閾値の理由と修正した点を発表する。振り返りシートに「生成AIが作ったプログラムを使うときに確かめるべきこと」と、次時に工夫したいことを書く。 主な発問:生成AIが作ったプログラムを使うとき、何を確かめてから使えばよいですか。 | 確かめ方(フローチャートと照らす、センサの値を表示する、条件を変えて試す)を板書に整理し、次時以降も使えるようにする。 |
5 板書計画・準備物
- めあて:データから閾値を決め、プログラムを確かめて直そう
- 前時の計測値の表(乾いた土・少し湿った土・十分に湿った土)
- 閾値を決める視点:知らせすぎ/知らせ忘れ、センサの値の向き
- フローチャート:測る → 閾値と比べる → 知らせる/知らせない → くり返す
- 生成AIのプログラム例の確かめ方:フローチャートと照らす・値を表示する・条件を変えて試す
- 見つかった不具合と直し方(班の発表から)
- 安全:ボードと水を離す・ぬれた手で触らない
- 教育用マイコンボード(班に1台以上)と土壌水分センサ、接続用ケーブル
- 電池ボックスまたはUSB給電用のケーブル
- 乾いた土・湿った土を入れたカップ、トレー、雑巾
- 端末(ブロック型・テキスト型のプログラミング環境)
- 教師が事前に生成AIに作らせ、動作を確かめたプログラム例(印刷とデータ)
- 前時のフローチャートと計測値の記録表
- ワークシート・振り返りシート
6 授業後のふり返り
ワークシートと発表から、①計測データと閾値を結び付けて説明できたか、②プログラム例の不具合を、動かす前に読んで予想できたか、動かしてから気付いたか、③原因を探すときにセンサの値を表示するなどの方法を使えたか、を確かめる。読んで予想できなかった班には、次時の始めにフローチャートとプログラムを1行ずつ対応させる練習を短く入れる。生成AIの出力を確かめる活動は、他の内容項目でも繰り返し扱い、確かめ方を定着させる。プログラム例は、生成AIのサービスや版が変わると出力も変わるので、毎年教師が作り直して事前に確かめる。
※ この指導案は、次期学習指導要領の告示前に、審議まとめ(2026年10月5日)の方向性をふまえて原田英語.comが作成した試案です。評価規準は現行の3観点で書いています。