この指導案の特色

中教審の審議まとめ(2026年10月5日)で示された、中学校の「社会的な話題」を生徒が自分と関連付けて捉えられる「身近な社会的な話題」とする方向性と、発達の段階に応じた「AIの適切な活用」を学習指導要領に位置付ける方向性を先取りした試案である。次期学習指導要領はまだ告示前であり、本案は審議まとめの方向性をふまえた一つの例である。生成AIは自分の英文を見直すための道具として使い、出力を吟味させたうえで、最後は人間同士の意見交換につなげる。
| 次期の方向性 | この指導案での具体化 |
|---|---|
| 中学校の「社会的な話題」を「身近な社会的な話題」とし、生徒が自分と関連付けて捉えられるものを中心に扱う P283資料(外㉕)P25資料(外㉚)P30 | 資料編で例示されているスクリーンタイムを話題にし、生徒自身の1日の使い方の記録から出発する。中学生である自分たちにできる工夫を提案するという形で、自分ごととして意見を形成させる。 |
| 自分のことや日本のことに加え、自分の意見を言えるよう話題や活動を充実する P278P281資料(外㉕)P25 | 単元を通して「意見→理由→例」の型で意見を述べ、友達の意見を受け止めて質問したり、自分の考えを付け加えたり修正したりする場面を繰り返し設ける。 |
| 発達の段階に応じたAIの適切な活用(出力を鵜呑みにせず吟味する、人間同士のコミュニケーションの充実につなげる) P278P282P285 | 生成AIには英文を一から作らせるのではなく、自分で書いた下書きの別の言い方を示させ、「意味が同じか」「自分で説明できる表現か」「相手に伝わるか」の3観点で吟味して、採用するかどうかを理由とともに決める。吟味した表現は、その後のグループでの意見交換で使う。 |
| 家庭学習の課題を、単にAI翻訳を提出すれば済むものにしない P282 | 家庭学習は「授業で聞いた友達の意見を一つ選び、それに対する自分の考えを1分で話して録音する」とし、授業での具体的なやり取りに基づく課題にする。 |
| 身近な社会的な話題は即興のやり取り・発表の対象とせず、事実や考えを整理して伝え合う(内容のイメージ) 資料(外㊴)P39資料(外㊹)P44 | 本時の意見交換は、前時までに作った意見メモ(キーワード)を見ながら行う。原稿の読み上げにはせず、メモを手がかりに相手を見て話すよう指導する。 |
1 単元名・単元の目標
単元名:わたしたちとスクリーンタイム ~自分の意見を理由とともに伝え合おう~(全8時間(本時は第5時))
単元の目標:【コミュニケーションの目的・場面・状況】生徒会が企画する「スマホ・タブレットとのつきあい方」の学年への提案づくりに生かすために(目的)、中学生にとってよいスクリーンタイムの使い方について、クラスの仲間やALTと意見を交換する場面で(場面)、考えの異なる相手の意見を受け止めながら、準備したメモを基に伝え合う(状況)。【目標】①意見や理由を述べる表現(I think (that) ~. / because ~ / should / If ~, ~.)の意味や使い方を理解し、自分の意見と理由を話したり書いたりする技能を身に付ける。②よいスクリーンタイムの使い方について、読んだり聞いたりした情報や友達の考えを基に、自分の意見と理由を整理し、相手の考えを受け止めながら伝え合う。③スクリーンタイムという身近な社会的な話題に関心をもち、多様な考えに触れて自分の考えを広げたり深めたりしながら、相互理解を図ろうとする。
2 単元の評価規準
| 知識・技能 | 思考・判断・表現 | 主体的に学習に取り組む態度 |
|---|---|---|
| 【知識】I think (that) ~. / because ~ / should / If ~, ~. などの意見や理由を述べる表現の意味や使い方を理解している。【技能】よいスクリーンタイムの使い方について、これらの表現を用いて、自分の意見と理由を話したり書いたりする技能を身に付けている。 | 学年への提案づくりに生かすために、よいスクリーンタイムの使い方について、読んだり聞いたりした情報や友達の考えを基に、自分の意見と理由を整理し、相手の考えを受け止めながら伝え合っている。 | 学年への提案づくりに生かすために、よいスクリーンタイムの使い方について、読んだり聞いたりした情報や友達の考えを基に、自分の意見と理由を整理し、相手の考えを受け止めながら伝え合おうとしている。 |
審議まとめでは、各学校の単元の目標をそのまま評価規準とし、外国語では「内容」に示す5つの領域を「内容のまとまり」として国が評価規準例を示す方向が示されている(本体P69、本体P285)。本試案は、資料編の中学校の内容イメージにある「聞いたり読んだりしたことを基に、考えたことや感じたこと、その理由などを伝え合う」を手がかりに評価規準を作った(資料編P39(外㊴)、資料編P44(外㊹))。知識・技能と思考・判断・表現は、第8時の同じパフォーマンステストで見取る(同一のパフォーマンステストで評価することも引き続き可能とされる。資料編P40(外㊵))。「主体的に学習に取り組む態度」は現行制度でも評価する観点であるため置いた。一方、次期は「学びに向かう力」の3要素(初発の思考や行動、学びの主体的な調整、対話と協働)が思考・判断・表現の過程で継続的に表れた場合に「◯」を付記する方向であり、本単元の意見交換やAIの出力を吟味する場面は、長い期間の中での見取りの機会の一つになりうる(本体P64、本体P66)。生成AIの出力そのものは評価の対象としない。単元計画の◎は記録に残す評価、○は指導に生かす評価を表す。
3 単元の指導と評価の計画
| 時 | 主な学習活動 | 評価 |
|---|---|---|
| 1 | 単元のゴール(学年への提案づくりに意見を生かす)を知る。教師が作った「クラスのスクリーンタイム調べ」(架空の集計)についての話を聞き、分かったことを伝え合う。自分の1日の使い方を記録し、英語で短く伝え合う。 | ○知:【聞くこと】必要な情報を聞き取っているか(ワークシート) |
| 2 | 3人の中学生の意見文(自作)を読み、それぞれの意見と理由を捉えて表に整理する。どの意見に近いかを伝え合う。 | ○思:【読むこと】意見と理由を捉えているか(ワークシート) |
| 3 | 【支える活動】I think (that) ~. / because ~ / should / If ~, ~. の意味や使い方を、教師の例や意見文から確かめ、ペアで短い意見のやり取りに使う。似た働きをもつ既習表現(I agree. / I don't think so. / In my opinion, ~.)を整理する。 | ○知:表現の意味や使い方を理解しているか(ワークシート・行動観察) |
| 4 | 自分の意見メモ(意見・理由2つ・例)を作る(メモの段階では日本語のキーワードも可)。意見文の下書きを英語で書く。 | ○思:意見と理由を整理しているか(意見メモ) |
| 5(本時) | 生成AIで下書きの別の言い方を出させて吟味する。4人グループで意見を伝え合い、相手の考えを受け止めて質問したり、自分の考えを付け加えたりする。 | ○知・思:意見と理由を整理し、相手の考えを受け止めながら伝え合っているか(行動観察・吟味シート) |
| 6 | 前時に聞いた友達の意見をふまえて意見文を書き直す(どこをなぜ書き直したかも記す)。ペアで読み合い、分かりにくいところを質問し合う。 | ◎知・思:【書くこと】意見と理由を整理し、まとまりのある文章を書いているか(意見文) |
| 7 | ALTを交えた小グループで意見を交換し、学年への提案の材料を整理する。ALTが育った国や地域でのスクリーンタイムについての考え方を聞き、比べる。 | ○思:【話すこと[やり取り]】相手の考えを受け止めながら伝え合っているか(行動観察) |
| 8 | パフォーマンステスト:ALTまたは英語担当教員と1対1で、自分の意見と理由を伝え、相手からの質問や異なる意見に答える(1人3分程度。ALTと英語担当教員の2か所で並行しても30人規模で約45分かかるため、第8時と別の時間の2回に分けて行い、待っている生徒は振り返りと提案文に取り組む)。単元を振り返り、学年への提案を一文で書く。 | ◎知・思:【話すこと[やり取り]】意見と理由を伝え、相手の質問や意見に応じて伝え合っているか(パフォーマンステスト)/態(現行制度に基づきパフォーマンステストと振り返りで評価する。審議まとめで示された次期の方向では、思考・判断・表現の過程を長い期間で見取る) |
4 本時の展開(50分)
本時の目標:中学生のよいスクリーンタイムの使い方について、友達の考えを受け止めながら、自分の意見とその理由を整理して伝え合うことができる。また、生成AIが示した表現を吟味し、自分の伝えたいことに合うものを選ぶことができる。
| 過程・時間 | 学習活動 | 指導上の留意点・支援 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 導入 5分 | 挨拶をする。教師の Small Talk(昨夜のスクリーンタイムと、その結果どうなったか)を聞き、内容について簡単な質問に答える。 Last night, I watched videos on my phone for two hours. I went to bed late, and I was very sleepy this morning. What do you think? Should I stop using my phone before bed?昨夜、先生はスマホで動画を2時間見てしまいました。寝るのが遅くなって、今朝はとても眠かったです。どう思いますか。寝る前はスマホを使うのをやめた方がいいでしょうか。 | 身近な失敗談として話し、生徒が自分の経験と比べられるようにする。話の最後に問いかけ、本時の話題につなぐ。 | |
| 導入 5分 | 本時のめあてと流れを確かめる。前時に書いた意見文の下書きと意見メモを読み直し、自分の意見を一文で言えるかペアで確かめる。 Today, you will share your opinions in groups. First, read your draft again. Can you say your opinion in one sentence?今日はグループで意見を伝え合います。まず下書きを読み直そう。自分の意見を一文で言えるかな。 | 「今日は、友達の考えを聞いて自分の意見を広げたり深めたりする時間」であることを示す。下書きが途中の生徒には、意見と理由一つだけでよいと伝える。 | |
| 展開 12分 | 【支える活動】生成AIで表現を見直す。①下書きから「うまく言えなかった一文」を選ぶ。②学校で利用を認めている生成AIに、その一文の別の言い方を、中学生が習った英語の範囲で二つ示すよう頼む。③示された表現を「意味が自分の言いたいことと同じか」「自分で説明できる表現か」「相手に伝わるか」の3観点で吟味し、採用・一部採用・不採用を理由とともに吟味シートに書く。 Don't just copy. Check the AI's sentences. Is the meaning the same? Can you explain it? Will your friends understand it?そのまま写さないでね。AIの文を確かめよう。意味は同じかな。自分で説明できるかな。友達に伝わるかな。 | 生成AIは教師の監督下で使用する。事前に、名前や学校名などの個人情報を入力しないこと、出力には誤りや不自然な表現がありうることを確認する。教師が用意した不自然な出力の例を一つ全体で見て、吟味の仕方を示す。端末や生成AIが使えない学級では、教師が事前に用意した出力例を印刷して配る。AIの表現をそのまま写すのではなく、自分の言葉で言い直せるものだけを使うよう伝える。 | ○知:表現の意味や使い方を理解して選んでいるか(吟味シート) |
| 展開 18分 | 【コミュニケーション活動】4人グループで意見を伝え合う。①一人ずつメモを見ながら意見と理由を伝える(1人1分程度)。②聞き手は 'That's a good point.' などで受け止め、'Why do you think so?' 'Do you have an example?' などで質問する。③全員が話した後、自分と違う意見に対して、賛成・反対・付け加えを伝え合う。途中で一度止めて中間指導を行い、メンバーを一部入れ替えて②③を続ける。 Look at your group members, not your paper. When you disagree, first say 'I see your point.' Then give your idea.紙ではなく、グループの人を見て話そう。反対のときは、まず 'I see your point.' と言ってから自分の考えを言おう。 | 原稿を読み上げず、メモを見て顔を上げて話すよう声をかける。中間指導では、相手の意見を受け止めてから自分の考えを言った例('I see your point, but ~.')や、質問で相手の考えを引き出した例を取り上げて価値付ける。言いたいことが英語にならない生徒には、既習の表現で言い換える方法(例を挙げる、短い文に分ける)を示す。 | ○思:相手の考えを受け止めながら、意見と理由を整理して伝え合っているか(行動観察) |
| まとめ 10分 | グループで出た意見を「賛成・条件付き賛成・反対」に分けて付箋で黒板に貼り、学年への提案に使えそうな意見を全体で確かめる。振り返りシートに、①友達の意見を聞いて考えが変わったか・広がったか、②AIの表現を使った・使わなかった理由を書く。家庭学習の課題を確認する。 Did your ideas change after listening to your friends? Write about it. For homework, choose one friend's opinion and record your answer to it.友達の意見を聞いて、考えは変わったかな。振り返りに書こう。宿題は、友達の意見を一つ選んで、それに対する自分の考えを録音してきてください。 | 考えが変わらなかった場合も、その理由を書けばよいことを伝える。家庭学習は「今日聞いた友達の意見を一つ選び、それに対する自分の考えを1分で話して録音する」とし、単にAI翻訳を提出すれば済む課題にしない。 |
5 板書計画・準備物
- めあて:友達の考えを受け止めながら、スクリーンタイムについての意見と理由を伝え合おう
- 意見の型:I think (that) ~. / I have two reasons. First, ~. Second, ~. / For example, ~.
- 受け止める・質問する:That's a good point. / I see your point, but ~. / Why do you think so? / Do you have an example?
- AIの表現を吟味する3つの観点:①意味は同じ? ②自分で説明できる? ③相手に伝わる?
- 吟味の例:(下書き)Using phone long time is bad for eyes. →(AIの例)Using phones for a long time is bad for our eyes. / Long screen time can hurt our eyes. →「hurt の意味を確かめてから使う」
- 付箋の整理:賛成/条件付き賛成/反対
- ふり返りの視点:考えは変わった?広がった? AIの表現を使った理由・使わなかった理由
- 意見メモと意見文の下書き(前時までに作成したもの)
- 吟味シート(自分の一文・AIの例・3観点のチェック・採用するかどうかとその理由)
- 生成AIの不自然な出力の例(教師が事前に用意)と、端末が使えない場合の出力例プリント
- 学校で利用を認めている生成AI(教育委員会の方針と情報セキュリティポリシーに基づき、年齢制限などの利用規約を校長・担当教師が確認してリスクを許容できると判断し、規約上必要な場合は保護者の同意を得た、学校管理のサービス。入力内容を学習に使わない設定のものを選ぶ。教師の監督下で使用する)
- 付箋(3色)
- 振り返りシート
- 家庭学習用の録音アプリ(学校の端末に入っているもの)
6 授業後のふり返り
吟味シートを読み、AIの表現をそのまま使った生徒と、理由をもって選んだ・言い直した生徒の様子を把握する。そのまま使った生徒が多い場合は、次時の始めに「自分の言葉で言い直す」場面を設ける。意見交換で多く見られたつまずき(例:理由を一つしか言えない、例が出ない)を整理し、第6時の意見文の書き直しで、理由と例を加える指導につなげる。家庭学習の録音は全員分を聞くのではなく、数人分を抽出して次時の導入で紹介し、友達の意見に応答するよい例として共有する。付箋の意見は写真に撮り、第7時のALTを交えた意見交換と学年への提案づくりの資料にする。
※ この指導案は、次期学習指導要領の告示前に、審議まとめ(2026年10月5日)の方向性をふまえて原田英語.comが作成した試案です。評価規準は現行の3観点で書いています。