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指導案(試案)・中学校第2学年

傷害の防止 ~地域の交通事故データから、事故が起きる理由と防ぎ方を考えよう~

保健体育(保健分野)/全8時間(本時は第3時)/本時 50分

もくじ(7項目)
  1. この指導案の特色
  2. 1 単元名・単元の目標
  3. 2 単元の評価規準
  4. 3 単元の指導と評価の計画
  5. 4 本時の展開(50分)
  6. 5 板書計画・準備物
  7. 6 授業後のふり返り

この指導案の特色

傷害の防止 ~地域の交通事故データから、事故が起きる理由と防ぎ方を考えよう~

中教審の審議まとめ(2026年10月5日)で示された、保健の学習で健康・安全に関する「概念」と「それに関わる原則」を軸にし、地域の事故情報などのデータを活用した演習的な学習を通して理解を深めるという方向性を先取りした試案である。次期学習指導要領はまだ告示前であり、本案は審議まとめの方向性をふまえた一つの例である。現行の第2学年「傷害の防止」のうち交通事故の学習で、地域の事故データを共同の地図に整理し、「人の行動や環境が関わって事故が起きる」(概念)、「安全な行動と環境の改善によって防げる」(原則)を、自分たちの通学路にあてはめて考える。

次期の方向性この指導案での具体化
保健の見方・考え方(暫定版)を「保健に関する課題や情報を、健康や安全に関する概念やそれに関わる原則に着目して捉え、リスクの軽減や生活の質の向上、及び健康・安全を支える環境づくりにつなげること」とする方向。「概念」はどのような要素が関連して事象が発生しているか、「それに関わる原則」はどのような働きかけで望ましい結果を導けるかを表す P267資料(保体③)P191本時の板書を「なぜ起きる(概念)」と「どうすれば防げる(原則)」の二つの柱で構成し、データから見つけた事故の要因と防止策をそれぞれに整理する。
中学校では「個人生活を中心とした健康・安全に関する内容」を科学的に学ぶ系統に整理する方向。「けが・傷害の防止」の中学校の「統合的な理解」のイメージは「人の行動や生活環境は、傷害の発生に関連があり、個人生活における傷害の防止につながることを理解する」、「総合的な発揮」は「危険の予測や回避の方法を多面的に考え、自他の生活に適用する」(現時点のイメージ) P268資料(保体⑨)P197データから見つけた要因を、人の行動(人的要因)と環境(環境要因)に分けて整理する。授業の最後に、自分の通学路の危険の予測と回避の方法を書かせる。
より演習的な学習活動を通して、健康・安全に関する「概念」や「それに関わる原則」の理解を深める。演習的な学習活動として、生活習慣や地域の事故情報等のデータを活用することも考えられるとされている P271都道府県警察や自治体が公開している地域の交通事故のデータ(発生地点・時間帯・事故の種類など)を、学区周辺に絞って教師が整え、グループで読み取って分析する。
デジタル学習基盤の活用例として、保健「傷害の防止」で地域の事故が多い箇所をクラウド上で共同でプロットし、その情報を基に要因や事故を減らす方法等を整理してプレゼンテーションする例が示されている。留意点として個人情報等への適切な配慮が挙げられている 資料(保体㉔)P212学区の白地図をクラウド上で共有し、グループで事故の多い地点に印を付けて要因と防止策を書き添える。生徒の自宅の位置や、事故の当事者が分かる情報は扱わない。
健康・安全に関する学習では、外部機関や専門家等の人材に加え、地域資源の活用や、探究的な学習プロセスを取り入れることにもさらなる改善が期待されている P271第4時に、警察署や自治体の交通安全の担当者の話を(来校またはオンラインで)聞き、本時に考えた防止策について意見をもらう。

1 単元名・単元の目標

単元名:傷害の防止 ~地域の交通事故データから、事故が起きる理由と防ぎ方を考えよう~(全8時間(本時は第3時))

単元の目標:【目標】①交通事故や自然災害などによる傷害は人的要因や環境要因などが関わって発生すること、交通事故などによる傷害の多くは安全な行動、環境の改善によって防止できること、自然災害による傷害は二次災害によっても生じ、災害に備えておくことや安全に避難することによって防止できること、応急手当を適切に行うことによって傷害の悪化を防止できることを理解するとともに、心肺蘇生法などの応急手当ができるようにする。②傷害の防止について、危険の予測やその回避の方法を考え、それらを表現する。③傷害の防止について、自他の安全に関心をもち、課題の解決に向けた学習に自主的に取り組もうとする。

2 単元の評価規準

知識・技能思考・判断・表現主体的に学習に取り組む態度
交通事故や自然災害などによる傷害は人的要因や環境要因などが関わって発生すること、交通事故などによる傷害の多くは安全な行動、環境の改善によって防止できること、自然災害による傷害は二次災害によっても生じ、備えや安全な避難によって防止できること、応急手当を適切に行うことによって傷害の悪化を防止できることについて、理解している。心肺蘇生法などの応急手当ができる。傷害の防止について、危険の予測やその回避の方法を考え、それらを表現している。傷害の防止について、課題の解決に向けた学習に自主的に取り組もうとしている。
次期で評価はどうなる?

評価規準は現行の3観点で書いた。審議まとめでは、保健の授業は単なる知識の暗記ではなく、未知の課題にも対応できる持続的で柔軟な資質・能力の育成を目指していることをふまえ、「概念」と「それに関わる原則」に照らした資質・能力の評価をさらに充実させることが重要とされている(本体P274)。そこで本試案では、知識の評価を用語の再生ではなく、新しい場面(別の地点の事故データや場面の例)に概念と原則をあてはめて説明できるかで見る課題にした。また、単元を見通して総括的評価の場面を精選する方向(本体P63、本体P70)をふまえ、記録に残す評価(◎)は第7時の心肺蘇生法の実習、第8時のまとめの課題、態度の評価に使う第8時の振り返りシートに絞った(態度は、振り返りシートだけでなく単元を通して見取った姿と合わせて判断する)。国が「内容のまとまりごとの評価規準例」を示す方向も示されている(本体P69、本体P274)。「学びに向かう力」は、次期は総合所見欄での個人内評価と「思考・判断・表現」への「◯」の付記を組み合わせる方向である(本体P63〜P66)。単元計画の◎は記録に残す評価、○は指導に生かす評価を表す。

3 単元の指導と評価の計画

時主な学習活動評価
1けがや事故が起きた場面の例(教師が用意したもの)を見て、傷害は人的要因(行動や心身の状態)と環境要因(道路・天候・施設など)が関わって起きることを知る。単元の見通しをもつ。○知:傷害の発生要因を理解しているか(ワークシート)
2中学生の交通事故の特徴(どんな移動のときに多いか、時間帯など)を公的な統計資料から読み取る。自転車の安全な乗り方と、車両の特性(死角・内輪差・停止距離など)を知る。○知:交通事故の要因と車両の特性を理解しているか(ワークシート)
3(本時)地域の交通事故データをクラウド上の共同地図に整理し、事故が多い地点の要因を人的要因と環境要因に分けて考える。安全な行動と環境の改善の両面から防止策を考え、自分の通学路にあてはめる。○思:データから危険を予測し、回避の方法を考えて表現しているか(共同地図・ワークシート)
4警察署や自治体の交通安全の担当者の話を(来校またはオンラインで)聞き、前時の防止策について意見をもらう。環境の改善(標識・カーブミラー・道路の改良など)が地域でどのように行われているかを知る。○知:安全な行動と環境の改善によって事故を防止できることを理解しているか(ワークシート)
5自然災害による傷害(災害発生時と二次災害)と、日ごろの備え・安全な避難について、地域のハザードマップを使って考える。○思:地域の災害の危険を予測し、回避の方法を考えているか(ワークシート)
6応急手当の意義と基本(傷害の悪化の防止、周囲の安全の確認、119番通報)を知り、止血法・包帯法を実習する。○知:応急手当の手順を理解し、実習しているか(行動観察)
7心肺蘇生法(胸骨圧迫・AEDの使用)を、訓練用の人形とAED訓練機で実習する。◎知:心肺蘇生法などの応急手当ができるか(実習での技能の観察)
8単元のまとめとして、別の地点の事故データや場面の例(教師が用意)について、概念(なぜ起きるか)と原則(どう防ぐか)を使って説明する課題に取り組む。単元を振り返る。◎知・思:傷害の発生要因と防止の原則を理解し、新しい場面で危険の予測と回避の方法を考えて表現しているか(まとめの課題)/◎態:学習に自主的に取り組もうとしているか(振り返りシート。現行制度に基づく評価。次期の方向では長い期間を通して見取る)

4 本時の展開(50分)

本時の目標:地域の交通事故データから、事故が多い地点の要因を人的要因と環境要因に分けて考え、安全な行動と環境の改善の両面から防止の方法を考えて、自分の通学路にあてはめて表現することができる。

過程・時間学習活動指導上の留意点・支援評価
導入
5分
前時までに学んだ「交通事故は人的要因と環境要因が関わって起きる」を確かめ、本時の問いを知る。
主な発問:私たちの学区では、どこで、どんな交通事故が起きているでしょうか。それはなぜでしょうか。
自分や家族の体験を話す場合は、けがをした人が特定されないよう配慮することを最初に伝える。
展開
12分
グループで地域の交通事故データ(発生地点・時間帯・事故の種類・天候など)を分担して読み取り、クラウド上の学区の共同地図に、事故の多い地点の印を付ける。
主な発問:事故が集まっている場所はどこですか。時間帯や事故の種類に共通点はありますか。
データは都道府県警察や自治体が公開しているものを使い、学区周辺に絞って教師が事前に整えておく。地図には地点の印だけを付け、事故の当事者や生徒の自宅が分かる情報は書かない。操作に時間をかけすぎないよう、印の付け方を最初に示す。
展開
13分
事故が多い地点を一つ選び、教師が撮影した現地の写真(見通し・信号・歩道の幅など)とデータを合わせて、要因を「人の行動(人的要因)」と「環境(環境要因)」に分けて付箋に書き、整理する。
主な発問:この場所で事故が起きやすいのはなぜですか。人の行動の面と、環境の面の両方から考えましょう。
要因が人の不注意だけに偏りやすいので、「この交差点の見通しがよかったら?」など環境に目を向ける問い返しをする。自転車や歩行者の側だけでなく、自動車を運転する側からの見え方も考えさせる。○思:データや写真から、事故の要因を多面的に考えているか(行動観察・付箋)
展開
12分
防止策を「中学生ができる安全な行動」と「環境の改善(地域に提案できること)」に分けて考え、グループで一つにまとめて共同地図に書き添える。
主な発問:事故を防ぐために、自分たちにできる行動は何ですか。環境をどう変えれば防げますか。
「気を付ける」だけで終わらないよう、「いつ、どこで、何をするか」まで具体的に書かせる。環境の改善については、次時に交通安全の担当者に意見を聞くことを伝える。○思:安全な行動と環境の改善の両面から、防止の方法を考えているか(共同地図)
まとめ
8分
2グループが共同地図を使って発表する。各自、自分の通学路の中で危険だと思う場所を一つ挙げ、本時の「なぜ起きる(概念)」と「どうすれば防げる(原則)」を使って、危険の予測と回避の方法をワークシートに書く。
主な発問:あなたの通学路で危険を予測できる場所はどこですか。なぜ危険で、どう行動すれば防げますか。
自分の通学路の場所はワークシートに書くだけにして、共同地図には載せない(個人情報への配慮)。○思:自分の生活にあてはめて、危険の予測と回避の方法を表現しているか(ワークシート)

5 板書計画・準備物

板書
  • 問い:学区のどこで、どんな交通事故が起きている? それはなぜ?
  • なぜ起きる(概念):人の行動(人的要因)+ 環境(環境要因)
  • どうすれば防げる(原則):安全な行動 + 環境の改善
  • 共同地図の画面(事故の多い地点の印と書き添え)
  • グループで選んだ地点の要因の整理(付箋)
  • 防止策:中学生ができる行動/地域に提案できる環境の改善
  • 通学路へのあてはめ:危険を予測 → 回避の方法を考える
教材・準備物
  • 地域の交通事故データ(都道府県警察や自治体の公開データを、学区周辺に絞って整えたもの)
  • クラウド上の学区の白地図(グループで共同編集できるもの)
  • 現地の写真(教師が撮影したもの。人の顔や車のナンバーが写らないもの)
  • 付箋
  • 端末
  • ワークシート

6 授業後のふり返り

共同地図と付箋から、①要因を人の不注意だけで説明していたグループ、②防止策が「気を付ける」にとどまっていたグループを把握し、次時に交通安全の担当者の話を聞く前に、環境の改善の視点を確認する。通学路へのあてはめのワークシートは、学級担任とも共有し、特に危険が指摘された場所は学校の安全点検にも生かす(場所の情報は校内でのみ扱う)。共同地図は第8時のまとめの課題でも使い、概念と原則を新しい場面にあてはめられるかを確かめる。データの出典と時点は板書と地図に明記し、古いデータを使う場合はその旨を伝える。

※ この指導案は、次期学習指導要領の告示前に、審議まとめ(2026年10月5日)の方向性をふまえて原田英語.comが作成した試案です。評価規準は現行の3観点で書いています。