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指導案(試案)・中学校第1学年

身近な地域の歴史 ~地図と資料を見比べて、わたしたちの町の昔の姿を確かめよう~

社会(歴史的分野)/全6時間(本時は第3時)/本時 50分

もくじ(7項目)
  1. この指導案の特色
  2. 1 単元名・単元の目標
  3. 2 単元の評価規準
  4. 3 単元の指導と評価の計画
  5. 4 本時の展開(50分)
  6. 5 板書計画・準備物
  7. 6 授業後のふり返り

この指導案の特色

身近な地域の歴史 ~地図と資料を見比べて、わたしたちの町の昔の姿を確かめよう~

中教審の審議まとめ(2026年10月5日)で示された、中学校社会科に分野横断の単元を設け、地理的分野・歴史的分野の地域を題材とした学習活動(地域調査を含む)を地理・歴史の両面から一体的に扱うという方向性と、「社会的事象等について調べまとめる技能」に「情報の妥当性の確認」に関する技能を位置付けるという方向性を先取りした試案である。次期学習指導要領はまだ告示前であり、本案は審議まとめの方向性をふまえた一つの例である。現行の歴史的分野「身近な地域の歴史」を、新旧の地図の比較という地理的な視点も取り入れて組み立て、町について語られている話(言説)を複数の資料で確かめる活動を中心に置く。取り上げる時代や資料は、学校のある地域の特性に合わせて置きかえて使う。

次期の方向性この指導案での具体化
中学校社会科に地理・歴史・公民の各分野を結び付ける分野横断の単元A・B・C(いずれも仮称)を設ける方向。現行の地理的分野・歴史的分野にある地域を題材とした学習活動(地域調査を含む)は、分野横断の単元B「私たちと社会(仮称)」の中で地理・歴史の両面から一体的に扱うとされている P151P153P160資料(社⑦)P167現行の「身近な地域の歴史」の単元に、新旧の地図を見比べて道・集落・土地利用の変化を読み取る地理的な活動を組み込み、町の変化を歴史と地理の両方から説明させる。
「社会的事象等について調べまとめる技能」に、収集した情報の信ぴょう性等を確認する「情報の妥当性の確認」に関する技能を位置付ける(資料の表題・出典・年代・作者の確認、資料の作成目的や価値と限界の読み取り、まとめた情報の根拠の明示など)。小中学校では「確かな」情報に基づき「適切かつ」効果的に調べまとめる技能を身に付ける方向 P148P159資料(社⑫)P175本時で、地図・市町村史・説明板・観光紹介の記事の4つの資料を「だれが・いつ・何のために作ったか」「根拠が示されているか」で確かめるチェック表を使い、町についての話がどこまで確かめられるかを判断させる。
新たな見方・考え方(案)では、扱う対象を「社会的事象やその言説」とする(言説はあくまで思考の契機であり、事象との関連で扱う)。歴史では、時系列、推移、類似や差異、因果や現在とのつながりなどに着目して捉え、根拠に基づき公正に判断することとされている P149資料(社②-2)P147「この町は江戸時代に宿場町としてにぎわった」のような、地域で語られている話を本時の問いの出発点にする。話を覚えるのではなく、資料と照らしてどこまでが確かめられる事実かを判断させる。
地域人材や博物館・資料館・図書館などの学校外施設、デジタルコンテンツを効果的に活用する(実体験を伴う現地での学習の重要性は引き続き重視する) P160第4時に郷土資料館の学芸員や地域の方の話を(来校またはオンラインで)聞き、本時に「確かめられない」とした点を質問する。旧版地図は、公的機関が公開しているデジタル資料を使う。
社会科のAI活用は、最終的には児童生徒が自ら考え、判断し、成果物の内容を自らの言葉で説明し、自ら責任を持つという考え方を当面の基本とする。AIに頼って自らの思考を経ていない成果物が通用しないような評価の工夫として、口頭試問の要素を取り入れることなどが例示されている P159第6時の発表で、根拠にした資料について教師や友達からの質問に口頭で答える場面を設ける。検索サイトの要約などを参考にした場合は、その内容を必ず元の資料で確かめ、確かめた資料を出典として書かせる。

1 単元名・単元の目標

単元名:身近な地域の歴史 ~地図と資料を見比べて、わたしたちの町の昔の姿を確かめよう~(全6時間(本時は第3時))

単元の目標:【目標】①自らが生活する地域や受け継がれてきた伝統や文化への関心をもって、具体的な事柄との関わりの中で、地域の歴史について調べたり、収集した情報を年表や地図などにまとめたりするなどの技能を身に付ける。②比較や関連、時代的な背景や地域的な環境、歴史と私たちとのつながりなどに着目して、地域に残る文化財や諸資料を活用して、身近な地域の歴史的な特徴を多面的・多角的に考察し、表現する。③身近な地域の歴史について、よりよい社会の実現を視野にそこで見られる課題を主体的に追究しようとする。

2 単元の評価規準

知識・技能思考・判断・表現主体的に学習に取り組む態度
自らが生活する地域や受け継がれてきた伝統や文化への関心をもって、具体的な事柄との関わりの中で、地域の歴史について調べたり、収集した情報を年表や地図などにまとめたりしている。比較や関連、時代的な背景や地域的な環境、歴史と私たちとのつながりなどに着目して、地域に残る文化財や諸資料を活用して、身近な地域の歴史的な特徴を多面的・多角的に考察し、表現している。身近な地域の歴史について、よりよい社会の実現を視野にそこで見られる課題を主体的に追究しようとしている。
次期で評価はどうなる?

評価規準は現行の3観点で書いた。審議まとめでは、社会科のAI活用について、最終的な評価の段階でAIに頼って自らの思考を経ていない成果物が通用しないような評価の工夫が喫緊の課題とされ、口頭試問の要素を取り入れることなどが例示されている(本体P159)。また、単元を見通して総括的評価の場面を精選し、形成的評価を充実する方向が示されている(本体P63、本体P70)。そこで本試案では、第1〜5時を指導に生かす評価(○)とし、記録に残す評価(◎)は第6時の作品(地図と年表)と発表での質疑応答、態度の評価に使う第6時の振り返りシートに絞った(態度は、振り返りシートだけでなく単元を通して見取った姿と合わせて判断する)。評価規準は単元の目標をそのまま用いる方向(本体P69)、「学びに向かう力」は総合所見欄での個人内評価と「思考・判断・表現」への「◯」の付記を組み合わせる方向が示されている(本体P63〜P66)。現行制度で評価する「主体的に学習に取り組む態度」は、確かめられないことを聞き取りや別の資料でさらに調べようとする姿を中心に見取る。単元計画の◎は記録に残す評価、○は指導に生かす評価を表す。

3 単元の指導と評価の計画

時主な学習活動評価
1小学校で学んだ地域の様子(市の様子の移り変わりなど)を思い出す。現在の地図と明治時代の地形図(旧版地図)を見比べ、道・集落・田畑の広がりなどの変化を見つけ、「町はなぜこう変わったのか」「昔はどんな町だったのか」という問いを出し合う。○思:新旧の地図を比べて変化を読み取り、問いを立てているか(ワークシート)
2地域の寺社・石碑・道標・古い地名などの位置を地図に書き込み、古い道沿いに集まっていることなどを見いだす(地理的な視点)。それぞれがいつごろのものかを調べ、地域の出来事を簡単な年表に整理する。○知:調べた情報を地図や年表にまとめているか(地図・年表)
3(本時)「この町は江戸時代に宿場町としてにぎわった」という話(言説)について、旧版地図・市町村史・説明板・観光紹介の記事の4つの資料を比べ、どこまで確かめられるかを判断する。確かめられない点を、次時の聞き取りの質問にまとめる。○知・思:資料の出典や作成目的を確かめて読み取り、根拠をもって判断しているか(チェック表・ワークシート)
4郷土資料館の学芸員や地域の方の話を(来校またはオンラインで)聞き、前時の質問をたずねる。実物資料や写真から、人々の暮らしや受け継がれてきた行事・文化を知る。○思:聞き取りで得た情報を、前時の判断と結び付けているか(聞き取りメモ)
5グループで「町の昔の姿と変化」を地図と年表にまとめる。根拠にした資料の出典を必ず書き、確かめられたことと、まだ確かめられないことを区別して書く。○知:収集した情報を年表や地図にまとめ、出典を示しているか(作品)
6まとめを発表し、根拠にした資料について質問に答える。今の町の課題(例:古い町並みや文化財の保存、道路の安全)と地域の歴史とのつながりを考え、これからの各時代の学習や、地域の課題を考える学習への問いをもつ。◎知・思:地域の歴史的な特徴を、資料を根拠に多面的・多角的に考察し表現しているか(作品・発表と質疑)/◎態:地域の歴史について課題を追究しようとしているか(振り返りシート。現行制度に基づく評価。次期の方向では長い期間を通して見取る)

4 本時の展開(50分)

本時の目標:町について語られている話が確かかどうかを、複数の資料の出典や作成目的を確かめながら比べ、どこまで確かめられるかを根拠をもって判断し、説明することができる。

過程・時間学習活動指導上の留意点・支援評価
導入
5分
前時に作った地図(古い道沿いに寺社や石碑が集まっている)を振り返る。地域で語られている話「この町は江戸時代、宿場町としてにぎわった」を示し、本時の問いを確かめる。
主な発問:この話は本当でしょうか。どんな資料があれば確かめられますか。
話を否定するためではなく、「どこまで確かめられるか」を調べる学習であることを伝える。地域に応じて、城下町・港町・門前町・新田開発の村など、地域に合った話に置きかえる。
展開
15分
4人グループで資料A〜Dを分担し、「情報の確かめチェック表」を使って読む。A:明治時代の地形図(旧版地図)の写し、B:市町村史の該当部分の抜粋、C:古い道沿いにある説明板の写真、D:観光を紹介する記事(教師が作った架空の記事。根拠を示さずに「1日に千人の旅人が泊まった」などと書いてある)。
主な発問:この資料は、だれが、いつ、何のために作ったものですか。話を確かめる手がかりになることは何が書いてありますか。
チェック表の観点(表題・作者・年代・作成目的・根拠が示されているか・分かること/分からないこと)を示す。Dは教師が作った架空の記事であることを伝えたうえで使う。旧版地図の読み取りのために、地図記号の凡例を用意する。○知:資料の出典や作成目的を確かめて情報を読み取っているか(チェック表)
展開
15分
グループ内で読み取ったことを持ち寄り、話を「宿場があった」「にぎわった」「1日に千人が泊まった」などの部分に分ける。それぞれについて「確かめられた/一部確かめられた/確かめられない」を判断し、根拠とする資料を書く。
主な発問:4つの資料のうち、どれとどれが同じことを示していますか。一つの資料にしか書かれていないことは、確かと言えますか。
資料どうしを比べる視点(内容が一致しているか、話の時代に近い時期に作られたか、数字の出どころが書いてあるか)を示す。明治時代の地図が江戸時代の様子を直接示すものではないことに気付かせ、資料の価値と限界を考えさせる。○思:複数の資料を比べ、根拠をもって判断しているか(ワークシート)
展開
10分
各グループの判断を全体で共有し、判断が分かれた部分について理由を出し合う。確かめられない部分を、次時に郷土資料館の学芸員や地域の方にたずねる質問にまとめる。
主な発問:判断が分かれたのはどこですか。それを確かめるには、だれに何を聞けばよいでしょう。
「確かめられない」は「うそ」とは限らないことを押さえ、さらに確かめる方法(聞き取り、別の資料)を考えさせる。
まとめ
5分
振り返りシートに、資料を確かめるときに大切だと思ったことと、町の歴史について新たにもった問いを書く。
主な発問:今日の学習で、資料を見るときに気を付けたいと思ったことは何ですか。
ふだんインターネットで見る情報にも通じる気付きを取り上げて価値付ける。

5 板書計画・準備物

板書
  • 問い:「この町は江戸時代に宿場町としてにぎわった」は、どこまで確かめられるか
  • 話を分ける:宿場があった/にぎわった/1日に千人が泊まった
  • 資料A〜D:旧版地図(明治)/市町村史/説明板/観光紹介の記事(架空)
  • 確かめチェック:だれが・いつ・何のために作ったか/根拠が示されているか
  • 判断の表:確かめられた・一部確かめられた・確かめられない + 根拠の資料
  • 次時の聞き取りの質問
  • 気付き:一つの資料だけで決めない/作られた時期と目的を見る
教材・準備物
  • 現在の地図と明治時代の地形図(旧版地図)の写し(公的機関が公開しているもの)
  • 市町村史の該当部分の抜粋
  • 説明板の写真(教師が撮影したもの)
  • 観光を紹介する架空の記事(教師が作成)
  • 情報の確かめチェック表、判断のワークシート
  • 端末(地図を拡大して見る用)
  • 振り返りシート

6 授業後のふり返り

チェック表とワークシートから、①資料の作成時期や目的を確かめずに内容だけを読み取った生徒、②一つの資料だけで「確かめられた」と判断した生徒、③明治時代の地図を江戸時代の様子としてそのまま読んだ生徒を把握し、次時の聞き取りの前に短く確認する。判断が分かれた点は、聞き取りの質問として生かし、学芸員などの話を聞いた後に判断が変わったかを確かめる。本時で使った確かめの観点は、これからの各時代の学習で史料を読むときにも繰り返し使い、定着を図る。取り上げた地域の話や資料は、次年度以降も使えるよう学校内で記録して引き継ぐ。

※ この指導案は、次期学習指導要領の告示前に、審議まとめ(2026年10月5日)の方向性をふまえて原田英語.comが作成した試案です。評価規準は現行の3観点で書いています。