この指導案の特色

中教審の審議まとめ(2026年10月5日)で示された「中1の初期段階では小学校の指導と関連させ、音声を中心とした活動を重視する」「3年間を通して発音と綴りとを関連付けて丁寧に指導する」という方向性を先取りした、4〜5月向けの試案である。次期学習指導要領はまだ告示前であり、本案は審議まとめの方向性をふまえた一つの例である。小学校で慣れ親しんだ表現を、新しい仲間との共通点を探すという目的のある場面で繰り返し使いながら、語の音と綴りの結び付きに気付かせ、語順を意識して書く入口をつくる。
| 次期の方向性 | この指導案での具体化 |
|---|---|
| 中1の初期段階は、小学校の指導と関連させて音声を中心とした活動を重視し、小学校で扱った話題や語句・表現を繰り返し扱う P281資料(外⑲)P19資料(外⑳)P20 | 好きなもの・できること・誕生日など小学校で扱った話題を単元の題材にし、'What ~ do you like?' など小学校で慣れ親しんだ表現を、新しい仲間とのやり取りで繰り返し使う。 |
| 3年間を通して、発音と綴りとを関連付けて丁寧に指導する P281資料(外⑲)P19資料(外㉑)P21 | 本時の支える活動で、生徒が好きなものを表す語を使い、最初の音と文字、2文字で一つの音を表す綴り(sh・ch など)に気付かせる。単元を通して毎時間5分程度続ける。 |
| 小学校では書き写す・例を参照して書くまでにとどめていることをふまえ、文構造(語順)を意識しながら書くよう丁寧に指導する 資料(外⑲)P19資料(外㉑)P21 | やり取りの後に、見つけた共通点を例を参考に1文で書く。「だれが→どうする→なにを」の順を、小学校で使われていた色分けと同じ形で確かめる。 |
| 中学校の教師が小学校での指導方法・内容を把握する(小中接続の課題への対応) P277資料(外⑱)P18 | 単元の前に、近隣の小学校で扱っている話題や表現を確認し、生徒にも「小学校でどんな英語を使ったか」を尋ねてから、題材と表現を選ぶ。 |
| 授業を生徒の理解に応じた英語で行うことを堅持しつつ、教師の補助的な日本語使用についての考え方を示す P284 | 指示や Small Talk は既習の英語でゆっくり行い、ジェスチャーや絵で支える。音と綴りの気付きを言葉にする場面など、理解を確かめたい場面に限って短く日本語を補う。 |
1 単元名・単元の目標
単元名:Hello, New Friends! ~小学校で使った英語で、新しい仲間と知り合おう~(全6時間(本時は第3時))
単元の目標:【コミュニケーションの目的・場面・状況】いろいろな小学校から集まった新しい仲間やALTと知り合い、互いの共通点を見つけるために(目的)、好きなものやできることを尋ね合う場面で(場面)、まだよく知らない相手と、相手の答えに反応しながら会話を続ける(状況)。【目標】①小学校で慣れ親しんだ自分のことを伝える表現の意味や使い方と、語の発音と綴りの関係を理解し、尋ねたり答えたり、語順を意識して書いたりする技能を身に付ける。②新しい仲間との共通点を見つけるために、好きなものやできることについて、尋ねたり答えたりして伝え合う。③新しい仲間とのやり取りに関心をもち、相手の答えに反応しながら、互いを理解しようとする。
2 単元の評価規準
| 知識・技能 | 思考・判断・表現 | 主体的に学習に取り組む態度 |
|---|---|---|
| 【知識】'What ~ do you like?' 'I like ~.' 'Can you ~?' など小学校で慣れ親しんだ表現の意味や使い方と、語の発音と綴りの関係(最初の音と文字、sh・ch など)を理解している。【技能】好きなものやできることについて、これらの表現を用いて尋ねたり答えたり、語順を意識して文を書いたりする技能を身に付けている。 | 新しい仲間との共通点を見つけるために、好きなものやできることについて、相手の答えに反応したり質問を加えたりしながら伝え合っている。 | 新しい仲間との共通点を見つけるために、好きなものやできることについて、相手の答えに反応したり質問を加えたりしながら伝え合おうとしている。 |
入学直後は小学校での学習経験の差が大きいため、本試案では第1〜5時を指導に生かす評価(○)とし、記録に残す評価(◎)は第6時のALTとのやり取りに絞った。これは、審議まとめが毎時間の記録に追われる評価を見直して総括的評価の場面を精選し、学習途中で差分を見取ってフィードバックする形成的評価を充実する方向を示していることをふまえたものである(本体P63、本体P70)。次期は、単元の目標をそのまま評価規準とし、国が示す5つの領域ごとの評価規準例を参照する方向である(本体P69、本体P285)。「主体的に学習に取り組む態度」は現行制度でも評価する観点であるため置いた。一方、次期は「学びに向かう力」を思考・判断・表現の過程で長い期間を通して見取り、「◯」を付記する方向であり、その着眼点となる「見取る姿」は小中学校について令和10年度末までに周知するとされている(本体P64〜P66)。単元計画の◎は記録に残す評価、○は指導に生かす評価を表す。
3 単元の指導と評価の計画
| 時 | 主な学習活動 | 評価 |
|---|---|---|
| 1 | 教師とALTの自己紹介を聞き、名前・好きなもの・できることを聞き取る。小学校でどんな英語を使ったかを振り返り、'Nice to meet you.' から始まる短い自己紹介を新しい仲間と何度も交わす。アルファベットの大文字・小文字を、読み方とともに確かめる。 | ○知・思:小学校で慣れ親しんだ表現をどの程度使えるか(行動観察・アンケート。指導の出発点をつかむ) |
| 2 | 誕生日を尋ね合い、誕生日順に並ぶ活動をする。月の名前の音と綴りを結び付ける(Ju で始まる二つの月など)。 | ○知:月の名前を聞いて分かり、尋ねたり答えたりしているか(行動観察) |
| 3(本時) | 好きなもの(食べ物・スポーツ・教科など)を尋ね合い、共通点を見つける。語の最初の音と文字、sh・ch の綴りに気付く。見つけた共通点を1文で書く。 | ○知・思:表現を使って尋ね合い、反応しながら会話を続けているか(行動観察)/書いた1文の語順(ワークシート) |
| 4 | 'Can you ~?' 'I can ~.' でできることを尋ね合い、クラスの「できることマップ」を作る。小学校で使われていた色分けの語句カードで語順を確かめ、自分のできることを例を参考に書く。 | ○知:語順を意識して書いているか(ワークシート) |
| 5 | ALTに自分を紹介するための内容を考え、名前・好きなもの・できることなどを3〜4文で整理する。ペアで伝え合い、相手からの質問を受けて内容を付け加える。自己紹介カードを書く。 | ○思:相手に伝わるよう内容を整理しているか(ワークシート・行動観察) |
| 6 | ALTまたは英語担当教員と1対1で自己紹介し、相手からの質問に答えたり、相手に質問したりする(1人2分程度。ALTと英語担当教員の2か所で並行して行い、30人規模で約30分。人数が多い場合や1か所でしか行えない場合は、2時間に分けて行う)。待っている間は自己紹介カードを読み合い、共通点のある仲間を探す。単元を振り返る。 | ◎知・思:【話すこと[やり取り]】好きなものやできることについて、尋ねたり答えたりして伝え合っているか(パフォーマンステスト)/態(現行制度に基づきパフォーマンステストと振り返りで評価する。審議まとめで示された次期の方向では長い期間で見取る) |
4 本時の展開(50分)
本時の目標:新しい仲間との共通点を見つけるために、小学校で慣れ親しんだ表現を使って、好きなものを尋ねたり答えたりしながら伝え合うことができる。また、好きなものを表す語の発音と綴りの関係に気付くことができる。
| 過程・時間 | 学習活動 | 指導上の留意点・支援 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 導入 5分 | 挨拶をする。前時の誕生日の活動を思い出しながら、教師の問いかけ('When is your birthday?' など)に何人かが答える。ペアで1往復ずつ尋ね合う。 Good morning, everyone! How are you today? ... When is your birthday? ... Oh, my birthday is in July, too!みなさん、おはようございます。今日の調子はどうですか。…誕生日はいつですか。…へえ、先生の誕生日も7月ですよ。 | 前時に使った表現を全員がもう一度声に出せるよう、ペアでの短いやり取りの時間を取る。 | |
| 導入 7分 | 教師の Small Talk(好きな食べ物について)を聞いて、内容についての質問に答える。何人かが教師から 'What food do you like?' と尋ねられて答える。本時のめあてを確かめる。 I like ramen very much. I eat ramen every Sunday. My favorite is miso ramen. What food do you like? ... Oh, you like curry. Me, too!先生はラーメンが大好きです。毎週日曜日にラーメンを食べます。お気に入りはみそラーメンです。みなさんは何の食べ物が好きですか。…カレーが好きなんだね。先生もだよ。 | 絵や写真を見せながら、小学校で慣れ親しんだ表現だけで話す。生徒の答えには 'Me, too!' 'Really?' などで反応して見せ、反応の言葉をこの後の活動で使えるように板書する。 | |
| 展開 8分 | 【支える活動】「音と文字のたんてい」をする。①教師が好きなものを表す語(tennis、pizza、music など)を言い、生徒は最初の文字をミニホワイトボードに書く。②fish・English の最後の音、cheese・chocolate の最初の音を聞いて、それぞれ同じ音を探し、その音が2文字(sh・ch)で書かれることに気付く。③自分の好きなものを表す語をワードリストから探し、声に出しながら書き写す。 Listen. Tennis, tennis. What's the first letter? ... Now listen: fish, English. What sound do you hear at the end?聞いてね。tennis、tennis。最初の文字は何かな。…次はこれ。fish、English。最後に聞こえる音は何かな。 | 答えを確かめるときは、文字を示す前にもう一度音を聞かせる。sh・ch の気付きを言葉にする場面では、日本語で短く補ってよい。綴りを覚えさせることが目的ではなく、音と文字の関係に気付かせることを大切にする。 | ○知:語の音を聞いて、最初の文字が分かっているか(ミニホワイトボード) |
| 展開 5分 | 教師とALT(または教師と生徒)のモデル会話を聞き、反応の言葉('Me, too!' 'Really?' 'Great!')と、'How about you?' で相手に聞き返す流れを確かめる。 A: What sport do you like? / B: I like basketball. How about you? / A: Me, too! I like basketball. / B: Great!A:何のスポーツが好きですか。/B:バスケットボールが好きです。あなたは?/A:私もです。バスケットボールが好きです。/B:いいね。 | モデルを2回見せ、1回目は内容(何が共通していたか)、2回目は「会話を続けるために使っていた言葉」に注目させる。 | |
| 展開 13分 | 【コミュニケーション活動】「Find Your Match」をする。食べ物・スポーツ・教科・動物などから話題を選び、4人の仲間と好きなものを尋ね合う。共通点が見つかったら、ワークシートに名前と共通点をメモする。途中で一度活動を止め、うまく続いたやり取りを全体で紹介してから、相手を替えて続ける。 Talk with four new friends. Find your match! If your answers are different, that's OK. Keep talking!新しい仲間4人と話そう。共通点を見つけよう。答えが違っても大丈夫。会話を続けよう。 | 初めて話す相手を選ぶよう声をかける。中間指導では、答えが違ったときにも 'Oh, I see.' と受け止めてから 'Do you like ~?' で別のものを尋ねるなど、会話を続けた例を取り上げる。英語がなかなか出ない生徒には、ワークシートの表現例を指さしながら一緒に言う。 | ○思:相手の答えに反応したり聞き返したりしながら、伝え合っているか(行動観察) |
| 展開 7分 | 見つけた共通点を、例を参考に1文で書く(例:'Kenta and I like basketball.')。書いた文を、語句の色分け(だれが・どうする・なにを)で確かめる。 Write one sentence about your match. Who likes what? Check the word order.見つけた共通点を1文で書こう。だれが何を好きか。語の順番を確かめよう。 | 小学校で語順に気付く学習をしてきたことをふまえ、「だれが→どうする→なにを」の順を、小学校と同じ色分けで示す。綴りはワードリストを見て書いてよいこととし、語と語の区切りにも注意させる。 | ○知:語順を意識して書いているか(ワークシート) |
| まとめ 5分 | 書いた文を何人かが発表する。振り返りシートに、使えた表現、音と綴りで気付いたこと、次に話してみたい仲間を書く。 Who found a match? Please tell us. ... Wonderful! Next time, let's talk about things we can do.共通点を見つけた人、教えてください。…すばらしい。次回は『できること』について話しましょう。 | 英語で伝わったうれしさや、会話を続けるために工夫したことを具体的に書くよう促す。次時は「できること」について尋ね合うことを予告する。 |
5 板書計画・準備物
- めあて:新しい仲間と好きなものを尋ね合い、共通点を見つけよう
- Small Talk の絵(ramen/miso ramen/every Sunday)
- 尋ねる・答える:What food / sport / subject do you like? / I like ~. / How about you?
- 反応の言葉:Me, too! / Really? / Great! / Oh, I see.
- 音と文字:t → tennis / sh → fish, English(最後の音) / ch → cheese, chocolate(最初の音)
- 語順の色分け:Kenta and I(だれが)like(どうする)basketball(なにを).
- ふり返りの視点:伝わったこと・続けるための工夫・音と綴りの気付き
- ミニホワイトボード(または端末の手書きアプリ)
- 好きなものを表す語のワードリスト(絵付き。小学校で扱った語を中心にする)
- Find Your Match ワークシート(話題の選択肢・表現例・メモ欄・1文を書く四線欄)
- 語順確認用の色分け語句カード(近隣の小学校で使われている色にそろえる)
- Small Talk 用の写真(教師の好きな食べ物など)
- 振り返りシート
6 授業後のふり返り
ミニホワイトボードと振り返りから、音と綴りの関係でつまずいた語(例:c と k、sh と s の区別)を記録し、次時以降の始めの5分で繰り返し扱う。ワークシートの1文は回収し、語順や語と語の区切りで気になる点に短いコメントを付けて返す(この段階では記録に残す評価にはしない)。小学校で慣れ親しんでいた表現と、まだ使えなかった表現を整理して学年で共有し、出身小学校との情報交換にも生かす。次時は 'Can you ~?' で「できること」を尋ね合い、本時の反応の言葉を引き続き使えるようにする。
※ この指導案は、次期学習指導要領の告示前に、審議まとめ(2026年10月5日)の方向性をふまえて原田英語.comが作成した試案です。評価規準は現行の3観点で書いています。