次期学習指導要領とのつながり

科学ガイダンス(研究倫理・検証の方法)自然や社会の事象・言説批判的に考察
審議まとめは、中・高に新設する「科学ガイダンス」で、科学とは何か、検証の方法、研究倫理などを学ぶとし、高校では各「○○基礎」に位置付け、最初に学ぶ基礎科目の冒頭である程度まとめて扱い、関連する内容は各単元でも往還的に指導する方向を示しています(P187)。資料編(理⑬-1)でも、研究倫理の例として、都合のよいデータだけを選び不都合なデータを恣意的に除く行為などがあげられています。また見方・考え方では、「自然や社会の事象・言説」を観察・実験の結果などに基づいて客観的、論理的、批判的に考察するとしています(P184・P185)。この授業は、落体の運動の単元の中で、科学ガイダンスの研究倫理と検証の方法をもう一度扱う時間です。 P184P185P187
ねらい
落下時間の測定データを全数で整理・比較し、一部のデータだけを選ぶと誤った結論になることを示したうえで、質量と落下時間の関係について根拠をもって結論を述べることができる。
準備するもの
- 大きさが同じで質量のちがう2つの球(例:ゴム球と金属球)と、1.0mの高さの目印
- 端末のスロー動画撮影機能(あれば光電門タイマー)
- 架空の「ある生徒のレポート」(先生作成):重い球と軽い球を各8回落とした結果のうち、重い球は速い3回(0.43・0.44・0.45秒)、軽い球は遅い3回(0.48・0.47・0.46秒)だけを使って「重い球の方が速く落ちる」と結論づけたもの
- 全データの表(重い球:0.45、0.47、0.44、0.46、0.43、0.48、0.45、0.46秒/軽い球:0.46、0.44、0.47、0.45、0.48、0.44、0.46、0.45秒)
手順
- 「大きさが同じで重さのちがう球を同時に落とすと、どちらが先に着く?」と予想させます。続けて架空のレポートを配り、「この結論を信じていい?」と問います。5分
- 班で、2つの球を1.0mの高さから各3回ずつ落とし、スロー動画で落下時間を測って表に記録します(光電門タイマーがあれば使います)。12分
- 全データの表を配り、レポートが使った6回と使わなかった10回を色分けします。全データでそれぞれの平均を求め(重い球およそ0.455秒、軽い球およそ0.456秒)、あわせて最小値と最大値(範囲:重い球0.43〜0.48秒、軽い球0.44〜0.48秒)を書き出し、全測定値を数直線上に点で打って、2つの球の値がどのくらい重なっているかを見ます。そのうえでレポートの結論と比べます。12分
- 班で、データを選んで使うことがなぜ問題か、どんな場合ならデータを除いてよいか(例:測定ミスの理由がその場で記録されている場合)を話し合い、「除くなら理由を記録し、除いたことも報告する」などのきまりをまとめます。10分
- 自分たちの測定結果と全データをもとに、質量と落下時間の関係について結論を書きます。空気の抵抗の影響が小さい条件で実験したことも考察に入れます。6分
- 振り返りとして、「科学の結論を信頼できるものにするために、自分が実験で守りたいこと」を書きます。5分
評価(見取り)のポイント
【思考・判断・表現】全データを根拠に結論を述べ、データを選ぶと結論がゆがむことを説明しているかを考察で見取ります。【知識・技能】測定を繰り返し、平均とばらつき(最小値・最大値の範囲や数直線上の点の重なり)を使って結果を整理しているかを見ます。【主体的に学習に取り組む態度】データの扱い方のきまりを自分たちの実験に生かそうとしているかを、振り返りで見ます。
うまくいくコツ・アレンジ
- レポートが架空であることをはっきり伝え、特定の生徒の失敗に見えないようにします。
- 「データを消してはいけない」だけでなく、「理由を記録すれば除くこともある」という実際の科学の手続きにも触れます。
- 基礎科目の冒頭で扱った科学ガイダンスの内容(研究倫理)を1枚の掲示で振り返ってから始めると、つながりが見えます。
アレンジ
- 化学基礎の中和滴定など、繰り返し測定する実験でも「全データ」と「選んだデータ」を比べる活動を行います。
- 生物基礎では、ある学説が新しい証拠によって見直された例を取り上げ、科学の知識が更新されうることを考えます。
ほかのアイデア
※ 次期学習指導要領は告示前です。審議まとめ(2026年10月5日)の方向性をふまえた原田英語.comのオリジナルのアイデアです。