The Acorns and the Wildcat(どんぐりと山猫)の挿絵

The Acorns and the Wildcat

どんぐりと山猫

  • 📖 640 words
  • ⏱ 約8分
  • 🔊 4:03
  • YL 1.0–1.4
  • 英検3級目安
  • 📝 全訳つき

あらすじある土曜日の夕方、一郎の家にへんなはがきが届きました。「めんどなさいばんしますから、おいでんなさい。山ねこ」――次の朝、一郎は山へ出かけます。

宮沢賢治『どんぐりと山猫』(1924年)をもとに再話

キーワード(9語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • postcardはがき
  • trial裁判
  • chestnutクリ
  • carriage馬車
  • whipむち
  • acornsどんぐり
  • pointedとがった
  • honorary judge名誉判事
  • court裁判所・法廷
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Google Cloud TTS(Chirp 3 HD・アメリカ英語・Zephyr)

One Saturday evening, a strange postcard came to Ichiro's house. The writing was very bad, and the ink was thick and sticky. It said:

ある土曜日の夕方、一郎の家に、へんなはがきが届きました。字はひどくへたで、墨はこってりと濃く、べたべたしていました。はがきには、こう書いてありました。

"Dear Mr. Kaneta Ichiro, I hope you are well. Tomorrow I will have a difficult trial. Please come. Please do not bring any guns. From the Wildcat."

「かねた一郎さま。お元気でけっこうです。あしたは、めんどうなさいばんをしますから、おいでください。鉄砲はもってこないでください。山ねこより」

Ichiro was so happy that he could not sleep that night. The next morning, he got up early and walked into the mountains by himself.

一郎はうれしくてうれしくて、その晩は眠れませんでした。次の朝、一郎は早起きして、ひとりで山の中へ歩いていきました。

First, he met a chestnut tree. "Chestnut tree, did the wildcat pass this way?" he asked. "Yes," said the tree. "He went east in his carriage early this morning."

まず、一郎はクリの木に出会いました。「クリの木さん、山ねこがここを通らなかったかい?」と、一郎はたずねました。「ああ、通ったよ」と、木は答えました。「けさ早く、馬車で東のほうへ行ったよ」

Next, he met a waterfall. "Waterfall, did the wildcat pass this way?" "Yes, he went west in his carriage," said the waterfall. Then he asked some mushrooms and a squirrel. Each of them told him a different way. Ichiro just kept walking.

次に、一郎は滝に出会いました。「滝さん、山ねこがここを通らなかったかい?」「ああ、馬車で西のほうへ行ったよ」と、滝は答えました。それから一郎は、キノコたちとリスにもたずねました。みんな、それぞれちがう方角を教えてくれました。一郎はただ、どんどん歩いていきました。

At last, he came to a beautiful golden field of grass. In the middle of it stood a strange little man. He had only one eye, and his legs were bent like a goat's. He held a whip in his hand.

とうとう一郎は、美しい黄金色の草原に出ました。そのまん中に、へんな小さな男が立っていました。男は片目しかなく、足はヤギのように曲がっていました。手には、むちを持っていました。

"I am the wildcat's carriage driver," said the man. "Did you get the postcard?" "Yes, I did," said Ichiro. "How was the writing?" the man asked shyly. Ichiro thought for a moment and said, "It was very good writing." The man was so happy that his face turned red to his ears. "I wrote it!" he said proudly.

「わたしは山ねこさまの馬車別当です」と、男は言いました。「はがきは届きましたか?」「うん、届いたよ」と、一郎は答えました。「字はどうでしたか?」と、男ははずかしそうにたずねました。一郎は少し考えてから、「とても上手な字だったよ」と言いました。男はうれしくて、耳までまっ赤になりました。「あれを書いたのは、わたしなんです!」と、男は得意そうに言いました。

Just then, the wind blew, and the wildcat appeared. He was wearing a yellow jacket, and his eyes were round and green. "Thank you for coming," he said politely. "There has been a terrible argument for three days, and I don't know what to do."

ちょうどそのとき、風がどうっと吹いて、山ねこがあらわれました。黄色い陣羽織を着て、目はまんまるで緑色でした。「よく来てくださいました」と、山ねこはていねいに言いました。「この三日間、ひどい言い争いが続いていて、どうしたらいいかわからないのです」

Suddenly, Ichiro heard many small voices. He looked down. There were hundreds of acorns in the grass, all wearing little red trousers. They were all shouting at the same time.

とつぜん、一郎の耳に、たくさんの小さな声が聞こえてきました。下を見ると、草の中に何百ものどんぐりがいて、みんな小さな赤いズボンをはいていました。どんぐりたちは、みんないっせいにさけんでいたのです。

"The one with the most pointed head is the greatest! I am the most pointed!" "No, the roundest one is the greatest! I am the roundest!" "The biggest one is the greatest!" "No, the tallest!" "No, the strongest!"

「頭のいちばんとがっているのがえらいんだ! ぼくがいちばんとがっている!」「いいや、いちばん丸いのがえらいんだ! ぼくがいちばん丸い!」「いちばん大きいのがえらいんだ!」「ちがう、いちばん背の高いのだ!」「ちがう、いちばん強いのだ!」

"Quiet! Quiet!" said the wildcat. But the acorns did not stop. The wildcat whispered to Ichiro, "You see? It is always like this. What should I do?"

「静かに! 静かに!」と、山ねこは言いました。けれども、どんぐりたちはやめません。山ねこは一郎にささやきました。「ごらんのとおりです。いつもこうなんです。どうしたらいいでしょう?」

Ichiro smiled and whispered back, "Tell them this. The one who is the most foolish, the most useless, and the least important is the greatest."

一郎はにっこりして、ささやき返しました。「こう言ってやるといいよ。このなかで、いちばんばかで、いちばん役に立たなくて、いちばんえらくないのが、いちばんえらいって」

The wildcat nodded. He stood up and said in a loud voice, "Listen! The decision is made. The one who is the most foolish, the most useless, and the least important of all of you is the greatest!"

山ねこはうなずきました。そして立ち上がると、大きな声で言いました。「よろしい! 判決を言いわたす。おまえたちのなかで、いちばんばかで、いちばん役に立たず、いちばんえらくないものが、いちばんえらいのだ!」

Suddenly, all the acorns became completely silent. Not one of them said a word.

とたんに、どんぐりたちは、しいんと静まりかえりました。ひと言でも口をきくどんぐりは、ひとつもありませんでした。

The wildcat was very pleased. "Thank you!" he said to Ichiro. "You solved it in a minute and a half! Please be my honorary judge. When I send you a postcard, please come. And may I write, 'You must come to court'?" "That sounds a little strange," said Ichiro. "Then I will not write it," said the wildcat, looking a little sorry.

山ねこは大変喜びました。「ありがとうございました!」と、山ねこは一郎に言いました。「たった一分半で片づけてくださった! どうか、わたしの名誉判事になってください。はがきを出したら、来てくださいね。それから、はがきに『出頭すべし』と書いてもいいですか?」「それは、ちょっとへんだなあ」と、一郎は言いました。「では、書かないことにしましょう」と、山ねこは少し残念そうに言いました。

"As a thank-you gift, would you like a measure of golden acorns or a salted salmon head?" asked the wildcat. "Golden acorns, please," said Ichiro. The driver quickly filled a box with shining golden acorns.

「お礼には、黄金のどんぐり一升と、塩ジャケの頭と、どちらがよろしいですか?」と、山ねこはたずねました。「黄金のどんぐりがいいな」と、一郎は答えました。馬車別当が急いで、ぴかぴか光る黄金のどんぐりを箱いっぱいにつめました。

Ichiro got into a big white mushroom carriage, and it flew him home over the fields. But as they traveled, the acorns in the box slowly lost their gold color. When Ichiro arrived home, the carriage, the driver and the wildcat had disappeared. In his hands, there was only a box of plain brown acorns.

一郎は大きな白いキノコの馬車に乗り、馬車は野原の上を飛んで、一郎を家へ送っていきました。ところが、進むうちに、箱の中のどんぐりは、だんだん黄金色を失っていきました。一郎が家に着いたときには、馬車も、別当も、山ねこも消えていました。一郎の手には、ふつうの茶色いどんぐりの入った箱がひとつあるだけでした。

After that, no more postcards ever came from the wildcat. Sometimes Ichiro thinks, "Maybe I should have let him write 'You must come to court.'"

それからというもの、山ねこからはがきが来ることは、二度とありませんでした。一郎はときどき思います。「『出頭すべし』と書いてもいいと言えばよかったかなあ」と。

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ある土曜日の夕方、一郎の家に、へんなはがきが届きました。字はひどくへたで、墨はこってりと濃く、べたべたしていました。はがきには、こう書いてありました。

「かねた一郎さま。お元気でけっこうです。あしたは、めんどうなさいばんをしますから、おいでください。鉄砲はもってこないでください。山ねこより」

一郎はうれしくてうれしくて、その晩は眠れませんでした。次の朝、一郎は早起きして、ひとりで山の中へ歩いていきました。

まず、一郎はクリの木に出会いました。「クリの木さん、山ねこがここを通らなかったかい?」と、一郎はたずねました。「ああ、通ったよ」と、木は答えました。「けさ早く、馬車で東のほうへ行ったよ」

次に、一郎は滝に出会いました。「滝さん、山ねこがここを通らなかったかい?」「ああ、馬車で西のほうへ行ったよ」と、滝は答えました。それから一郎は、キノコたちとリスにもたずねました。みんな、それぞれちがう方角を教えてくれました。一郎はただ、どんどん歩いていきました。

とうとう一郎は、美しい黄金色の草原に出ました。そのまん中に、へんな小さな男が立っていました。男は片目しかなく、足はヤギのように曲がっていました。手には、むちを持っていました。

「わたしは山ねこさまの馬車別当です」と、男は言いました。「はがきは届きましたか?」「うん、届いたよ」と、一郎は答えました。「字はどうでしたか?」と、男ははずかしそうにたずねました。一郎は少し考えてから、「とても上手な字だったよ」と言いました。男はうれしくて、耳までまっ赤になりました。「あれを書いたのは、わたしなんです!」と、男は得意そうに言いました。

ちょうどそのとき、風がどうっと吹いて、山ねこがあらわれました。黄色い陣羽織を着て、目はまんまるで緑色でした。「よく来てくださいました」と、山ねこはていねいに言いました。「この三日間、ひどい言い争いが続いていて、どうしたらいいかわからないのです」

とつぜん、一郎の耳に、たくさんの小さな声が聞こえてきました。下を見ると、草の中に何百ものどんぐりがいて、みんな小さな赤いズボンをはいていました。どんぐりたちは、みんないっせいにさけんでいたのです。

「頭のいちばんとがっているのがえらいんだ! ぼくがいちばんとがっている!」「いいや、いちばん丸いのがえらいんだ! ぼくがいちばん丸い!」「いちばん大きいのがえらいんだ!」「ちがう、いちばん背の高いのだ!」「ちがう、いちばん強いのだ!」

「静かに! 静かに!」と、山ねこは言いました。けれども、どんぐりたちはやめません。山ねこは一郎にささやきました。「ごらんのとおりです。いつもこうなんです。どうしたらいいでしょう?」

一郎はにっこりして、ささやき返しました。「こう言ってやるといいよ。このなかで、いちばんばかで、いちばん役に立たなくて、いちばんえらくないのが、いちばんえらいって」

山ねこはうなずきました。そして立ち上がると、大きな声で言いました。「よろしい! 判決を言いわたす。おまえたちのなかで、いちばんばかで、いちばん役に立たず、いちばんえらくないものが、いちばんえらいのだ!」

とたんに、どんぐりたちは、しいんと静まりかえりました。ひと言でも口をきくどんぐりは、ひとつもありませんでした。

山ねこは大変喜びました。「ありがとうございました!」と、山ねこは一郎に言いました。「たった一分半で片づけてくださった! どうか、わたしの名誉判事になってください。はがきを出したら、来てくださいね。それから、はがきに『出頭すべし』と書いてもいいですか?」「それは、ちょっとへんだなあ」と、一郎は言いました。「では、書かないことにしましょう」と、山ねこは少し残念そうに言いました。

「お礼には、黄金のどんぐり一升と、塩ジャケの頭と、どちらがよろしいですか?」と、山ねこはたずねました。「黄金のどんぐりがいいな」と、一郎は答えました。馬車別当が急いで、ぴかぴか光る黄金のどんぐりを箱いっぱいにつめました。

一郎は大きな白いキノコの馬車に乗り、馬車は野原の上を飛んで、一郎を家へ送っていきました。ところが、進むうちに、箱の中のどんぐりは、だんだん黄金色を失っていきました。一郎が家に着いたときには、馬車も、別当も、山ねこも消えていました。一郎の手には、ふつうの茶色いどんぐりの入った箱がひとつあるだけでした。

それからというもの、山ねこからはがきが来ることは、二度とありませんでした。一郎はときどき思います。「『出頭すべし』と書いてもいいと言えばよかったかなあ」と。

日本語訳:多読ベスト

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理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. Who wrote the postcard to Ichiro?

Q2. What were the acorns arguing about?

Q3. What happened to the golden acorns?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

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