The Romance of a Busy Broker(多忙な株式仲買人のロマンス)の挿絵
Level 2 Elementary名作文学

The Romance of a Busy Broker

多忙な株式仲買人のロマンス

  • 📖 519 words
  • ⏱ 約6分
  • YL 1.0–1.4
  • 英検3級目安
  • 📝 全訳つき

あらすじニューヨークの株式仲買人マクスウェルは、仕事のことしか頭にない大忙しの男。でも、きれいな秘書のレスリーさんのことが、ずっと気になっていて……。

O・ヘンリーの短編集『四百万』(1906年、パブリックドメイン)をもとに多読ベストが再話

キーワード(8語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • clerk事務員
  • stockbroker株式仲買人
  • stenographer速記係、秘書
  • telegrams電報
  • hireやとう
  • agency紹介所
  • stock market株式市場
  • forgetful忘れっぽい

🔊 音声は準備中です。もうしばらくお待ちください。

Pitcher was a clerk in the office of Harvey Maxwell, a busy stockbroker in New York. Pitcher's face did not often show his feelings. But one morning at half past nine, it showed a little surprise. Mr. Maxwell came into the office together with his young stenographer, Miss Leslie.

ピッチャーは、ニューヨークの多忙な株式仲買人、ハーヴィー・マクスウェルの事務所で働く事務員だった。ピッチャーは、めったに顔に感情を出さない男だった。だがある朝、九時半に、その顔にかすかなおどろきが浮かんだ。マクスウェル氏が、若い速記係のミス・レスリーと一緒に事務所に入ってきたのだ。

Maxwell said a quick "Good morning, Pitcher," and hurried to his desk. He began to read the big pile of letters and telegrams there.

マクスウェルは「おはよう、ピッチャー」と短く言うと、急いで自分の机に向かった。そして、机の上に山と積まれた手紙や電報を読みはじめた。

Miss Leslie started working for Maxwell a year earlier. She was beautiful, but she did not wear a big hairstyle or lots of jewelry. Her dress was simple and grey, and there was a small green flower on her hat. This morning she was shining with quiet happiness. Her eyes were dreamy, and her cheeks were pink.

ミス・レスリーがマクスウェルのもとで働きはじめて、一年がたっていた。美人だったが、髪を大げさに結いあげたり、宝石をじゃらじゃらつけたりはしなかった。服は地味な灰色で、帽子には小さな緑の花がついていた。この朝のミス・レスリーは、静かな幸せにかがやいていた。目はうっとりと夢見るようで、ほおはばら色だった。

Pitcher watched her. She did not go straight to her desk. She waited near Maxwell's desk for a moment, as if she wanted to say something. But Maxwell was busy with his papers, so she went to her own desk.

ピッチャーは、ミス・レスリーを見ていた。ミス・レスリーは、まっすぐ自分の机には行かなかった。何か言いたそうに、しばらくマクスウェルの机のそばで待っていた。だがマクスウェルは書類にかかりきりだったので、ミス・レスリーは自分の机にもどった。

Pitcher went over to Maxwell. "Mr. Maxwell," he said, "yesterday you told me to hire a new stenographer. I asked an agency to send one. A young lady came this morning."

ピッチャーは、マクスウェルのところへ行った。「マクスウェルさん」とピッチャーは言った。「きのう、新しい速記係をやとうようにとおっしゃいましたね。紹介所に、ひとりよこしてくれるようたのんでおきました。けさ、若い女性が来ております」

"What are you talking about?" said Maxwell. "Miss Leslie is our stenographer. She does a fine job. I never told you to hire another one. Send the girl away."

「何の話だ?」とマクスウェルは言った。「うちの速記係は、ミス・レスリーだ。りっぱに仕事をしてくれている。ほかの者をやとえなどと言った覚えはないぞ。その娘さんには帰ってもらってくれ」

Pitcher sent the young lady away. "The old man is getting more forgetful every day," he said to himself.

ピッチャーは、その若い女性を帰した。「おやじさん、日に日に物忘れがひどくなっていくな」とピッチャーはひとりごとを言った。

Then the busy day began. The stock market was wild. Prices went up and down very fast, and Maxwell worked like a machine. He bought and sold. He wrote, he shouted, and he talked on the telephone. People ran in and out of the office. Maxwell had no time to think about anything else.

それから、目の回るような一日がはじまった。株式市場は大荒れだった。株価はめまぐるしく上がったり下がったりし、マクスウェルは機械のように働いた。買っては売り、書いては、どなり、電話でまくしたてる。人々が、ひっきりなしに事務所を出たり入ったりした。マクスウェルには、ほかのことを考えるひまなど、まるでなかった。

Around noon, there was a short, quiet moment. Maxwell was standing by his desk with letters in both hands. Through the open window came a faint smell of flowers. It was the smell of Miss Leslie. It belonged to her and nobody else.

昼ごろ、ほんのつかのま、静かなひとときがおとずれた。マクスウェルは、両手に手紙を持って、机のそばに立っていた。開いた窓から、ほのかな花の香りがただよってきた。ミス・レスリーの香りだった。ほかの誰のものでもない、ミス・レスリーだけの香りだった。

Suddenly the stock market disappeared from his mind. Miss Leslie was in the next room, only twenty steps away. "I'll do it now," Maxwell thought. "Why didn't I do it long ago?"

とつぜん、株式市場のことがマクスウェルの頭から消えた。ミス・レスリーは、となりの部屋にいる。ほんの二十歩先だ。「今だ、今言おう」とマクスウェルは思った。「どうして、もっと早く言わなかったんだろう?」

He hurried to her desk. She looked up at him with a smile, and her cheeks turned pink.

マクスウェルは、ミス・レスリーの机へ急いだ。ミス・レスリーはほほえみながら見あげ、ほおを赤らめた。

"Miss Leslie," he said quickly, "I have only a moment. I want to ask you something. Will you be my wife? I haven't had time to love you in the usual way, with flowers and walks. But I really do love you. Please answer quickly. Those men are calling me on the telephone."

「ミス・レスリー」とマクスウェルは早口で言った。「時間がほとんどないんだ。きみにたずねたいことがある。ぼくの妻になってくれないか? 花を贈ったり、一緒に散歩したり、世間なみのやり方で愛をささやくひまはなかった。でも、本当にきみを愛しているんだ。どうか、早く返事をしてくれ。あの連中が電話でぼくを呼んでいるんだ」

Miss Leslie looked at him very strangely. At first she looked surprised. Then tears came into her eyes, and then she smiled. She put her arm softly around his neck.

ミス・レスリーは、なんとも奇妙な顔でマクスウェルを見つめた。はじめは、おどろいた顔をしていた。それから目に涙が浮かび、やがてほほえんだ。そして、そっとマクスウェルの首に腕を回した。

"I understand now," she said gently. "This business has pushed everything else out of your head. At first I was frightened. Don't you remember, Harvey? We got married last night at eight o'clock, in the little church around the corner."

「やっとわかったわ」とミス・レスリーはやさしく言った。「お仕事のせいで、ほかのことがみんな頭から追い出されてしまったのね。はじめは、こわかったわ。覚えていないの、ハーヴィー? わたしたち、ゆうべ八時に、角を曲がったところの小さな教会で結婚したのよ」

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ピッチャーは、ニューヨークの多忙な株式仲買人、ハーヴィー・マクスウェルの事務所で働く事務員だった。ピッチャーは、めったに顔に感情を出さない男だった。だがある朝、九時半に、その顔にかすかなおどろきが浮かんだ。マクスウェル氏が、若い速記係のミス・レスリーと一緒に事務所に入ってきたのだ。

マクスウェルは「おはよう、ピッチャー」と短く言うと、急いで自分の机に向かった。そして、机の上に山と積まれた手紙や電報を読みはじめた。

ミス・レスリーがマクスウェルのもとで働きはじめて、一年がたっていた。美人だったが、髪を大げさに結いあげたり、宝石をじゃらじゃらつけたりはしなかった。服は地味な灰色で、帽子には小さな緑の花がついていた。この朝のミス・レスリーは、静かな幸せにかがやいていた。目はうっとりと夢見るようで、ほおはばら色だった。

ピッチャーは、ミス・レスリーを見ていた。ミス・レスリーは、まっすぐ自分の机には行かなかった。何か言いたそうに、しばらくマクスウェルの机のそばで待っていた。だがマクスウェルは書類にかかりきりだったので、ミス・レスリーは自分の机にもどった。

ピッチャーは、マクスウェルのところへ行った。「マクスウェルさん」とピッチャーは言った。「きのう、新しい速記係をやとうようにとおっしゃいましたね。紹介所に、ひとりよこしてくれるようたのんでおきました。けさ、若い女性が来ております」

「何の話だ?」とマクスウェルは言った。「うちの速記係は、ミス・レスリーだ。りっぱに仕事をしてくれている。ほかの者をやとえなどと言った覚えはないぞ。その娘さんには帰ってもらってくれ」

ピッチャーは、その若い女性を帰した。「おやじさん、日に日に物忘れがひどくなっていくな」とピッチャーはひとりごとを言った。

それから、目の回るような一日がはじまった。株式市場は大荒れだった。株価はめまぐるしく上がったり下がったりし、マクスウェルは機械のように働いた。買っては売り、書いては、どなり、電話でまくしたてる。人々が、ひっきりなしに事務所を出たり入ったりした。マクスウェルには、ほかのことを考えるひまなど、まるでなかった。

昼ごろ、ほんのつかのま、静かなひとときがおとずれた。マクスウェルは、両手に手紙を持って、机のそばに立っていた。開いた窓から、ほのかな花の香りがただよってきた。ミス・レスリーの香りだった。ほかの誰のものでもない、ミス・レスリーだけの香りだった。

とつぜん、株式市場のことがマクスウェルの頭から消えた。ミス・レスリーは、となりの部屋にいる。ほんの二十歩先だ。「今だ、今言おう」とマクスウェルは思った。「どうして、もっと早く言わなかったんだろう?」

マクスウェルは、ミス・レスリーの机へ急いだ。ミス・レスリーはほほえみながら見あげ、ほおを赤らめた。

「ミス・レスリー」とマクスウェルは早口で言った。「時間がほとんどないんだ。きみにたずねたいことがある。ぼくの妻になってくれないか? 花を贈ったり、一緒に散歩したり、世間なみのやり方で愛をささやくひまはなかった。でも、本当にきみを愛しているんだ。どうか、早く返事をしてくれ。あの連中が電話でぼくを呼んでいるんだ」

ミス・レスリーは、なんとも奇妙な顔でマクスウェルを見つめた。はじめは、おどろいた顔をしていた。それから目に涙が浮かび、やがてほほえんだ。そして、そっとマクスウェルの首に腕を回した。

「やっとわかったわ」とミス・レスリーはやさしく言った。「お仕事のせいで、ほかのことがみんな頭から追い出されてしまったのね。はじめは、こわかったわ。覚えていないの、ハーヴィー? わたしたち、ゆうべ八時に、角を曲がったところの小さな教会で結婚したのよ」

日本語訳:多読ベスト

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理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. What was Maxwell's job?

Q2. What made Maxwell think of Miss Leslie around noon?

Q3. Why did Miss Leslie cry and smile?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

聞き読みの効果とやり方/多読三原則

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