Mammon and the Archer(富の神と恋の射手)の挿絵
Level 3 Pre-Intermediate名作文学

Mammon and the Archer

富の神と恋の射手

  • 📖 715 words
  • ⏱ 約7分
  • YL 1.5–2.4
  • 英検準2級目安
  • 📝 全訳つき

あらすじ「金で買えないものはない」が口ぐせの大金持ちアンソニー。ところが息子リチャードは、恋する女性に気持ちを伝える「時間」がないと悩んでいます。時間だけはお金で買えない……はずですが?

O・ヘンリーの短編集『四百万』(1906年、パブリックドメイン)をもとに多読ベストが再話

キーワード(10語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • library書斎
  • wasteむだづかいする
  • horse cab馬車のタクシー
  • slippedすべり落ちた
  • furniture van家具運搬車
  • whipsむち
  • traffic jam交通渋滞
  • check小切手
  • wingsつばさ(羽のある少年は愛の神キューピッド)
  • rascalいたずらっ子

🔊 音声は準備中です。もうしばらくお待ちください。

Old Anthony Rockwall was very rich. He had made his money from Rockwall's Eureka Soap, and now he lived in a large house on Fifth Avenue. Anthony believed one thing above everything else: money could buy anything.

アンソニー・ロックウォール老人は、大金持ちだった。「ロックウォールのユリーカ石けん」で財産を築き、今では五番街の大きな屋敷に住んでいた。アンソニーが何よりも信じていたことが、ひとつあった。金で買えないものはない、ということだ。

One evening he called his son Richard into the library. Richard had just come home from college.

ある晩、アンソニーは息子のリチャードを書斎に呼んだ。リチャードは、大学から帰ってきたばかりだった。

"Richard," said Anthony, "you're a gentleman, and you don't waste money. But you have plenty to spend. Money is the answer to everything. It can buy anything you want."

「リチャード」とアンソニーは言った。「おまえは紳士だし、金をむだづかいもしない。だが、使える金ならたっぷりある。金があれば、どんな問題も片がつく。ほしいものは何だって買えるんだ」

"There are some things that money can't buy," said Richard sadly.

「お金では買えないものもあります」とリチャードは悲しそうに言った。

"Name one," said the old man.

「ひとつでも言ってみろ」と老人は言った。

Richard sighed. "Father, there is a girl. I love her very much. But I can't tell her."

リチャードはため息をついた。「お父さん、ある女性がいるんです。心から愛しています。でも、それを打ち明けられないんです」

"Ha!" cried Anthony. "You have money and good looks. Any girl would be happy to marry you. What's the problem?"

「はっ!」とアンソニーは声をあげた。「おまえには金もあるし、顔だちもいい。どんな娘だって、喜んでおまえと結婚するさ。何がいけないんだ?」

"Time," said Richard. "Her name is Miss Lantry. She is leaving for Europe the day after tomorrow, and she will stay there for two years. Every hour of her day is planned. Tomorrow evening I will meet her at Grand Central Station when her train comes in. Then I will drive her to the theater, where her mother and friends are waiting. It's only a six-minute ride. Can I ask her to marry me in six minutes? No. And after the theater, there will be no chance. Money can't buy one minute of time, Dad."

「時間です」とリチャードは言った。「ミス・ラントリーという人です。あさってヨーロッパへ発って、二年間向こうにいるんです。一日の予定が、一時間きざみで決まっています。あしたの夕方、列車が着いたら、グランド・セントラル駅に迎えに行きます。それから劇場まで送っていくんです。劇場では、お母さんや友だちが待っています。馬車でたったの六分です。六分で結婚を申しこめますか? 無理ですよ。劇場のあとは、もう機会はありません。お金では、一分の時間だって買えないんですよ、父さん」

After Richard left, his Aunt Ellen came in. She was a gentle, kind woman, and Anthony told her about Richard's problem.

リチャードが出ていくと、エレンおばさんが入ってきた。おだやかで心のやさしい女性だった。アンソニーは、リチャードの悩みを話して聞かせた。

"Oh, Anthony," she said. "You always talk about money. Money can't help true love." Then she went to Richard and gave him an old gold ring. "This was your mother's," she said. "It's a lucky ring for love. Wear it tomorrow night."

「まあ、アンソニー」とエレンおばさんは言った。「あなたって、いつもお金の話ばかりね。本当の愛に、お金なんか役に立たないわ」それからリチャードのところへ行き、古い金の指輪を渡した。「これは、あなたのお母さんの指輪よ」とおばさんは言った。「恋がかなう、幸運の指輪なの。あしたの晩、はめていきなさい」

The next evening Richard met Miss Lantry at the station. They got into a horse cab and started down Broadway. Richard was trying to put the ring on his little finger, but it slipped. It rolled across the floor of the cab and out into the street.

次の日の夕方、リチャードは駅でミス・ラントリーを迎えた。ふたりは辻馬車に乗り、ブロードウェイを走りだした。リチャードは指輪を小指にはめようとしたが、指輪がすべり落ちてしまった。指輪は馬車の床をころがり、通りへ飛び出していった。

"Stop, driver!" he called. "I dropped a ring." He jumped out, found the ring, and got back in. It took less than a minute.

「止めてくれ!」とリチャードは御者に声をかけた。「指輪を落としたんだ」リチャードは馬車をとびおりて指輪を見つけ、また乗りこんだ。一分もかからなかった。

But in that minute everything changed. A big streetcar stopped in front of the cab. Wagons came from the left. A furniture van and a beer truck came from the right. Cabs and carriages filled every space. Policemen shouted, horses stamped, and drivers waved their whips. The street was completely blocked. Nobody could move forward or back.

ところが、その一分のあいだに、何もかもが変わってしまった。大きな路面電車が、馬車の目の前で止まった。左からは荷馬車がやって来た。右からは家具の運搬車とビールのトラックがやって来た。辻馬車や自家用の馬車が、すきまというすきまを埋めつくした。警官はどなり、馬は足をふみ鳴らし、御者たちはむちをふりまわした。通りは、すっかりふさがってしまった。前へも後ろへも、誰ひとり動けなかった。

"I'm so sorry," said Richard. "We're stuck. It might be an hour."

「本当に申しわけありません」とリチャードは言った。「動けなくなってしまいました。一時間はかかるかもしれません」

Miss Lantry looked at the long lines of traffic. "Well," she said with a smile, "I don't really care about the theater anyway."

ミス・ラントリーは、どこまでもつづく車の列をながめた。「まあ」と、ほほえんで言った。「お芝居なんて、本当はどうでもいいのよ」

That night Aunt Ellen came to Anthony with a happy face. "They are going to be married!" she said. "On the way to the theater there was a terrible traffic jam. They were stuck for two hours, and in that time Richard asked her, and she said yes. It was the ring, Anthony. True love did it. Money had nothing to do with it."

その夜、エレンおばさんが、うれしそうな顔でアンソニーのところへやって来た。「ふたりは結婚するんですって!」とおばさんは言った。「劇場へ行くとちゅうで、ひどい渋滞にあったの。二時間も動けなくて、そのあいだにリチャードが結婚を申しこんで、あの子が承知したのよ。あの指輪のおかげよ、アンソニー。本当の愛がなしとげたの。お金なんて、何の関係もなかったわ」

"I'm glad the boy got what he wanted," said Anthony, and he went back to his newspaper.

「あいつがほしいものを手に入れて、よかったよ」とアンソニーは言って、また新聞に目をもどした。

The next day a man named Kelly came to Anthony's house. Anthony took out his checkbook.

次の日、ケリーという男がアンソニーの屋敷にやって来た。アンソニーは小切手帳を取り出した。

"Well, Kelly," he said, "how much was it?"

「さて、ケリー」とアンソニーは言った。「いくらかかった?」

"It wasn't cheap," said Kelly. "I paid the wagon drivers and cab drivers five dollars each. The truck drivers wanted ten. The policemen cost the most. But wasn't it beautiful, Mr. Rockwall? Everybody arrived at exactly the right time, and nobody could move for two hours."

「安くはありませんでしたよ」とケリーは言った。「荷馬車と辻馬車の御者には、五ドルずつ払いました。トラックの運転手どもは十ドルほしがりましてね。いちばん高くついたのは警官です。でも、見事なもんだったでしょう、ロックウォールさん? みんな、ぴたりと決めた時刻にやって来て、二時間、誰も身動きできなかったんですから」

Anthony wrote a check and handed it to him. "Here's your money, and a thousand dollars more for you," he said. "You don't hate money, do you, Kelly?"

アンソニーは小切手を書いて、ケリーに渡した。「これがかかった金だ。それに、おまえへの礼として千ドル上乗せしておいた」とアンソニーは言った。「おまえは金がきらいじゃなかろう、ケリー?」

"Me? No, sir," said Kelly with a grin.

「あっしがですか? とんでもない、だんな」とケリーはにやりとした。

As Kelly was leaving, Anthony called him back. "Kelly, did you see a little fat boy with wings in the traffic? A boy shooting arrows with a bow?"

ケリーが帰りかけると、アンソニーが呼びもどした。「ケリー、あの渋滞の中で、羽の生えた、小さな太った男の子を見かけなかったか? 弓で矢を射ている男の子だ」

Kelly thought for a moment. "No, sir," he said. "I didn't see anybody like that. If he was there, maybe the police took him away before I arrived."

ケリーはちょっと考えた。「いいえ、だんな」とケリーは言った。「そんなのは見かけませんでしたね。もしいたとしても、あっしが着く前に、警官がしょっぴいていっちまったんでしょう」

"I thought the little rascal wasn't there," said Anthony, and he laughed. "Good-bye, Kelly."

「あのいたずら小僧は、来ていなかったと思ったよ」とアンソニーは言って、笑った。「じゃあな、ケリー」

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アンソニー・ロックウォール老人は、大金持ちだった。「ロックウォールのユリーカ石けん」で財産を築き、今では五番街の大きな屋敷に住んでいた。アンソニーが何よりも信じていたことが、ひとつあった。金で買えないものはない、ということだ。

ある晩、アンソニーは息子のリチャードを書斎に呼んだ。リチャードは、大学から帰ってきたばかりだった。

「リチャード」とアンソニーは言った。「おまえは紳士だし、金をむだづかいもしない。だが、使える金ならたっぷりある。金があれば、どんな問題も片がつく。ほしいものは何だって買えるんだ」

「お金では買えないものもあります」とリチャードは悲しそうに言った。

「ひとつでも言ってみろ」と老人は言った。

リチャードはため息をついた。「お父さん、ある女性がいるんです。心から愛しています。でも、それを打ち明けられないんです」

「はっ!」とアンソニーは声をあげた。「おまえには金もあるし、顔だちもいい。どんな娘だって、喜んでおまえと結婚するさ。何がいけないんだ?」

「時間です」とリチャードは言った。「ミス・ラントリーという人です。あさってヨーロッパへ発って、二年間向こうにいるんです。一日の予定が、一時間きざみで決まっています。あしたの夕方、列車が着いたら、グランド・セントラル駅に迎えに行きます。それから劇場まで送っていくんです。劇場では、お母さんや友だちが待っています。馬車でたったの六分です。六分で結婚を申しこめますか? 無理ですよ。劇場のあとは、もう機会はありません。お金では、一分の時間だって買えないんですよ、父さん」

リチャードが出ていくと、エレンおばさんが入ってきた。おだやかで心のやさしい女性だった。アンソニーは、リチャードの悩みを話して聞かせた。

「まあ、アンソニー」とエレンおばさんは言った。「あなたって、いつもお金の話ばかりね。本当の愛に、お金なんか役に立たないわ」それからリチャードのところへ行き、古い金の指輪を渡した。「これは、あなたのお母さんの指輪よ」とおばさんは言った。「恋がかなう、幸運の指輪なの。あしたの晩、はめていきなさい」

次の日の夕方、リチャードは駅でミス・ラントリーを迎えた。ふたりは辻馬車に乗り、ブロードウェイを走りだした。リチャードは指輪を小指にはめようとしたが、指輪がすべり落ちてしまった。指輪は馬車の床をころがり、通りへ飛び出していった。

「止めてくれ!」とリチャードは御者に声をかけた。「指輪を落としたんだ」リチャードは馬車をとびおりて指輪を見つけ、また乗りこんだ。一分もかからなかった。

ところが、その一分のあいだに、何もかもが変わってしまった。大きな路面電車が、馬車の目の前で止まった。左からは荷馬車がやって来た。右からは家具の運搬車とビールのトラックがやって来た。辻馬車や自家用の馬車が、すきまというすきまを埋めつくした。警官はどなり、馬は足をふみ鳴らし、御者たちはむちをふりまわした。通りは、すっかりふさがってしまった。前へも後ろへも、誰ひとり動けなかった。

「本当に申しわけありません」とリチャードは言った。「動けなくなってしまいました。一時間はかかるかもしれません」

ミス・ラントリーは、どこまでもつづく車の列をながめた。「まあ」と、ほほえんで言った。「お芝居なんて、本当はどうでもいいのよ」

その夜、エレンおばさんが、うれしそうな顔でアンソニーのところへやって来た。「ふたりは結婚するんですって!」とおばさんは言った。「劇場へ行くとちゅうで、ひどい渋滞にあったの。二時間も動けなくて、そのあいだにリチャードが結婚を申しこんで、あの子が承知したのよ。あの指輪のおかげよ、アンソニー。本当の愛がなしとげたの。お金なんて、何の関係もなかったわ」

「あいつがほしいものを手に入れて、よかったよ」とアンソニーは言って、また新聞に目をもどした。

次の日、ケリーという男がアンソニーの屋敷にやって来た。アンソニーは小切手帳を取り出した。

「さて、ケリー」とアンソニーは言った。「いくらかかった?」

「安くはありませんでしたよ」とケリーは言った。「荷馬車と辻馬車の御者には、五ドルずつ払いました。トラックの運転手どもは十ドルほしがりましてね。いちばん高くついたのは警官です。でも、見事なもんだったでしょう、ロックウォールさん? みんな、ぴたりと決めた時刻にやって来て、二時間、誰も身動きできなかったんですから」

アンソニーは小切手を書いて、ケリーに渡した。「これがかかった金だ。それに、おまえへの礼として千ドル上乗せしておいた」とアンソニーは言った。「おまえは金がきらいじゃなかろう、ケリー?」

「あっしがですか? とんでもない、だんな」とケリーはにやりとした。

ケリーが帰りかけると、アンソニーが呼びもどした。「ケリー、あの渋滞の中で、羽の生えた、小さな太った男の子を見かけなかったか? 弓で矢を射ている男の子だ」

ケリーはちょっと考えた。「いいえ、だんな」とケリーは言った。「そんなのは見かけませんでしたね。もしいたとしても、あっしが着く前に、警官がしょっぴいていっちまったんでしょう」

「あのいたずら小僧は、来ていなかったと思ったよ」とアンソニーは言って、笑った。「じゃあな、ケリー」

日本語訳:多読ベスト

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理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. Why was Richard sad?

Q2. What did Aunt Ellen give Richard?

Q3. What did Kelly do for Anthony?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
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