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英語のマジか!?ホント

国名 Wales の意味は「よそ者たち」。クルミの walnut も「よそ者のナッツ」

国名 Wales の意味は「よそ者たち」。クルミの walnut も「よそ者のナッツ」

読む前に予想してみよう!

国名の Wales(ウェールズ)は、もとは「よそ者たち」という意味の英語だった

研究カード(どんな研究?)
対象
古英語・古高ドイツ語などの文献と現代の辞書
規模
1050年ごろの古英語の文書ほか
研究の種類
歴史言語学(辞書の語源記述)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

クルミの walnut の wal と国名 Wales は、昔の英語の wealh(よそ者・ケルト人)から。walnut は「よそ者のナッツ」。漢字の「胡桃」も「西方の異民族の桃」だった。

ひとことで言うとクルミの walnut は「よそ者のナッツ」。ウェールズも「よそ者」の国だった!

もくじ
  1. walnut の語源は「よそ者のナッツ」
  2. Wales は「よそ者たち」。先に住んでいたのに
  3. ベルギーにも、ルーマニアにも、イタリアにも
  4. 漢字の「胡桃」も「よそ者の桃」
  5. どんでん返し:「よそ者」は、もとは1つの部族の名前?
  6. まとめ

クルミは英語で walnut(ウォールナット)。家具の「ウォールナット材」でもおなじみの言葉です。

後ろの nut は「ナッツ」。では前の wal は何でしょう。答えは 「よそ者」。walnut は、もとは 「よそ者のナッツ」 という意味でした。

しかもこの wal は、イギリス(連合王国)の一部である Wales(ウェールズ) と同じ言葉です。ウェールズの人たちは、イングランド人の祖先より先にブリテン島に住んでいました。それなのに、あとから来た人たちに 「よそ者」 と呼ばれたのです。

01walnut の語源は「よそ者のナッツ」

『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』によると、walnut のもとは古英語の walhhnutu。古英語とは、だいたい1100年ごろまでの英語のことです。この語は、1050年ごろの文書に一度だけ記録が残っています。

前半の walh(wealh) は「よそ者・ケルト人」、後半の hnutu は「ナッツ」。合わせて「よそ者のナッツ」です。

なぜ「よそ者」なのか。同じ辞典によると、今のクルミ(英語で English walnut と呼ばれる種類)はアジア原産です。ゲルマン系の人たちは、クルミをおもにローマ領のガリア(今のフランスあたり)や、のちのフランスから来る品物として知っていました。自分たちの土地のものではない、「向こうの人たちのナッツ」だったわけです。

ドイツの語源辞典(ファイファー編、DWDS 掲載)は、5〜6世紀にライン川の下流で「よそ者(ローマ系の人たち)のナッツ」という名前ができた、という研究者の見方を紹介しています。もとから身近にあったハシバミの実(ヘーゼルナッツ)と区別するための名前でした。

02Wales は「よそ者たち」。先に住んでいたのに

アメリカン・ヘリテージ英語辞典の解説によると、ブリテン島には、ケルト系の言葉を話す人たちが昔から住んでいました。のちに英語を話すことになる人々(今のオランダ・ドイツの北海沿岸やデンマークのあたりから渡ってきた人々)が来るより、ずっと前からです。ところが古英語で 「よそ者」と呼ばれたのは、あとから来た側ではなく、先にいたケルトの人たちのほうでした。

  • wealh(よそ者・ケルト人)の複数形 wealas →「よそ者たち」→ Wales
  • wealh から作った形容詞 wælisc / welisc → Welsh(ウェールズの、ウェールズ語)

イングランド南西の端の Cornwall(コーンウォール) の後半も同じです。古英語の辞書『ボスワース・トラー古英語辞典』(チェコのカレル大学がオンライン版を公開)には Corn-wealas という語があり、「コーンウォールの人々、コーンウォール」と説明されています。

では、ウェールズの人たちは自分たちを何と呼んでいるのか。ウェールズ語では Cymry(英語読みでキムリ)。同じアメリカン・ヘリテージ英語辞典の付録によると、もとは古いケルト語の kom-brogos(同じ土地の仲間) にさかのぼります。英語では「よそ者」、自分たちの言葉では「同じ土地の仲間」。呼ぶ側によって、名前の意味が正反対になっていたのです。

先にブリテン島に住んでいたケルトの人々が、あとから来た人々の言葉で「よそ者(wealh)」と呼ばれた(アメリカン・ヘリテージ英語辞典)
先にブリテン島に住んでいたケルトの人々が、あとから来た人々の言葉で「よそ者(wealh)」と呼ばれた(アメリカン・ヘリテージ英語辞典)

03ベルギーにも、ルーマニアにも、イタリアにも

「よそ者」を表すこの語は、イギリスの外にも名前を残しています。

  • Walloon(ワロン):ベルギー南部に住む人たち(今はふだんフランス語を話す人が多い)。フランス語 Wallon から。もとはゲルマン系の語で、古いドイツ語の walah(ラテン語から生まれた言葉を話す人) や古英語の wealh と同じ仲間です(アメリカン・ヘリテージ英語辞典)。
  • Vlach(ヴラフ):ルーマニアを中心とするバルカン半島の人々の呼び名。ブルガリア語やセルビア・クロアチア語を通して、ゲルマン系の語にさかのぼります。はじめはケルト人を指し、やがてローマ化した人々、ラテン語系の言葉を話す人々全体を指すようになりました(同上)。
  • ポーランド語の Włoch(ヴウォフ):意味は「イタリア人」。これもスラブ語を通して、同じゲルマン系の語から来ています(ファイファーのドイツ語語源辞典)。

ドイツ語では welsch(ヴェルシュ) が「イタリアの・フランスの」、さらに16世紀には「よそものの、わけの分からない」という意味でも使われました。そこから生まれたのが Kauderwelsch(カウダーヴェルシュ)。意味は「ちんぷんかんぷんな言葉」です。前半の Kauder が何なのかは、スイスの町クール(Chur)の名前が変わったもの、小売りの商人を指す古い言葉、「もごもご話す」という意味の方言、などの説があって、はっきりしていません。

04漢字の「胡桃」も「よそ者の桃」

日本語の「クルミ」は漢字で 胡桃 と書きます。この「胡」がポイントです。

『日本大百科全書(ニッポニカ)』によると、「胡」は、昔の中国の人が北方や西方の異民族を呼んだ言葉。胡桃や胡麻(ごま)という名前は、これらが中央アジアのトルキスタンから中国にもたらされたことを示している、と説明しています。同じ事典のクルミの項にも、4世紀ごろに西方から中国へ伝わったので胡桃という、とあります。デジタル大辞泉も、「胡」の意味に「外国産の」を挙げ、胡椒(こしょう)・胡麻を例にしています。

英語は「よそ者のナッツ」、漢字は「異民族の桃」。遠く離れた2つの言葉が、クルミに同じような名前をつけていたのです。

05どんでん返し:「よそ者」は、もとは1つの部族の名前?

では、wealh という語そのものはどこから来たのでしょう。

アメリカン・ヘリテージ英語辞典は、wealh はおそらくケルト系の部族の名前から来たとしています。ローマの人たちが Volcae(ウォルカエ) と呼んだ、ケルト系の部族の集まりです。ドイツの語源辞典も、ゲルマン人の隣に住んでいたケルト系の一民族の名前から生まれた、と説明しています。

つまり、最初はとなりの1つの部族の名前だったものが、「よそ者」全体を指す言葉に広がったと考えられているのです。ただし、その部族の名前自体の由来ははっきりしていません。

古英語の wealh には、暗い意味もありました。ボスワース・トラー古英語辞典は wealh の意味として「よそ者」「ケルト人」「ローマ人」に加えて、「奴隷・召使い」 を挙げています。同じ辞書は、英語の slave(奴隷)が民族の名前から来ていることにもふれています。アメリカン・ヘリテージ英語辞典によると、slave は Slav(スラブ人) と、もとは同じ言葉です。中世の初めに、とらえられたスラブ人が広く奴隷にされたことから来ています。

06まとめ

walnut は「よそ者のナッツ」、Wales は「よそ者たち」。ブリテン島に先に住んでいた人たちが、あとから来た人たちの言葉で「よそ者」と呼ばれ、その名前が国の名前として今も残っています。一方、ウェールズ語での自分たちの呼び名 Cymry は「同じ土地の仲間」でした。

漢字の「胡桃」も、西方の異民族から来た桃。次にクルミを割るときは、wal=よそ者、胡=異民族を思い出してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerLook closely at the word "walnut." The "nut" part is easy. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Look closely at the word "walnut." The "nut" part is easy. The "wal" part is not. In Old English, "wealh" meant a foreigner or a Celt, so a walnut was a "foreign nut."

The tree came from Asia, and Germanic people knew the nuts mainly as goods from Roman Gaul, the area that later became France. The same old word gave English the names Wales and Welsh. That may sound odd. Celtic people had lived in Britain long before the English arrived, but the newcomers called them foreigners.

The Welsh call themselves "Cymry," from an old Celtic word for people from the same land. In Japanese, too, the walnut is written with a character that the Chinese once used for foreign peoples to the north and west.

127 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「walnut」という語をよく見てみよう。後半の「nut」は簡単だ。だが「wal」のほうはそうはいかない。古英語で「wealh」はよそ者やケルト人を意味していたので、walnut は「よそ者のナッツ」だった。

この木はアジアから来たもので、ゲルマン系の人々はこの実を、おもに、のちにフランスとなるローマ領ガリアから来る品物として知っていた。同じ古い言葉から、英語の Wales と Welsh という名前が生まれた。これは奇妙に聞こえるかもしれない。ケルトの人々はイングランドの人々が来るずっと前からブリテン島に住んでいたのに、新しく来た人々が彼らをよそ者と呼んだのだ。ウェールズの人々は自分たちを「Cymry」と呼ぶ。

同じ土地の人々を表す古いケルト語から来た言葉だ。日本語でも、クルミは、昔の中国の人が北や西の異民族を呼ぶのに使った漢字で書かれる。

4択リーディングクイズ

Q1. Why was the walnut called a "foreign nut"?

Q2. What does "Cymry" come from?

Q3. Why does the writer say the name Wales "may sound odd"?

重要単語

  • walnutB1
    名詞クルミ;クルミ材This old table is made of walnut. 発音は「ウォールナット」。wal は古英語 wealh(よそ者)から。木材や茶色の色の名前としても使う。
  • foreignerB1
    名詞外国人、よそ者In the story, the visitors were treated as foreigners. foreign(外国の)+-er。g は発音しない。面と向かって使うと冷たく響くことがあるので、people from abroad などと言いかえることも多い。
  • nativeB1
    形容詞(その土地に)もとから住む、原産のThe walnut tree is native to Asia. be native to ~「~原産だ」。native speaker(母語話者)の native も同じ。
  • settlerB2
    名詞移住者、入植者The settlers built their homes near the river. settle(住みつく)+-er。newcomer(新しく来た人)も近い意味。
  • WelshB1
    形容詞・名詞ウェールズの;ウェールズ語My friend is learning Welsh before her trip to Cardiff. 古英語 wælisc(よそ者の)から。国名は Wales、言語と人は Welsh。
  • gibberishC1
    名詞意味の分からない言葉、ちんぷんかんぷんTo me, his notes looked like gibberish. talk gibberish「わけの分からないことを言う」。ドイツ語の Kauderwelsch に当たる。
  • homophoneC1
    名詞同音異義語"Wales" and "whales" are homophones. homo-(同じ)+phone(音)。right と write、see と sea なども同じ。
クルミの walnut の wal と、国名 Wales(ウェールズ)は同じ古英語 wealh=「よそ者」。walnut は“よそ者のナッツ”。先に住んでいたのはウェールズの人たちなのに。漢字の「胡桃」も“西方の異民族の桃”。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「Wales」(Word History)・「Welsh」・「walnut」ahdictionary.com
  2. Bosworth, J. & Toller, T. N. An Anglo-Saxon Dictionary Online「wealh」(カレル大学, 2014)bosworthtoller.com
  3. The American Heritage Dictionary, Appendix I: Indo-European Roots「merg-」(Cymry)ahdictionary.com
  4. Pfeifer, W. Etymologisches Wörterbuch des Deutschen「welsch」「Walnuß」「Wallach」(DWDS)dwds.de
  5. 日本大百科全書(ニッポニカ)「胡」「クルミ」・デジタル大辞泉「胡」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp

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