shampoo の語源はヒンディー語の「押せ!」。18世紀の英語では「マッサージ」だった

読む前に予想してみよう!
英語の shampoo は、生まれたときから「髪を洗う」という意味の言葉だった
ヒンディー語の「押せ!」から来た語で、18世紀半ばに英語に入ったときの意味は「マッサージ」だった(オックスフォード学習辞典)。
- 対象
- 英語の辞書3点・19世紀イギリスの資料
- 規模
- 18世紀半ば〜19世紀の用例
- 研究の種類
- 辞書の語源記述・歴史資料
- 確かさ
- ★★★★☆
shampoo はヒンディー語の「押せ!」から。18世紀半ばに英語に入ったときは「マッサージ」の意味で、髪を洗う意味はあとからついた。
ひとことで言うとシャンプーはもともと「マッサージ」のこと。語源はインドの言葉で「押せ!」だった!
もくじ
毎日のように使う「シャンプー」。英語の shampoo も、ふつうは「髪を洗う」「洗髪剤」という意味です。
ところがこの言葉、もとの意味は「マッサージ」でした。語源は、インドのヒンディー語で「押せ!」という命令の言葉です。
18世紀の英語で shampoo と言えば、髪ではなく、体をもみほぐすことだったのです。
01語源はヒンディー語の「押せ!」
アメリカの辞書『アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)』によると、shampoo のもとはヒンディー語の cāṁpō。これは cāṁpnā という動詞の命令形です。cāṁpnā の意味は「押す、こねる」。つまり cāṁpō は「押せ!」「こねろ!」にあたります。
イギリスのオックスフォード大学出版局の学習辞典も、同じく「cāṃpo!(押せ!)」から来たと書いています。つづりの点の打ち方が少しちがうのは、辞書ごとに、ヒンディー語をローマ字で書き写すときの決まりがちがうためです。
押す、こねる。これはマッサージの手の動きそのものです。
つまり英語の shampoo は、最初は「髪」とは関係のない言葉でした。お風呂でのマッサージを指していたのです。
0219世紀のイギリスには「王のシャンプー外科医」がいた
この「マッサージとしてのシャンプー」で、イギリスの上流階級の客を集めた人がいます。インド出身のサケ・ディーン・マホメッド(Sake Dean Mahomed)です。
イングランド王立外科医師会(Royal College of Surgeons of England)の図書館が2018年にブログで紹介した内容を、かんたんにまとめます。
- マホメッドは1759年にインドで生まれ、東インド会社の軍隊で働いたのち、アイルランドへ渡った
- 1810年、ロンドンでイングランド初のインド料理店とされる「ヒンドゥースタン・コーヒー・ハウス(Hindoostane Coffee House)」を開いたが、店はうまくいかなかった
- その後、海辺の保養地ブライトンへ移り、浴場を開いた。インドの油や薬草を使った手当て、蒸し風呂、そして看板メニューの「シャンプーイング」。その中身は元気が出るマッサージだった
- 店は大成功。国王ジョージ4世とウィリアム4世も客になり、マホメッドは「王のシャンプー外科医(Shampooing Surgeon to the King)」に任命された
「シャンプー外科医」と聞くと、髪を洗うお医者さんを想像してしまいます。でも実際は、蒸し風呂とマッサージの専門家でした。この呼び名は研究者にも使われていて、2000年に学術誌『Interventions』に載った論文の題名は「The Shampooing Surgeon and the Persian Prince(シャンプー外科医とペルシャの王子)」です。
マホメッドは自分の浴場について『Shampooing』という本も出しました。ロンドンのウェルカム・コレクションの目録によると、初版は1822年にブライトンで出版され、1826年に第2版、1838年に第3版が出ています。王立外科医師会の図書館にも1826年の版が残っていて、ぜんそくやリウマチなどが治ったという体験談や、客からの感謝の手紙がたくさん載った、いわば宣伝の本でした。

03「押す」つながりの親戚は、インドのパン
AHD の shampoo の項には、「chapati を見よ」という案内があります。chapati(チャパティ)は、北インドの平たいパンです。
AHD によると chapati は、ヒンディー語の capātī から来た語です。これは capānā(押しつぶす、平らにする)という動詞から来ています。そして AHD は、shampoo のもとになった語も chapati のもとになった語も、古いインドの言葉(プラークリット語)の cappaï(彼は押す) とつながりがある、と書いています。
髪を洗うシャンプーと、平たいパンのチャパティは、「押す」でつながった遠い親戚というわけです。
04インドの言葉から来た英単語、まだある
英語には、インドの言葉から来た単語がほかにもあります。AHD の語源欄で確かめたものを並べます。
- pajamas(パジャマ):ヒンディー語・ウルドゥー語の pājāmā(ゆったりしたズボン)から。さらにさかのぼるとペルシャ語の pāy(足)+ jāma(衣服)
- bungalow(バンガロー):ヒンディー語の baṅglā(ベンガルの)から
- loot(略奪品、盗む):ヒンディー語の lūṭ から
- thug(ちんぴら、悪党):ヒンディー語の ṭhag から
- jungle(ジャングル):もとをたどるとサンスクリット語の jaṅgalam。意味は「荒れ地、砂漠、耕されていない土地」
jungle がもとは「荒れ地・砂漠」だったというのも、shampoo に負けない意外さです。
05日本語の「シャンプー」は最初から「洗う」
では、日本語のシャンプーはどうでしょう。
小学館の『日本国語大辞典』では、シャンプーの意味は「洗髪剤」と「洗髪すること」の2つです。「洗髪剤」の例は1930年の『アルス新語辞典』、「洗髪すること」の例は喜劇俳優・古川ロッパの1940年の日記に出てきます。
日本語は、英語の shampoo が「髪を洗う」意味になってから、この言葉を取り入れたようです。日本国語大辞典にもデジタル大辞泉にも、シャンプーの意味に「マッサージ」は載っていません。
06どんでん返し:マホメッドは「シャンプーの生みの親」ではない
マホメッドの話は人気があり、「シャンプーを発明した人」「シャンプーをイギリスに伝えた人」と紹介されることがあります。でも、辞書で確かめると話は少しちがいます。
まず、shampoo という英語は、マホメッドが有名になるずっと前からありました。オックスフォード学習辞典は18世紀半ば、Dictionary.com は1755〜65年ごろを初出としています。マホメッドが生まれたのは1759年なので、shampoo が英語の記録に現れたのは、ちょうど彼が生まれたころのことです。彼は「シャンプー」というマッサージを上流階級にはやらせた一人ではありますが、この言葉を英語に持ちこんだ人ではありません。
次に、彼の「シャンプーイング」は、王立外科医師会の図書館の説明ではマッサージでした。いまの髪用のシャンプーを発明したわけではありません。
そしてもう一つ。「マッサージ」から「髪を洗う」へ、いつ意味が移ったのかは、今回調べた3つの英語辞書には書かれていませんでした。はっきり言えるのは、日本語の辞書に載った1930年には、もう「洗髪剤」の意味になっていたことです。
07まとめ
shampoo は、ヒンディー語の「押せ!」から生まれ、18世紀の英語ではマッサージのことでした。19世紀のブライトンでは、国王までがその「シャンプー」の浴場の客になっていたのです。
次に髪を洗うときは、指の腹で頭皮をやさしく押してみてください。それが shampoo のいちばん古い意味です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe name on every bottle of shampoo comes from India.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people use shampoo every day. But the word first came from Hindi, a language of India. The Hindi word meant "Press!" When English speakers began to use "shampoo" in the 1700s, it meant a massage. It had nothing to do with hair.
In the early 1800s, a man from India opened a bath house in Brighton, England. His "shampooing" was a massage, and two kings came to try it.
70 words ・ CEFR A2
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多くの人が毎日シャンプーを使います。でも、この言葉はもともとインドの言語であるヒンディー語から来ました。そのヒンディー語の言葉は「押せ!」という意味でした。1700年代に英語を話す人たちが「shampoo」を使いはじめたとき、それはマッサージのことでした。
髪とは何の関係もなかったのです。1800年代のはじめ、インド出身の男性がイギリスのブライトンに浴場を開きました。彼の「シャンプーイング」はマッサージで、2人の王もそれを受けに来ました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
shampoo がヒンディー語から来たことと、最初は「マッサージ」の意味だったことを説明しているので A。
Q2. What did "shampoo" mean when English speakers began to use it?
When English speakers began to use "shampoo" in the 1700s, it meant a massage. とあるので B。
Q3. "It had nothing to do with hair" means that the word ...
have nothing to do with ~ は「~と何の関係もない」。当時の shampoo は髪と関係がなかったので A。
The name on every bottle of shampoo comes from India. It started as a Hindi command that means "Press!" or "Knead!" English borrowed it in the middle of the 1700s, and at first it meant a massage, often given as part of a Turkish bath.
In the early 1800s, Sake Dean Mahomed, who was born in India, opened a popular bath house in the seaside town of Brighton. Customers could take hot steam baths and get his "shampooing," which was a massage. Two British kings used his baths, and he was given the title "Shampooing Surgeon to the King." The meaning that most people know today, washing your hair, came later.
111 words ・ CEFR B1
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どのシャンプーのボトルにも書かれているこの名前は、インドから来たものだ。もとは「押せ!」「こねろ!」という意味のヒンディー語の命令の言葉だった。
英語は1700年代の半ばにこれを借り、最初はマッサージ、それもトルコ式の蒸し風呂の一部として受けるマッサージを指していた。1800年代のはじめ、インド生まれのサケ・ディーン・マホメッドが、海辺の町ブライトンで人気の浴場を開いた。客は熱い蒸し風呂に入ったり、彼の「シャンプーイング」を受けたりできた。それはマッサージだった。イギリスの2人の王が彼の浴場を利用し、彼には「王のシャンプー外科医」という称号が与えられた。今日ほとんどの人が知っている「髪を洗う」という意味は、あとから生まれたものだ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ヒンディー語の「押せ!」→英語で「マッサージ」→今の「髪を洗う」という意味の移り変わりが中心なので A。
Q2. What title was Sake Dean Mahomed given?
he was given the title "Shampooing Surgeon to the King." とあるので B。
Q3. What can we guess about Mahomed's customers?
his "shampooing," which was a massage とあり、客が「シャンプーイング」で受けたのはマッサージだったので B。
In the early 1800s, wealthy visitors to Brighton, a seaside resort in England, could book a "shampooing" at a bath house run by Sake Dean Mahomed. Hair washing was not part of it. Mahomed, who was born in India in 1759, offered steam baths and a refreshing massage, and the business did so well that George IV and William IV became customers. He was even named "Shampooing Surgeon to the King."
The word itself is older than his baths. Dictionaries trace it to a Hindi command meaning "Press!" or "Knead!" and date its first use in English to the middle of the 1700s, when it referred to a massage given in a Turkish bath.
So Mahomed did not bring the word to Britain, even though he is sometimes described that way. He helped make it fashionable. What the dictionaries do not tell us is exactly when "shampoo" moved to hair washing. Japanese offers one clue.
In a Japanese dictionary of new words from 1930, it already meant a product for cleaning hair. The word also has a distant cousin on the dinner table. "Chapati," the flat Indian bread, goes back to a related word for pressing.
196 words ・ CEFR B2
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1800年代のはじめ、イングランドの海辺の保養地ブライトンを訪れた裕福な客は、サケ・ディーン・マホメッドが営む浴場で「シャンプーイング」を予約できた。髪を洗うことは含まれていなかった。1759年にインドで生まれたマホメッドは、蒸し風呂と元気が出るマッサージを提供し、商売は大成功して、ジョージ4世とウィリアム4世も客になった。彼は「王のシャンプー外科医」に任命されさえした。だが、言葉そのものは彼の浴場より古い。
辞書はこの語を「押せ!」「こねろ!」という意味のヒンディー語の命令の言葉にさかのぼらせ、英語での初出を1700年代半ばとしている。
そのころの意味は、トルコ式の蒸し風呂で受けるマッサージだった。つまり、マホメッドはこの言葉をイギリスに持ちこんだわけではない。そう紹介されることもあるが、彼はこの言葉を流行らせた一人なのだ。辞書が教えてくれないのは、「shampoo」がいつ髪を洗う意味に移ったのか、という点だ。
日本語が一つの手がかりになる。1930年の日本の新語辞典では、この語の意味はすでに髪を洗うための製品だった。この語には、食卓にも遠い親戚がいる。インドの平たいパン「チャパティ」は、「押す」を意味する関連した語にさかのぼる。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
最初はマッサージの意味で、髪を洗う意味はあとからという流れが全体の主旨なので B。A は Hair washing was not part of it. と矛盾する。
Q2. According to the passage, when was "shampoo" first used in English?
date its first use in English to the middle of the 1700s とあるので B。1759年はマホメッドの生まれた年。
Q3. Why does the writer mention a Japanese dictionary from 1930?
辞書には意味が移った時期が書かれていないが、1930年の日本の新語辞典ではすでに髪を洗う製品の意味だった、という手がかりとして挙げているので B。
重要単語
- shampooB1動詞・名詞(髪などを)洗う;シャンプー、洗髪剤She showered and shampooed her hair before work.
動詞の過去形は shampooed。carpet shampoo(カーペット用洗剤)のように髪以外にも使う。 - massageB1名詞・動詞マッサージ(する)My shoulders felt much better after a massage.
発音は「マサージ」(後ろにアクセント)。give someone a massage「~にマッサージをする」。 - kneadC1動詞(生地などを)こねる;もみほぐすKnead the dough until it feels smooth.
k は読まず need と同じ発音。パン作りのレシピによく出る。 - imperativeC1名詞(文法の)命令形"Sit down!" is an example of the imperative.
形容詞では「ぜひ必要な」の意味もある。It is imperative that ... は入試の英文で頻出。 - borrowA2動詞借りる;(言葉を)取り入れるEnglish has borrowed many words from other languages.
ほかの言語から取り入れた語は loanword(借用語)。 - resortB2名詞保養地、行楽地We spent a week at a seaside resort.
as a last resort は「最後の手段として」。こちらの意味もよく出る。 - fashionableB2形容詞流行の、おしゃれなSteam baths became fashionable among rich visitors.
fashion(流行)+-able。反対語は unfashionable。
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シャンプー(shampoo)の語源はヒンディー語の「押せ!」。18世紀半ばの英語では「マッサージ」の意味だった。19世紀のイギリスでは、インド出身の男性が王の「シャンプー外科医」に。その「シャンプー」の中身は髪洗いではなくマッサージだった。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「shampoo」ahdictionary.com
- Oxford Learner's Dictionaries「shampoo」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
- Dictionary.com(Random House Unabridged Dictionary)「shampoo」(Origin)dictionary.com
- Isaac, S. (2018) Sake Dean Mahomed and the Benefits of Shampooing, Royal College of Surgeons of England, Library Blogrcseng.ac.uk
- 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉「シャンプー」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
- Wellcome Collection 目録「Shampooing; or, benefits resulting from the use of the Indian medicated vapour bath」(Brighton: E.H. Creasy, 1822)api.wellcomecollection.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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