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いちばん長い英単語(45文字)は、パズル好きの団体の会長が作ったらしい

いちばん長い英単語(45文字)は、パズル好きの団体の会長が作ったらしい

読む前に予想してみよう!

45文字の pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis は、医師が病名として作った言葉である

研究カード(どんな研究?)
対象
英語辞書の記述・辞書編集者の解説・言葉遊びの専門誌
規模
長い英単語8語ほか
研究の種類
語源調査(文献)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

辞書に載る最長の英単語(45文字)は、1935年にパズル愛好家の団体の会長が「英語でいちばん長い単語」として披露した、作り物らしい言葉だった。

ひとことで言うと45文字の「いちばん長い英単語」は、パズル好きが作ったネタだったんだって!

もくじ
  1. 45文字の「いちばん長い英単語」、その意味は?
  2. 1935年、パズル好きの会合で「発表」された
  3. おまけ:「長い単語」の常連たち
  4. シェイクスピアも「長い単語」でジョーク
  5. どんでん返し:「いちばん長い」は決め方しだい
  6. まとめ

「英語でいちばん長い単語は?」

よく名前が挙がるのが、これです。

pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis(ニューモノウルトラマイクロスコピックシリコヴォルケーノコニオーシス)

45文字。意味は「火山の灰などのとても細かいちりを吸いこんでなる肺の病気」。ところがこの言葉、医者が作った病名ではないようです。1935年、パズル好きの団体の会合で、会長が「英語でいちばん長い単語」として披露したのが始まりらしいのです。

0145文字の「いちばん長い英単語」、その意味は?

まずは中身を分けてみます。アメリカの辞書 American Heritage Dictionary(AHD)で、部品ごとに意味を確かめると、

  • pneumono-:肺(ギリシャ語の pneumōn「肺」から)
  • ultramicroscopic:ふつうの顕微鏡では見えないほど小さい
  • silico-:シリカ(二酸化ケイ素。石英などの成分)
  • volcano:火山
  • -coni-:ちり(ギリシャ語の konis)
  • -osis:病気の状態

つなげると「ふつうの顕微鏡では見えないほど細かい、火山のシリカのちりによる肺の病気」。イギリスのケンブリッジ英語辞典は、この語を「とても細かい灰やちりを吸いこんで起きる肺の病気につけられた、作られた名前」と説明しています。

もとになったのは、本物の医学用語 pneumoconiosis(じん肺)です。AHD によると、鉱物や金属のちりを長く吸いこんで起きる肺の病気で、仕事が原因のことが多いもの。そこに ultra・microscopic・silico・volcano を足して、わざと長くしてあるのです。

021935年、パズル好きの会合で「発表」された

オックスフォード大学出版局(OUP)のアメリカ向け辞書の編集者だったベン・ジマー(Ben Zimmer)は、2007年のブログでこの語のいきさつを紹介しています。

全米パズラーズ・リーグは、公式サイトによると1883年創立。世界でいちばん古いパズル愛好家の団体です。言葉遊びの達人たちの会合で、会長が「新記録」を作ってみせたわけです。

この会合は新聞にも載りました。『Word Ways』に1989年に載ったクリス・コールの記事「The Biggest Hoax(いちばん大きなでっち上げ)」が、1935年2月23日の新聞『ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン』の記事を引用しています。それによると、会合は前日にホテル・ニューヨーカーで開かれ、リーグはこの45文字を、それまでの electrophotomicrographically(28文字)に代わる「英語でいちばん長い単語」と認めました。新聞でのつづりは …volcanokoniosis で、今の …volcanoconiosis とは1文字ちがっていました。

コールは、1935年より前の医学の文献を探してもこの語は見つからなかったとして、「スミスはこの語を引用したのではなく、作ったように見える」と書いています。

それでもこの語は辞書に入りました。『Word Ways』(2020年)に載ったダリル・フランシスの記事も、冒頭のまとめの部分で、この45文字の語が「辞書でいちばん長い単語」と広く考えられていると書いています。ジマーによると、愛好家の間では頭文字と文字数から P45 というあだ名で呼ばれています。

45文字の pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis は、OED では「作り物の語」という注意書きつきで載っている
45文字の pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis は、OED では「作り物の語」という注意書きつきで載っている

03おまけ:「長い単語」の常連たち

ジマーは同じ記事で、「いちばん長い単語」の話によく出てくる語を紹介しています。どれも、話のタネになるものばかりです。

  • antidisestablishmentarianism(28文字):「イギリス国教会を国から切りはなすこと(disestablishment)への反対」。英語圏では子どものころから知られている“定番”
  • floccinaucinihilipilification(29文字):「物事を価値がないと見なすこと」。記録は1741年までさかのぼる。イギリスのイートン校で教えられていたラテン語 flocci・nauci・nihili・pili(ジマーの説明では「ほとんど価値がない」の意味)を並べ、-fication をつけた語。ジマーによると、アメリカの上院議員も何人か演説で使った
  • supercalifragilisticexpialidocious(34文字):映画『メリー・ポピンズ』の歌のために作られた語。ケンブリッジ英語辞典は「1964年の映画で広まった」「すごくいい」という意味として載せている
  • hippopotomonstrosesquipedalianism(33文字):「とても長い単語」を表すための、わざと長くした語。ジマーによると、2007年の時点でどの辞書にも載っていない

ケンブリッジ英語辞典は floccinaucinihilipilification について、「主に、とても長い単語の例として使われる」とわざわざ書いています。長い単語は、たいてい「長い単語の話」の中でしか出番がないのです。

04シェイクスピアも「長い単語」でジョーク

長い単語をネタにするのは、20世紀のパズル好きだけではありません。

シェイクスピアの喜劇『恋の骨折り損(Love's Labour's Lost)』の第5幕第1場では、学をひけらかす校長と牧師のそばで、道化のコスタードが小姓の少年モスをからかいます。「お前の主人がお前を言葉と思って食べちまわないのが不思議だ。お前の背丈は honorificabilitudinitatibus ほども長くないんだから」。

この honorificabilitudinitatibus は27文字。少年の背の低さを、長い単語と比べて笑いにしているのです。

05どんでん返し:「いちばん長い」は決め方しだい

ここまで「45文字がいちばん長い」と書いてきました。でも、ジマーはこの質問への答えを「何を単語と数えるか、どの辞書を見るかによる」と書いています。

化学の物質名を数に入れると、話は変わります。たとえば殺虫剤の DDT は、正式には dichlorodiphenyltrichloroethane(31文字)の頭文字です(AHD)。ジマーが大量の英文を集めたデータ(オックスフォード英語コーパス)で長い単語を探したところ、科学論文でふつうに使われているらしい語として、脂質の一種の palmitoyloleoylphosphatidylethanolamine(39文字)が見つかりました。ふだんは短く POPE と呼ばれます。化学の名前は、物質の構造を表す部品をつなげて作るので、とても長くなることがあります。

もう一つ。スミス会長が「作った」というのも、正確には「作ったらしい」です。ジマーは、医学の文献に先に出てくる証拠がないことから「スミスが作ったように見える」と書いていますが、スミス本人が「自分が作った」と書いた記録は今回確かめられませんでした。

06まとめ

辞書に載る「いちばん長い英単語」は、病院ではなく、パズル好きの会合から生まれた言葉でした。辞書の側も「作り物」と分かったうえで載せています。

長い単語は、作られた瞬間から「長い単語の話」のためにある、ちょっと変わった言葉たち。次に誰かが「いちばん長い英単語って知ってる?」と言い出したら、1935年のニューヨークの会合の話を付け足してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1935, the National Puzzlers' League, a club for people who love word games, held a meeting in New York. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In 1935, the National Puzzlers' League, a club for people who love word games, held a meeting in New York. Its president, Everett M. Smith, presented a 45-letter word, pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis, as the longest word in English. It was built from real parts.

"Pneumono" refers to the lungs, "silico" to silica, a material found in sand and quartz, and "osis" to a disease. Together, they describe a lung disease caused by very fine volcanic dust. There is a real lung disease like this, called pneumoconiosis.

But nobody has found the long version in medical writing before 1935. Newspapers enjoyed the story, and the word later made its way into dictionaries. The Oxford English Dictionary now marks it as an invented word.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1935年、言葉遊びが好きな人たちのクラブである全米パズラーズ・リーグが、ニューヨークで会合を開いた。会長のエヴェレット・M・スミスは、45文字の単語 pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis を、英語でいちばん長い単語として披露した。それは本物の部品から組み立てられていた。

「pneumono」は肺、「silico」は砂や石英に含まれる物質であるシリカ、「osis」は病気を指す。合わせると、とても細かい火山のちりによって起きる肺の病気を表す。このような本物の肺の病気は実際にあり、pneumoconiosis(じん肺)と呼ばれる。

しかし、1935年より前の医学の文章でこの長い形を見つけた人はいない。新聞はこの話を面白がり、この語はのちに辞書に入った。オックスフォード英語辞典は現在、これを作られた語として示している。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. Who presented the 45-letter word in 1935?

Q3. Why does the Oxford English Dictionary probably mark the word as invented?

重要単語

  • coinC1
    動詞(新しい語を)作る、造語するWho coined this 45-letter word? 名詞の coin(硬貨)と同じつづり。coin a word で「新しい語を作る」。英英辞典では to invent a new word と説明される。
  • lungB1
    名詞肺Breathing in fine dust can damage your lungs. ふつう複数形 lungs で使う。lung cancer(肺がん)。形容詞は pulmonary(医学用語)。
  • dustA2
    名詞ちり、ほこり、粉じんThe workers wore masks to keep out the dust. 数えられない名詞。動詞では「ほこりを払う」。
  • fabricationC1
    名詞でっち上げ、作り事The long word is probably a fabrication. 動詞 fabricate は「でっち上げる」と「(部品を)組み立てる」の両方の意味がある。
  • syllableB2
    名詞音節Say the long word one syllable at a time. 長い単語は音節で区切ると発音しやすい。辞書では pneu·mo·no… のように点で区切って示す。
  • sesquipedalianC1
    形容詞長い単語を使いたがる;(語が)長ったらしいHis speech was full of sesquipedalian words. 文字どおりには「1フィート半の長さの」。長い単語を表す語そのものが長い。名詞では「長い単語」の意味もある(AHD)。
  • inventA2
    動詞発明する;(話・語を)作り出すThe president of a puzzle club seems to have invented the word. invented word で「造語」。make up も「でっち上げる」の意味でよく使う。
辞書に載る「いちばん長い英単語」pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis(45文字)は、1935年にパズル好きの団体の会長が披露した“作り物”らしい。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. Zimmer (2007) Hippopotomonstrosesquipedalianism!, OUPblog(オックスフォード大学出版局)blog.oup.com
  2. Cole (1989) The Biggest Hoax, Word Ways 22(4)(本文は Word Ways 公式サイト掲載版)digitalcommons.butler.edu
  3. Francis (2020) PNEUMONOULTRAMICROSCOPICSILICOVOLCANOCONIOSIS, Word Ways 53(1)digitalcommons.butler.edu
  4. Cambridge Dictionary「pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis」「floccinaucinihilipilification」「antidisestablishmentarianism」「supercalifragilisticexpialidocious」dictionary.cambridge.org
  5. American Heritage Dictionary「pneumoconiosis」「pneumo-」「silica」「-osis」「sesquipedalian」ahdictionary.com
  6. Shakespeare, Love's Labour's Lost, Act 5, Scene 1(Project Gutenberg #100)gutenberg.org

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