ゲスト(客)とホスト(もてなす側)は元は同じ言葉。ホテルも病院も、敵の hostile も親戚

読む前に予想してみよう!
hotel(ホテル)と hospital(病院)は、語源をたどると同じ言葉に行き着く
どちらもラテン語の hospes(もてなす人・客)から。hospital はもともと旅人や巡礼者の宿のことだった。
- 対象
- 英語・フランス語の辞書の語源記述
- 規模
- 約15語
- 研究の種類
- 歴史言語学(辞書の語源・印欧祖語の語根の記述)
- 確かさ
- ★★★★☆
guest(客)と host(もてなす側)は、さかのぼると同じ1つの古い言葉。hotel・hospital・hostel も、敵の hostile も、元素の xenon も同じ一族だった。
ひとことで言うとお客さんとおもてなし役は、もともと同じ言葉だった!
もくじ
パーティーの guest(ゲスト) と、もてなす側の host(ホスト)。
日本語でも毎日のように使う、正反対の役割の2語です。ところがこの2つ、さかのぼると同じ1つの古い言葉に行き着きます。
しかも同じ一族には、hotel(ホテル)、hospital(病院)、そして「敵意のある」という意味の hostile まで入っています。おもてなしの言葉と敵の言葉が、同じ根っこから生えているのです。
01guest と host の語源は「よそから来た人」
アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)は、ヨーロッパからインドにかけての多くの言語のもとになった大昔の言語(印欧祖語)の語根(単語のもとになる部分)を、巻末の付録で説明しています。その中の ghos-ti-(ゴスティ) という語根の意味は、
「よそ者、客、主人」。本来は「おたがいにもてなしの義務を負う相手」。
つまり、もとは「客」と「主人」をはっきり分けず、おたがいにもてなし合う間柄の相手を指す言葉だったのです。ここから英語の単語が生まれた道は、大きく分けて4つあります。
02ラテン語では「主人」も「客」も hospes
ラテン語の hospes は、AHD でもオックスフォードでも「host, guest(もてなす主人、客)」と、両方の意味が並んでいます。もてなす人も、もてなされる人も、同じ単語でした。AHD によると、hospes は ghos-ti- に「主人」を表す語をくっつけた、「客を迎える主人」という意味の語から来ています。
この使い方は、いまのフランス語にも残っています。フランス語の辞書ラルースを引くと、hôte には
- 人を家に迎えてもてなす人(=主人)
- 人の家に迎えられる人(=客)
の両方の意味が載っています。フランス語で「hôte が来た」と言われても、文脈がないと、どちらの立場か分かりません。
03ホテルとホステルは、同じ言葉を2回借りた
hospes から生まれた中世ラテン語 hospitale(宿、客をもてなす所)は、古いフランス語で hostel になりました。英語はこれを中世に借りて、hostel(宿)にします。
その後、フランス語の中で hostel は形が変わり、hôtel になりました。英語はこれを18世紀半ばにもう一度借ります。これが hotel です(オックスフォードの学習辞典による年代)。
ホステルとホテルは、同じフランス語を、形が変わる前と後で2回もらった兄弟というわけです。

フランス語の hôtel は、いまも「ホテル」だけの意味ではありません。ラルースによると、昔の貴族やお金持ちの町の邸宅、そして役所の建物も hôtel です。
- hôtel de ville:市役所
- hôtel-Dieu:いくつかの町で、昔からある中心的な病院
パリで「オテル・ド・ヴィル」に泊まろうとしても、そこは市役所です。
04病院 hospital は、もとは巡礼者の宿
hospital も同じ hospitale から来ています。オックスフォードの学習辞典によると、もとの意味は、11世紀にホスピタル騎士団(Knights Hospitallers)が営んだ宿泊所でした。AHD にも、古い意味として「旅人や巡礼者のための宿」が残っています。
つまり hospital は、最初は「病人を治す所」ではなく、遠くから来た人を泊めて世話をする所だったのです。AHD によると、イギリス英語ではいまも、孤児院やお年寄りの施設のような慈善の施設を hospital と呼ぶことがあります。
- hospice(ホスピス):もとは修道会などが営む、旅人や巡礼者の宿。いまは、重い病気の人の痛みや不安をやわらげるケアの施設やしくみ
- hospitality(ホスピタリティ):心のこもったもてなし
- hostler / ostler:宿屋で客の馬の世話をする人(hostel から)
05「敵」も「元素」も同じ一族
いっぽう、ラテン語の hostis は「よそ者」から「敵」へ意味が変わりました。英語の hostile(敵意のある) はここから来ています。
- The crowd was hostile to the visiting team.(観客はビジターチームに敵意むき出しだった)
さらに AHD は、ギリシャ語の xenos(客・主人・よそ者) も同じ語根から来たとしています。ここから生まれたのが、
- xenophobia:外国の人やよそ者を恐れたり嫌ったりすること
- xenon(キセノン):元素記号 Xe の気体
英国王立化学会の周期表によると、キセノンは1898年にウィリアム・ラムゼーとモリス・トラバースが見つけ、名前はギリシャ語の xenos(よそ者)から付けられました。AHD によると、いまはストロボなどのランプに使われています。
ホテルの客も、病院も、敵も、キセノンも、もとをたどれば「よそから来た人」なのです。

06どんでん返し:host は3つある。人質 hostage は辞書で説が割れる
英語の host には、つづりが同じで出どころの違う語が3つあります。オックスフォードの学習辞典は、語源を意味ごとに分けて書いています。
- 客をもてなす host(主人、司会者):ラテン語 hospes(主人・客)から
- a host of 〜(たくさんの〜) の host。「軍勢」という意味もある:ラテン語 hostis(よそ者・敵)から。中世のラテン語で「軍隊」
- キリスト教の儀式で使う聖なるパン(Host):ラテン語 hostia(いけにえ)から
1と2は同じ語根の親戚ですが、3の hostia は、AHD でも ghos-ti- の一族には入っていません。見た目が同じでも、別の家の子です。
もっと意見が割れるのが hostage(人質) です。
- AHD:古いフランス語から。おそらく host(客、主人)から
- オックスフォードの学習辞典:古いフランス語から。もとをたどると、ラテン語の obses(人質) から作られた後期ラテン語 obsidatus(人質であること)
AHD の説なら hostage は「客」の親戚、オックスフォードの説なら、つづりが似ているだけの別の言葉です。どちらの辞書も古いフランス語までは同じですが、その先で道が分かれています。人質がもとは「客」だったのかどうかは、辞書の間でも決着していないのです。
07まとめ
guest と host、hotel と hospital、hostile と xenon。どれも、もとは「よそから来た人」と「迎える人」の関係を表す、ひとつの古い言葉から生まれた一族でした。
ホテルのフロントで Welcome, Mr. Tanaka. と迎えられたら、あなたはその瞬間、大昔から続く「よそ者」と「主人」の関係の中にいます。
この研究を英語で読もう原田英語の English Corner"Guest" and "host" sound like opposites, yet both go back to the same ancient root.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
At a party, the host welcomes the guests. They have opposite roles, but the two words come from the same very old word. That word meant a stranger from another place. "Hotel" and "hospital" are in the same family.
Long ago, a hospital was a place where travelers could sleep and get help. The word "hostile" is a relative too. It means "acting like an enemy." In Latin, the word for a stranger later came to mean an enemy.
79 words ・ CEFR A2
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パーティーでは、ホスト(主人)がゲスト(客)を迎えます。2人の役割は正反対ですが、この2つの語は同じとても古い言葉から来ています。その言葉は、よそから来た人を意味していました。「hotel」と「hospital」も同じ一族です。
昔、hospital は旅人が泊まって助けを受けられる場所でした。「hostile」という語も親戚です。「敵のようにふるまう」という意味です。ラテン語では、よそ者を表す語が、のちに敵という意味になりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
guest・host・hotel・hospital・hostile が「よそから来た人」を表す同じ古い言葉から来たという話なので B。
Q2. What was a hospital long ago?
Long ago, a hospital was a place where travelers could sleep and get help とあるので B。
Q3. In the passage, what does "relative" mean?
hostile is a relative too は「hostile も同じ一族(親戚)だ」という意味なので A。
"Guest" and "host" sound like opposites, yet both go back to the same ancient root. According to the American Heritage Dictionary, it meant a stranger, a guest or a host, or more exactly someone you owed hospitality to, and who owed it to you. "Guest" came into English from Old Norse, the language of the Vikings.
"Host" came from the Latin word "hospes," which could mean both the person giving the welcome and the person receiving it. The same Latin word gave English "hotel," "hostel" and "hospital." When "hospital" entered English, it meant a place for travelers and pilgrims, not a place for treating the sick. Another Latin word from the root, "hostis," first meant "stranger" and later "enemy." That is where "hostile" comes from.
125 words ・ CEFR B1
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「guest」と「host」は正反対に聞こえるが、どちらも同じ古代の語根にさかのぼる。アメリカン・ヘリテージ英語辞典によると、その語根は「よそ者」「客」「主人」、もっと正確には「こちらがもてなす義務を負い、相手もこちらをもてなす義務を負う人」を意味していた。「guest」はバイキングの言語である古ノルド語から英語に入った。
「host」はラテン語の「hospes」から来ており、この語は迎える人と迎えられる人の両方を意味することができた。同じラテン語から、英語の「hotel」「hostel」「hospital」が生まれた。「hospital」が英語に入ったとき、それは病人を治す場所ではなく、旅人や巡礼者のための場所を意味していた。同じ語根から来たもう一つのラテン語「hostis」は、初めは「よそ者」、のちに「敵」を意味した。「hostile」はそこから来ている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
guest・host・hotel・hospital・hostile が同じ古代の語根から来たという内容なので B。
Q2. Which language did "guest" come from, according to the passage?
"Guest" came into English from Old Norse, the language of the Vikings とあるので C。
Q3. Why does the writer mention what "hospital" first meant in English?
英語に入ったときの hospital は旅人や巡礼者のための場所だった、と述べて、もてなしの語だったことを示しているので A。
Look up "ghos-ti-" in the list of ancient roots at the back of the American Heritage Dictionary, and you find a surprisingly crowded family. The root is defined as "stranger, guest, host," or more precisely someone with whom you share duties of hospitality. From it came "guest," by way of Old Norse, and the Latin word "hospes," which meant host and guest at once.
French still works this way, since "hôte" can be either the person giving a dinner or the person invited to it. "Hospes" led to "hotel," "hostel," "hospital," "hospice" and "hospitality." Latin "hostis," from the same root, slid from "stranger" to "enemy" and gave English "hostile."
Even the gas xenon belongs here, named in 1898 from the Greek "xenos," or stranger. Not every look-alike fits, though. The "host" used in church services comes from Latin "hostia," a sacrifice. And for "hostage," two major dictionaries disagree. American Heritage says it probably comes from "host," while Oxford's learner's dictionary links it to Latin "obses," meaning hostage.
167 words ・ CEFR B2
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アメリカン・ヘリテージ英語辞典の巻末にある古代の語根の一覧で「ghos-ti-」を引くと、驚くほど大所帯の一族が見つかる。この語根は「よそ者、客、主人」、より正確にはもてなしの義務を分かち合う相手、と定義されている。そこから、古ノルド語を経て「guest」が生まれ、主人と客を同時に意味したラテン語「hospes」も生まれた。
フランス語はいまもこの仕組みのままで、「hôte」は夕食会を開く人にも、招かれた人にもなりうる。「hospes」からは「hotel」「hostel」「hospital」「hospice」「hospitality」が生まれた。同じ語根から来たラテン語「hostis」は「よそ者」から「敵」へと意味がずれ、英語に「hostile」をもたらした。
気体のキセノンでさえここに属し、1898年にギリシャ語の「xenos」、つまりよそ者から名づけられた。ただし、似た形の語がすべて当てはまるわけではない。教会の儀式で使う「host」は、いけにえを意味するラテン語「hostia」から来ている。そして「hostage」については、2つの主要な辞書の意見が分かれている。アメリカン・ヘリテージはおそらく「host」から来たとするが、オックスフォードの学習辞典はラテン語の「obses」(人質)と結びつけている。
4択リーディングクイズ
Q1. Which statement best summarizes the passage?
ghos-ti- から多くの語が生まれたが、教会の host や hostage のように別の出どころの語もある、という内容なので B。
Q2. According to the passage, where does the church "host" come from?
The "host" used in church services comes from Latin "hostia," a sacrifice とあるので C。
Q3. What can be inferred about the word "hostage"?
two major dictionaries disagree とあり、AHD と Oxford で語源の説明が違うので、由来は決着していないと推測できる。A。
重要単語
- guestA2名詞客、招待客We have two guests staying with us this weekend.
古ノルド語 gestr から(AHD・Oxford)。Be my guest.「どうぞご遠慮なく」は口語の決まり文句。 - hostB1名詞・動詞(客をもてなす)主人、司会者;主催するTokyo was the host city for the 2020 Olympics.
動詞で host a party / host the World Cup。ラテン語 hospes(主人・客)から。 - hospitalityB2名詞心のこもったもてなしThank you for your kind hospitality.
hospital と同じ一族。the hospitality industry「ホテル・飲食などのサービス業」。 - hostileB2形容詞敵意のある、敵の;(環境が)厳しいThe crowd was hostile to the visiting team.
ラテン語 hostis(よそ者→敵)から。名詞は hostility。be hostile to ~「~に反対だ」。 - hostageB2名詞人質The hostages were released after two days.
take ~ hostage「~を人質にとる」。語源は辞書で説が分かれる(AHD は host から、Oxford は obses から)。 - hostelB1名詞(安い)宿泊所、ホステルWe stayed at a youth hostel in Kyoto.
中世に借りた形。同じ語を18世紀にもう一度借りたのが hotel。 - strangerA2名詞見知らぬ人、よそから来た人Don't open the door to strangers.
ghos-ti- の一族の中心にある意味。I'm a stranger here.「このあたりは不案内です」。
公式・一次情報をチェック
- ghos-ti-(The American Heritage Dictionary, Indo-European Roots)ahdictionary.com
- hôte, hôtesse(Larousse)larousse.fr
- Xenon(Royal Society of Chemistry, Periodic Table)periodic-table.rsc.org
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guest(客)と host(もてなす側)は、さかのぼると同じ1つの言葉。hotel も hospital も hostel も親戚で、「敵意のある」hostile や、元素のキセノン(xenon)まで同じ一族。もとの意味は「よそから来た人」。
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出典・参考文献(7件)タップで表示
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「guest」(Appendix of Indo-European Roots: ghos-ti-)ahdictionary.com
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「hospital」「hostage」「xenon」ほかahdictionary.com
- Oxford Learner's Dictionaries「guest」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
- Oxford Learner's Dictionaries「host」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
- Oxford Learner's Dictionaries「hostage」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
- Larousse, Dictionnaire de français「hôte」「hôtel」larousse.fr
- Royal Society of Chemistry, Periodic Table「Xenon」periodic-table.rsc.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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