「キュート」は昔「ずる賢い」という意味だった。cute は acute(鋭い)の a が取れた言葉

読む前に予想してみよう!
cute は、もとは「抜け目ない、ずる賢い」という意味だった
メリアム・ウェブスターによると、cute は acute の短縮形で、1731年ごろの最初の意味は「(ときにずるいやり方で)抜け目ない」。
- 対象
- 英語の辞書の語源記述
- 規模
- 主要辞書4種
- 研究の種類
- 歴史言語学(文献調査)
- 確かさ
- ★★★★☆
cute は acute(鋭い)の頭の a が落ちた言葉。約300年前の意味は「抜け目ない、ずる賢い」。「かわいい」の意味は約100年後に生まれた。
ひとことで言うとcute は昔「頭がキレる、ずるい」という意味だった!
もくじ
子犬を見て「So cute!」。服を見て「キュート!」。
この cute、じつは acute(アキュート)の頭の a が取れた言葉です。acute は「鋭い」、そして病院で使う「急性の(acute pain=急な激しい痛み)」の acute。
しかも約300年前に生まれたときの意味は「かわいい」ではなく、「抜け目ない、ずる賢い」。子犬に使うようになったのは、20世紀に入ってからでした。
01cute の正体は「acute の短縮形」
アメリカの辞書メリアム・ウェブスターは、cute の語源を「acute の短縮形」とし、昔は 'cute と、a が落ちたしるしのアポストロフィつきで書かれることもあったと説明しています。
最初の記録は 1731年ごろ。そのときの意味は、メリアム・ウェブスターの言葉では「(しばしばずるいやり方で)頭が切れる、抜け目ない」です。アメリカの辞書『American Heritage Dictionary』(AHD)も、cute はもともと acute の「鋭く見抜く、抜け目ない」という意味の短縮形で、1731年に出た辞書に最初に記録されている、と書いています。
02acute は「針」から来た「鋭い」
もとの acute は、ラテン語の acūtus(とがらせた)から来ています。さらにさかのぼると acus(針)。AHD とオックスフォードの学習辞典が、どちらもこの流れを示しています。
オックスフォードの学習辞典によると、acute が英語に入った中英語の終わりごろ(14〜15世紀)には、病気やその症状を表す言葉でした。今の英語でも acute はこんなふうに使います。
- acute pain(急で激しい痛み)
- an acute angle(鋭角)
- Dogs have an acute sense of smell.(犬は鼻がとても利く)
メリアム・ウェブスターによると、acute はシェークスピアの時代から「頭が切れる、抜け目ない」の意味も持っていました。cute が最初に受けついだのは、この「頭が鋭い」の意味です。ただ、acute 自身は「かわいい」という意味で辞書に載ったことが一度もない、とも書いています。
03「頭がいい」から「かわいい」へ
では、どうして「抜け目ない」が「かわいい」になったのでしょう。
AHD は、おそらくこうだろうと説明しています。cute は、鋭い頭や工夫の効いた作りを見せるものへのほめ言葉として使われるようになり、そこから「きれいな、人の心をひく」という意味が育った。「よくできてるね」が「かわいいね」に近づいた、という道すじです。
メリアム・ウェブスターは、同じころの cunning(カニング) にも、cute とそっくりの「2つの意味にまたがる」ところがあったと書いています。cunning は今ではふつう「ずる賢い」。ところが AHD には「かわいらしい、愛らしい(a cunning pet)」という意味も載っています。AHD によると、cunning の語源は「知る」という意味の中英語 connen です。「ずる賢い」と「かわいい」が1つの単語に同居しているのは、cute だけではないのです。

04昔の意味は、今もちゃんと生きている
「ずる賢い」の cute は、消えてしまったわけではありません。
- Don't get cute with me!(なめた口をきくな/ふざけるな)
オックスフォードの学習辞典はこの例文を、「(自分が得をしようとして)小ざかしい」という意味の cute として載せています。メリアム・ウェブスターも、この文の cute は「かわいらしさ」とは何の関係もない、と書いています。
さらにメリアム・ウェブスターや AHD には「わざとらしく、狙いすぎた」という意味の cute もあります。That ending was too cute. は「かわいすぎる結末」ではなく、「あざとすぎる結末」という悪口になりえます。
05頭が落ちた英単語は、ほかにもある
語の頭の弱い母音が落ちることを、英語で aphesis(アフェシス) と言います。AHD はこの語の説明に、まさに「acute から cute」を例として挙げています。
身近な英語にも、頭が落ちた単語が隠れています。どれもオックスフォードの学習辞典や AHD の語源欄で確かめたものです。
- sport(スポーツ)← disport(気晴らし)。もとの意味は「娯楽、なぐさみ」で、古フランス語の desporter は「気をそらす」(des-「離れて」+ porter「運ぶ」)
- fence(柵)← defence(防御)。剣で攻めて守る fencing(フェンシング)も、この fence から
- lone(ひとりの)← alone。その alone は all(まったく)+ one(ひとり)
- mend(直す)← amend(改める)。だから mend fences(仲直りする)は、頭の落ちた単語が2つ並んだ言い方
06同じ「鋭い」の親せきたち
AHD の印欧祖語(英語やラテン語などの共通の祖先とされる言語)の付録によると、acute のおおもとにある ak-(単語のもとになる部分)は「鋭い」という意味で、こんな単語につながっています。
- edge(ふち、刃)
- eager(熱心な):もとは「すっぱい、鋭い」
- vinegar(酢):古フランス語の vin(ワイン)+ aigre(すっぱい)=「すっぱくなったワイン」
- acid(酸)、acupuncture(はり治療)
cute と vinegar(酢)が、同じ「鋭い」の親せき。かわいい子犬からは想像しにくい関係です。
07どんでん返し:最初の記録は1731年?それとも100年前?
ここまで「1731年ごろ」と書いてきましたが、辞書によって最初の記録の年がずれています。
- メリアム・ウェブスター:1731年ごろ
- AHD:1731年に出版された辞書で最初に記録
- オックスフォードの学習辞典:18世紀の初め
- Dictionary.com:1615〜1625年
Dictionary.com だけが、100年以上早い年を挙げています。どの資料を最初の例と見るかで違いが出ているようですが、今回確かめた辞書には、その理由は書かれていませんでした。また、「抜け目ない」から「かわいい」に変わった理由も、AHD 自身が「おそらく」と書いているとおり、はっきり分かっているわけではありません。
08まとめ
cute は、針のように「鋭い」acute から a が落ちて生まれ、最初は「抜け目ない、ずる賢い」人に使う言葉でした。「頭がいいね」「よくできてるね」を経て、100年以上かけて子犬や赤ちゃんの言葉になりました。
次に誰かに Don't get cute with me! と言われたら、それは300年前の cute。ほめ言葉ではないので気をつけましょう。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe word "cute" is a short form of "acute," an older word that goes back to a Latin word for "needle." When…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Today we say a puppy or a baby is "cute." But the word did not always mean that. "Cute" comes from "acute," which means "sharp." People just dropped the first letter.
Around 1731, "cute" meant "clever," and sometimes "a little too clever." About 100 years later, it started to mean "pretty." You can still hear the old meaning. If someone says, "Don't get cute with me," they are not happy with you.
72 words ・ CEFR A2
和訳を見る
今では、子犬や赤ちゃんのことを「cute(かわいい)」と言います。でも、この言葉はいつもその意味だったわけではありません。「cute」は「鋭い」という意味の「acute」から来ています。人々は最初の文字を落としただけです。
1731年ごろ、「cute」は「頭がいい」、ときには「ちょっと頭が回りすぎる(ずるい)」という意味でした。約100年後、「かわいい」という意味になり始めました。今でも古い意味を耳にすることがあります。誰かに「Don't get cute with me.」と言われたら、その人はあなたに腹を立てています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
cute が「頭がいい」から「かわいい」へ意味を変えた話なので B。
Q2. What did "cute" mean around 1731?
Around 1731, "cute" meant "clever" とあるので C。
Q3. In the passage, what does "dropped" mean in "People just dropped the first letter"?
acute の最初の文字 a を使わなくなって cute になった、という意味なので A。
The word "cute" is a short form of "acute," an older word that goes back to a Latin word for "needle." When "cute" first appeared in English around 1731, it meant "clever" or "shrewd," often in a sly way. About a century later, people began to use it for things that looked nice. Even after 1900, calling a child cute could mean that the child was smart.
Only in the early twentieth century did people start using it for puppies and kittens. Losing a weak sound at the start of a word has happened to other English words too. "Sport" was once "disport," and "fence" was once "defense." The old meaning of "cute" lives on in "Don't get cute with me."
121 words ・ CEFR B1
和訳を見る
「cute」という言葉は「acute」の短い形で、acute は「針」を表すラテン語にさかのぼる古い言葉だ。1731年ごろに英語に初めて現れたとき、「cute」は「頭がいい」「抜け目ない」という意味で、ずるいニュアンスのことも多かった。約1世紀後、人々は見た目のよいものにこの語を使い始めた。1900年を過ぎても、子どもを cute と呼ぶことは、その子が賢いという意味になりえた。
子犬や子猫に使い始めたのは、20世紀の初めになってからだ。語の始めの弱い音が落ちることは、ほかの英単語にも起きている。「sport」はかつて「disport」で、「fence」はかつて「defense(防御)」だった。cute の古い意味は、「Don't get cute with me.(ふざけるな)」の中に生きている。
4択リーディングクイズ
Q1. Which of these is the best title for the passage?
cute が「頭がいい」から「かわいい」に変わった歴史が中心なので C。
Q2. When did people start using "cute" for puppies and kittens?
Only in the early twentieth century did people start using it for puppies and kittens とあるので C。
Q3. What does the writer suggest by mentioning "sport" and "fence"?
語の始めの弱い音が落ちることはほかの英単語にも起きている、という例として出しているので B。
Most people now use "cute" for babies, puppies and small round things, but the word started out as praise for sharp minds, and not always kind praise. It is a shortened form of "acute," which goes back to the Latin word for "needle." Merriam-Webster dates the first use of "cute" to around 1731, when it meant "clever or shrewd," often in an underhanded way.
The American Heritage Dictionary suggests a likely path for the change. The word was used to praise things that showed clever design, and from there it moved toward "pretty." Even after 1900, a child described as cute might have been praised for being bright. "Cunning" led a similar double life and is still listed with the sense "pretty" in an American dictionary.
Dictionaries do not agree on when "cute" first appeared, though. Most point to the early 1700s, but Dictionary.com gives 1615 to 1625. The older sense has not vanished either. "Don't get cute with me" is what you say to someone who is acting like a smart aleck, and calling a film "too cute" means it tries too hard to charm.
186 words ・ CEFR B2
和訳を見る
今ではたいていの人が「cute」を赤ちゃんや子犬、小さくて丸いものに使うが、この語は鋭い頭へのほめ言葉として始まった。しかも、いつも好意的なほめ言葉だったわけではない。cute は「acute」の短縮形で、acute は「針」を表すラテン語にさかのぼる。
メリアム・ウェブスターは cute の最初の使用を1731年ごろとしており、当時は「頭がいい、抜け目ない」という意味で、ずるいやり方を指すことも多かった。アメリカン・ヘリテージ辞典は、変化のありそうな道すじを示している。この語は工夫の効いた作りを見せるものをほめるのに使われ、そこから「かわいい」へと移っていった。1900年を過ぎても、cute と言われた子どもは、賢さをほめられていたのかもしれない。「cunning」も似たような二つの顔を持ち、アメリカの辞書には今も「かわいらしい」の意味が載っている。
ただし、cute が最初に現れた時期について辞書の意見は一致していない。多くは1700年代の初めを挙げるが、Dictionary.com は1615〜1625年としている。古い意味も消えてはいない。「Don't get cute with me」は小ざかしい態度をとる人に言う言葉であり、映画を「too cute」と言えば、かわいく見せようと狙いすぎているという意味になる。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
cute の語源と意味の変化、今も残る古い意味を説明しているので A。
Q2. According to the passage, how might "cute" have come to mean "pretty"?
The word was used to praise things that showed clever design, and from there it moved toward "pretty." とあるので B。
Q3. What can be inferred about the sentence "Don't get cute with me"?
小ざかしい態度をとる人に言う言葉とあるので、話し手は相手にいら立っていると推測できる。C。
重要単語
- acuteB2形容詞鋭い;(病気・痛みが)急性の、激しいShe went to the doctor with acute pain in her stomach.
ラテン語 acus(針)から。an acute angle「鋭角」。cute はこの語の頭の a が落ちた形。 - shrewdC1形容詞抜け目ない、頭の切れるHe is a shrewd shopper who always finds the best price.
1731年ごろの cute の意味に近い語。a shrewd guess「鋭い推測」。 - cunningB2形容詞ずる賢い;(米国の辞書では)かわいらしいThe cunning fox tricked the crow into dropping its food.
カンニング(不正行為)の意味は英語にはない。試験の不正は cheating。 - slyB2形容詞ずるい、こっそり悪だくみをするHe gave me a sly smile and said nothing.
a sly smile「意味ありげな笑み」。ずるさをやわらかく言うときにも使う。 - eagerB1形容詞しきりに〜したがる、熱心なThe kids were eager to open their presents.
be eager to do の形でよく出る。語源は acute と同じ「鋭い」の語根で、昔は「すっぱい」の意味もあった。 - fenceA2名詞柵、囲いWe painted the fence white last weekend.
defense(防御)の頭が落ちた形。fencing(フェンシング)も同じ仲間。mend fences「仲直りする」。 - smart aleckC1名詞知ったかぶりをする人、生意気なやつNobody likes a smart aleck in class.
くだけた言い方。Don't get cute with me. は、こういう態度の相手に言う。
公式・一次情報をチェック
- cute(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- aphesis(American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
このネタ、誰かに教えたくなった?
cute は acute(鋭い・急性の)の a が取れた言葉。1731年ごろの意味は「抜け目ない、ずる賢い」。子犬に使うのは20世紀から。Don't get cute with me!(ふざけるな)に昔の意味が残る。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(5件)タップで表示
- Merriam-Webster「cute」(Etymology・First Known Use・Did you know?)merriam-webster.com
- American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「cute」(Word History)ahdictionary.com
- Oxford Learner's Dictionaries「cute」「acute」「sport」「fence」「lone」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
- Dictionary.com「cute」(Origin)dictionary.com
- American Heritage Dictionary「Indo-European Roots: ak-」ahdictionary.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
本館
マジカ!?サイエンスで読む、ことばの研究
論文でウラ取りした科学の「マジか!?」。言語・脳・学習の研究も





