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「モルモット」は、別の動物マーモットとの取りちがえらしい。英語 guinea pig もギニア生まれではない

「モルモット」は、別の動物マーモットとの取りちがえらしい。英語 guinea pig もギニア生まれではない

読む前に予想してみよう!

英語で「モルモット」は marmot と言う

研究カード(どんな研究?)
対象
日本語・英語・ドイツ語の辞書と百科事典の語源欄
規模
辞書・事典7種
研究の種類
語源・文献の調査
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

モルモットは、オランダ人が南米の動物を別の動物マーモットと取りちがえた名前とされる。英語 guinea pig のギニアは、南米の地名ギアナが、「遠い国」の意味で使われた Guinea に引っぱられて変わった形らしい。

ひとことで言うとモルモットの名前は、別の動物「マーモット」とのかんちがいから生まれたらしい!

もくじ
  1. 「モルモット」は、マーモットとのかんちがい
  2. guinea pig の「ギニア」はどこ?
  3. 日本語の「テンジクネズミ」も“遠い国のネズミ”
  4. どんでん返し:本当の由来は、まだはっきりしない
  5. まとめ

「新しい薬のモルモットにされた」。実験台にされる人のことを、日本語ではよくこう言います。

でも英語で I was a marmot. と言っても通じません。英語の marmot(マーモット) は、山にすむまったく別の動物だからです。

日本語の「モルモット」は、英語では guinea pig。ところがこの guinea pig、ギニア(アフリカの国)の生まれでもなければ、ブタでもありません。南アメリカのネズミのなかまです。

この小さな動物は、日本語でも英語でもドイツ語でも、本当の姿や出身地とずれた名前で呼ばれてきたのです。

01「モルモット」は、マーモットとのかんちがい

小学館の『日本国語大辞典』によると、「モルモット」はオランダ語の marmot から来た言葉です。そしてその由来を、こう説明しています。16世紀、オランダ人が南アメリカ産のテンジクネズミ(モルモットの動物としての名前)を、ヨーロッパ産のマーモットと見誤ったのがもとだという――。

同じ小学館の『日本大百科全書(ニッポニカ)』も、オランダ語 marmotje(marmot に「小さな」の意味をそえた形)が変化したものといわれ、オランダ人がこの動物をマーモットとまちがえたためと思われる、と書いています。テンジクネズミは16世紀中ごろにオランダ人がヨーロッパへ持ちこみ、日本には19世紀中ごろに入ってきました。

では、本物のマーモットはどんな動物でしょう。アメリカの英語辞典『American Heritage Dictionary(AHD)』によると、北半球に広くすむ、穴を掘って暮らすずんぐりした齧歯(げっし)類(ネズミやリスのなかま)で、短い足と耳、ふさふさの短い尾があります。ニッポニカは、マーモットをリス科の動物としています。モルモットには、目に見える尾がありません。似ているのは「ずんぐりした小動物」というところくらいです。

日本国語大辞典には、もうひとつ「取りちがえ」が載っています。「モルモット」の3つ目の意味が「マーモットをまちがって呼んだ名前」。取りちがえで生まれた「モルモット」という名前が、こんどは逆に、本物のマーモットを指すのにもまちがって使われたわけです。

02guinea pig の「ギニア」はどこ?

英語の guinea pig は、1655〜65年ごろに初めて記録された言葉です(Dictionary.com)。

pig(ブタ)の部分は、理由がはっきりしています。ニッポニカによると、ずんぐりした体と鳴き声がブタを思わせるから。

むずかしいのは guinea の部分です。AHD の語源欄はこう書いています。

  • おそらく、南米北部の Guiana(ギアナ地方。いまのガイアナなどがある)が変化したもの
  • その変化には、「どこか遠くの知らない国」を表す名前として使われていた Guinea が影響した

つまり guinea pig は、「どこか遠い国から来たブタっぽい動物」くらいの意味だった可能性があります。

英語には、本当にギニアから来た名前もあります。

  • guinea fowl(ホロホロチョウ):アフリカのギニア海岸にちなむ鳥の名前(AHD)
  • guinea(ギニー金貨):1663〜1813年にイギリスで作られた金貨。最初の金がギニア海岸から来たことから(AHD)

本物のギニア出身の鳥と、ギニアとは関係のない南米のネズミ。同じ guinea でも、中身はまるで違います。ちなみにこのホロホロチョウは、七面鳥を表す英語 turkey の名前の由来にもかかわる鳥です(AHD)。

16世紀、オランダ人は南米の小動物を、ヨーロッパのマーモットと見誤ったとされる
16世紀、オランダ人は南米の小動物を、ヨーロッパのマーモットと見誤ったとされる

03日本語の「テンジクネズミ」も“遠い国のネズミ”

モルモットの日本語のもうひとつの名前は、テンジクネズミ(天竺鼠)。天竺は、中国や日本で使われたインドの古い呼び名です。

でも、もちろんモルモットはインドの動物ではありません。日本国語大辞典によると、「天竺」はヨーロッパ人が日本に来るようになってから、ほかの言葉にそえて「外国」「遠い土地」「舶来」の意味を表すようになりました。辞書が挙げる例が「天竺鼠」と「天竺牡丹」(ダリアの和名)です。

英語の Guinea と日本語の天竺。どちらも「どこか遠くの国」というラベルとして、同じ動物の名前に使われたのです。

ドイツ語も負けていません。ドイツ語ではモルモットを Meerschweinchen(メーアシュヴァインヒェン)、「海の子ブタ」と呼びます。ドイツの語源辞典(DWDS に収録されたファイファーの辞典)によると、南アメリカから海を渡ってきて、ブタのようにキーキー鳴く齧歯類だから。17世紀からの名前です。しかも、それより古い Meerschwein(海のブタ)という言葉は、19世紀ごろまでイルカのことでした(モルモットの名前とは別にできた言葉です)。

04どんでん返し:本当の由来は、まだはっきりしない

ここまでの話には、実は「たぶん」がたくさん入っています。

まず guinea pig。AHD は「おそらく(Perhaps)」ギアナが変化したもの、と書くだけです。ニッポニカも「ギニアはガイアナの誤りと思われる」という書き方です。決定的な証拠で決着した話ではありません。

モルモットの由来も、日本国語大辞典は「誤認したのに起因するという」、ニッポニカは「といわれる」「思われる」と、どれも伝聞や推測の書き方です。オランダ語の元の形も、marmot(日本国語大辞典)と marmotje(ニッポニカ)で書き方が分かれています。

そして本物のマーモットの名前も謎です。AHD はフランス語 marmotte から、「おそらく marmotter(ぶつぶつ言う)から」とします。一方オックスフォードは、スイスの少数言語ロマンシュ語の murmont を経て、ローマ帝国の終わりごろのラテン語の mus montanus(山のネズミ)から来た「らしい」としています。辞書によって答えが違うのです。

05まとめ

日本語のモルモットはマーモットとのかんちがい。英語の guinea pig は「遠い国のブタ」。日本語の天竺鼠は「遠い国のネズミ」。ドイツ語は「海の子ブタ」。南米からやってきた小さな動物に、ヨーロッパと日本の人たちは、それぞれ「よく分からない遠くの国から来た、何かに似た動物」という名前をつけました。

英語で話すときは、動物も実験台も guinea pig。marmot と言うと、山の別の動物になってしまうので気をつけましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerGuinea pigs come from South America, where people in the Andes have kept them for food for a long time. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Guinea pigs come from South America, where people in the Andes have kept them for food for a long time. The Dutch brought them to Europe in the middle of the 1500s. According to Japanese dictionaries, the Dutch took the animal for a marmot, a European rodent that lives in holes, and that mistake gave Japanese the word "morumotto."

In English, "pig" was chosen because of the animal's round body and its squeaking. "Guinea" is harder to explain. One dictionary says it may be a changed form of Guiana, in South America, mixed up with Guinea, a name once used for any faraway land. The Japanese name "tenjiku-nezumi" works in a similar way. "Tenjiku," an old name for India, came to mean "foreign" or "far away."

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

モルモットは南アメリカ原産で、アンデスの人々は昔から食用に飼ってきた。オランダ人が1500年代の中ごろにヨーロッパへ持ちこんだ。日本の辞書によると、オランダ人はこの動物を、穴にすむヨーロッパの齧歯類マーモットと取りちがえ、そのまちがいから日本語の「モルモット」という言葉が生まれた。

英語で「pig」が選ばれたのは、丸い体とキーキーという鳴き声のためだ。「Guinea」は説明がもっと難しい。ある辞書によれば、南アメリカのガイアナが変化した形で、どこか遠くの土地を指す名前として使われていたギニアと混ざったのかもしれない。日本語の「テンジクネズミ」も似た仕組みだ。インドの古い呼び名である「天竺」が、「外国の」「遠くの」という意味で使われるようになった。

4択リーディングクイズ

Q1. Who brought guinea pigs to Europe?

Q2. Why was the word "pig" used in the English name?

Q3. What do "Guinea" and "Tenjiku" have in common in these names?

重要単語

  • guinea pigB1
    名詞モルモット;実験台にされる人I don't want to be a guinea pig for the new app. 発音は「ギニー・ピッグ」。動物も「実験台」も英語ではこれ。marmot と言うと別の動物になる。
  • marmotC1
    名詞マーモット(リス科の動物)A marmot was sitting on a rock in the mountains. 穴を掘って暮らすずんぐりした動物。日本語の「モルモット」とは別物。
  • mistake A for BB1
    熟語AをBとまちがえるThe Dutch mistook the animal for a marmot. 過去形は mistook、過去分詞は mistaken。take A for B もほぼ同じ意味で入試頻出。
  • rodentC1
    名詞齧歯(げっし)類の動物Guinea pigs and mice are both rodents. ネズミ・リス・ビーバーなど、前歯が伸び続ける動物のなかま。
  • squeakB2
    動詞キーキー鳴く、きしむThe guinea pig squeaked when I opened the bag. 名詞でも使う(a squeak)。ドアがきしむ音にも使える。
  • experimentB1
    名詞実験Guinea pigs were once used in many medical experiments. do / carry out an experiment「実験を行う」。動詞 experiment with ~「~を試してみる」。
「モルモット」は、オランダ人が南米の動物を別の動物マーモット(marmot)と取りちがえた名前とされる。英語では guinea pig。でもギニア生まれでもブタでもない。日本語の別名「天竺鼠」も、インドとは関係ない。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. 精選版 日本国語大辞典・改訂新版 世界大百科事典「モルモット」(小学館・平凡社、コトバンク掲載)kotobank.jp
  2. 日本大百科全書(ニッポニカ)「テンジクネズミ」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  3. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「guinea pig」「marmot」「guinea」「turkey」ahdictionary.com
  4. Oxford Learner's Dictionaries「marmot」oxfordlearnersdictionaries.com
  5. Pfeifer, Etymologisches Wörterbuch des Deutschen「Meerschweinchen」(DWDS)dwds.de

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