Looking Down from Above(高いところから見下ろしてみる)の挿絵

Looking Down from Above

高いところから見下ろしてみる

  • 📖 827 words
  • ⏱ 約8分
  • 🔊 4:50
  • YL 2.5–3.4
  • 英検2級目安
  • 📝 全訳つき

あらすじローマ皇帝マルクス・アウレリウスが、悩んだときに使った心の練習があります。それは、空の高いところから世界を見下ろすように想像することでした。

マルクス・アウレリウス『自省録』(ジョージ・ロング英訳、1862年)第4・6・7・9巻をもとに

キーワード(9語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • emperor皇帝
  • imagination想像(力)
  • law courts裁判所
  • countless数えきれないほどの
  • ceremonies儀式
  • eternity永遠
  • feastingごちそうを楽しむこと、宴会
  • self-distancing自己距離化(自分を少し離れて見ること)
  • observer観察者
音声に合わせて文が光ります0:00 / 4:50

Google Cloud TTS(Chirp 3 HD・イギリス英語・Charon)

Marcus Aurelius was the emperor of Rome from 161 to 180. He was one of the most powerful people in the world, yet he wrote private notes to himself about how to live a good life. We call these notes the Meditations. In them, he often used a special exercise of the imagination. Today some people call it "the view from above."

マルクス・アウレリウスは、161年から180年までローマの皇帝でした。世界でもっとも大きな力を持つ人物の一人でありながら、よく生きるにはどうすればよいかを、自分だけのための覚え書きにつづっていました。この覚え書きを、私たちは『自省録』と呼んでいます。その中でマルクスは、想像力を使ったある練習をたびたび行っています。今では「上からの眺め」と呼ばれることもある練習です。

The exercise is simple. Imagine that you rise high into the sky, like a bird, and look down at the earth. Marcus borrowed this idea from the Greek thinker Plato. A person who wants to talk about human life, he wrote, should look at earthly things as if from some higher place.

やり方は簡単です。鳥のように空高く舞い上がって、地上を見下ろしていると想像するのです。マルクスはこの考えを、ギリシャの思想家プラトンから借りました。人間の生活について語ろうとする者は、地上のことを、どこか高いところから見下ろすように眺めるべきだ、とマルクスは書いています。

What do you see from there? Marcus gives a long list. People gathering in meetings, armies marching, farmers working in the fields, weddings, births and deaths. The noise of the law courts, empty deserts, many different nations, festivals and sad funerals, busy markets. Everything is mixed together, all at once.

そこからは何が見えるのでしょうか。マルクスは長いリストをあげています。集会に集まる人々、行進する軍隊、畑で働く農民。結婚式、誕生、そして死。裁判所のざわめき、人けのない砂漠、さまざまな民族。祭りと悲しい葬式、にぎやかな市場。すべてが入りまじって、いっぺんに目に入るのです。

In another note, he asks himself to look down on the countless crowds of people, their ceremonies, and their journeys by sea in storms and in calm weather. Then he asks himself to think of the people who lived long ago, the people who will live after him, and the people living now in faraway lands. How many of them do not even know his name? How many will soon forget it? And some who praise him today may blame him tomorrow.

別の覚え書きでは、マルクスは自分にこう命じています。数えきれない人の群れと、その儀式を見下ろしてみよ。嵐の日にも、なぎの日にも続く船旅を見下ろしてみよ。それから、遠い昔に生きた人々、自分のあとに生まれる人々、そして今、遠い国々で暮らしている人々のことを考えてみよ。そのうちどれだけの人が、自分の名前さえ知らないだろう。どれだけの人が、すぐに忘れてしまうだろう。今日自分をほめている人も、明日は自分を責めるかもしれない。

Why would an emperor think like this? Because it made his problems look the right size. From high above, Marcus wrote, Asia and Europe are only corners of the universe. The whole sea is one drop. Mount Athos, a great mountain in Greece, is a little lump of earth. And all of the present time is a single point in eternity.

皇帝が、なぜこんなふうに考えたのでしょうか。そうすると、自分の問題が本来の大きさに見えたからです。高いところから見れば、アジアもヨーロッパも宇宙の片すみにすぎない、とマルクスは書いています。海全体も一滴のしずく。ギリシャの大きな山アトスも、小さな土くれにすぎない。そして、今という時のすべても、永遠の中のたった一点なのです。

He also traveled through time in his imagination. Think about the time of the emperor Vespasian, he told himself, about a hundred years earlier. You will see the same things as today: people marrying, raising children, getting sick, dying, fighting, feasting, trading, farming, complaining, falling in love, collecting money and wanting power.

マルクスはまた、想像の中で時間を旅しました。百年ほど前の、ウェスパシアヌス帝の時代を思いうかべてみよ、と自分に言い聞かせたのです。そこに見えるのは、今と同じ光景だろう。人々は結婚し、子どもを育て、病気になり、死に、戦い、宴を開き、商売をし、畑を耕し、不平を言い、恋をし、お金をため、権力を欲しがっている。

And where are all those people now? Their lives are gone. Go forward to the time of the emperor Trajan. Again, it is all the same, and all of it is gone.

では、その人たちは今どこにいるのか。その人生は、もう消えてしまった。次に、トラヤヌス帝の時代へ進んでみよ。そこでもまた、すべては同じだ。そして、すべては消え去っている、と。

This may sound sad, but Marcus did not mean it that way. He used the view from above for at least three practical reasons.

悲しく聞こえるかもしれませんが、マルクスはそういうつもりで言ったのではありません。「上からの眺め」を使ったのには、少なくとも三つの実際的な理由がありました。

First, it made his worries smaller. When we are upset, our problem fills our whole mind, like a stone held right in front of our eyes. When we look from far above, we can see that the stone is small and the world is big. A bad test result or an embarrassing mistake feels huge today. From above, it is one tiny moment in a very large world.

一つ目は、悩みが小さくなることです。動揺しているとき、問題は心全体をふさいでしまいます。目のすぐ前に石をかざしたようなものです。けれども、はるか上から見れば、石は小さく、世界は大きいことがわかります。テストの点が悪かったことや、恥ずかしい失敗は、その日はとても大きく感じられます。でも上から見れば、それは広い広い世界の中の、ほんの一瞬の出来事なのです。

Second, it freed him from caring too much about fame and other people's opinions. If even the names of great kings are forgotten, why should we worry so much about what everyone thinks of us? Praise and blame come and go like waves. What matters more is whether we are acting well right now. Fame, Marcus believed, was not worth the worry that people spend on it.

二つ目は、名声や他人の評価を気にしすぎなくなることです。偉大な王たちの名前でさえ忘れられてしまうのなら、みんなにどう思われるかを、なぜそんなに気にする必要があるでしょう。ほめ言葉も非難も、波のように寄せては返します。もっと大切なのは、今この瞬間に、自分が正しく行動しているかどうかです。名声には、人がそのためにする心配に見合うだけの値打ちはない、とマルクスは考えていました。

Third, it reminded him that all people share one life. From above, the differences between nations, between rich and poor, and between the famous and the unknown look very small. We are all doing the same human things: working, loving, losing and hoping. This helped Marcus feel closer to other people and more patient with them.

三つ目は、人間はみな一つの命を分かち合っていると思い出せることです。上から見れば、国と国のちがいも、金持ちと貧しい人のちがいも、有名な人と無名の人のちがいも、ごく小さく見えます。私たちはみな、同じ人間のいとなみを続けているのです。働き、愛し、失い、そして希望を持つ。そう考えることで、マルクスはほかの人をより身近に感じ、より辛抱強く接することができました。

Marcus was also careful not to use this idea as an excuse to stop caring. He reminded himself that each task deserves its proper amount of attention, no more and no less. If we give small matters only the attention they deserve, he wrote, we will not be disappointed by them. The view from above does not tell us to do nothing. It tells us to stop wasting energy on things that do not deserve it, so that we can give our full energy to the things that do.

一方でマルクスは、この考えを、何も気にかけなくてよいという言いわけにしないよう注意していました。どの仕事にも、それにふさわしいだけの注意をはらうべきだ。多すぎても少なすぎてもいけない。そう自分に言い聞かせていたのです。小さなことには小さなことにふさわしいだけの注意をはらえば、それでがっかりさせられることはない、とマルクスは書いています。「上からの眺め」は、何もするなと言っているのではありません。値打ちのないことにエネルギーをむだづかいするのをやめて、本当に値打ちのあることに全力をそそぎなさい、と言っているのです。

Some modern psychologists have studied a similar idea, which they call self-distancing. When people look at their problems from a distance, as if they were an outside observer, they often feel calmer and think more wisely. Marcus seems to have discovered this tool for himself nearly two thousand years ago, writing his notes during long years of war on the cold northern borders of the empire.

現代の心理学者の中にも、これとよく似た考えを研究している人たちがいます。「自己距離化」と呼ばれる考えです。自分の問題を、まるで外にいる観察者のように、距離をおいて眺める。そうすると、人は落ち着きを取りもどし、より賢く考えられることが多いのです。マルクスは二千年近くも前に、この方法を自分の力で見つけていたようです。帝国の寒い北の国境で長い戦争が続いた年月に、あの覚え書きを書きながら、そこにたどり着いたのです。

Try this today. When something is worrying you, close your eyes for one minute. Imagine that you are rising up above your room, your town, your country, and then the whole earth. See all the people below, living their lives.

今日、やってみましょう。何か心配ごとがあるときは、一分間、目を閉じてみてください。自分の部屋の上へ、町の上へ、国の上へ、そして地球全体の上へと舞い上がっていくところを想像します。下では、たくさんの人々がそれぞれの人生を生きています。それを眺めてみましょう。

Then look at your problem again. Ask yourself: How big is this, really? And what is the one good thing I can do about it today?

それから、もう一度自分の問題を見てみます。そして、自分にたずねてみましょう。これは本当は、どれくらい大きな問題なのだろう。そして、今日このことについて、自分にできるよいことは何だろう。

📖 全訳をまとめて読む 読み終わってからの答え合わせに

マルクス・アウレリウスは、161年から180年までローマの皇帝でした。世界でもっとも大きな力を持つ人物の一人でありながら、よく生きるにはどうすればよいかを、自分だけのための覚え書きにつづっていました。この覚え書きを、私たちは『自省録』と呼んでいます。その中でマルクスは、想像力を使ったある練習をたびたび行っています。今では「上からの眺め」と呼ばれることもある練習です。

やり方は簡単です。鳥のように空高く舞い上がって、地上を見下ろしていると想像するのです。マルクスはこの考えを、ギリシャの思想家プラトンから借りました。人間の生活について語ろうとする者は、地上のことを、どこか高いところから見下ろすように眺めるべきだ、とマルクスは書いています。

そこからは何が見えるのでしょうか。マルクスは長いリストをあげています。集会に集まる人々、行進する軍隊、畑で働く農民。結婚式、誕生、そして死。裁判所のざわめき、人けのない砂漠、さまざまな民族。祭りと悲しい葬式、にぎやかな市場。すべてが入りまじって、いっぺんに目に入るのです。

別の覚え書きでは、マルクスは自分にこう命じています。数えきれない人の群れと、その儀式を見下ろしてみよ。嵐の日にも、なぎの日にも続く船旅を見下ろしてみよ。それから、遠い昔に生きた人々、自分のあとに生まれる人々、そして今、遠い国々で暮らしている人々のことを考えてみよ。そのうちどれだけの人が、自分の名前さえ知らないだろう。どれだけの人が、すぐに忘れてしまうだろう。今日自分をほめている人も、明日は自分を責めるかもしれない。

皇帝が、なぜこんなふうに考えたのでしょうか。そうすると、自分の問題が本来の大きさに見えたからです。高いところから見れば、アジアもヨーロッパも宇宙の片すみにすぎない、とマルクスは書いています。海全体も一滴のしずく。ギリシャの大きな山アトスも、小さな土くれにすぎない。そして、今という時のすべても、永遠の中のたった一点なのです。

マルクスはまた、想像の中で時間を旅しました。百年ほど前の、ウェスパシアヌス帝の時代を思いうかべてみよ、と自分に言い聞かせたのです。そこに見えるのは、今と同じ光景だろう。人々は結婚し、子どもを育て、病気になり、死に、戦い、宴を開き、商売をし、畑を耕し、不平を言い、恋をし、お金をため、権力を欲しがっている。

では、その人たちは今どこにいるのか。その人生は、もう消えてしまった。次に、トラヤヌス帝の時代へ進んでみよ。そこでもまた、すべては同じだ。そして、すべては消え去っている、と。

悲しく聞こえるかもしれませんが、マルクスはそういうつもりで言ったのではありません。「上からの眺め」を使ったのには、少なくとも三つの実際的な理由がありました。

一つ目は、悩みが小さくなることです。動揺しているとき、問題は心全体をふさいでしまいます。目のすぐ前に石をかざしたようなものです。けれども、はるか上から見れば、石は小さく、世界は大きいことがわかります。テストの点が悪かったことや、恥ずかしい失敗は、その日はとても大きく感じられます。でも上から見れば、それは広い広い世界の中の、ほんの一瞬の出来事なのです。

二つ目は、名声や他人の評価を気にしすぎなくなることです。偉大な王たちの名前でさえ忘れられてしまうのなら、みんなにどう思われるかを、なぜそんなに気にする必要があるでしょう。ほめ言葉も非難も、波のように寄せては返します。もっと大切なのは、今この瞬間に、自分が正しく行動しているかどうかです。名声には、人がそのためにする心配に見合うだけの値打ちはない、とマルクスは考えていました。

三つ目は、人間はみな一つの命を分かち合っていると思い出せることです。上から見れば、国と国のちがいも、金持ちと貧しい人のちがいも、有名な人と無名の人のちがいも、ごく小さく見えます。私たちはみな、同じ人間のいとなみを続けているのです。働き、愛し、失い、そして希望を持つ。そう考えることで、マルクスはほかの人をより身近に感じ、より辛抱強く接することができました。

一方でマルクスは、この考えを、何も気にかけなくてよいという言いわけにしないよう注意していました。どの仕事にも、それにふさわしいだけの注意をはらうべきだ。多すぎても少なすぎてもいけない。そう自分に言い聞かせていたのです。小さなことには小さなことにふさわしいだけの注意をはらえば、それでがっかりさせられることはない、とマルクスは書いています。「上からの眺め」は、何もするなと言っているのではありません。値打ちのないことにエネルギーをむだづかいするのをやめて、本当に値打ちのあることに全力をそそぎなさい、と言っているのです。

現代の心理学者の中にも、これとよく似た考えを研究している人たちがいます。「自己距離化」と呼ばれる考えです。自分の問題を、まるで外にいる観察者のように、距離をおいて眺める。そうすると、人は落ち着きを取りもどし、より賢く考えられることが多いのです。マルクスは二千年近くも前に、この方法を自分の力で見つけていたようです。帝国の寒い北の国境で長い戦争が続いた年月に、あの覚え書きを書きながら、そこにたどり着いたのです。

今日、やってみましょう。何か心配ごとがあるときは、一分間、目を閉じてみてください。自分の部屋の上へ、町の上へ、国の上へ、そして地球全体の上へと舞い上がっていくところを想像します。下では、たくさんの人々がそれぞれの人生を生きています。それを眺めてみましょう。

それから、もう一度自分の問題を見てみます。そして、自分にたずねてみましょう。これは本当は、どれくらい大きな問題なのだろう。そして、今日このことについて、自分にできるよいことは何だろう。

日本語訳:多読ベスト

押すと、この端末の読書記録(100万語メーター)に語数が加わります。

このお話の教訓 Moral

タップして見る

Seen from above, most worries become small, and what matters becomes clear.

高いところから見れば、たいていの悩みは小さくなり、大切なことがはっきり見えてくる。

理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. From high above, what did Marcus say the whole sea is?

Q2. What did Marcus see when he imagined the time of Vespasian?

Q3. What does the view from above NOT tell us to do?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

聞き読みの効果とやり方/多読三原則

次に読む

Level 4 の読み物をもっと見る →