What Is Up to You(自分次第のこと、そうでないこと)の挿絵

What Is Up to You

自分次第のこと、そうでないこと

  • 📖 929 words
  • ⏱ 約8分
  • 🔊 5:18
  • YL 2.5–3.4
  • 英検2級目安
  • 📝 全訳つき

あらすじ奴隷として生まれ、足が不自由だったエピクテトス。彼は、世界中で読み継がれる「心の手引き書」の教師になりました。その教えは、物事を二つに分けることから始まります。

エピクテトス『提要』(エンケイリディオン。弟子アリアノスが2世紀前半に編集)をもとに

キーワード(10語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • slavery奴隷の身分
  • limp足を引きずること
  • philosophy哲学
  • handbook手引き書
  • reputation評判
  • disturbed心を乱された
  • banquet宴会
  • worthyふさわしい
  • suspicious疑わしく思う
  • anxiety不安
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About two thousand years ago, a boy was born into slavery in a town in what is now Turkey. His name was Epictetus, which simply means "acquired," or "bought." He walked with a limp all his life. As a slave in Rome, he owned nothing, not even himself. Yet this boy grew up to become one of the most respected teachers of wisdom in history. Even the emperor Marcus Aurelius learned from his words.

今からおよそ二千年前、今のトルコにあたる地方の町で、一人の男の子が奴隷として生まれました。名前はエピクテトス。「手に入れたもの」、つまり「買われたもの」というだけの意味です。エピクテトスは一生、足を引きずって歩きました。ローマの奴隷として、何一つ持っていませんでした。自分の身さえ、自分のものではなかったのです。それでもこの子は、やがて歴史上でもとりわけ尊敬される知恵の師となりました。皇帝マルクス・アウレリウスでさえ、その言葉から学んだのです。

Epictetus was allowed to study philosophy while he was still a slave, and later he was given his freedom. He taught in Rome until the emperor sent all philosophers out of the city. Then he moved to Greece and opened a school. He never wrote a book. But one of his students, Arrian, carefully wrote down his teachings, and later made a short summary called the Enchiridion. The name means "handbook," or "something to keep in your hand," because it was meant to be carried and used every day, like a tool.

エピクテトスは、奴隷の身のまま哲学を学ぶことを許され、のちに自由の身となりました。ローマで教えていましたが、皇帝が哲学者を一人残らず都から追い出したため、ギリシャに移って学校を開きました。本は一冊も書きませんでした。けれども、弟子の一人アリアノスが教えを細かく書きとめ、のちに『エンキリディオン』という短い要約にまとめました。「手引き」、つまり「手もとに置いておくもの」という意味です。道具のように毎日持ち歩いて使うためのものだったからです。

The handbook begins with one big idea. Some things are up to us, and some things are not. What is up to us? Our opinions, our choices, our desires and our dislikes. In short, the actions of our own minds. What is not up to us? Our body, our property, our reputation, and our position in society. In short, everything that is not our own action.

この手引きは、一つの大きな考えから始まります。「物事には、自分次第のものと、自分次第でないものがある」。自分次第のものとは何でしょう。自分の考え、選択、何を求め、何を避けるか。要するに、自分の心の働きです。自分次第でないものとは何でしょう。自分の体、財産、評判、世の中での地位。要するに、自分の行いでないものすべてです。

This may sound obvious. But Epictetus says that most of our unhappiness comes from mixing these two groups up. If we think that things outside our control belong to us, we will be disappointed, upset and full of blame for others and for the gods. But if we care only about what is truly ours, no one can force us, no one can stop us, and we will never need to blame anyone.

当たり前のことに聞こえるかもしれません。けれどもエピクテトスによれば、私たちの不幸のほとんどは、この二つをごちゃまぜにすることから生まれます。自分の力ではどうにもならないものを自分のものだと思いこむと、がっかりし、取り乱し、人や神々を責めてばかりいることになります。けれども、本当に自分のものだけを気にかけていれば、誰にも無理じいされず、誰にもじゃまされません。誰かを責める必要もなくなるのです。

Think about a student who is about to take an exam. What is up to her? How much she studies, how she uses her time, whether she stays calm, and whether she does her honest best on the day. What is not up to her? The difficulty of the questions, how other students do, and whether the teacher is in a good mood. If she pours all her worry into the second group, she wastes her energy. If she pours it into the first group, she uses it well.

試験をひかえた生徒を考えてみてください。この生徒次第なのは何でしょう。どれだけ勉強するか、時間をどう使うか、落ち着いていられるか、当日、正直に全力を出しきるか。この生徒次第でないのは何でしょう。問題の難しさ、ほかの生徒の出来、先生の機嫌。心配のすべてを二つ目のほうに注げば、力をむだにするだけです。一つ目のほうに注げば、力を生かせるのです。

Another of Epictetus's famous lines is this: people are not disturbed by things, but by their opinions about things. Death itself, he said, is not terrible. If it were, it would have seemed terrible to the wise man Socrates too. What is terrible is our opinion that death is terrible. So when we are upset, we should not blame others, but our own opinions. An uneducated person blames others for his troubles. A person who has started learning blames himself. A truly educated person blames neither others nor himself.

エピクテトスには、こんな有名な言葉もあります。「人を悩ませるのは、物事そのものではない。物事についての思いこみである」。死そのものは恐ろしいものではない、とエピクテトスは言いました。もし恐ろしいものなら、賢者ソクラテスにも恐ろしく思えたはずだからです。恐ろしいのは、「死は恐ろしい」という私たちの思いこみなのです。ですから、心が乱れたときは、人を責めるのではなく、自分の思いこみを疑うべきなのです。「学のない者は、自分の苦しみを人のせいにする。学びはじめた者は、自分を責める。本当に学んだ者は、人も自分も責めない」。

Epictetus also gave his students very practical exercises. Start with small things, he said. If you are fond of a clay cup, remind yourself, "It is a cup that I like." Then if it breaks, you will not be too upset. He applied this to bigger losses as well. Never say about anything, "I have lost it," he taught. Say instead, "I have given it back." Everything we have, even the people we love, is only lent to us for a while.

エピクテトスは、弟子たちにとても実際的な練習もさせました。「小さなことから始めなさい」と言うのです。気に入っている土の杯があるなら、「これは私の好きな杯だ」と自分に言い聞かせておく。そうすれば、割れてもそれほど取り乱さずにすみます。エピクテトスは、これをもっと大きな喪失にも当てはめました。「何についても『失った』と言ってはならない。『返した』と言いなさい」と教えたのです。私たちが持っているものはすべて、愛する人たちでさえ、しばらくのあいだ貸してもらっているにすぎないのです。

He also used a picture from a dinner party. Behave in life, he said, as you would at a banquet. A dish is being passed around the table. When it comes to you, reach out and politely take a share. If it passes by you, do not try to stop it. If it has not reached you yet, do not stretch out your desire toward it; wait until it comes to you. Treat children, husbands, wives, positions and wealth in the same way, and you will be a worthy guest at the table of the gods.

エピクテトスは、宴会のたとえも使っています。「人生では、宴会の席にいるときのようにふるまいなさい」。料理の皿が、食卓を順にまわってきます。自分の前に来たら、手を伸ばして、行儀よく自分の分を取りましょう。素通りしていったら、引きとめようとしてはいけません。まだ来ていないなら、欲しい気持ちを先走らせず、自分の前に来るまで待つのです。子どもにも、夫や妻にも、地位にも、富にも、同じように向き合いなさい。そうすれば、あなたは神々の食卓に招かれるにふさわしい客になるだろう、というのです。

An old story, told by later writers, shows how Epictetus lived out his own teaching. One day, his master was cruelly twisting his leg. Epictetus calmly said, "If you go on, you will break it." When the leg broke, he said only, "Didn't I tell you it would break?" We cannot know if the story is true. But it shows how people remembered him: as a man whose mind stayed free even when his body was not.

後の世の書き手たちが伝える古い話に、エピクテトスが自分の教えをどう生きたかを示すものがあります。ある日、主人がエピクテトスの脚をむごくねじりあげていました。エピクテトスは落ち着いて言いました。「そのまま続けると、折れてしまいますよ」。脚が折れると、ただこう言っただけでした。「折れると申しあげたでしょう」。本当にあった話かどうかは分かりません。けれども、人々がエピクテトスをどんな人として覚えていたかはよく分かります。体は自由でなくても、心はいつも自由だった人として、です。

Epictetus knew that this way of life is not easy. If you want to make progress, he warned, be content to be thought foolish by others about outside things. Don't try to look wise. And if some people do think you are important, be suspicious of yourself.

エピクテトスは、こうした生き方がたやすくないことも知っていました。進歩したいなら、自分次第ではない事柄については、人からばかだと思われてもかまわないと思いなさい、と戒めています。賢そうに見せようとしてはいけません。そして、もし誰かがあなたを大した人物だと思いはじめたら、そのときこそ自分を疑いなさい、というのです。

Two thousand years later, his simple division between what is up to us and what is not is still used all around the world, by athletes before big games, by soldiers and doctors under pressure, and by people learning to handle worry and stress. Many modern ways of dealing with anxiety are built on the same basic idea: change what you can, accept what you cannot, and learn to tell the difference.

二千年たった今も、「自分次第のもの」と「自分次第でないもの」を分けるエピクテトスの考え方は、世界中で使われています。大事な試合を前にしたスポーツ選手も、重圧の中で働く兵士や医者も、心配やストレスとのつきあい方を学ぶ人たちも使っています。不安に向き合う現代のやり方の多くも、同じ考えを土台にしています。変えられるものは変え、変えられないものは受け入れ、その二つを見分けられるようになる、ということです。

Try this today. Take a piece of paper and draw a line down the middle. On the left, write "Up to me." On the right, write "Not up to me." Now think of one thing you are worried about, and sort its parts into the two columns. Then spend your energy only on the left side. As for the right side, let the dish pass by, and wait calmly for your turn.

今日、試してみましょう。紙を一枚用意して、真ん中に縦の線を引いてください。左側に「自分次第」、右側に「自分次第ではない」と書きます。次に、気がかりなことを一つ思い浮かべ、その中身を二つの列に分けてみましょう。そして、力を注ぐのは左側だけにするのです。右側のことは、皿が素通りしていくのにまかせて、自分の番が来るのを落ち着いて待ちましょう。

📖 全訳をまとめて読む 読み終わってからの答え合わせに

今からおよそ二千年前、今のトルコにあたる地方の町で、一人の男の子が奴隷として生まれました。名前はエピクテトス。「手に入れたもの」、つまり「買われたもの」というだけの意味です。エピクテトスは一生、足を引きずって歩きました。ローマの奴隷として、何一つ持っていませんでした。自分の身さえ、自分のものではなかったのです。それでもこの子は、やがて歴史上でもとりわけ尊敬される知恵の師となりました。皇帝マルクス・アウレリウスでさえ、その言葉から学んだのです。

エピクテトスは、奴隷の身のまま哲学を学ぶことを許され、のちに自由の身となりました。ローマで教えていましたが、皇帝が哲学者を一人残らず都から追い出したため、ギリシャに移って学校を開きました。本は一冊も書きませんでした。けれども、弟子の一人アリアノスが教えを細かく書きとめ、のちに『エンキリディオン』という短い要約にまとめました。「手引き」、つまり「手もとに置いておくもの」という意味です。道具のように毎日持ち歩いて使うためのものだったからです。

この手引きは、一つの大きな考えから始まります。「物事には、自分次第のものと、自分次第でないものがある」。自分次第のものとは何でしょう。自分の考え、選択、何を求め、何を避けるか。要するに、自分の心の働きです。自分次第でないものとは何でしょう。自分の体、財産、評判、世の中での地位。要するに、自分の行いでないものすべてです。

当たり前のことに聞こえるかもしれません。けれどもエピクテトスによれば、私たちの不幸のほとんどは、この二つをごちゃまぜにすることから生まれます。自分の力ではどうにもならないものを自分のものだと思いこむと、がっかりし、取り乱し、人や神々を責めてばかりいることになります。けれども、本当に自分のものだけを気にかけていれば、誰にも無理じいされず、誰にもじゃまされません。誰かを責める必要もなくなるのです。

試験をひかえた生徒を考えてみてください。この生徒次第なのは何でしょう。どれだけ勉強するか、時間をどう使うか、落ち着いていられるか、当日、正直に全力を出しきるか。この生徒次第でないのは何でしょう。問題の難しさ、ほかの生徒の出来、先生の機嫌。心配のすべてを二つ目のほうに注げば、力をむだにするだけです。一つ目のほうに注げば、力を生かせるのです。

エピクテトスには、こんな有名な言葉もあります。「人を悩ませるのは、物事そのものではない。物事についての思いこみである」。死そのものは恐ろしいものではない、とエピクテトスは言いました。もし恐ろしいものなら、賢者ソクラテスにも恐ろしく思えたはずだからです。恐ろしいのは、「死は恐ろしい」という私たちの思いこみなのです。ですから、心が乱れたときは、人を責めるのではなく、自分の思いこみを疑うべきなのです。「学のない者は、自分の苦しみを人のせいにする。学びはじめた者は、自分を責める。本当に学んだ者は、人も自分も責めない」。

エピクテトスは、弟子たちにとても実際的な練習もさせました。「小さなことから始めなさい」と言うのです。気に入っている土の杯があるなら、「これは私の好きな杯だ」と自分に言い聞かせておく。そうすれば、割れてもそれほど取り乱さずにすみます。エピクテトスは、これをもっと大きな喪失にも当てはめました。「何についても『失った』と言ってはならない。『返した』と言いなさい」と教えたのです。私たちが持っているものはすべて、愛する人たちでさえ、しばらくのあいだ貸してもらっているにすぎないのです。

エピクテトスは、宴会のたとえも使っています。「人生では、宴会の席にいるときのようにふるまいなさい」。料理の皿が、食卓を順にまわってきます。自分の前に来たら、手を伸ばして、行儀よく自分の分を取りましょう。素通りしていったら、引きとめようとしてはいけません。まだ来ていないなら、欲しい気持ちを先走らせず、自分の前に来るまで待つのです。子どもにも、夫や妻にも、地位にも、富にも、同じように向き合いなさい。そうすれば、あなたは神々の食卓に招かれるにふさわしい客になるだろう、というのです。

後の世の書き手たちが伝える古い話に、エピクテトスが自分の教えをどう生きたかを示すものがあります。ある日、主人がエピクテトスの脚をむごくねじりあげていました。エピクテトスは落ち着いて言いました。「そのまま続けると、折れてしまいますよ」。脚が折れると、ただこう言っただけでした。「折れると申しあげたでしょう」。本当にあった話かどうかは分かりません。けれども、人々がエピクテトスをどんな人として覚えていたかはよく分かります。体は自由でなくても、心はいつも自由だった人として、です。

エピクテトスは、こうした生き方がたやすくないことも知っていました。進歩したいなら、自分次第ではない事柄については、人からばかだと思われてもかまわないと思いなさい、と戒めています。賢そうに見せようとしてはいけません。そして、もし誰かがあなたを大した人物だと思いはじめたら、そのときこそ自分を疑いなさい、というのです。

二千年たった今も、「自分次第のもの」と「自分次第でないもの」を分けるエピクテトスの考え方は、世界中で使われています。大事な試合を前にしたスポーツ選手も、重圧の中で働く兵士や医者も、心配やストレスとのつきあい方を学ぶ人たちも使っています。不安に向き合う現代のやり方の多くも、同じ考えを土台にしています。変えられるものは変え、変えられないものは受け入れ、その二つを見分けられるようになる、ということです。

今日、試してみましょう。紙を一枚用意して、真ん中に縦の線を引いてください。左側に「自分次第」、右側に「自分次第ではない」と書きます。次に、気がかりなことを一つ思い浮かべ、その中身を二つの列に分けてみましょう。そして、力を注ぐのは左側だけにするのです。右側のことは、皿が素通りしていくのにまかせて、自分の番が来るのを落ち着いて待ちましょう。

日本語訳:多読ベスト

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このお話の教訓 Moral

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Care about what is up to you, and let go of what is not.

自分次第のことに力を注ぎ、そうでないことは手放そう。

理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. Which of these is up to us, according to Epictetus?

Q2. What should you say instead of 'I have lost it'?

Q3. What should you do when the dish at the banquet passes by you?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

聞き読みの効果とやり方/多読三原則

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