A Dead Secret(葬られた秘密)の挿絵

A Dead Secret

葬られた秘密

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  • 英検1級・ネイティブ目安
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あらすじ京で教養を身につけて嫁いだお園が、若くして亡くなります。ところが葬式の夜から、二階の部屋のたんすの前にお園の姿が毎晩現れるようになりました。着物や飾りを寺に納めても、亡霊は消えません。困った家族は、禅寺の老僧・大玄和尚に相談します。

ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)『怪談』(英文、1904年)「葬られた秘密」の原文。底本: Project Gutenberg eBook #1210

キーワード(14語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • merchant商人
  • accomplishments教養、たしなみ
  • attendants付き添いの者
  • tansuたんす
  • invisibility見えないこと
  • transparent透き通った
  • belongings持ち物
  • parish-temple菩提寺
  • counsel助言
  • sutrasお経
  • wistfulもの言いたげな
  • lining内張り、敷き紙
  • assent同意
  • vanished消えた
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A long time ago, in the province of Tamba, there lived a rich merchant named Inamuraya Gensuké. He had a daughter called O-Sono. As she was very clever and pretty, he thought it would be a pity to let her grow up with only such teaching as the country-teachers could give her: so he sent her, in care of some trusty attendants, to Kyōto, that she might be trained in the polite accomplishments taught to the ladies of the capital. After she had thus been educated, she was married to a friend of her father's family—a merchant named Nagaraya;—and she lived happily with him for nearly four years. They had one child,—a boy. But O-Sono fell ill and died, in the fourth year after her marriage.

昔、丹波の国に、稲村屋源助という裕福な商人が住んでいた。源助には、お園という娘がいた。お園はたいそう利口で、器量もよかった。田舎の師匠に教わることだけで育てるのは惜しい、と源助は考えた。そこで、信頼のおける供の者をつけて京都へやり、都の娘たちが習う上品なたしなみを身につけさせた。こうして学びを終えると、お園は、父の家と親しい長良屋という商人に嫁いだ。夫とは四年近く、仲むつまじく暮らした。子どもも一人、男の子が生まれた。ところが嫁いで四年目に、お園は病にかかって死んでしまった。

On the night after the funeral of O-Sono, her little son said that his mamma had come back, and was in the room upstairs. She had smiled at him, but would not talk to him: so he became afraid, and ran away. Then some of the family went upstairs to the room which had been O-Sono's; and they were startled to see, by the light of a small lamp which had been kindled before a shrine in that room, the figure of the dead mother. She appeared as if standing in front of a tansu, or chest of drawers, that still contained her ornaments and her wearing-apparel. Her head and shoulders could be very distinctly seen; but from the waist downwards the figure thinned into invisibility;—it was like an imperfect reflection of her, and transparent as a shadow on water.

お園の葬式の晩、幼い息子が、「お母さんが帰ってきて、二階の部屋にいるよ」と言った。お母さんはにっこり笑ったけれど、何も話してくれなかった。それで怖くなって逃げてきたのだという。そこで家の者が何人か、お園が使っていた二階の部屋へ上がってみた。部屋には仏壇があり、その前に小さな灯明がともっていた。その明かりの中に、死んだ母親の姿が見えたので、みなぎょっとした。お園は、箪笥の前に立っているように見えた。箪笥には、お園の髪飾りや着物がまだしまってあった。頭と肩はくっきりと見えた。けれども腰から下はだんだん薄くなって、見えなくなっていた。それは、ぼんやりとしか映らない鏡の中の姿のようで、水に映る影のように透きとおっていた。

Then the folk were afraid, and left the room. Below they consulted together; and the mother of O-Sono's husband said: "A woman is fond of her small things; and O-Sono was much attached to her belongings. Perhaps she has come back to look at them. Many dead persons will do that,—unless the things be given to the parish-temple. If we present O-Sono's robes and girdles to the temple, her spirit will probably find rest."

人々は怖くなって、部屋を出た。下へおりて相談していると、お園の夫の母親がこう言った。「女というものは、こまごました持ち物がかわいいものです。お園も、自分の持ち物をとても大事にしていました。もしかしたら、それを見に帰ってきたのかもしれません。死んだ人には、そういうことがよくあるのです。持ち物をお寺に納めてしまえば別ですけれど。お園の着物や帯をお寺に納めれば、あの子の魂も、きっと安らかになるでしょう」

It was agreed that this should be done as soon as possible. So on the following morning the drawers were emptied; and all of O-Sono's ornaments and dresses were taken to the temple. But she came back the next night, and looked at the tansu as before. And she came back also on the night following, and the night after that, and every night;—and the house became a house of fear.

できるだけ早くそうしよう、と話が決まった。翌朝、箪笥の引き出しは空にされ、お園の髪飾りも着物もすべて寺へ運ばれた。ところが次の晩も、お園は帰ってきて、前と同じように箪笥を見つめていた。その次の晩も、そのまた次の晩も、毎晩帰ってきた。こうして家じゅうが、恐ろしさにおびえる家になってしまった。

The mother of O-Sono's husband then went to the parish-temple, and told the chief priest all that had happened, and asked for ghostly counsel. The temple was a Zen temple; and the head-priest was a learned old man, known as Daigen Oshō. He said: "There must be something about which she is anxious, in or near that tansu."—"But we emptied all the drawers," replied the woman;—"there is nothing in the tansu."—"Well," said Daigen Oshō, "to-night I shall go to your house, and keep watch in that room, and see what can be done. You must give orders that no person shall enter the room while I am watching, unless I call."

そこでお園の夫の母親は檀那寺へ行き、これまでのことをすべて住職に話して、どうしたらよいか尋ねた。その寺は禅寺で、住職は大玄和尚(だいげんおしょう)という学問の深い老僧だった。和尚は言った。「あの箪笥の中か、そのそばに、何か気がかりなものがあるにちがいない」。「でも、引き出しはみな空にいたしました」と母親は答えた。「箪笥の中には何もございません」。「よろしい」と大玄和尚は言った。「今夜、わしがお宅へ参って、その部屋で番をし、どうすればよいか見てみよう。わしが番をしているあいだは、わしが呼ばぬかぎり、誰も部屋に入らぬよう言いつけておきなさい」

After sundown, Daigen Oshō went to the house, and found the room made ready for him. He remained there alone, reading the sûtras; and nothing appeared until after the Hour of the Rat. Then the figure of O-Sono suddenly outlined itself in front of the tansu. Her face had a wistful look; and she kept her eyes fixed upon the tansu.

日が暮れると、大玄和尚はその家へ行った。部屋はもう用意してあった。和尚はそこに一人で座り、経を読んだ。子の刻(真夜中ごろ)を過ぎるまで、何も現れなかった。すると、箪笥の前に、お園の姿がふっと浮かび上がった。何かを恋しがるような顔で、じっと箪笥を見つめていた。

The priest uttered the holy formula prescribed in such cases, and then, addressing the figure by the kaimyō of O-Sono, said:—"I have come here in order to help you. Perhaps in that tansu there is something about which you have reason to feel anxious. Shall I try to find it for you?" The shadow appeared to give assent by a slight motion of the head; and the priest, rising, opened the top drawer. It was empty. Successively he opened the second, the third, and the fourth drawer;—he searched carefully behind them and beneath them;—he carefully examined the interior of the chest. He found nothing. But the figure remained gazing as wistfully as before. "What can she want?" thought the priest. Suddenly it occurred to him that there might be something hidden under the paper with which the drawers were lined. He removed the lining of the first drawer:—nothing! He removed the lining of the second and third drawers:—still nothing. But under the lining of the lowermost drawer he found—a letter. "Is this the thing about which you have been troubled?" he asked. The shadow of the woman turned toward him,—her faint gaze fixed upon the letter. "Shall I burn it for you?" he asked. She bowed before him. "It shall be burned in the temple this very morning," he promised;—"and no one shall read it, except myself." The figure smiled and vanished.

和尚は、こういうときに唱えると決まっている経文を唱えた。それから、お園の戒名で呼びかけて言った。「わしは、あなたを助けるためにここへ来たのです。あの箪笥の中に、何か気がかりなものがあるのでしょう。わしが探してさしあげようか」。影は、かすかにうなずいたように見えた。和尚は立ち上がって、いちばん上の引き出しを開けた。空だった。続けて二段目、三段目、四段目を開けた。引き出しの裏も下も、念入りに探した。箪笥の内側も、念入りに調べた。だが何も見つからなかった。それでもお園は、前と同じように切なげに見つめている。「いったい何がほしいのだろう」と和尚は考えた。ふと、引き出しの内側に張ってある紙の下に、何か隠してあるのではないかと思いついた。一段目の引き出しの紙をはがしてみた。何もない。二段目と三段目の紙もはがしてみた。やはり何もない。ところが、いちばん下の引き出しの紙をはがすと、その下に、一通の手紙があった。「あなたが気に病んでいたのは、これですか」と和尚は尋ねた。女の影は和尚のほうを向き、かすかなまなざしで手紙を見つめた。「わしが焼いてさしあげようか」と和尚が聞くと、お園は和尚の前で頭を下げた。「今朝のうちに、寺で焼いてしまおう」と和尚は約束した。「わしのほかには、誰にも読ませはしない」。お園の姿はほほえんで、消えた。

Dawn was breaking as the priest descended the stairs, to find the family waiting anxiously below. "Do not be anxious," he said to them: "She will not appear again." And she never did.

和尚が階段をおりていくと、夜が明けはじめていた。下では家の者たちが心配そうに待っていた。「案ずることはない」と和尚はみなに言った。「あの人は、もう出てはこない」。そして本当に、お園は二度と現れなかった。

The letter was burned. It was a love-letter written to O-Sono in the time of her studies at Kyōto. But the priest alone knew what was in it; and the secret died with him.

手紙は焼かれた。それは、お園が京都で学んでいたころに受け取った恋文だった。だが何が書いてあったかは、和尚のほかに誰も知らない。その秘密は、和尚とともに死んだのである。

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昔、丹波の国に、稲村屋源助という裕福な商人が住んでいた。源助には、お園という娘がいた。お園はたいそう利口で、器量もよかった。田舎の師匠に教わることだけで育てるのは惜しい、と源助は考えた。そこで、信頼のおける供の者をつけて京都へやり、都の娘たちが習う上品なたしなみを身につけさせた。こうして学びを終えると、お園は、父の家と親しい長良屋という商人に嫁いだ。夫とは四年近く、仲むつまじく暮らした。子どもも一人、男の子が生まれた。ところが嫁いで四年目に、お園は病にかかって死んでしまった。

お園の葬式の晩、幼い息子が、「お母さんが帰ってきて、二階の部屋にいるよ」と言った。お母さんはにっこり笑ったけれど、何も話してくれなかった。それで怖くなって逃げてきたのだという。そこで家の者が何人か、お園が使っていた二階の部屋へ上がってみた。部屋には仏壇があり、その前に小さな灯明がともっていた。その明かりの中に、死んだ母親の姿が見えたので、みなぎょっとした。お園は、箪笥の前に立っているように見えた。箪笥には、お園の髪飾りや着物がまだしまってあった。頭と肩はくっきりと見えた。けれども腰から下はだんだん薄くなって、見えなくなっていた。それは、ぼんやりとしか映らない鏡の中の姿のようで、水に映る影のように透きとおっていた。

人々は怖くなって、部屋を出た。下へおりて相談していると、お園の夫の母親がこう言った。「女というものは、こまごました持ち物がかわいいものです。お園も、自分の持ち物をとても大事にしていました。もしかしたら、それを見に帰ってきたのかもしれません。死んだ人には、そういうことがよくあるのです。持ち物をお寺に納めてしまえば別ですけれど。お園の着物や帯をお寺に納めれば、あの子の魂も、きっと安らかになるでしょう」

できるだけ早くそうしよう、と話が決まった。翌朝、箪笥の引き出しは空にされ、お園の髪飾りも着物もすべて寺へ運ばれた。ところが次の晩も、お園は帰ってきて、前と同じように箪笥を見つめていた。その次の晩も、そのまた次の晩も、毎晩帰ってきた。こうして家じゅうが、恐ろしさにおびえる家になってしまった。

そこでお園の夫の母親は檀那寺へ行き、これまでのことをすべて住職に話して、どうしたらよいか尋ねた。その寺は禅寺で、住職は大玄和尚(だいげんおしょう)という学問の深い老僧だった。和尚は言った。「あの箪笥の中か、そのそばに、何か気がかりなものがあるにちがいない」。「でも、引き出しはみな空にいたしました」と母親は答えた。「箪笥の中には何もございません」。「よろしい」と大玄和尚は言った。「今夜、わしがお宅へ参って、その部屋で番をし、どうすればよいか見てみよう。わしが番をしているあいだは、わしが呼ばぬかぎり、誰も部屋に入らぬよう言いつけておきなさい」

日が暮れると、大玄和尚はその家へ行った。部屋はもう用意してあった。和尚はそこに一人で座り、経を読んだ。子の刻(真夜中ごろ)を過ぎるまで、何も現れなかった。すると、箪笥の前に、お園の姿がふっと浮かび上がった。何かを恋しがるような顔で、じっと箪笥を見つめていた。

和尚は、こういうときに唱えると決まっている経文を唱えた。それから、お園の戒名で呼びかけて言った。「わしは、あなたを助けるためにここへ来たのです。あの箪笥の中に、何か気がかりなものがあるのでしょう。わしが探してさしあげようか」。影は、かすかにうなずいたように見えた。和尚は立ち上がって、いちばん上の引き出しを開けた。空だった。続けて二段目、三段目、四段目を開けた。引き出しの裏も下も、念入りに探した。箪笥の内側も、念入りに調べた。だが何も見つからなかった。それでもお園は、前と同じように切なげに見つめている。「いったい何がほしいのだろう」と和尚は考えた。ふと、引き出しの内側に張ってある紙の下に、何か隠してあるのではないかと思いついた。一段目の引き出しの紙をはがしてみた。何もない。二段目と三段目の紙もはがしてみた。やはり何もない。ところが、いちばん下の引き出しの紙をはがすと、その下に、一通の手紙があった。「あなたが気に病んでいたのは、これですか」と和尚は尋ねた。女の影は和尚のほうを向き、かすかなまなざしで手紙を見つめた。「わしが焼いてさしあげようか」と和尚が聞くと、お園は和尚の前で頭を下げた。「今朝のうちに、寺で焼いてしまおう」と和尚は約束した。「わしのほかには、誰にも読ませはしない」。お園の姿はほほえんで、消えた。

和尚が階段をおりていくと、夜が明けはじめていた。下では家の者たちが心配そうに待っていた。「案ずることはない」と和尚はみなに言った。「あの人は、もう出てはこない」。そして本当に、お園は二度と現れなかった。

手紙は焼かれた。それは、お園が京都で学んでいたころに受け取った恋文だった。だが何が書いてあったかは、和尚のほかに誰も知らない。その秘密は、和尚とともに死んだのである。

日本語訳:多読ベスト

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理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. Where did O-Sono's ghost always appear?

Q2. What did the family do first to help her spirit find rest?

Q3. Who alone ever knew what was in the thing that was found?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

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