Shiro, the White Dog(白)の挿絵

Shiro, the White Dog

白

  • 📖 524 words
  • ⏱ 約7分
  • YL 1.0–1.4
  • 英検3級目安
  • 📝 全訳つき

あらすじある春の日、白い犬の白は、となりの家の友だち黒が犬捕りにねらわれているのを見てしまいます。こわくなって逃げ帰った白に、思いもよらないことが起こりました。

芥川龍之介『白』(1923年)をもとに再話

キーワード(9語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • dog catcher犬捕り(野良犬をつかまえる人)
  • rope縄
  • barkedほえた
  • coward臆病者
  • puppy子犬
  • cruel意地の悪い・残酷な
  • escaped逃げ出した
  • ashamed恥じて
  • hugged抱きしめた

🔊 音声は準備中です。もうしばらくお待ちください。

One spring afternoon, a white dog named Shiro was walking down a quiet street. In Japanese, "shiro" means "white." He was smelling the ground and enjoying the warm sun.

ある春の午後のことです。白という名前の白い犬が、静かな通りを歩いていました。日本語の「しろ」は、白い色を表す言葉です。白は地面のにおいをかぎながら、あたたかいお日さまを楽しんでいました。

When he turned a corner, he suddenly stopped. A man was hiding behind a tree. He had a long rope in his hand. He was a dog catcher, and he was watching a black dog. The black dog was Kuro, Shiro's friend from the house next door. Kuro was eating some bread, and he did not see the man.

角を曲がったとき、白は急に立ち止まりました。木のかげに、男がひとりかくれていたのです。手には長い縄を持っています。犬捕りでした。男は一匹の黒い犬をじっと見ていました。それは白の友だちで、となりの家に住む黒でした。黒はパンを食べていて、男に気づいていませんでした。

Shiro wanted to shout, "Kuro, run!" But at that moment, the dog catcher looked at Shiro. His eyes said, "Be quiet, or you will be next." Shiro was so afraid that he forgot everything. He ran away as fast as he could. Behind him, he heard Kuro crying out.

白は「黒くん、逃げろ!」とさけびたいと思いました。けれどもそのとき、犬捕りが白のほうを見ました。その目は「だまっていろ。さもないと次はおまえだぞ」と言っていました。白はこわくて、何もかも忘れてしまいました。そして、いちもくさんに逃げ出しました。うしろで、黒が悲鳴をあげるのが聞こえました。

Shiro ran all the way home. In the garden, he found the two children of the house, a girl and her little brother. "Help! Help!" he barked. "The dog catcher has caught Kuro!"

白は家までずっと走りつづけました。庭には、その家の子どもがふたりいました。女の子と、その弟です。「助けて! 助けて!」と、白はほえました。「犬捕りが黒くんをつかまえたんだ!」

But the children only looked at him in surprise. "Whose dog is this?" asked the boy. "I don't know," said the girl. "It's a strange black dog. Go away, dirty dog!" The boy picked up his baseball bat.

ところが子どもたちは、びっくりして白を見るばかりです。「どこの犬だろう?」と弟がたずねました。「知らないわ」と姉が答えました。「見たことのない黒い犬よ。あっちへ行きなさい、きたない犬!」弟は野球のバットを手に取りました。

Shiro could not understand. Then he looked down at his own legs. They were black! His back and his tail were black, too. He was as black as an old cooking pot. When the bat came down, Shiro ran out of the garden, crying.

白にはわけがわかりませんでした。それから、自分の足を見下ろしました。足がまっ黒です! 背中もしっぽも黒くなっていました。白は、古いなべのようにまっ黒になっていたのです。バットがふり下ろされると、白は泣きながら庭を飛び出しました。

After that, Shiro lived alone. He was very lonely and sad. "Maybe I became black because I ran away from Kuro," he thought. "I was a coward. I didn't help my friend." He hated himself, and he decided never to be a coward again.

それから白は、ひとりぼっちで暮らしました。とてもさびしく、悲しい毎日でした。「黒くんを見捨てて逃げたから、ぼくは黒くなったのかもしれない」と、白は思いました。「ぼくは臆病者だった。友だちを助けなかった」白は自分がいやでたまらず、二度と臆病者にはなるまいと心に決めました。

Soon people began to talk about a brave black dog. The black dog pulled a little child out of the way of a train. He saved a puppy from some cruel boys. He found some lost students in the snowy mountains. A wolf escaped from a zoo, and he even fought it. The newspapers wrote about him again and again, but nobody knew where he came from.

まもなく、勇敢な黒い犬のうわさが広まりはじめました。その黒い犬は、小さな子どもを電車の前から引っぱって助けました。意地の悪い少年たちから子犬を救いました。雪山で道に迷った学生たちを見つけました。動物園から逃げ出したオオカミと戦ったことさえありました。新聞は何度もその犬のことを書きましたが、どこから来た犬なのか、だれも知りませんでした。

Shiro was not trying to be a hero. He was so ashamed that he did not care what happened to him. He ran into fire and danger without fear. But every time, he came back alive.

白は、英雄になろうとしていたわけではありません。自分のしたことを恥じるあまり、自分の身がどうなってもかまわないと思っていたのです。白は火の中にも危ない場所にも、こわがらずに飛びこんでいきました。けれども、そのたびに生きて帰ってきたのです。

One autumn night, Shiro came back to his old home. The moon was big and bright. "I want to see the children one more time," he thought. He lay down next to his old dog house and fell asleep.

ある秋の夜、白はなつかしい家に帰ってきました。月が大きく、明るくかがやいていました。「もう一度だけ、あの子たちに会いたい」と、白は思いました。そして古い犬小屋のそばに横になり、眠ってしまいました。

In the morning, the children came out into the garden. The girl cried out, "Look! Shiro has come back!" Her brother ran to him and hugged him around the neck.

朝になって、子どもたちが庭に出てきました。姉が声をあげました。「見て! 白が帰ってきたわ!」弟が駆け寄って、白の首に抱きつきました。

Shiro looked up into the girl's dark eyes. In her eyes, he could see a little dog. It was a white dog, as white as snow. Shiro was white again! Tears came to his eyes, and he could not stop them. The children did not know why their dog was crying, but they held him close.

白は、姉の黒い瞳を見上げました。その瞳の中に、小さな犬が映っていました。雪のようにまっ白な犬です。白はまた白くなっていたのです! 白の目に涙があふれて、止まりませんでした。子どもたちは、なぜ白が泣いているのかわかりませんでしたが、白をぎゅっと抱きしめてやりました。

📖 全訳をまとめて読む 読み終わってからの答え合わせに

ある春の午後のことです。白という名前の白い犬が、静かな通りを歩いていました。日本語の「しろ」は、白い色を表す言葉です。白は地面のにおいをかぎながら、あたたかいお日さまを楽しんでいました。

角を曲がったとき、白は急に立ち止まりました。木のかげに、男がひとりかくれていたのです。手には長い縄を持っています。犬捕りでした。男は一匹の黒い犬をじっと見ていました。それは白の友だちで、となりの家に住む黒でした。黒はパンを食べていて、男に気づいていませんでした。

白は「黒くん、逃げろ!」とさけびたいと思いました。けれどもそのとき、犬捕りが白のほうを見ました。その目は「だまっていろ。さもないと次はおまえだぞ」と言っていました。白はこわくて、何もかも忘れてしまいました。そして、いちもくさんに逃げ出しました。うしろで、黒が悲鳴をあげるのが聞こえました。

白は家までずっと走りつづけました。庭には、その家の子どもがふたりいました。女の子と、その弟です。「助けて! 助けて!」と、白はほえました。「犬捕りが黒くんをつかまえたんだ!」

ところが子どもたちは、びっくりして白を見るばかりです。「どこの犬だろう?」と弟がたずねました。「知らないわ」と姉が答えました。「見たことのない黒い犬よ。あっちへ行きなさい、きたない犬!」弟は野球のバットを手に取りました。

白にはわけがわかりませんでした。それから、自分の足を見下ろしました。足がまっ黒です! 背中もしっぽも黒くなっていました。白は、古いなべのようにまっ黒になっていたのです。バットがふり下ろされると、白は泣きながら庭を飛び出しました。

それから白は、ひとりぼっちで暮らしました。とてもさびしく、悲しい毎日でした。「黒くんを見捨てて逃げたから、ぼくは黒くなったのかもしれない」と、白は思いました。「ぼくは臆病者だった。友だちを助けなかった」白は自分がいやでたまらず、二度と臆病者にはなるまいと心に決めました。

まもなく、勇敢な黒い犬のうわさが広まりはじめました。その黒い犬は、小さな子どもを電車の前から引っぱって助けました。意地の悪い少年たちから子犬を救いました。雪山で道に迷った学生たちを見つけました。動物園から逃げ出したオオカミと戦ったことさえありました。新聞は何度もその犬のことを書きましたが、どこから来た犬なのか、だれも知りませんでした。

白は、英雄になろうとしていたわけではありません。自分のしたことを恥じるあまり、自分の身がどうなってもかまわないと思っていたのです。白は火の中にも危ない場所にも、こわがらずに飛びこんでいきました。けれども、そのたびに生きて帰ってきたのです。

ある秋の夜、白はなつかしい家に帰ってきました。月が大きく、明るくかがやいていました。「もう一度だけ、あの子たちに会いたい」と、白は思いました。そして古い犬小屋のそばに横になり、眠ってしまいました。

朝になって、子どもたちが庭に出てきました。姉が声をあげました。「見て! 白が帰ってきたわ!」弟が駆け寄って、白の首に抱きつきました。

白は、姉の黒い瞳を見上げました。その瞳の中に、小さな犬が映っていました。雪のようにまっ白な犬です。白はまた白くなっていたのです! 白の目に涙があふれて、止まりませんでした。子どもたちは、なぜ白が泣いているのかわかりませんでしたが、白をぎゅっと抱きしめてやりました。

日本語訳:多読ベスト

押すと、この端末の読書記録(100万語メーター)に語数が加わります。

理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. What did Shiro do when he saw the dog catcher?

Q2. Why did the children chase Shiro away?

Q3. How did Shiro know that he was white again?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

聞き読みの効果とやり方/多読三原則

次に読む

Level 2 の読み物をもっと見る →