Kuzunoha, the Fox Wife(葛の葉(きつね女房))の挿絵
Level 3 Pre-Intermediate日本の昔話と名作

Kuzunoha, the Fox Wife

葛の葉(きつね女房)

  • 📖 637 words
  • ⏱ 約6分
  • YL 1.5–2.4
  • 英検準2級目安
  • 📝 全訳つき

あらすじ狩人に追われた白いきつねを助けた若者・保名。やがて彼の前に、葛の葉という美しい娘があらわれます。

日本の伝説「葛の葉」(浄瑠璃『芦屋道満大内鑑』1734年 などで知られる)

キーワード(10語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • kitsuneきつね
  • frightenedおびえた
  • vineつる(植物)
  • wounds傷
  • chrysanthemums菊の花
  • pale青白い
  • in human form人間の姿で
  • sliding door障子・ふすま
  • crystal ball水晶の玉
  • fortune telling占い

🔊 音声は準備中です。もうしばらくお待ちください。

Long ago, in the land of Izumi, there was a large, quiet forest called Shinoda. Many foxes lived in this forest. In Japan, people have always believed that foxes, or kitsune, have magic powers. Some foxes can even change into human beings.

むかし、和泉の国に、信太という大きな静かな森がありました。この森には、たくさんのキツネがすんでいました。日本では、キツネにはふしぎな力があると、むかしから信じられてきました。中には、人間に化けることのできるキツネもいるのです。

One day, a young man named Abe no Yasuna came to pray at a shrine in Shinoda forest. While he was resting under a tree, he heard dogs barking and men shouting. Suddenly, a beautiful white fox ran out of the bushes. It was breathing hard, and it looked at him with frightened eyes.

ある日、安倍保名という若者が、信太の森にある神社へお参りに来ました。保名が木の下で休んでいると、犬のほえる声と男たちのさけび声が聞こえてきました。すると、とつぜん、しげみの中から美しい白ギツネが飛び出してきました。キツネは息を切らし、おびえた目で保名を見つめました。

Yasuna understood at once that the hunters were after it. "Quick, hide here," he whispered, and he hid the fox behind his long robe.

保名はすぐに、狩人たちがこのキツネを追っているのだと分かりました。「早く、ここにかくれなさい」とささやいて、保名は長い着物のかげにキツネをかくしました。

A moment later, a group of hunters came running. "Did you see a white fox?" their leader asked. "No," said Yasuna. But the hunters did not believe him. They pushed him and hit him, and he fell to the ground and hurt his arm. Still, he did not tell them anything. At last, the hunters gave up and went away.

まもなく、狩人の一団がかけつけてきました。「白いキツネを見なかったか?」と、かしらがたずねました。「いいや」と、保名は答えました。けれども、狩人たちは信じませんでした。保名をつき飛ばし、なぐりつけたので、保名は地面にたおれて腕にけがをしました。それでも、保名は何も話しませんでした。とうとう狩人たちはあきらめて、立ち去っていきました。

As Yasuna lay on the ground, a young woman appeared from among the trees. She was gentle and beautiful, and she said her name was Kuzunoha. Kuzu is a kind of vine that grows in the forest, and ha means leaf. She helped him get up, cleaned his wounds, and took care of him until he was well again.

保名が地面に横たわっていると、木々のあいだから一人の若い女の人があらわれました。やさしく美しいその人は、葛の葉と名のりました。「葛」は森に生えるつる草の一種で、「葉」は葉っぱのことです。葛の葉は保名を助け起こし、傷を洗い、元気になるまで看病してくれました。

Yasuna fell in love with her, and she loved him, too. They got married and lived together happily. After a year, a baby boy was born to them. They named him Doji. Kuzunoha was a kind wife and a loving mother, and the little family's house was always full of laughter.

保名は葛の葉を好きになり、葛の葉もまた保名を愛しました。二人は夫婦となって、幸せにくらしました。一年後、二人のあいだに男の子が生まれました。二人はその子を童子と名づけました。葛の葉はやさしい妻であり、愛情深いお母さんで、親子三人の小さな家には、いつも笑い声があふれていました。

Five or six years passed. One autumn day, Kuzunoha was sitting in the garden, looking at the white chrysanthemums. The flowers were so beautiful that she forgot herself for a moment. Without knowing it, she let a long white tail come out from under her kimono.

五、六年がすぎました。ある秋の日、葛の葉は庭にすわって、白い菊の花をながめていました。花があまりに美しかったので、葛の葉はほんのいっとき、われを忘れてしまいました。そして知らず知らずのうちに、着物のすそから長い白いしっぽを出してしまったのです。

Little Doji was playing nearby. "Mother!" he cried. "Why do you have a tail?"

そばで遊んでいた幼い童子が、声をあげました。「お母さん!どうしてしっぽがあるの?」

Kuzunoha's face turned pale. She knew her secret was out. She was the white fox that Yasuna had saved in the forest. She had come to him in human form to thank him, and she had stayed because she loved him. But a fox who has been seen in her true form cannot stay in the human world.

葛の葉の顔は真っ青になりました。秘密が知られてしまったのです。葛の葉は、あの日、森で保名に助けられた白ギツネだったのです。お礼をするために、人の姿になって保名のもとへやって来ました。そして保名を愛するようになったので、そのまま一緒にくらしていたのでした。けれども、本当の姿を見られてしまったキツネは、人間の世界にいることはできないのです。

That evening, while Yasuna was out, Kuzunoha held her son tightly for a long time. Then she took a brush and wrote a poem on the white paper of the sliding door. "If you miss me, come and find me in the forest of Shinoda in Izumi, where the kuzu leaves turn over in the wind." Then she was gone.

その夕方、保名が出かけているあいだに、葛の葉は長いあいだ、わが子をしっかりとだきしめていました。それから筆を取って、白い障子に歌を書きつけました。「恋しくば たずね来てみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉」(わたしが恋しくなったら、和泉の信太の森へたずねていらっしゃい。風に葛の葉が裏返る、あの森へ)。そして、葛の葉は姿を消しました。

When Yasuna came home and read the poem, he understood everything. He took Doji by the hand, and they walked all the way to Shinoda forest. They called her name again and again among the trees.

家に帰って歌を読んだ保名は、すべてをさとりました。保名は童子の手を引いて、はるばる信太の森まで歩いていきました。二人は木々のあいだで、何度も何度も葛の葉の名を呼びました。

At last, a white fox came out from the bushes. As they watched, it changed into Kuzunoha for just a moment. She smiled sadly at her husband and touched her son's face. She gave Doji a small crystal ball. "Keep this with you," she said. "It will help you understand the voices of birds and animals." Then she became a fox again and ran deep into the forest.

とうとう、しげみの中から一ぴきの白ギツネが出てきました。二人が見守るうちに、キツネはほんのいっときだけ葛の葉の姿になりました。葛の葉は夫にさびしげにほほえみかけ、息子の顔にそっとふれました。そして童子に、小さな水晶の玉を渡しました。「これをいつも持っていなさい」と、葛の葉は言いました。「鳥やけものの声が分かるようになりますよ」それから葛の葉はまたキツネの姿にもどり、森の奥深くへと走り去っていきました。

Doji grew up to be a very wise man. He could read the stars, see the future, and understand things that other people could not. Today, people know him by his adult name, Abe no Seimei, the greatest onmyoji, or master of magic and fortune telling, in Japanese history. And people say that his great power came from his mother, the white fox of Shinoda.

童子は成長して、たいへんかしこい人になりました。星を読み、未来を見とおし、ほかの人には分からないことも理解できました。今では、大人になってからの名前のほうがよく知られています。安倍晴明。日本の歴史でいちばんの陰陽師、つまり術と占いの達人です。そして、晴明の大きな力は、お母さんである信太の白ギツネからさずかったものだといわれています。

📖 全訳をまとめて読む 読み終わってからの答え合わせに

むかし、和泉の国に、信太という大きな静かな森がありました。この森には、たくさんのキツネがすんでいました。日本では、キツネにはふしぎな力があると、むかしから信じられてきました。中には、人間に化けることのできるキツネもいるのです。

ある日、安倍保名という若者が、信太の森にある神社へお参りに来ました。保名が木の下で休んでいると、犬のほえる声と男たちのさけび声が聞こえてきました。すると、とつぜん、しげみの中から美しい白ギツネが飛び出してきました。キツネは息を切らし、おびえた目で保名を見つめました。

保名はすぐに、狩人たちがこのキツネを追っているのだと分かりました。「早く、ここにかくれなさい」とささやいて、保名は長い着物のかげにキツネをかくしました。

まもなく、狩人の一団がかけつけてきました。「白いキツネを見なかったか?」と、かしらがたずねました。「いいや」と、保名は答えました。けれども、狩人たちは信じませんでした。保名をつき飛ばし、なぐりつけたので、保名は地面にたおれて腕にけがをしました。それでも、保名は何も話しませんでした。とうとう狩人たちはあきらめて、立ち去っていきました。

保名が地面に横たわっていると、木々のあいだから一人の若い女の人があらわれました。やさしく美しいその人は、葛の葉と名のりました。「葛」は森に生えるつる草の一種で、「葉」は葉っぱのことです。葛の葉は保名を助け起こし、傷を洗い、元気になるまで看病してくれました。

保名は葛の葉を好きになり、葛の葉もまた保名を愛しました。二人は夫婦となって、幸せにくらしました。一年後、二人のあいだに男の子が生まれました。二人はその子を童子と名づけました。葛の葉はやさしい妻であり、愛情深いお母さんで、親子三人の小さな家には、いつも笑い声があふれていました。

五、六年がすぎました。ある秋の日、葛の葉は庭にすわって、白い菊の花をながめていました。花があまりに美しかったので、葛の葉はほんのいっとき、われを忘れてしまいました。そして知らず知らずのうちに、着物のすそから長い白いしっぽを出してしまったのです。

そばで遊んでいた幼い童子が、声をあげました。「お母さん!どうしてしっぽがあるの?」

葛の葉の顔は真っ青になりました。秘密が知られてしまったのです。葛の葉は、あの日、森で保名に助けられた白ギツネだったのです。お礼をするために、人の姿になって保名のもとへやって来ました。そして保名を愛するようになったので、そのまま一緒にくらしていたのでした。けれども、本当の姿を見られてしまったキツネは、人間の世界にいることはできないのです。

その夕方、保名が出かけているあいだに、葛の葉は長いあいだ、わが子をしっかりとだきしめていました。それから筆を取って、白い障子に歌を書きつけました。「恋しくば たずね来てみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉」(わたしが恋しくなったら、和泉の信太の森へたずねていらっしゃい。風に葛の葉が裏返る、あの森へ)。そして、葛の葉は姿を消しました。

家に帰って歌を読んだ保名は、すべてをさとりました。保名は童子の手を引いて、はるばる信太の森まで歩いていきました。二人は木々のあいだで、何度も何度も葛の葉の名を呼びました。

とうとう、しげみの中から一ぴきの白ギツネが出てきました。二人が見守るうちに、キツネはほんのいっときだけ葛の葉の姿になりました。葛の葉は夫にさびしげにほほえみかけ、息子の顔にそっとふれました。そして童子に、小さな水晶の玉を渡しました。「これをいつも持っていなさい」と、葛の葉は言いました。「鳥やけものの声が分かるようになりますよ」それから葛の葉はまたキツネの姿にもどり、森の奥深くへと走り去っていきました。

童子は成長して、たいへんかしこい人になりました。星を読み、未来を見とおし、ほかの人には分からないことも理解できました。今では、大人になってからの名前のほうがよく知られています。安倍晴明。日本の歴史でいちばんの陰陽師、つまり術と占いの達人です。そして、晴明の大きな力は、お母さんである信太の白ギツネからさずかったものだといわれています。

日本語訳:多読ベスト

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理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. Why was Yasuna hurt?

Q2. How did Doji find out his mother's secret?

Q3. Where did Kuzunoha write her poem?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

聞き読みの効果とやり方/多読三原則

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