Bisei's Promise(尾生の信)の挿絵

Bisei's Promise

尾生の信

  • 621 words
  • 約8分
  • YL 1.0–1.4
  • 英検3級目安
  • 全訳つき

あらすじ橋の下で、恋人が来るのを待つ尾生。日がしずみ、潮が満ちてきても、女はまだ来ません。中国の古い話をもとにした、美しくふしぎな短い物語です。

芥川龍之介『尾生の信』(1920年)をもとに再話

ORIGINAL TEXT

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この話は日本語の原文(青空文庫)でも読めます。青空文庫の本文を、そのまま載せています。やさしい版で筋をつかんでから原文へ進むと、作者の言葉をじっくり味わえます。

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青空文庫の本文(新字新仮名・約1,600字)。

キーワード(8語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • ivyツタ
  • railらんかん・手すり
  • reedsアシ(水辺の草)
  • willow柳
  • heronサギ(鳥)
  • tide潮(しお)
  • soul魂
  • reflection(水面などに)映った姿

音声は準備中です。もうしばらくお待ちください。

日本語訳の一部には生成AIを使っており、AIによる3重のチェックと人の目で確かめています。まだ人の目を通っていない訳もあるため、ニュアンスがずれている所があるかもしれません。日本語訳について

Bisei stood under a bridge. He waited there for a woman, and some time went by.

尾生は橋の下にたたずんでいた。女が来るのを待って、もうしばらくたっていた。

He looked up. Ivy grew halfway up the high stone rail of the bridge. Now and then people crossed the bridge, and the bottoms of their white clothes moved slowly in the wind. The setting sun shone brightly on them. But the woman still did not come.

見上げると、高い石のらんかんには、つたが半ばはいかかっていた。ときおり人が橋を渡っていき、その白い着物のすそが、ゆったりと風に吹かれていた。あざやかな夕日が、それを照らしていた。が、女はまだ来ない。

Bisei whistled softly and looked around under the bridge. There was a small area of yellow mud, and then the water began. Among the reeds at the water's edge, there were many round holes. Maybe crabs lived in them. Each time a wave hit them, there was a soft sound. But the woman still did not come.

尾生はそっと口笛を吹きながら、橋の下を見わたした。そこには黄色い泥の砂地が少しあって、すぐに水へと続いていた。水際のあしの間には、丸い穴がいくつもあいていた。たぶん蟹のすみかだろう。波が当たるたびに、かすかな音がした。が、女はまだ来ない。

Bisei was getting a little impatient. He walked to the edge of the water and looked up and down the quiet river. Not a single boat passed. Green reeds grew thickly along the river, and here and there were round willow trees. Only a narrow band of clear water wound quietly through the reeds. The reflection of one cloud shone on it. But the woman still did not come.

尾生は少し待ちどおしくなってきた。水際まで歩いていって、静かな川を見わたした。舟は一そうも通らなかった。川ぞいには青いあしがびっしりと生え、ところどころに、柳が丸くこんもりと茂っていた。その間を、細い帯のような澄んだ水が、ひっそりとうねっているだけだった。その水に、雲の影が一つ、光って映っていた。が、女はまだ来ない。

Bisei walked back and forth on the mud. It was slowly getting dark. He listened to the quiet around him. No one was crossing the bridge now. He could not hear any shoes, horses, or carts. He could hear only the wind, the reeds, and the water. Then, somewhere, a heron cried loudly. Bisei stopped. The tide was coming in. The water was shining closer than before. But the woman still did not come.

尾生は砂地の上を、行ったり来たりした。あたりは、だんだん暗くなっていった。尾生は、まわりの静けさに耳をすませた。もう橋を渡る人もいないらしかった。くつの音も、ひづめの音も、車の音も聞こえなかった。聞こえるのは、風の音、あしの音、水の音だけだった。そのとき、どこかで、さぎがけたたましく鳴いた。尾生は立ち止まった。潮が満ちはじめたのだ。水の光が、さっきより近くに見えた。が、女はまだ来ない。

Bisei frowned and began to walk faster and faster in the dark under the bridge. Little by little, the river water came up over the mud. The cold smell of water and river plants touched his skin. He looked up. The light of the setting sun was gone. Only the stone rail of the bridge stood black against the pale evening sky. But the woman still did not come.

尾生は眉をひそめ、暗い橋の下を、しだいに早足で歩きはじめた。そのうちに川の水は、少しずつ砂地の上へ上がってきた。水のにおいや川藻のにおいが、冷たく肌にまつわりついてきた。見上げると、夕日の光はもう消えていた。ただ石のらんかんだけが、ほの青い夕暮れの空に、黒々と浮かんでいた。が、女はまだ来ない。

At last, Bisei stood still. The water was already wetting his shoes. It spread under the bridge and shone colder than steel. Soon it would cover his knees, his stomach, and his chest. The water rose higher and higher. Now both of his legs were under the water. But the woman still did not come.

尾生はとうとう立ちすくんだ。川の水は、もうくつをぬらしていた。鋼よりも冷たい光をたたえて、橋の下に広がっていた。やがて、ひざも、腹も、胸も、この水にかくれてしまうだろう。水かさはますます高くなり、とうとう両足とも、水の下に沈んでしまった。が、女はまだ来ない。

Bisei stood in the water. He still had a little hope, and he looked up at the bridge again and again.

尾生は水の中に立ったまま、まだ一すじの望みをたよりに、何度も橋を見上げた。

The water was up to his stomach now. The evening darkness covered everything. From the mist came only the lonely sound of reeds and willows. A fish jumped past his nose and showed its white belly. Stars were already shining in the sky. Even the bridge was disappearing into the dark. But the woman still did not come...

水は、もう腹のあたりまで来ていた。夕やみが、あたり一面をおおっていた。もやの中から聞こえてくるのは、あしや柳の寂しい葉ずれの音ばかりだった。と、魚が一匹、尾生の鼻先をかすめて、ひらりと白い腹を見せた。空にはもう星が光っていた。橋の形さえ、やみの中にまぎれようとしていた。が、女はまだ来ない……。

In the middle of the night, moonlight filled the reeds and the willows. The river water and the soft wind whispered to each other. Gently, they carried Bisei's dead body from under the bridge toward the sea. But perhaps Bisei's soul had fallen in love with the lonely moonlight. Quietly it left his body and rose high into the softly shining sky, just as the smell of water rises silently from a river.

夜中、月の光が、川じゅうのあしと柳にあふれた。川の水とそよ風は、静かにささやき合いながら、尾生のなきがらを橋の下から、やさしく海の方へ運んでいった。けれども尾生の魂は、寂しい月の光に恋いこがれたのかもしれない。そっとなきがらをぬけ出すと、ほのかに明るい空へ、高く高くのぼっていった。ちょうど水のにおいが、音もなく川から立ちのぼるように。

Thousands of years later, after many lives, this soul had to be born again as a human. It is the soul that lives in me now. So, though I was born in modern times, I cannot do any important work. Day and night I live in a dreamy way. I am only waiting for something strange and wonderful to come. I am just like Bisei, who waited and waited under the bridge in the evening for the woman who would never come.

それから何千年もたったあと、この魂は、いくつもの生を経て、また人間に生まれなければならなくなった。それが、今この私に宿っている魂なのである。だから私は、現代に生まれはしたが、何一つ意味のある仕事ができない。昼も夜も、ぼんやりと夢ばかり見て暮らしながら、ただ、何か不思議なすばらしいものがやって来るのを待っている。ちょうどあの尾生が、夕暮れの橋の下で、永久に来ない女をいつまでも待ちつづけたように。

全訳をまとめて読む 読み終わってからの答え合わせに

尾生は橋の下にたたずんでいた。女が来るのを待って、もうしばらくたっていた。

見上げると、高い石のらんかんには、つたが半ばはいかかっていた。ときおり人が橋を渡っていき、その白い着物のすそが、ゆったりと風に吹かれていた。あざやかな夕日が、それを照らしていた。が、女はまだ来ない。

尾生はそっと口笛を吹きながら、橋の下を見わたした。そこには黄色い泥の砂地が少しあって、すぐに水へと続いていた。水際のあしの間には、丸い穴がいくつもあいていた。たぶん蟹のすみかだろう。波が当たるたびに、かすかな音がした。が、女はまだ来ない。

尾生は少し待ちどおしくなってきた。水際まで歩いていって、静かな川を見わたした。舟は一そうも通らなかった。川ぞいには青いあしがびっしりと生え、ところどころに、柳が丸くこんもりと茂っていた。その間を、細い帯のような澄んだ水が、ひっそりとうねっているだけだった。その水に、雲の影が一つ、光って映っていた。が、女はまだ来ない。

尾生は砂地の上を、行ったり来たりした。あたりは、だんだん暗くなっていった。尾生は、まわりの静けさに耳をすませた。もう橋を渡る人もいないらしかった。くつの音も、ひづめの音も、車の音も聞こえなかった。聞こえるのは、風の音、あしの音、水の音だけだった。そのとき、どこかで、さぎがけたたましく鳴いた。尾生は立ち止まった。潮が満ちはじめたのだ。水の光が、さっきより近くに見えた。が、女はまだ来ない。

尾生は眉をひそめ、暗い橋の下を、しだいに早足で歩きはじめた。そのうちに川の水は、少しずつ砂地の上へ上がってきた。水のにおいや川藻のにおいが、冷たく肌にまつわりついてきた。見上げると、夕日の光はもう消えていた。ただ石のらんかんだけが、ほの青い夕暮れの空に、黒々と浮かんでいた。が、女はまだ来ない。

尾生はとうとう立ちすくんだ。川の水は、もうくつをぬらしていた。鋼よりも冷たい光をたたえて、橋の下に広がっていた。やがて、ひざも、腹も、胸も、この水にかくれてしまうだろう。水かさはますます高くなり、とうとう両足とも、水の下に沈んでしまった。が、女はまだ来ない。

尾生は水の中に立ったまま、まだ一すじの望みをたよりに、何度も橋を見上げた。

水は、もう腹のあたりまで来ていた。夕やみが、あたり一面をおおっていた。もやの中から聞こえてくるのは、あしや柳の寂しい葉ずれの音ばかりだった。と、魚が一匹、尾生の鼻先をかすめて、ひらりと白い腹を見せた。空にはもう星が光っていた。橋の形さえ、やみの中にまぎれようとしていた。が、女はまだ来ない……。

夜中、月の光が、川じゅうのあしと柳にあふれた。川の水とそよ風は、静かにささやき合いながら、尾生のなきがらを橋の下から、やさしく海の方へ運んでいった。けれども尾生の魂は、寂しい月の光に恋いこがれたのかもしれない。そっとなきがらをぬけ出すと、ほのかに明るい空へ、高く高くのぼっていった。ちょうど水のにおいが、音もなく川から立ちのぼるように。

それから何千年もたったあと、この魂は、いくつもの生を経て、また人間に生まれなければならなくなった。それが、今この私に宿っている魂なのである。だから私は、現代に生まれはしたが、何一つ意味のある仕事ができない。昼も夜も、ぼんやりと夢ばかり見て暮らしながら、ただ、何か不思議なすばらしいものがやって来るのを待っている。ちょうどあの尾生が、夕暮れの橋の下で、永久に来ない女をいつまでも待ちつづけたように。

日本語訳の一部には生成AIを使っており、AIによる3重のチェックと人の目で確かめています。まだ人の目を通っていない訳もあるため、ニュアンスがずれている所があるかもしれません。日本語訳について

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読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. Where was Bisei waiting?

Q2. What happened to the river while Bisei waited?

Q3. Who has Bisei's soul now?

この話の単語 CEFR-JA2・B1・B2の語 61語/タップで意味・単語帳へ
  • A1中学基礎 83.3%
  • A2高校入門 8.1%
  • B1受験コア 3.9%
  • B2難関大 2.3%
  • リストにない語 2.4%

本文の語の割合(人名などは数えていません)。「リストにない語」は固有名詞・古い言い方・やさしい複合語などです。

B2難関大の語 8語

B1受験コアの語 16語

A2高校入門の語 37語

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