The Country of the Blind(盲人の国)の挿絵
Level 4 Intermediate名作文学

The Country of the Blind

盲人の国

  • 📖 920 words
  • ⏱ 約8分
  • 🔊 4:32
  • YL 2.5–3.4
  • 英検2級目安
  • 📝 全訳つき

あらすじアンデスの山から谷へ転落した登山家ヌネス。たどり着いたのは、何世代も前から全員が目の見えない人々の住む、外の世界から閉ざされた谷でした。「目の見える自分なら王になれる」と考えたヌネスでしたが……。

H・G・ウェルズ「盲人の国」(1904年)をもとに再話

キーワード(10語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • valley谷
  • earthquake地震
  • blind目の見えない
  • generations世代
  • cliffがけ
  • senses感覚
  • spadeすき(シャベルの一種)
  • eyelidsまぶた
  • operation手術
  • exhausted疲れきった
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Google Cloud TTS(Chirp 3 HD・イギリス英語・Kore)

High in the mountains of Ecuador, in South America, there was once a hidden valley. Long ago, a group of people had gone there to escape from cruel rulers. The valley was rich and beautiful, with green grass, sweet water and a gentle climate. Then a great earthquake brought down the side of a mountain and closed the only path out. The people were trapped in their valley forever.

昔、南アメリカのエクアドルの高い山の中に、人に知られていない谷があった。はるか昔、ある人々が、残酷な支配者から逃れてそこへ移り住んだのだ。谷は豊かで美しかった。草は青々とし、水はおいしく、気候もおだやかだった。ところが、あるとき大地震が起こって山の斜面がくずれ落ち、外へ通じるただ一本の道がふさがれてしまった。人々は、谷に永遠に閉じこめられてしまったのだ。

Soon after that, a strange sickness came. Every child born in the valley was blind. Slowly, the people who could see grew old and died. After many generations, nobody in the valley could see, and nobody remembered what seeing was. The words for "see" and "look" lost their meaning. The people built a new world for themselves, a world of sound, touch and smell.

それからまもなく、奇妙な病気がはやった。谷で生まれる子どもが、ひとり残らず目が見えなかったのだ。目の見える人々は、少しずつ年をとって死んでいった。何世代もたつと、谷には目の見える者はひとりもいなくなった。「見る」とはどういうことか、覚えている者もいなくなった。「見る」や「ながめる」という言葉は、意味を失った。人々は、自分たちのための新しい世界を築きあげた。音と、手ざわりと、においの世界である。

One day, many years later, a mountain climber named Nunez was guiding a group of Englishmen in the Andes. During the night, he fell from a high cliff. He slid down a long slope of snow and landed, still alive, at the edge of the hidden valley. When he walked down, he found strange houses with no windows, painted in wild colors. "The man who built these must be as blind as a bat," he thought.

それから長い年月がたったある日、ヌネスという登山家が、イギリス人の一行を案内してアンデス山脈を登っていた。その夜、ヌネスは高いがけから落ちた。長い雪の斜面をすべり落ち、どうにか命をとりとめて、あの谷のはずれにたどり着いた。谷へおりていくと、窓のない奇妙な家々が建っていて、どれもけばけばしい色にぬられていた。「これを建てたやつは、コウモリみたいに目が見えないにちがいない」とヌネスは思った。

Then he saw three men and called to them. They turned their faces toward his voice, but their eyes were closed or empty. Nunez remembered an old saying: "In the Country of the Blind, the one-eyed man is king." He smiled to himself. "I can see," he thought. "I will rule them."

やがて三人の男の姿が見えたので、ヌネスは声をかけた。男たちは声のするほうへ顔を向けたが、その目は閉じているか、うつろだった。ヌネスは古いことわざを思い出した。「盲人の国では、片目の男が王さまだ」ヌネスはひとりでにやりとした。「おれには目が見える。こいつらの王になってやろう」

The blind men touched his face and his eyes. "He is a new kind of man," they said. "His eyes are soft and strange. He came out of the rocks, and his mind is not formed yet." They took him to their village. He tried to explain what seeing was. He talked about the sky, the stars and the mountains, but they only laughed. To them, the world was a valley closed in by rock, with a smooth, soft roof above. "There is no such thing as a mountain," they said kindly. "You must learn."

目の見えない男たちは、ヌネスの顔や目にさわった。「これは新しい種類の人間だ」と男たちは言った。「目がやわらかくて、おかしな形をしている。岩の中から生まれたばかりで、まだ心ができあがっていないのだ」男たちはヌネスを村へ連れていった。ヌネスは「見る」とはどういうことかを説明しようとした。空のことや、星のことや、山のことを話したが、村の人々は笑うばかりだった。人々にとって世界とは、岩にかこまれた谷のことで、頭の上には、なめらかでやわらかい天井があるのだった。「山なんてものはないんだよ」と人々はやさしく言った。「おまえは、いろいろ学ばなければならないね」

Nunez grew angry. "You do not understand. I can see, and you cannot!" He decided to show them. "Look," he said, "the man named Pedro is coming down the path." But Pedro heard him, stepped off the path onto the soft grass where his feet made no sound, and walked away. "Pedro is not coming," the people said. Nunez found that they could hear his heart beating when he was afraid, and smell where he had walked. In many ways, their senses were sharper than his.

ヌネスは腹を立てた。「あんたたちはわかっていない。おれには見える。あんたたちには見えないんだ!」そこで、それを証明してみせることにした。「ほら、ペドロって男が小道をおりてくるぞ」とヌネスは言った。ところがペドロは、その声を聞きつけると、小道をそれて、足音のしないやわらかい草の上に入り、どこかへ行ってしまった。「ペドロなんか来ないじゃないか」と人々は言った。やがてヌネスは知った。人々には、ヌネスがこわがっているときの心臓の音が聞こえる。ヌネスがどこを歩いたかも、においでわかる。多くの点で、人々の感覚はヌネスよりもずっとするどかったのだ。

At last he tried to make them obey him by force. He took a spade and ran to the edge of the village. When they came for him, he hit one man. But they did not run away. They moved slowly toward him from all sides, listening carefully, and he could not hide. Their world was made for the dark, and at night, when he could hardly see, they were not troubled at all. After two days without food, he came back, tired and hungry. "I was wrong," he said. "I cannot see. It was only a foolish idea."

とうとうヌネスは、力ずくで人々を従わせようとした。シャベルをつかんで、村のはずれへ走っていった。人々がやって来ると、ヌネスはひとりの男をなぐりつけた。だが、人々は逃げなかった。じっと耳をすましながら、四方からじりじりと近づいてくる。ヌネスは身を隠すこともできなかった。人々の世界は暗やみの中で暮らすようにできていた。夜になってヌネスがほとんど何も見えなくなっても、人々は少しも困らなかった。二日間何も食べずに過ごしたあと、ヌネスは疲れはて、腹をすかせて、もどってきた。「おれがまちがっていた」とヌネスは言った。「おれには見えない。あれはただの、ばかな思いこみだった」

After that, Nunez lived and worked with them. He became a good worker, and the people were kind to him. And he fell in love with Medina-sarote, the youngest daughter of his master, Yacob. The blind people did not think she was beautiful, because her eyelids were not closed and sunken like theirs. But to Nunez, she was the most beautiful thing in the valley. She came to love him, too, and she liked to hear him talk about seeing, although she did not believe a word of it.

それからヌネスは、村の人々と暮らし、一緒に働いた。よく働く男になり、人々もヌネスにやさしくしてくれた。そしてヌネスは、主人ヤコブのいちばん下の娘、メディナ・サロテに恋をした。村の人々は、この娘を美しいとは思っていなかった。まぶたが、ほかの人々のように閉じてくぼんではいなかったからだ。だがヌネスにとって、メディナ・サロテは、谷の何よりも美しかった。娘もやがてヌネスを愛するようになった。そして、ヌネスが「見る」ことについて話すのを聞くのが好きだった。ただし、そのひと言も信じてはいなかったが。

When Nunez asked to marry her, the people were troubled. "He is not normal," they said. "His mind is sick." Then the greatest doctor in the valley examined him. "I have found the cause," the doctor said happily. "Those strange soft things that he calls eyes are always moving, and they hurt his brain. If we take them out, he will be cured and become a good, normal man. Then he can marry the girl."

ヌネスが娘と結婚したいと申し出ると、村の人々は頭をかかえた。「あの男はふつうではない」と人々は言った。「頭がおかしいのだ」そこで、谷でいちばんの名医がヌネスを診察した。「原因がわかったぞ」と医者はうれしそうに言った。「あの男が目と呼んでいる、あのおかしなやわらかいものだ。あれがたえず動いて、脳をいためているのだ。取ってしまえば病気はなおり、まともな、よい人間になる。そうすれば、あの娘と結婚できる」

Nunez was horrified. But Medina-sarote begged him. "If only you would agree," she said softly. "If only you would stop talking about seeing." He loved her very much, and at last he said yes. The operation was set for a few days later.

ヌネスはぞっとした。だが、メディナ・サロテはヌネスにたのんだ。「あなたが承知してくれさえしたら」と、娘はやさしく言った。「『見る』話をやめてくれさえしたら」ヌネスは娘を心から愛していた。そして、とうとう承知した。手術は数日後と決まった。

On the morning before the operation, Nunez went out for a walk alone. He saw the sun rising over the mountains. Its light touched the snow and the ice with gold. He saw the deep blue sky, the clouds, and the far-off valleys beyond. He thought of the world outside, with its cities, its rivers, its oceans, and its great sky full of stars. Why should he lose all that for a life in this small valley?

手術の前の朝、ヌネスはひとりで散歩に出た。山々の上に、太陽がのぼるのが見えた。その光が、雪と氷を金色にそめていた。深く青い空と雲、そのむこうに遠くの谷々が見えた。ヌネスは外の世界のことを思った。そこには町があり、川があり、海があり、星でいっぱいの広い空がある。この小さな谷で暮らすために、どうしてそのすべてを捨てなければならないのか?

He did not go back. Instead, he began to climb the rocky wall of the valley. He climbed all day, higher and higher, until his hands were cut and his clothes were torn. When the sun went down, he lay on a narrow, high place among the rocks, far above the valley, completely exhausted. He was cold, and he did not know if he could go any further. But he lay there looking up at the sky, and he smiled, as if he had found a great treasure. Above him, the stars were coming out.

ヌネスは、村へもどらなかった。そのかわりに、谷をかこむ岩の壁を登りはじめた。一日じゅう、上へ上へと登りつづけた。手は傷だらけになり、服は破れた。日がしずむころ、谷のはるか上の、岩のあいだの高くせまい場所に、ヌネスは横たわった。すっかり力つきていた。寒かった。これ以上進めるかどうかもわからなかった。それでもヌネスは横たわったまま空を見あげ、すばらしい宝物を見つけたかのようにほほえんだ。頭の上では、星が光りはじめていた。

📖 全訳をまとめて読む 読み終わってからの答え合わせに

昔、南アメリカのエクアドルの高い山の中に、人に知られていない谷があった。はるか昔、ある人々が、残酷な支配者から逃れてそこへ移り住んだのだ。谷は豊かで美しかった。草は青々とし、水はおいしく、気候もおだやかだった。ところが、あるとき大地震が起こって山の斜面がくずれ落ち、外へ通じるただ一本の道がふさがれてしまった。人々は、谷に永遠に閉じこめられてしまったのだ。

それからまもなく、奇妙な病気がはやった。谷で生まれる子どもが、ひとり残らず目が見えなかったのだ。目の見える人々は、少しずつ年をとって死んでいった。何世代もたつと、谷には目の見える者はひとりもいなくなった。「見る」とはどういうことか、覚えている者もいなくなった。「見る」や「ながめる」という言葉は、意味を失った。人々は、自分たちのための新しい世界を築きあげた。音と、手ざわりと、においの世界である。

それから長い年月がたったある日、ヌネスという登山家が、イギリス人の一行を案内してアンデス山脈を登っていた。その夜、ヌネスは高いがけから落ちた。長い雪の斜面をすべり落ち、どうにか命をとりとめて、あの谷のはずれにたどり着いた。谷へおりていくと、窓のない奇妙な家々が建っていて、どれもけばけばしい色にぬられていた。「これを建てたやつは、コウモリみたいに目が見えないにちがいない」とヌネスは思った。

やがて三人の男の姿が見えたので、ヌネスは声をかけた。男たちは声のするほうへ顔を向けたが、その目は閉じているか、うつろだった。ヌネスは古いことわざを思い出した。「盲人の国では、片目の男が王さまだ」ヌネスはひとりでにやりとした。「おれには目が見える。こいつらの王になってやろう」

目の見えない男たちは、ヌネスの顔や目にさわった。「これは新しい種類の人間だ」と男たちは言った。「目がやわらかくて、おかしな形をしている。岩の中から生まれたばかりで、まだ心ができあがっていないのだ」男たちはヌネスを村へ連れていった。ヌネスは「見る」とはどういうことかを説明しようとした。空のことや、星のことや、山のことを話したが、村の人々は笑うばかりだった。人々にとって世界とは、岩にかこまれた谷のことで、頭の上には、なめらかでやわらかい天井があるのだった。「山なんてものはないんだよ」と人々はやさしく言った。「おまえは、いろいろ学ばなければならないね」

ヌネスは腹を立てた。「あんたたちはわかっていない。おれには見える。あんたたちには見えないんだ!」そこで、それを証明してみせることにした。「ほら、ペドロって男が小道をおりてくるぞ」とヌネスは言った。ところがペドロは、その声を聞きつけると、小道をそれて、足音のしないやわらかい草の上に入り、どこかへ行ってしまった。「ペドロなんか来ないじゃないか」と人々は言った。やがてヌネスは知った。人々には、ヌネスがこわがっているときの心臓の音が聞こえる。ヌネスがどこを歩いたかも、においでわかる。多くの点で、人々の感覚はヌネスよりもずっとするどかったのだ。

とうとうヌネスは、力ずくで人々を従わせようとした。シャベルをつかんで、村のはずれへ走っていった。人々がやって来ると、ヌネスはひとりの男をなぐりつけた。だが、人々は逃げなかった。じっと耳をすましながら、四方からじりじりと近づいてくる。ヌネスは身を隠すこともできなかった。人々の世界は暗やみの中で暮らすようにできていた。夜になってヌネスがほとんど何も見えなくなっても、人々は少しも困らなかった。二日間何も食べずに過ごしたあと、ヌネスは疲れはて、腹をすかせて、もどってきた。「おれがまちがっていた」とヌネスは言った。「おれには見えない。あれはただの、ばかな思いこみだった」

それからヌネスは、村の人々と暮らし、一緒に働いた。よく働く男になり、人々もヌネスにやさしくしてくれた。そしてヌネスは、主人ヤコブのいちばん下の娘、メディナ・サロテに恋をした。村の人々は、この娘を美しいとは思っていなかった。まぶたが、ほかの人々のように閉じてくぼんではいなかったからだ。だがヌネスにとって、メディナ・サロテは、谷の何よりも美しかった。娘もやがてヌネスを愛するようになった。そして、ヌネスが「見る」ことについて話すのを聞くのが好きだった。ただし、そのひと言も信じてはいなかったが。

ヌネスが娘と結婚したいと申し出ると、村の人々は頭をかかえた。「あの男はふつうではない」と人々は言った。「頭がおかしいのだ」そこで、谷でいちばんの名医がヌネスを診察した。「原因がわかったぞ」と医者はうれしそうに言った。「あの男が目と呼んでいる、あのおかしなやわらかいものだ。あれがたえず動いて、脳をいためているのだ。取ってしまえば病気はなおり、まともな、よい人間になる。そうすれば、あの娘と結婚できる」

ヌネスはぞっとした。だが、メディナ・サロテはヌネスにたのんだ。「あなたが承知してくれさえしたら」と、娘はやさしく言った。「『見る』話をやめてくれさえしたら」ヌネスは娘を心から愛していた。そして、とうとう承知した。手術は数日後と決まった。

手術の前の朝、ヌネスはひとりで散歩に出た。山々の上に、太陽がのぼるのが見えた。その光が、雪と氷を金色にそめていた。深く青い空と雲、そのむこうに遠くの谷々が見えた。ヌネスは外の世界のことを思った。そこには町があり、川があり、海があり、星でいっぱいの広い空がある。この小さな谷で暮らすために、どうしてそのすべてを捨てなければならないのか?

ヌネスは、村へもどらなかった。そのかわりに、谷をかこむ岩の壁を登りはじめた。一日じゅう、上へ上へと登りつづけた。手は傷だらけになり、服は破れた。日がしずむころ、谷のはるか上の、岩のあいだの高くせまい場所に、ヌネスは横たわった。すっかり力つきていた。寒かった。これ以上進めるかどうかもわからなかった。それでもヌネスは横たわったまま空を見あげ、すばらしい宝物を見つけたかのようにほほえんだ。頭の上では、星が光りはじめていた。

日本語訳:多読ベスト

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理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. Why could nobody leave the valley?

Q2. Why could Nunez not rule the blind people?

Q3. What did the doctor want to do to Nunez?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

聞き読みの効果とやり方/多読三原則

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