Wikipediaの「wiki」はハワイ語で「はやい」。由来は今も走るホノルル空港のバス

読む前に予想してみよう!
Wikipedia の「wiki」は、ハワイ語で「はやい」という意味の言葉から来ている
開発者カニンガムが空港で「ウィキウィキ・バス」に案内されて覚えたハワイ語 wikiwiki(はやい)が由来。本人が辞書の編集者への手紙で説明している。
- 対象
- 開発者本人の手紙・ハワイ語辞典・英語辞典
- 規模
- 1995年の命名とハワイ語の語彙
- 研究の種類
- 語源調査(本人の証言と辞書の照合)
- 確かさ
- ★★★★☆
wiki はハワイ語の wikiwiki(はやい)から。開発者がハワイの空港で「ウィキウィキ・バスに乗って」と言われたのがきっかけ。ホノルル空港のそのバスは今も走る。
ひとことで言うとウィキの名前は、ハワイの空港の「はやいバス」から来ていた!
もくじ
調べものをすると、たいてい出てくる Wikipedia(ウィキペディア)。この「wiki」、何の言葉か知っていますか?
答えはハワイ語。wiki は「はやい・急ぐ」という意味で、それを2回重ねたのが wikiwiki です。
しかも名前のきっかけは、ハワイの空港で「ウィキウィキ・バスに乗ってください」と言われたことでした。世界中の人が書きこむ百科事典の名前は、空港の連絡バスから来ているのです。
01空港で「ウィキウィキ・バスに乗って」と言われた
最初の wiki を作ったのは、アメリカのプログラマー、ウォード・カニンガム(Ward Cunningham)です。アメリカの辞書 American Heritage Dictionary(AHD)は、wiki の語源欄に彼の名前を載せています。
カニンガム本人が、辞書の編集者にあてた手紙で、名前のいきさつを説明しています。
初めてハワイを訪れたとき、空港のカウンターの係員に「ターミナルの間は wiki wiki バスで移動して」と案内されました。意味が分からず、「え?」と聞き返します。2005年の手紙では、3〜4回聞き直したと書いています。係員はようやく「wiki wiki は quick(はやい)という意味だ」と教えてくれました。つまり「はやいバス」を探せ、という案内だったのです。
次の日、彼はハワイ語の小さな本を買いました。いろいろ学んだけれど、いちばん心に残ったのが wiki wiki だった、と振り返っています。
02「quick web」でもよかった名前
ウェブページをさっと作れる仕組みなので、名前は「quick web(はやいウェブ)」でもよかった、とカニンガムは書いています。マイクロソフトの「Quick BASIC」という先例もありました。
それでも彼は、quick web より wiki wiki web のほうが言っていて楽しいと考えました。こうして生まれた正式な名前が WikiWikiWeb です。
では、なぜ短い「wiki」が広まったのでしょう。カニンガムが最初に作ったのは Unix(ユニックス)というシステム用のプログラムでした。Unix では、calendar(カレンダー)を cal と書くように、プログラム名を小文字で短くするのが習わしです。そこで彼はプログラムに「wiki」と名づけました。この名前がサイトのアドレスに入っていたので、みんなもまねして「wiki」と呼ぶようになった、と本人は説明しています。
その6年近くあと、2001年1月15日に始まったのが Wikipedia です(ウィキメディア・カナダの記念ページによる)。名前は wiki と encyclopedia(百科事典)をつないだ形になっています。
03「2回くり返す」には、もう一つ理由があった
2005年の手紙には、名前に重ね言葉を選んだ理由がもう一つ書かれています。彼のプログラムでは、「2つ重ねる」が書式の合図だったのです。
- 改行を2回 → 新しい段落
- 半角のアポストロフィ(')を2つ → 斜体(イタリック)
- 大文字で始まる単語を2つくっつける(WikiWikiWeb のような形) → リンク
だから、重ね言葉の wikiwiki はこの技術にぴったりだった、というわけです。プログラム自体も「とても速かった」と書いています。
今の Wikipedia を動かしているソフト MediaWiki の公式ヘルプを見ると、斜体にしたい語は、やはり ''このように''(アポストロフィ2つ)ではさむと説明されています。

04そのバスは、今も無料で走っている
ホノルルの空港は、今はダニエル・K・イノウエ国際空港という名前です。ハワイ州運輸局の空港の公式ページには、今も「Wiki Wiki Shuttle」のページがあります。
それによると、Wiki Wiki バスは毎日、ターミナル1・2・3と鉄道駅の間を無料で結んでいます。ハワイに行ったら、wiki の“ふるさと”に乗れるかもしれません。
ちなみに、ハワイ大学のサイトで公開されているハワイ語辞典の名前は「Wehewehe Wikiwiki」。辞書によると wehewehe は「説明する」なので、「さっと説明」くらいの意味の名前です。
05ハワイ語とその親戚から来た英語
英語には、ハワイ語やその親戚の言葉から入った単語がほかにもあります。辞書で確かめたものを並べます。
- ukulele(ウクレレ):ハワイ語辞典によると、文字どおりの意味は「跳ねるノミ」。小柄ですばしこく、この楽器を広めたエドワード・パーヴィスという人のあだ名から来たらしい、と書かれています。楽器そのものは1879年にポルトガル人がハワイに持ちこんだものです
- poke(ポケ):生の魚を角切りにした料理。AHD によると、ハワイ語の poke は「横に切って切り身にする」
- luau(ルアウ、ハワイの宴会):もとは「タロイモの若い葉」。その葉を出すごちそうの会を指すようになった(AHD)
- taboo(タブー):トンガ語の tabu(禁じられた)から(AHD)。同じ祖先の語がハワイ語では kapu で、辞書には「禁止、立入禁止」という意味も載っています
逆向きの例もあります。ハワイ語辞典を引くと、Christmas は Kalikimaka、Merry は mele で、どちらも「英語から」と注記されています。「Mele Kalikimaka」は、Merry Christmas をハワイ語の音に合わせた形なのです。
06どんでん返し:辞書の編集者は、作った本人に手紙で聞いていた
wiki の語源が今これほどはっきりしているのは、作った本人が生きているうちに、辞書の編集者が直接たずねたからです。
AHD の編集者が2003年の最初の手紙で示した語源の案には、南太平洋のラロトンガ語(クック諸島の言葉)の「miji」と親戚かもしれない、という一文がありました。編集者自身が「ただの当て推量」と書いています。今の AHD の語源欄は、wikiwiki を「タヒチ語の viti, vitiviti(器用な)と親戚」としていて、ラロトンガ語の話は出てきません。ハワイ語辞典も、さらに古い形を「おそらく witi」と書いていて、「おそらく」つきです( は、記録には残っていない、学者が推定した形のしるし)。
ウクレレも同じです。ハワイ語辞典は「パーヴィスのあだ名から来たらしい」と書き、AHD は「おそらく『跳ねるノミ』から。弾く指の動きを指したのかもしれない」と書いています。どちらの辞書も「らしい」「おそらく」をつけていて、言い切ってはいません。
07まとめ
Wikipedia の wiki は、ハワイの空港の係員が教えてくれた「はやい」というハワイ語でした。quick web でもよかった名前が wiki になり、それが世界中に広まったのです。
次に Wikipedia を開いたら、ターミナルの間を走る小さなバスを思い出してみてください。ついでに、ウクレレが「跳ねるノミ」だったことも、誰かに話したくなるはずです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerOn his first trip to Hawaii, Ward Cunningham could not understand an airport worker.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Do you use Wikipedia? The "wiki" part comes from Hawaiian. In Hawaiian, "wiki" means "quick." "Wikiwiki" is the same word said twice.
Ward Cunningham, an American computer engineer, learned the word on his first trip to Hawaii. At the airport, a worker told him to take the Wiki Wiki bus. He liked the word a lot.
In 1995, he used it as the name of his new website. Anyone could change its pages. The bus still runs today.
78 words ・ CEFR A2
和訳を見る
Wikipedia を使いますか?この「wiki」の部分はハワイ語から来ています。ハワイ語で「wiki」は「はやい」という意味です。「wikiwiki」は同じ語を2回言った形です。
アメリカのコンピューター技術者ウォード・カニンガムが、初めてハワイを旅したときにこの言葉を覚えました。空港で、係員が彼に「ウィキウィキ・バスに乗って」と言ったのです。彼はこの言葉がとても気に入りました。
1995年、彼はそれを新しいウェブサイトの名前に使いました。そのサイトは、だれでもページを書きかえることができました。そのバスは今も走っています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「wiki」という語がハワイ語から来て、ウェブサイトの名前になった話なので B。
Q2. Where did Ward Cunningham first hear the word?
At the airport, a worker told him to take the Wiki Wiki bus. とあるので C。
Q3. In Hawaiian, what does "wiki" mean?
In Hawaiian, "wiki" means "quick." とあるので A。
On his first trip to Hawaii, Ward Cunningham could not understand an airport worker. The man kept telling him to take the "wiki wiki" bus between terminals. After Cunningham asked three or four times, the worker explained that "wiki wiki" meant "quick."
Cunningham never forgot the word. In 1995 he built a website that visitors could edit themselves, and it needed a name. "Quick web" would have worked, but he thought "WikiWikiWeb" was more fun to say.
His program file was simply called "wiki," so people began using that short form. Wikipedia, which started in 2001, joined "wiki" and "encyclopedia" to make its name. At Honolulu's airport, the free Wiki Wiki bus still carries passengers between terminals.
117 words ・ CEFR B1
和訳を見る
初めてハワイを旅したとき、ウォード・カニンガムは空港の係員の言うことが分からなかった。その人は、ターミナルの間は「ウィキウィキ」バスに乗るようにと何度も言った。カニンガムが3、4回たずねたあと、係員は「ウィキウィキ」が「はやい」という意味だと説明した。
カニンガムはこの言葉を決して忘れなかった。1995年、彼は訪れた人が自分で編集できるウェブサイトを作り、それには名前が必要だった。「クイック・ウェブ」でもよかったが、彼は「WikiWikiWeb」のほうが言っていて楽しいと考えた。
彼のプログラムのファイルは単に「wiki」という名前だったので、人々はその短い形を使い始めた。2001年に始まった Wikipedia は、「wiki」と「encyclopedia(百科事典)」をつないで名前にした。ホノルルの空港では、無料のウィキウィキ・バスが今もターミナルの間で乗客を運んでいる。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
空港で聞いた「wiki wiki」がウェブサイトの名前になった話なので B。
Q2. Why did people start saying just "wiki"?
His program file was simply called "wiki," so people began using that short form. とあるので C。
Q3. What can we guess about Cunningham from the passage?
"Quick web" でもよかったが WikiWikiWeb のほうが more fun to say と考えた、とあるので A。
Most of us type "wiki" without a second thought, but the word was picked up at an airport counter in Hawaii. On his first visit to Hawaii, the software developer Ward Cunningham was told to take the Wiki Wiki bus between terminals, and he had to ask several times before someone explained that the Hawaiian word meant "quick."
When he launched the first wiki in 1995, he chose "WikiWikiWeb" over the plainer "quick web." He later told a dictionary editor that he knew Hawaiian doubles words for emphasis. Doubling also suited his software, since two apostrophes made text italic and two capitalized words joined together made a link. Because his program file was named "wiki," the short form spread.
Most of this story comes from Cunningham's own letters, written at least eight years after the event, and the two letters differ slightly in detail. Dictionaries are careful about the older history, too. The American Heritage Dictionary links "wikiwiki" to a Tahitian word for "deft," while a Hawaiian dictionary puts a "probably" in front of its older source. The same goes for "ukulele," which may come from a phrase meaning "jumping flea."
191 words ・ CEFR B2
和訳を見る
私たちの多くは何も考えずに「wiki」と打つが、この語はハワイの空港のカウンターで拾われたものだ。初めてハワイを訪れたとき、ソフトウェア開発者のウォード・カニンガムはターミナルの間はウィキウィキ・バスに乗るよう言われ、何度か聞き直してようやく、そのハワイ語が「はやい」という意味だと説明してもらえた。
1995年に最初の wiki を立ち上げたとき、彼はもっと平凡な「quick web」ではなく「WikiWikiWeb」を選んだ。のちに彼はある辞書の編集者に、ハワイ語では強調のために語を重ねると知っていたと話している。重ねることは彼のソフトにも合っていた。アポストロフィ2つで文字が斜体になり、大文字で始まる語を2つつなげるとリンクになったからだ。プログラムのファイル名が「wiki」だったので、その短い形が広まった。
この話の大部分は、出来事から少なくとも8年たって書かれたカニンガム自身の手紙によるもので、2通の手紙は細部が少し違っている。辞書は、さらに古い歴史についても慎重だ。アメリカン・ヘリテージ辞典は「wikiwiki」を「器用な」という意味のタヒチ語と結びつけているが、ハワイ語の辞典はそのもっと古い由来に「おそらく」をつけている。「跳ねるノミ」という意味の言い回しから来たのかもしれない「ukulele」も同じだ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
空港で覚えたハワイ語が wiki になった話と、細部や古い由来には不確かな点もあることを述べているので B。
Q2. According to the passage, why did doubling suit Cunningham's software?
two apostrophes made text italic and two capitalized words joined together made a link とあるので A。
Q3. Why does the writer mention that the letters were written at least eight years later?
何年もあとに書かれ、2通で細部が少し違う、と続くので、細かい点は正確でないかもしれないと示している。C。
重要単語
- wikiB1名詞ウィキ(だれでも書きかえられるウェブサイト)Our class keeps its notes on a wiki.
複数形は wikis。ハワイ語の wikiwiki(はやい)を使った WikiWikiWeb から。 - shuttleB1名詞近い区間を行き来する乗り物、連絡バスWe took the free shuttle to the next terminal.
もとは機織りの「杼(ひ)」。左右を行き来する動きから。shuttle bus、space shuttle。 - terminalB1名詞(空港・駅の)ターミナルOur flight leaves from Terminal 2.
形容詞では「末期の、終わりの」。term(期限、終わり)と同じ仲間の語。 - coinC1動詞(新しい言葉を)作るHe coined the word in 1995.
名詞は「硬貨」。硬貨を鋳造するように、新しい語を作り出すこと。coin a phrase「うまいことを言えば」。 - encyclopediaB2名詞百科事典An encyclopedia tries to cover every subject.
Wikipedia は wiki + encyclopedia の後ろ半分。発音は「エンサイクロピーディア」。 - editB1動詞編集する、書きかえるAnyone can edit the page.
editor(編集者)、edition(版)も同じ仲間。 - emphasisB2名詞強調Hawaiian sometimes doubles a word for emphasis.
for emphasis「強調のために」。動詞は emphasize。 - hurryA2動詞急ぐHurry up, or we'll miss the bus!
ハワイ語の wiki にも「急ぐ」の意味がある。in a hurry「急いで」。
公式・一次情報をチェック
- WikiHistory(最初の wiki、c2.com)wiki.c2.com
- Help:Formatting(MediaWiki 公式ヘルプ)mediawiki.org
- Wikipedia turns 25!(ウィキメディア・カナダ)wikimedia.ca
このネタ、誰かに教えたくなった?
Wikipedia の wiki はハワイ語で「はやい」。最初の wiki を作ったカニンガムが、ハワイの空港で「ウィキウィキ・バスに乗って」と言われて覚えた言葉。「quick web」でもよかったのに、言っていて楽しいほうを選んだ。ホノルル空港のそのバスは今も無料で走る。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(5件)タップで表示
- Cunningham, W. (2003/2005) Correspondence on the Etymology of Wiki(AHD とオックスフォード大学出版局の辞書編集者への返信)c2.com
- The American Heritage Dictionary「wiki」「ukulele」「poke」「luau」「taboo」ahdictionary.com
- Pukui & Elbert (1986) Hawaiian Dictionary「wiki」「wikiwiki」(Wehewehe Wikiwiki, ハワイ大学)wehe.colo.hawaii.edu
- Hawaiʻi Department of Transportation「Intra-Airport Transportation: Wiki Wiki Shuttle」(ダニエル・K・イノウエ国際空港)airports.hawaii.gov
- Pukui & Elbert (1986) Hawaiian Dictionary「ʻukulele」(Wehewehe Wikiwiki, ハワイ大学)wehe.colo.hawaii.edu
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
本館
マジカ!?サイエンスで読む、ことばの研究
論文でウラ取りした科学の「マジか!?」。言語・脳・学習の研究も





