テニスの0点「ラブ」は卵から? 辞書は「証拠なし」。tennis の名前は「受けてみろ!」から?

読む前に予想してみよう!
テニスで0点を love と言うのは、フランス語で卵を意味する l'œuf がなまったものだと、辞書で確かめられている
Merriam-Webster は卵説を「民間語源(証拠のない俗説)」としている。フランス語で l'œuf を0の意味で使った証拠がない。より受け入れられているのは「to play for love(好きでやる)」から来たという説。
- 対象
- 英語の辞書の語源の説明と辞書編集部の解説記事
- 規模
- 英語の辞書4種
- 研究の種類
- 辞書の記述の比較
- 確かさ
- ★★★☆☆
0点の love が「フランス語の卵」から来たという説は証拠なし。有力なのは「好きでやる(for love)」から来たという説。tennis の名前は、サーブのときのかけ声 tenez(受けてみろ)から来たらしい。
ひとことで言うとテニスの「ラブ」は卵じゃなかった。「好きでやってる」のラブらしい!
もくじ
テニスで、ゲームの最初の1点をサーブ側が取ると、審判はこう言います。
Fifteen-love.(フィフティーン・ラブ)
0点のことを、テニスでは love(ラブ) と言います。なぜ「愛」が「0」なのか。よく聞くのが、「0 の形が卵に似ているから、フランス語の l'œuf(ルフ、卵)と呼ばれ、それが英語でなまって love になった」という説です。
ところが、アメリカの辞書メリアム・ウェブスターの編集部は、この説を「証拠のない俗説」とはっきり書いています。そのうえ、tennis という競技の名前そのものも、サーブする人のかけ声から来たらしいのです。
01テニスの0点は love
まず、辞書で love のテニスの意味を確かめておきましょう。
- Oxford の学習辞典:(テニスで)0点(ポイントやゲームが0)。例 40–love! / She won the first set six–love.(彼女は第1セットを6対0で取った)
- American Heritage Dictionary:(スポーツ)テニスなどの0点
試合の最初、0対0のときは love-all(ラブ・オール)と言います。メリアム・ウェブスターによると、テニスで love を0点の意味で使うようになったのは1800年代の後半から。ただし、なぜ love が0になったのかは、はっきり分かっていません。
02有名な「卵説」は、証拠がなかった
よく知られているのが、フランス語の「卵」説です。メリアム・ウェブスターの解説記事は、この説を次のように紹介しています。
- テニスがイギリスからフランスに伝わったとき、フランス人は「卵」が数字の 0 に似ているので、0点を l'œuf(卵)と呼んだ
- イギリスの選手がそれをうまく発音できず、love になった
もっともらしい話です。でも、記事はこれを folk etymology(民間語源) だと書いています。民間語源とは、それらしい由来話が後から作られて広まったもののことです。
「0=卵」のたとえは英語にはあります。けれども、フランス語の側に証拠がないのです。
03有力なのは「好きでやってる」の love
では、もっと有力な説は何でしょう。メリアム・ウェブスターによると、ずっと広く受け入れられているのは、to play for love(好きでやる)という言い回しから来たという説です。
0点の人は、勝つためやお金をかけてプレーしているのではなく、試合が好きだからプレーしている。だから0点でも続けられる。そんな考え方です。
英語の for love という言い方は、今も辞書に載っています。Oxford の学習辞典は、(just) for love を「お金やほかの見返りを受け取らずに」と説明しています。
- They're all volunteers, working for the love of it.(みんなボランティアで、好きでやっている)
メリアム・ウェブスターは、amateur(アマチュア)も同じ考え方の言葉だと書いています。American Heritage Dictionary によると、amateur はラテン語の amātor(愛する人)から来た語で、もとをたどると amāre(愛する)です。お金のためでなく、好きでやる人。それがアマチュアです。

04どんでん返し:「好きでやる」説も、決まりではない
ここで話は終わりません。
メリアム・ウェブスターによると、ゲームの得点で love を使った記録は1700年代からあり、早い例はトランプのゲームです。たとえば1742年、イギリスのトランプのゲームの解説書を書いたエドモンド・ホイルは、ホイスト(whist)というゲームの説明で、相手が「6 or 7 Love」のとき、つまり相手が6点か7点で、こちらが0点のときの作戦を書いています。
テニスで love が使われるようになる、100年以上も前のことです。
この古い例について、メリアム・ウェブスターは次のように書いています。
- テニスより前のトランプの例があるので、卵説はますます成り立たない
- でも、だからといって「好きでやる」説が証明されたわけでもない
- 分かるのは、love が「0」の意味で書かれはじめたのがいつごろか、ということだけ
つまり、卵説は否定されたけれど、正解もまだ決まっていません。辞書の言い方を借りれば、「いちばんありそうな説」が for love だ、というところまでです。
05tennis の名前は「受けてみろ!」のかけ声から来たらしい
love の次は、tennis という名前そのものです。3冊の辞書が、同じ方向の説明をしています。
サーブの前の「受けてみろ!」というかけ声が、競技の名前になったと考えられています。
ただし、Oxford の学習辞典と Dictionary.com は apparently(どうやら) と書いていて、American Heritage Dictionary はかけ声のことには触れていません。かけ声説は有力ですが、断定はされていません。
もう一つ大事なのは、このころの tennis が、今の芝やハードコートのテニスとは別物だったことです。Oxford の学習辞典は tenetz, tenes を real tennis(リアルテニス) と説明しています。リアルテニスは「建物の中で、かたいボールを使う古い形のテニス」。アメリカ英語では court tennis と言います。
06racket は「手のひら」、deuce は「2」
テニスの言葉には、ほかにも語源の話があります。
- racket(ラケット):American Heritage Dictionary によると、古フランス語の rachette(手のひら、ラケット)から。さらにさかのぼると、アラビア語の rāḥa(手のひら)。Oxford の学習辞典も、イタリア語を通ってアラビア語の rāḥa「手のひら」から来たとしています
- deuce(デュース):40対40の同点。American Heritage Dictionary と Oxford の学習辞典によると、古フランス語の deus「2」から。さらにさかのぼると、ラテン語の duo(2)です。サイコロやトランプの「2」も deuce と言います
デュースになると、そこから2点続けて取らないとゲームを取れません。ただ、deuce が「2」から来たことと、このルールとの関係は、今回調べた辞書には書かれていませんでした。
07まとめ
テニスの0点「love」は、フランス語の卵から来たという話が有名です。でも、メリアム・ウェブスターは「証拠なし」。いちばんありそうなのは「好きでやる(for love)」から来たという説ですが、これも決まりではありません。
そして tennis の名前は、サーブする人の「tenez(受けてみろ)」というかけ声だったらしい。次にテニスを見るときは、Fifteen-love のコールの中に、数百年分の言葉の歴史が詰まっていると思って聞いてみてください。
よくある質問
テニスで0点を「ラブ」と言うのはなぜですか?
はっきりとは分かっていません。メリアム・ウェブスターによると、いちばん広く受け入れられているのは、to play for love(好きでやる)から来たという説です。0点の人は勝つためではなく、試合が好きでプレーしている、という考え方です。
ラブの由来はフランス語の卵(l'œuf)ですか?
証拠のない俗説です。メリアム・ウェブスターは、フランス語で l'œuf を「0」の意味で使った証拠がないとして、この説を民間語源(後から作られて広まった由来話)としています。フランス語で0は zéro です。
テニスで love を0点の意味で使うのはいつからですか?
1800年代の後半からです(メリアム・ウェブスター)。ゲームの得点で love を使った記録はもっと古く、1742年にエドモンド・ホイルが、トランプのゲーム、ホイストの解説で「6 or 7 Love」と書いています。
「love-all」とはどういう意味ですか?
0対0のことです。テニスの試合の最初、両方が0点のときに言います。得点は love, fifteen, thirty, forty と数え、Thirty-love! は「30対0」という意味です。
tennis の語源は何ですか?
古フランス語の tenez(取れ、受けろ)から来たとされます。Oxford の学習辞典と Dictionary.com は、サーブする人が相手に言ったかけ声だったらしいと説明していますが、どちらも apparently(どうやら)と書いていて、断定はしていません。
英語で0点を卵にたとえる言い方はありますか?
あります。アメリカ英語の goose egg(ガチョウの卵)、イギリス英語の duck's egg(アヒルの卵)です。クリケットで打者の0点を言う duck も、duck's egg を短くした形です(Oxford の学習辞典)。
デュース(deuce)の語源は何ですか?
古フランス語の deus「2」です(American Heritage Dictionary・Oxford の学習辞典)。さかのぼるとラテン語の duo(2)。サイコロやトランプの「2」も deuce と言います。
ラケット(racket)の語源は何ですか?
古フランス語の rachette(手のひら、ラケット)で、さかのぼるとアラビア語の rāḥa(手のひら)です(American Heritage Dictionary)。Oxford の学習辞典も、イタリア語を通ってアラビア語の rāḥa から来たとしています。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen a tennis player has no points, the umpire says "love." A popular story says the word comes from French.
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原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In tennis, a score of zero is called "love." Some people say this comes from "l'oeuf," the French word for "egg," because an egg looks like a zero.
But the American dictionary Merriam-Webster says there is no proof of this. Merriam-Webster likes another idea better. Maybe the word comes from playing "for love," just because you enjoy the game. The name "tennis" has a fun story too. It probably comes from a French word meaning "Take this!"
77 words ・ CEFR A2
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テニスでは、0点のことを「love(ラブ)」と言います。卵は0のように見えるので、フランス語で「卵」を意味する「l'oeuf(ルフ)」から来た、と言う人もいます。でも、アメリカの辞書メリアム・ウェブスターは、その証拠はないと言っています。
メリアム・ウェブスターは、別の考えのほうが有力だとみています。ただ試合が楽しいからプレーする、「for love(好きで)」プレーすることから来たのかもしれない、というものです。「tennis」という名前にも、おもしろい由来があります。おそらく「これを受けてみろ!」という意味のフランス語から来ています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
0点の love と、tennis という名前の由来の話なので B。
Q2. What does Merriam-Webster say about the "egg" story?
Merriam-Webster says there is no proof of this とあるので C。
Q3. In the passage, what does "for love" mean?
playing "for love," just because you enjoy the game とあるので B。
When a tennis player has no points, the umpire says "love." A popular story says the word comes from French. The French word for "egg" is "l'oeuf," and an egg looks like a zero, so English players are said to have turned "l'oeuf" into "love." Merriam-Webster calls this a folk etymology, a story made up later to explain a word.
There is no evidence that French speakers ever used "l'oeuf" to mean zero. A more widely accepted idea is that a player with zero points is still playing for love of the game. Even this has not been proven. The word "tennis" probably comes from "tenez," Old French for "take this," which the server seems to have called out before hitting the ball.
123 words ・ CEFR B1
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テニスの選手が0点のとき、審判は「love(ラブ)」と言う。よく知られた話では、この言葉はフランス語から来たという。フランス語で「卵」は「l'oeuf(ルフ)」で、卵は0のように見えるので、イギリスの選手が「l'oeuf」を「love」に変えてしまった、と言われている。メリアム・ウェブスターはこれを民間語源、つまり言葉を説明するために後から作られた話だとしている。
フランス語を話す人が「l'oeuf」を0の意味で使った証拠はない。より広く受け入れられているのは、0点の選手も試合が好きだからプレーを続けている、という考えだ。だが、これも証明されたわけではない。「tennis」という語は、おそらく古フランス語で「これを受けろ」を意味する「tenez」から来ていて、サーブする人がボールを打つ前にかけ声として言っていたらしい。
4択リーディングクイズ
Q1. What is a "folk etymology," according to the passage?
a folk etymology, a story made up later to explain a word とあるので B。
Q2. Why does Merriam-Webster reject the egg story?
There is no evidence that French speakers ever used "l'oeuf" to mean zero とあるので C。
Q3. What does the writer suggest about the "for love" idea?
A more widely accepted idea ... Even this has not been proven. とあるので、有力だが確定ではない、という A。
Tennis players hear the word "love" in almost every match, since it is the name for a score of zero. A favorite explanation says that French players called zero "l'oeuf," or "egg," because of its shape, and that English players later mispronounced it.
Merriam-Webster's editors reject this story as folk etymology. They point out that there is no record of French speakers using "l'oeuf" for zero. They also note that English already had its own egg words for a score of nothing, such as "goose egg" in the United States and "duck's egg" in Britain. The editors favor the idea that a player with no points is still playing "for love," for the joy of the game.
But they are careful. In 1742, Edmond Hoyle, a writer on card games, used "love" in this sense when describing whist, more than a century before tennis players took it up. That early example weakens the egg theory, but it does not prove the "for love" idea either. The name of the sport has its own story. Dictionaries trace "tennis" to the Old French "tenez," meaning "take this," apparently called out by the server in the indoor game now known as real tennis.
200 words ・ CEFR B2
和訳を見る
テニスの選手は、ほとんどすべての試合で「love(ラブ)」という言葉を耳にする。0点を表す呼び名だからだ。よく好まれる説明では、フランスの選手がその形から0を「l'oeuf」つまり「卵」と呼び、後にイギリスの選手がそれを発音しまちがえたという。
メリアム・ウェブスターの編集者たちは、この話を民間語源として退けている。フランス語を話す人が「l'oeuf」を0の意味で使った記録はない、と彼らは指摘する。また、英語にはもともと、アメリカの「goose egg」やイギリスの「duck's egg」のように、0点を表す卵の言葉があったことにも触れている。編集者たちが支持するのは、点のない選手も試合の楽しさのために「for love(好きで)」プレーを続けている、という考えだ。だが、彼らは慎重だ。
1742年、トランプのゲームについて書いたエドモンド・ホイルは、ホイストの説明でこの意味の「love」を使っている。テニスの選手が使いはじめる100年以上前のことだ。この古い例は卵説を弱めるが、「for love」説を証明するものでもない。競技の名前にも、それなりの由来がある。辞書は「tennis」を、「これを受けろ」を意味する古フランス語の「tenez」にさかのぼらせる。今ではリアルテニスと呼ばれる屋内の競技で、サーブする人がかけ声として言っていたらしい。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
卵説が否定される理由、代わりの for love 説、tennis の語源を説明しているので B。
Q2. What did Edmond Hoyle do in 1742?
In 1742, Edmond Hoyle ... used "love" in this sense when describing whist とあるので B。
Q3. Why does the writer say the editors "are careful"?
for love 説を支持しつつも、1742年の例は it does not prove the "for love" idea either としているので A。
重要単語
- scoreA2名詞得点、スコアThe score was forty-love when it started to rain.
テニスの得点は love, fifteen, thirty, forty と数える。動詞 score は「得点する」。 - serveB1動詞(テニスなどで)サーブするIt's your turn to serve.
サーブする人は server。料理を「出す」も同じ serve。 - folk etymologyC1名詞民間語源(後から作られた、それらしい由来話)The egg story about "love" is a folk etymology.
etymology は「語源」。folk は「民間の、ふつうの人々の」。 - amateurB2名詞アマチュア、好きでやる人She plays tennis as an amateur, just for fun.
ラテン語 amator(愛する人)から。反対は professional。 - deuceC1名詞(テニスで)40対40の同点、デュースThe game went to deuce three times.
古フランス語 deus(2)から。サイコロやトランプの「2」も deuce。 - racketB1名詞ラケットI left my racket on the bus.
もとはアラビア語の「手のひら」。racquet とつづることもある。 - theoryB1名詞説、理論There are several theories about where the word came from.
a popular theory「よく知られた説」。発音は「シオリー」に近い。
公式・一次情報をチェック
- love(American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
- goose egg(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- racket(American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
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テニスで0点を「ラブ」と言うのはフランス語の「卵(l'œuf)」から、という有名な説。米国の辞書メリアム・ウェブスターは「0の意味で使った証拠がない」と否定。tennis の名前も、サーブのかけ声 tenez(受けてみろ)から来たらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Merriam-Webster「Why 'Love' Means "Nothing" in Tennis」(Wordplay)merriam-webster.com
- Oxford Advanced Learner's Dictionary「love」「goose egg」「duck」(Oxford University Press)oxfordlearnersdictionaries.com
- Oxford Advanced Learner's Dictionary「tennis」「real tennis」(Oxford University Press)oxfordlearnersdictionaries.com
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「tennis」「deuce」「racket」(HarperCollins, 2022)ahdictionary.com
- Dictionary.com「tennis」(Origin of tennis)dictionary.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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