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英語のマジか!?ホント

乾杯の「トースト」は、食パンのトーストと同じ単語。昔は酒に焼いたパンを入れていたらしい

乾杯の「トースト」は、食パンのトーストと同じ単語。昔は酒に焼いたパンを入れていたらしい

読む前に予想してみよう!

英語で乾杯を toast と言うのは、焼いたパンの toast とはまったく関係がない

研究カード(どんな研究?)
対象
英語・日本語・スウェーデン語の辞書の語源欄
規模
英米の辞書4種+日本とスウェーデンの辞書・事典
研究の種類
辞書の語源記述の比較
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

乾杯の toast は食パンの toast から来た、と英米の辞書。昔、香辛料入りのトーストを酒に入れた習慣からとされるが、「推測にすぎない」と注意書きをつける辞書もある。

ひとことで言うと「かんぱい」の英語トーストは、パンのトーストと同じことばだった!

もくじ
  1. 乾杯の toast は「焼いたパン」の toast だった
  2. 「トースト」と呼ばれたのは、乾杯される女性だった
  3. 「焼く」と「のどが渇く」は親戚
  4. 日本語は「杯」、スウェーデン語は「鉢」
  5. どんでん返し:パン説は「推測にすぎない」
  6. まとめ
  7. よくある質問

I'd like to propose a toast to the bride and groom.

結婚式のスピーチで、英語ならこう言います。意味は「新郎新婦に乾杯しましょう」。

ここで出てくる toast、朝ごはんのトースト(焼いた食パン)と、まったく同じ単語です。英米の辞書は、昔の人がワインなどの杯に、香辛料をきかせた焼きパンを入れて風味をつけていたことと結びつけて説明しています。

01乾杯の toast は「焼いたパン」の toast だった

英語で乾杯を toast と呼ぶのはなぜか。まずは辞書の語源欄を見てみましょう。

パンの toast の語源ははっきりしています。古いフランス語の toster(焼く)から来た語で、さかのぼるとラテン語の torrēre(からからに乾かす、焦がす)に行き着きます。

では、乾杯の toast は?

オックスフォード、Dictionary.com、アメリカン・ヘリテージの3つは、言い方の強さはちがっても「パンのトーストから来た」という説明です(メリアム・ウェブスターの慎重な見方は、あとで紹介します)。オックスフォード学習辞典は、乾杯の意味をパンの toast と同じ項目の中に載せています。

02「トースト」と呼ばれたのは、乾杯される女性だった

オックスフォードの説明には、もう一つ大事な点があります。乾杯の習慣は、その場の全員で健康を祝って飲む相手として、ある女性の名前を挙げることから始まった、というのです。

メリアム・ウェブスターも、17世紀の終わりごろ活字に出てくる toast を、「乾杯を受ける人」の意味として紹介しています。当時の「トースト」は、飲む行為だけでなく、乾杯される人そのものを指すことばでした。名前を口にするだけで酒がおいしくなる人、というわけです。

その名残は今の英語にもあります。アメリカン・ヘリテージ英語辞典は、toast の意味として「乾杯される人」と「大評判の人」を載せています。例は the toast of Broadway(ブロードウェイで大評判の人)。The performance made her the toast of the festival.(その演技で彼女はフェスティバルの人気者になった)のようにも使います。

1709年の雑誌『タトラー』が紹介した、温泉町バースの浴場での「トースト」の由来話(メリアム・ウェブスターの語源注による)
1709年の雑誌『タトラー』が紹介した、温泉町バースの浴場での「トースト」の由来話(メリアム・ウェブスターの語源注による)

この呼び名の由来として、よく引かれる話があります。平凡社の『世界大百科事典』とメリアム・ウェブスターの語源注によると、1709年にイギリスの雑誌『タトラー』に、こんな話が載りました。

チャールズ2世の時代、温泉町バースの浴場に、評判の美人が入っていました。ファンの一人がその湯をグラスにくんで、彼女の健康を祝って飲みます。するとほろ酔いの男が「そんな酒は好きじゃないが、中のトーストはいただく」と言って、湯に飛びこもうとしました。トーストを浮かべた酒にかけた冗談です。それ以来、乾杯される女性を「トースト」と呼ぶようになった、というのです。

03「焼く」と「のどが渇く」は親戚

パンの toast をもう少しさかのぼってみます。

アメリカン・ヘリテージ英語辞典は、toast(焼く)、torrid(焼けつくように暑い)、thirst(のどの渇き)の3語を、どれも同じ古い語根(単語のもとになった、さらに古い形)から来た語として示しています。そのもとの意味は「乾く」。ラテン語に入って torrēre(熱でからからに乾かす)になり、そこから toast と torrid が生まれました。一方、ラテン語を通らず、英語やドイツ語の祖先にあたるゲルマン語を通って伝わった形が、古英語の thurst(乾き、のどの渇き)、今の thirst です。乾くのが口の中なら「のどが渇く」、パンなら「こんがり焼ける」というわけです。メリアム・ウェブスターも toast の語源欄で thirst を参照先に挙げています。

のどが渇いたら飲む。その杯の中にトーストが入っていた。「乾く」という1つのもとの言葉が、ぐるっと乾杯までつながっています。

04日本語は「杯」、スウェーデン語は「鉢」

ほかの言語の「乾杯」も、くらべてみましょう。

日本語の乾杯は、文字どおり「杯を乾かす」。デジタル大辞泉は「杯の酒を飲み干すこと」と説明しています。精選版 日本国語大辞典が挙げるいちばん古い例は、平安時代の『新儀式』(963年ごろ)です。

スウェーデン語で乾杯は skål(スコール)。スウェーデン・アカデミーの辞書によると、skål の1つ目の意味は「食べ物や飲み物を入れる、丸くて深い器」、つまり鉢です。2つ目の意味が「あいさつや、だれかに敬意を表して、みんなで(酒を)飲むこと」で、1566年から記録があります。「Skål!」というかけ声としては1614年からです。語源は古いスウェーデン語の skal で、意味は「はかりの皿、飲み物の鉢」でした。

英語は杯の中身(トースト)、日本語は「杯を乾す」、スウェーデン語は鉢。どれも、飲む道具や中身の名前が、乾杯のことばに入っています。

05どんでん返し:パン説は「推測にすぎない」

ここまで読むと、「乾杯のトーストはパンから」で決まりに思えます。ところが、メリアム・ウェブスターの語源注は慎重です。

同辞典は、乾杯される女性の名前が酒に風味を添えるという説明を、「従来の想定」だと紹介し、その例として OED(オックスフォード英語辞典)初版の書き方を引いています。そのうえで、これは純粋な推測で、この意味の起源はわかっていない、と書いているのです。

バースの浴場の話も同じです。メリアム・ウェブスターによると、この話が載った『タトラー』第24号(1709年6月4日)の筆者は、おそらくジョゼフ・アディソン。2週間あまりあとの第31号では、編集者のリチャード・スティールが、浴場の話にはふれずに別の説明をしています。2人とも事実に作り話を混ぜることができた書き手なので、どちらの話もあまり本気にしないほうがよい、と同辞典は書いています。

アメリカン・ヘリテージ英語辞典の「Perhaps(おそらく)」、Dictionary.com の「と言われた(was said to)」も、同じ慎重さの表れです。「同じ単語」は辞書の一致した見方ですが、「なぜそう呼んだのか」は、今もはっきりとは分かっていません。

06まとめ

結婚式の toast と朝ごはんの toast は、英語では同じ単語でした。昔は酒に香辛料入りの焼きパンを入れていて、乾杯される人の名前がそのパンのように酒を引き立てる、という発想から生まれたとされます。

ただし、それは辞書も「おそらく」「推測」と断る説明です。次に乾杯の音頭をとるときは、I'd like to propose a toast. と言いながら、グラスの中にパンが浮かんでいた300年あまり前の宴会を思い浮かべてみてください。

よくある質問

乾杯を英語で toast と言うのはなぜですか?

昔、ワインなどの杯に香辛料をきかせた焼きパン(トースト)を入れて風味をつけていた習慣から来たとされます(オックスフォード学習辞典)。ただしメリアム・ウェブスターは、この説明を推測にすぎないとして、起源はわかっていないと書いています。

乾杯の toast とパンの toast は同じ単語ですか?

はい。オックスフォード学習辞典は、乾杯の意味をパンの toast と同じ項目の中に載せています。Dictionary.com も、乾杯の toast は、パンの toast をたとえとして使ったものとしています。

toast はいつから乾杯の意味で使われていますか?

17世紀の終わりごろからです。Dictionary.com は、乾杯の意味で初めて使われたのを1690〜1700年としています。オックスフォード学習辞典も、乾杯の習慣を17世紀後半からとしています。

「the toast of the town」とはどういう意味ですか?

「町の人気者」という意味です。toast には昔から、乾杯される人そのものを指す使い方がありました。アメリカン・ヘリテージ英語辞典は toast の意味に「乾杯される人」と「大評判の人」を載せ、the toast of Broadway を例にしています。

「乾杯しましょう」は英語で何と言いますか?

I'd like to propose a toast to ~.(~に乾杯しましょう)と言います。グラスを上げるときのかけ声は Cheers! です。動詞にして We toasted the happy couple.(幸せな2人に乾杯した)とも言えます。

「You're toast.」はどういう意味ですか?

「おしまいだ」という意味のくだけた言い方です。One mistake and you're toast.(1つでもミスしたらおしまいだ)のように、友だち同士の会話で使います。

乾杯の「スコール」は頭蓋骨が由来ですか?

辞書には頭蓋骨の話は出てきません。スウェーデン・アカデミーの辞書によると、skål の1つ目の意味は「鉢」で、語源は古いスウェーデン語の skal(はかりの皿、飲み物の鉢)です。

日本語の「乾杯」はどういう意味ですか?

文字どおり「杯を乾かす」ことで、デジタル大辞泉は「杯の酒を飲み干すこと」と説明しています。精選版 日本国語大辞典が挙げるいちばん古い例は、平安時代の『新儀式』(963年ごろ)です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen English speakers raise their glasses at a wedding, they drink a "toast." The word is spelled and… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

When English speakers raise their glasses at a wedding, they drink a "toast." The word is spelled and pronounced the same as the toast we eat for breakfast, and dictionaries say the drinking word grew out of the bread word. The Oxford Learner's Dictionary says the custom of drinking a toast goes back to the late 17th century.

In those days, people put pieces of spiced toast into wine to add flavor. When a group drank to the health of a particular woman, her name was said to add flavor to the drink, just like the toast. That is why the woman herself came to be called a "toast." Even now, a very popular person can be called "the toast of the town."

123 words ・ CEFR B1

和訳を見る

英語を話す人々は、結婚式でグラスを上げるとき「トースト(乾杯)」をする。この語は、朝食に食べるトーストとつづりも発音も同じで、辞書によると、乾杯の語はパンの語から生まれた。オックスフォード学習辞典によると、乾杯をする習慣は17世紀後半にさかのぼる。

当時、人々は風味をつけるために、香辛料をきかせたトーストのかけらをワインに入れていた。ある集まりが特定の女性の健康を祝って飲むとき、その女性の名前は、トーストと同じように酒に風味を添えると言われた。そのため、その女性自身が「トースト」と呼ばれるようになった。今でも、とても人気のある人は「町の人気者(the toast of the town)」と呼ばれることがある。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. Why did people put spiced toast into wine?

Q3. What does "the toast of the town" most likely describe?

重要単語

  • toastB1
    名詞・動詞トースト;乾杯(する)Let's drink a toast to our new neighbors. drink a toast to ~/propose a toast to ~「~に乾杯する/乾杯の音頭をとる」。動詞なら toast the couple「2人に乾杯する」。
  • proposeB2
    動詞提案する;(乾杯などを)申し出るMy uncle stood up to propose a toast to the couple. propose to ~ だと「~に結婚を申しこむ」。propose a toast と混同しないこと。
  • flavorB1
    名詞・動詞風味、味;風味をつけるA little lemon adds flavor to the tea. イギリス式のつづりは flavour。add flavor to ~「~に風味を加える」。
  • customB1
    名詞(社会の)習慣、慣習In Japan, it is a custom to say "kanpai" before drinking. 個人の癖は habit、社会のしきたりは custom。customs(複数形)は「税関」。
  • spicedB2
    形容詞香辛料をきかせたThey served warm spiced apple juice at the party. spice(香辛料)+-ed。spicy は「辛い」の意味で使うことが多い。
  • celebrityB2
    名詞有名人The young singer became a celebrity after one TV show. a famous person とほぼ同じ意味の数えられる名詞。a TV celebrity「テレビの有名人」。
  • thirstB2
    名詞のどの渇きI drank two glasses of water to satisfy my thirst. 形容詞は thirsty。American Heritage Dictionary は toast・torrid と同じ古い語根に結びつけている。
結婚式の「トースト(乾杯)」と朝ごはんのトーストは、英語では同じ単語。昔、ワインなどに香辛料入りの焼いたパンを入れて風味をつけていたことから、と英米の辞書。ただしメリアム・ウェブスターは「推測にすぎない」と注意書き。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Oxford Advanced Learner's Dictionary「toast」(名詞・Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  2. Merriam-Webster「toast」(Etymology の NOTE)merriam-webster.com
  3. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「toast」「thirst」「torrid」ahdictionary.com
  4. Dictionary.com「toast」(Origin)dictionary.com
  5. Svenska Akademiens ordböcker, Svensk ordbok「skål」/改訂新版 世界大百科事典・デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典「乾杯」(コトバンク)svenska.se

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