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日本語のマジか!?ホント

「すべからく」を“すべて”と答えた人、いちばん多いのは若者ではなく70歳以上だった

「すべからく」を“すべて”と答えた人、いちばん多いのは若者ではなく70歳以上だった

読む前に予想してみよう!

「すべからく」を「すべて、皆」の意味だと答えた人の割合は、若い世代ほど高かった

研究カード(どんな研究?)
対象
全国16歳以上(文化庁「国語に関する世論調査」)
規模
3,794人(2020年度)
研究の種類
全国世論調査(郵送法)+辞書の語義・用例
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「すべからく」の本来の意味は「当然、ぜひとも」。文化庁調査で「すべて、皆」と答えた人は70歳以上が39.6%で、どの年代より多かった。

ひとことで言うと「すべからく」は「ぜんぶ」じゃなく「当然〜すべき」という意味なんだって!

もくじ
  1. 本来の意味を選んだ人は54.8%
  2. 年代別に見ると、70歳以上だけ差が小さかった
  3. 「すべからく」の語源は? もとは漢文の「須」を読むための言葉
  4. 英語にすると、ちがいがはっきりする
  5. どんでん返し:「増えた」とは言い切れない
  6. まとめ

「人はすべからく努力すべきだ」

この「すべからく」、「すべての人は」という意味だと思っていませんか。

じつは「すべからく」の本来の意味は、「当然、ぜひとも」。「人は当然、努力するべきだ」という意味です。「すべて」とは関係ありません。

そしてこの取りちがえがいちばん多かったのは、若い人ではなく70歳以上の人でした。文化庁の調査で「すべて、皆」の意味だと答えた人は、70歳以上で39.6%。どの年代よりも高い数字でした。

01本来の意味を選んだ人は54.8%

同じ年に一緒にたずねた「がぜん」と「破天荒」は、本来とは別の意味を選んだ人のほうが多数派でした。その中で「すべからく」は、本来の意味のほうが多く選ばれたことになります。

02年代別に見ると、70歳以上だけ差が小さかった

年代ごとの数字を並べてみます(左が本来の「当然、是非とも」、右が「すべて、皆」)。

  • 16〜19歳:本来の意味 57.6%/すべて、皆 28.5%
  • 20代:57.8%/28.2%
  • 30代:60.3%/27.6%
  • 40代:57.1%/30.1%
  • 50代:60.4%/28.0%
  • 60代:55.5%/32.0%
  • 70歳以上:45.6%/39.6%

すべての年代で、本来の意味を選んだ人のほうが多くなっています。ただ、2つの答えの差は、60代以下では20ポイント以上あるのに対し、70歳以上では6ポイントしかありません。また、「両方の意味がある」と答えた人が、20代以下では10%を超えていました。

「言葉の誤用は若者から」と思われがちですが、この語については、そうとは言えない結果です。

「すべからく」は、漢文の「須」の字を読み下すときに生まれた言葉(日本国語大辞典)
「すべからく」は、漢文の「須」の字を読み下すときに生まれた言葉(日本国語大辞典)

03「すべからく」の語源は? もとは漢文の「須」を読むための言葉

「すべからく」は漢字で「須く」と書きます。

小学館の『日本国語大辞典』によると、「すべからく」は漢文の「須」を訓読する(日本語として読み下す)ときに生まれた語です。動詞「す」(する)に助動詞「べし」の形(べかり)がついた「すべかり」を、「〜すること」のような形(ク語法)にしたものです。つまり、もともと「するべきである」という意味を中に持っている言葉なのです。

だから「すべからく」は、多くの場合、後ろに「べし」がきます。

  • すべからく〜べし = 当然〜するべきだ

高校の漢文で、「須」を「すべからく〜べし」と2回読む(再読する)、と習った人もいるでしょう。辞書には、「べし」のほか「む」や命令の形で再読する例もあると書かれています。

古い例では、平安時代初期(850年ごろ)の仏教書の訓読に出てきます。鎌倉時代末の『徒然草』(1331年ごろ)にも、こんな一文があります。

「徳をつかんと思はば、すべからく、まづその心づかひを修行すべし」(『徒然草』第217段。日本国語大辞典の用例による)

この段は、ある大金持ち(大福長者)が語った「お金持ちになる心得」を書きとめた段です。ここの「徳」は人がらのことではなく、「富、財産」の意味です。『校註日本文學大系』の注は「徳をつく」を「富を身につける」と説明し、『日本国語大辞典』も「徳」の意味の一つに「富。財産」を挙げています。「財産を手に入れたいと思うなら、当然まずその心がまえから修行するべきだ」という意味になります。後ろに「べし」があり、「すべて」の意味では読めませんね。

04英語にすると、ちがいがはっきりする

英語に訳してみると、2つの意味のちがいがよく分かります。

  • 本来の意味:People should work hard.(人は当然、努力するべきだ)
  • 取りちがえた意味:All people should work hard.(すべての人が努力するべきだ)

本来の「すべからく」は「当然〜すべき」という気持ちを表す言葉で、英語なら should や ought to にあたります。「すべての人」を表す all の働きは、もともと持っていません。「すべ」という音が「すべて」と同じなので、つい「全部」と読みたくなるのかもしれません。ただ、取りちがえの理由については、今回調べた調査や辞書には書かれていませんでした。

05どんでん返し:「増えた」とは言い切れない

2010年度の調査では、本来の意味を選んだ人は41.2%でした。2020年度は54.8%。10年で13ポイント以上増えたように見えます。

ところが文化庁は、この2つを比べるときは注意が必要だと断っています。2020年度から、調査のやり方が「調査員が会って聞く面接」から「郵送」に変わったためです。

表をよく見ると、もう一つちがいがあります。2010年度の表には「分からない」(11.9%)という行がありますが、2020年度の表にはこの行がありません。答え方の選択肢がちがえば、数字も変わりえます。「本来の意味を知る人が増えた」と言い切ることはできないのです。

06まとめ

「すべからく」は「すべて」ではなく、「当然、ぜひとも」。漢文の「須」を「すべからく〜べし」と読み下すところから生まれた言葉です。

そして、「すべて」の意味だと答えた人がいちばん多かったのは70歳以上でした。「言葉の乱れは若者から」という思いこみも、ときには疑ってみる価値がありそうです。

使うときは、文の終わりを「〜べきだ」にそろえる。これだけ覚えておけば、まちがえる心配はありません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany Japanese speakers think "subekaraku" means "all," maybe because it begins with the same sounds as… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many Japanese speakers think "subekaraku" means "all," maybe because it begins with the same sounds as "subete." Its actual meaning is closer to "as a matter of course" or "by all means," and it is usually followed by "beshi," an old form meaning "should." It was created centuries ago to read a Chinese character in classical Chinese texts.

In a survey carried out by Japan's Agency for Cultural Affairs in 2021, 54.8 percent of people chose the traditional meaning. The result by age was a surprise. People aged 70 or older were the most likely to choose "all," at 39.6 percent. In every group under 70, the figure was 32 percent or lower.

113 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの日本語話者は、「すべからく」を「全部」という意味だと考えている。「すべて」と同じ音で始まるからかもしれない。実際の意味は「当然のこととして」や「ぜひとも」に近く、たいてい後ろに「べし」(「〜すべき」を意味する古い形)が続く。

この語は何世紀も前に、漢文の中のある漢字を読むために生まれた。2021年に日本の文化庁が行った調査では、54.8%の人が伝統的な意味を選んだ。年代別の結果は意外なものだった。「全部」を選ぶ割合がいちばん高かったのは70歳以上で、39.6%だった。70歳未満のどの年代でも、その数字は32%以下だった。

4択リーディングクイズ

Q1. According to the writer, why might many people misunderstand "subekaraku"?

Q2. Which word usually comes after "subekaraku"?

Q3. Why does the writer call the result by age "a surprise"?

重要単語

  • shouldA2
    助動詞〜すべきだYou should drink more water. 「すべからく〜べし」の「べし」に近い。must より弱く、助言にも使う。
  • as a matter of courseC1
    熟語当然のこととしてShe checks her answers as a matter of course. of course(もちろん)と同じ course。「すべからく」の訳語の候補。
  • by all meansB2
    熟語ぜひとも;(返事で)どうぞどうぞ"Can I borrow this book?" "By all means." all が入っているが「全部」の意味ではない。「すべからく」と少し似た落とし穴。
  • classicalB1
    形容詞古典のWe read classical Chinese poems in class. classical Chinese で「漢文、古典中国語」。classic(定番の、名作の)と区別する。
  • misreadB2
    動詞読みちがえる、誤解するI misread the date and came a day early. mis-(誤って)+read。過去形・過去分詞も misread(発音はミスレッド)。
  • optionB1
    名詞選択肢The survey did not offer a "don't know" option. 動詞は opt(選ぶ)、形容詞は optional(任意の)。

動画でもっと知る

「すべからく」は“すべて”ではなく「当然、ぜひとも」。文化庁の調査では、本来の意味を選んだ人は20代で57.8%、70歳以上で45.6%。「すべて、皆」と答えた人がいちばん多かったのは70歳以上(39.6%)だった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. 文化庁 (2021) 令和2年度「国語に関する世論調査」の結果の概要(問10)bunka.go.jp
  2. 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉「須く」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  3. 精選版 日本国語大辞典「徳」(⑥富。財産)(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  4. 校註日本文學大系『徒然草』第217段(「ある大福長者の曰く」、注「富を身につける」。ウィキソース翻刻)ja.wikisource.org

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