「破天荒な人」は“豪快な人”ではなかった。本来の意味「だれもしなかったことをする」を選んだ人は23.3%

読む前に予想してみよう!
「破天荒」の本来の意味は「豪快で大胆な様子」だ
辞書などで本来の意味とされてきたのは「だれも成し得なかったことをすること」。文化庁の2020年度調査では、こちらを選んだ人は23.3%で、「豪快で大胆な様子」の65.4%を下回った。
- 対象
- 全国16歳以上(文化庁「国語に関する世論調査」)
- 規模
- 3,794人(2020年度)
- 研究の種類
- 全国世論調査(郵送法)+辞書の語義・故事
- 確かさ
- ★★★★☆
「破天荒」は本来「だれも成し得なかったことをすること」。文化庁の2020年度調査では65.4%が「豪快で大胆な様子」と答え、本来の意味は23.3%だった。もとは唐の時代、試験の合格者が出ない土地から初めて合格者が出た故事。
ひとことで言うと「破天荒」は、ほんとうは「今までだれもできなかったことをやりとげる」こと。「豪快でむちゃくちゃ」という意味ではないんだって!
「あの人は破天荒だからなあ」
人をこんなふうに紹介する言い方を、耳にしたことはありませんか。思い浮かぶのは、型やぶりで、むちゃくちゃで、豪快な人ではないでしょうか。
ところが、辞書などで本来の意味とされてきたのは「だれも成し得なかったことをすること」です。文化庁の調査では、この意味を選んだ人は23.3%。「豪快で大胆な様子」を選んだ人は65.4%でした。
013人に2人が「豪快で大胆」
年代別に見ると、すべての年代で、「豪快で大胆な様子」を選んだ人が、本来の意味を選んだ人より多くなりました。報告書によると、40代以下では、2つの割合の差が50ポイント以上あります。
16〜19歳では、本来の意味を選んだ人が13.2%、「豪快で大胆な様子」を選んだ人が78.5%。年代が上がるほど本来の意味を選ぶ人は増え、70歳以上では32.9%になります。それでも、同じ70歳以上で「豪快で大胆な様子」を選んだ52.0%には届きませんでした。
02「破天荒」の由来は? 「天荒」とは、どんな荒れ地?
「破天荒」は、「天荒」を「破る」と書きます。この「天荒」が、言葉のなぞを解くカギです。
日本国語大辞典によると、「天荒」は、まだ開かれていない荒れ地のことです。もとになったのは、中国・唐の時代の話です。
- 唐の時代、荊州(けいしゅう)という地方からは、役人を選ぶ試験の合格者が一人も出なかった
- そのため荊州は、人々から「天荒」と呼ばれていた
- ところが、劉蛻(りゅうぜい)という人が初めて合格した。人々はこれを「天荒を破った」と言った
日本国語大辞典は、この出来事を唐の大中年間(847〜860年)のこととし、『唐摭言(とうせきげん)』『北夢瑣言(ほくむさげん)』という中国の書物の記事によると説明しています。『故事成語を知る辞典』は、荊州を今の湖北省・湖南省にあたる地方とし、合格に大喜びした荊州の長官が劉蛻に大金を与えた、という話も紹介しています。
だれも合格できなかった土地から、初めて合格者が出た。だから「破天荒」は「今までだれもできなかったことを成しとげる」という意味なのです。

03明治の文章では「前例のない」
日本国語大辞典が挙げる日本語での初めての例は、明治時代の思想家・三宅雪嶺の『真善美日本人』(1891年)です。
「破天荒の新理論を組成し」(『真善美日本人』。日本国語大辞典の用例による)
「今までにない、新しい理論を組み立て」という意味で、人の性格の話ではありません。デジタル大辞泉も「破天荒の試み」「破天荒な大事業」という例を挙げ、「前代未聞」「未曽有(みぞう)」と同じ仲間の言葉として説明しています。
04英語で言うと?
本来の「破天荒」に近い英語は、unprecedented(前例のない)や groundbreaking(画期的な)です。オックスフォードの学習辞典では、それぞれ次のように説明されています。
- unprecedented:これまでに起きたことも、行われたことも、知られたこともない
- groundbreaking:新しい発見をする、新しい方法を使う。例 a groundbreaking piece of research(画期的な研究)
一方、いま多くの人が思う「豪快で大胆な」に近いのは bold です。辞書では「勇敢で自信がある。思ったことを言ったり危険をおかしたりするのを恐れない」と説明されています。例 It was a bold move on their part to open a business in France.(フランスで店を開くとは、彼らも思い切ったことをした)
つまり、本来の「破天荒」は unprecedented、いまの多数派の「破天荒」は bold。英語にすると、ずれがはっきり見えます。
05どんでん返し:「変化」を書いた辞典もある
では、「豪快で大胆」の意味で使うのは、はっきりした間違いなのでしょうか。
『故事成語を知る辞典』は解説で、本来の「破天荒」は「だれもできなかったことを成し遂げた」人に使う言葉だとしながら、現在ではやや変化して、「だれもやらないような、豪快で大胆なことをする」場合に使われるようになってきている、と書いています。新しい使い方があることを、辞典自身が認めているのです。
考えてみれば、「今までだれもしなかったことをする人」は、たいてい型やぶりで大胆です。本来の意味から「大胆さ」のほうに目が向いていった、と考えれば、つながりは見えてきます。ただし、この変化がいつごろ起きたのかは、今回調べた辞書では確かめられませんでした。
また、本来の意味を選んだ人は、2008年度の16.9%から2020年度は23.3%に増えています。けれども調査の方法が面接から郵送に変わったため、文化庁は過去の結果を「参考値」とし、比較には注意が必要だとしています。
06まとめ
「破天荒」は、合格者の出なかった「荒れ地」から初めて合格者が出た、という唐の故事から生まれた言葉です。本来は「今までだれもできなかったことを成しとげる」こと。
いまは65.4%の人が「豪快で大胆な様子」だと答え、その使い方にふれた辞典もあります。ほめ言葉として「破天荒」を使うなら、その人が「初めて」成しとげたことを一緒に伝えてみてください。本来の意味がいちばん生きる使い方です。
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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Many people in Japan call a wild and bold person "hatenko." But the word first meant something else. It meant "to do something no one has done before." The word comes from an old story from China. In one area, no one had ever passed a big state exam.
Then one man finally passed. In a 2021 survey, 65.4 percent of people chose "bold and wild." Only 23.3 percent chose the old meaning.
73 words ・ CEFR A2
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日本では、多くの人が豪快で大胆な人を「破天荒」と呼びます。でも、この言葉はもともと別の意味でした。「今までだれもしたことのないことをする」という意味だったのです。この言葉は中国の古い話から来ています。ある地方では、だれも国の大きな試験に合格したことがありませんでした。
そして、ついに一人の男性が合格しました。2021年の調査では、65.4%の人が「豪快で大胆」を選びました。もとの意味を選んだのは23.3%だけでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What did "hatenko" first mean?
It meant "to do something no one has done before." とあるので B。
Q2. What happened in the old story?
Then one man finally passed. とあるので A。
Q3. What percent of people chose "bold and wild"?
65.4 percent of people chose "bold and wild." とあるので C。23.3%はもとの意味を選んだ人。
If you call someone "hatenko" in Japanese today, most people will picture a bold person who breaks all the rules. That is not what the word first meant. It goes back to a story from China's Tang dynasty. For years, no one from the Jingzhou area had passed the state exam for government officials, so people called the area "tenko," a kind of wild, empty land. When a man named Liu Tui finally passed, people said he had broken the "tenko."
So the word means doing something no one has done before. In a 2021 survey by Japan's Agency for Cultural Affairs, only 23.3 percent chose this meaning. The answer "bold and wild" got 65.4 percent.
116 words ・ CEFR B1
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今日、日本語でだれかを「破天荒」と呼ぶと、たいていの人は、ルールを全部やぶる大胆な人を思い浮かべるだろう。それは、この言葉のもともとの意味ではない。この言葉は中国の唐の時代の話にさかのぼる。何年もの間、荊州という地方からは、役人を選ぶ国の試験に合格した人がいなかった。そこで人々はその地方を、荒れた何もない土地という意味の「天荒」と呼んだ。劉蛻という男性がついに合格したとき、人々は彼が「天荒」を破ったと言った。
だからこの言葉は、今までだれもしたことのないことをするという意味なのだ。2021年に日本の文化庁が行った調査では、この意味を選んだのは23.3%だけだった。「豪快で大胆」という答えは65.4%だった。
4択リーディングクイズ
Q1. Why was the Jingzhou area called "tenko"?
no one from the Jingzhou area had passed the state exam ... so people called the area "tenko" とあるので B。
Q2. Who was Liu Tui?
When a man named Liu Tui finally passed とあるので D。
Q3. What does the first sentence tell us?
most people will picture a bold person who breaks all the rules とあるので A。
In Japanese, calling someone "hatenko" usually brings to mind a bold, rule-breaking character. A government survey carried out in March 2021 found that 65.4 percent of respondents took the word to mean "bold and wild." Only 23.3 percent chose the traditional dictionary meaning, "doing something no one has ever done." Even among people aged 70 or older, the newer reading came out ahead, 52.0 percent to 32.9 percent.
The traditional meaning comes from a story about the Tang dynasty in China. No candidate from the Jingzhou region had ever passed the state exam for officials, so people called the region "tenko," or barren land. When Liu Tui became the first to pass, sometime in the middle of the ninth century, people said he had broken through the barren land.
In 1891, the Japanese thinker Miyake Setsurei used the word to describe a new theory that no one had put forward before. A Japanese dictionary of sayings from old Chinese stories notes that the word is now used for doing bold things no one else would try. After all, a person who does what no one has done is usually bold, too.
191 words ・ CEFR B2
和訳を見る
日本語で、だれかを「破天荒」と呼ぶと、たいていは大胆で型やぶりの人物が思い浮かぶ。2021年3月に行われた政府の調査では、回答者の65.4%がこの語を「豪快で大胆」という意味にとらえていた。辞書で本来の意味とされてきた「今までだれもしたことのないことをする」を選んだのは、わずか23.3%だった。70歳以上の人の間でさえ、新しい意味のほうが52.0%対32.9%で上回った。
伝統的な意味は、中国の唐の時代の話から来ている。荊州という地方からは、役人の国家試験に合格した受験者が一人もいなかったため、人々はその地方を「天荒」、つまり荒れ地と呼んでいた。9世紀半ばのある時期に劉蛻が初めて合格したとき、人々は彼が荒れ地を突き破ったと言った。
1891年、日本の思想家の三宅雪嶺は、だれもまだ打ち出したことのない新しい理論を表すのにこの語を使った。日本の故事成語の辞典の一つは、この語が今では、ほかのだれもやらないような大胆なことをする場合に使われていると書いている。結局のところ、だれもしたことのないことをする人は、たいてい大胆でもあるのだ。
4択リーディングクイズ
Q1. What do the figures for people aged 70 or older show?
Even among people aged 70 or older, the newer reading came out ahead, 52.0 percent to 32.9 percent とあるので B。
Q2. How did Miyake Setsurei use the word in 1891?
used the word to describe a new theory that no one had put forward before とあるので C。
Q3. What does the writer suggest in the last two sentences?
a person who does what no one has done is usually bold, too とあるので、2つの意味はつながっていると言いたい。D。
重要単語
- unprecedentedC1形容詞前例のないThe team won an unprecedented five titles in a row.
precedent(前例)に un- が付いた形。本来の「破天荒」にいちばん近い英語。 - groundbreakingC1形容詞画期的な、新しい道を切り開くIt was a groundbreaking piece of research.
a groundbreaking piece of research「画期的な研究」はオックスフォードの学習辞典の例。 - boldB2形容詞大胆な、思い切ったIt was a bold move to start a new business.
いまの多数派の「破天荒(豪快で大胆)」に近い。in bold は「太字で」。 - examA2名詞試験He was the first person from his town to pass the exam.
examination の短い形。pass an exam「試験に合格する」、fail an exam「落ちる」。 - barrenC1形容詞(土地が)やせた、作物の育たないNothing grew on the barren land.
「天荒」はまさに barren land。発音は「バレン」。 - pioneerB2名詞先駆者、草分けShe was a pioneer in women's sports.
アクセントは最後(pi-o-NEER)。本来の意味の「破天荒」をなしとげた人。 - officialB1名詞役人、公務員He studied hard to become a government official.
形容詞では「公式の」。government official「政府の役人」。
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公式・一次情報をチェック
- 「国語に関する世論調査」の結果(文化庁)bunka.go.jp
- 破天荒(精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉・故事成語を知る辞典/コトバンク)kotobank.jp
- unprecedented(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
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「破天荒な人」の“破天荒”、本来は「だれも成し得なかったことをすること」。唐の時代、役人の試験の合格者が一人も出ず「天荒(荒れ地)」と呼ばれた土地から、初めて合格者が出た話がもと。でも文化庁の調査では65.4%が「豪快で大胆な様子」を選び、本来の意味は23.3%。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- 文化庁 (2021) 令和2年度「国語に関する世論調査」の結果の概要(問10)bunka.go.jp
- 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉・故事成語を知る辞典「破天荒」(コトバンク掲載)kotobank.jp
- unprecedented(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- groundbreaking(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- bold(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- 三宅雪嶺(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典、コトバンク掲載)kotobank.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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