「がぜんやる気が出た」の“がぜん”、本来は“とても”ではなく“急に”。本来の意味を選んだ人は23.6%

読む前に予想してみよう!
「がぜん」の本来の意味は「とても、断然」だ
辞書などで本来の意味とされてきたのは「急に、突然」。文化庁の2020年度調査では、こちらを選んだ人は23.6%で、「とても、断然」を選んだ人(67.0%)よりずっと少なかった。
- 対象
- 全国16歳以上(文化庁「国語に関する世論調査」)
- 規模
- 3,794人(2020年度)
- 研究の種類
- 全国世論調査(郵送法)+辞書の語義・用例
- 確かさ
- ★★★★☆
「がぜん」の本来の意味は「急に」。文化庁調査では67.0%が「とても、断然」を選んだ。ただ強める使い方も昭和初期に流行していた。
ひとことで言うと「がぜん」は本当は「急に」。「とても」だと思う人が7割近くいるんだって!
「テスト前日になって、がぜんやる気が出てきた」
この「がぜん」、どんな意味で使っていますか。「すごく」「めちゃくちゃ」に近い意味だと思った人は多いはずです。
ところが辞書で本来の意味とされてきたのは、「急に、突然」。文化庁の調査では、この本来の意味を選んだ人は23.6%しかいませんでした。67.0%の人は「とても、断然」の意味だと答えています。
017割近くが「とても」と答えた
年代別に見ると、差がはっきり出ています。本来の「急に、突然」を選んだ人は、20代でわずか12.7%。そこから年代が上がるほど増え、70歳以上では32.5%でした。
それでも、すべての年代で「とても、断然」を選んだ人のほうが多くなっています。70歳以上でも52.6%が「とても、断然」を選んでいます。20代では80.5%でした。40代以下では、「とても、断然」を選んだ人と「急に、突然」を選んだ人の差が50ポイント以上ありました。

02「がぜん」の語源は? 荘子の「胡蝶の夢」にも出てくる古い漢語
「がぜん」は漢字で書くと「俄然」です。「俄」は「にわか」と読みます。急に降り出す雨を「にわか雨」と言いますね。「俄然」も、もとは「にわかなさま」を表す言葉です。
平凡社の漢字辞典『字通』によると、「俄然」は古代中国の思想家・荘子(荘周)の書物『荘子』にすでに出てきます。有名な「胡蝶の夢」の話です。蝶になった夢を見ていた荘周が、「俄然として」目を覚ます。つまり「にわかに」目が覚めた、という場面です。目覚めた荘周は、自分が夢で蝶になったのか、蝶が夢で自分になっているのか分からなくなった――という故事です(日本国語大辞典「胡蝶の夢」)。
日本の辞書も見てみましょう。小学館の『日本国語大辞典』では、「急に。突然。」の意味の例として、明治時代の文章が挙がっています。
- 1875〜81年の『近世紀聞』
- 1900〜01年の徳富蘆花『思出の記』:「大音声に話して居るかと思ふと、俄然声を低めて」
大声で話していたかと思うと、急に声を低くした。まさに「突然」の意味ですね。デジタル大辞泉には、夏目漱石の『それから』の用例も載っています。
03「とても」でも「急に」でも通じてしまう文
ここで、最初の文に戻ってみましょう。
「テスト前日になって、がぜんやる気が出てきた」
これは「テスト前日になって、急にやる気が出てきた」と読んでも、ちゃんと意味が通ります。「がぜん面白くなってきた」も同じです。どちらの意味で読んでも文が成り立つので、取りちがえていても気づきにくいのです。
一方、「こっちのほうが、がぜんいい」のように比べる文では、「急に」の意味では読めません。ここでは「断然」とほぼ同じ意味で使われています。
04どんでん返し:“強める”がぜんは昭和の初めにもあった
では、「とても」の意味の「がぜん」は、最近の若者が生んだ“乱れ”なのでしょうか。
そうとは言い切れません。『日本国語大辞典』には、副詞の「がぜん」の2つ目の意味として、「動作、状態を強調するのに用いた、昭和初期の流行表現」と書かれています。用例は1929年の『漫談集』に収められた、漫談家・大辻司郎の「漫談の漫談」です。つまり、意味を強める「がぜん」は、昭和の初めにすでにはやっていたのです。
ただし、この昭和初期の流行が今の「とても」の意味に直接つながっているのかどうかは、辞書には書かれていません。いったん下火になって、あとから似た使い方が広まった可能性もあります。
英語にも、時間の意味がゆれる副詞があります。たとえば presently。オックスフォードの学習辞典には「まもなく」の意味と、「現在」の意味の両方が載っています。「現在」の意味は特に北米で使われる、と書かれています。She'll be here presently. は「彼女はまもなく来ます」。時間を表す言葉の意味は、英語でも日本語でもゆれやすいようです。
05まとめ
「がぜん」の本来の意味は「急に、突然」。荘子が夢からはっと目覚める場面にも出てくる、古い漢語です。
ただ、今は7割近くの人が「とても、断然」の意味だと考えています。しかも「強める」使い方は、昭和初期にもはやっていました。言葉の意味は、一直線に「正しい」から「まちがい」へ変わるわけではないのかもしれません。
迷ったら、「急に」なのか「断然」なのか、言いかえて確かめる。これだけで、誤解はぐっと減らせます。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerA student says, "Gazen yaruki ga deta." The traditional meaning of the Japanese adverb "gazen" is…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many Japanese people think "gazen" means "very" or "much." But the old meaning of the word is "suddenly." In a national survey in 2021, only 23.6 percent of people chose "suddenly."
About 67 percent chose "very." People in their twenties chose the old meaning the least. In English, you can say "suddenly" or "all of a sudden." For example, "All of a sudden, it started to rain."
67 words ・ CEFR A2
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多くの日本人は「がぜん」を「とても」や「ずっと」という意味だと思っています。でも、この言葉の古い意味は「急に」です。2021年の全国調査では、「急に」を選んだ人は23.6%だけでした。
約67%が「とても」を選びました。古い意味を選んだ人がいちばん少なかったのは20代でした。英語では suddenly や all of a sudden と言えます。たとえば「All of a sudden, it started to rain.(突然、雨が降り出した)」のように使います。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「がぜん」の古い意味と、今多くの人が使う意味のちがいの話なので A。
Q2. What percent of people chose "suddenly" in the survey?
only 23.6 percent of people chose "suddenly" とあるので B。67%は「とても」を選んだ人。
Q3. In the passage, what does "all of a sudden" mean?
you can say "suddenly" or "all of a sudden" とあり、同じ意味として並べているので C。
A student says, "Gazen yaruki ga deta." The traditional meaning of the Japanese adverb "gazen" is "suddenly," so the sentence means "I suddenly felt motivated." Today, though, most people think "gazen" means "very" or "by far." Japan's Agency for Cultural Affairs asked people across the country in 2021, and 67.0 percent picked "very, by far."
Only 23.6 percent picked "suddenly." Older people chose the traditional meaning more often, but even among those aged 70 or older, the new meaning was more common. The word is written with a character that means "sudden," and it appears in an old Chinese story about a man who wakes up from a dream of being a butterfly.
113 words ・ CEFR B1
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ある生徒が「がぜんやる気が出た」と言う。日本語の副詞「がぜん」の伝統的な意味は「急に」なので、この文は「急にやる気が出た」という意味になる。しかし今日では、ほとんどの人が「がぜん」を「とても」や「断然」の意味だと考えている。日本の文化庁が2021年に全国の人々にたずねたところ、67.0%が「とても、断然」を選んだ。
「急に」を選んだのは23.6%だけだった。年配の人ほど伝統的な意味を選ぶことが多かったが、70歳以上でも新しい意味のほうが多かった。この語は「急な」という意味の漢字で書かれ、蝶になった夢から目を覚ます男についての古い中国の話にも出てくる。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the Agency for Cultural Affairs want to know?
全国の人に「がぜん」の意味をたずね、どちらを選ぶかを調べたので B。
Q2. Which group chose the traditional meaning more often?
Older people chose the traditional meaning more often とあるので B。
Q3. What does the writer suggest about the people aged 70 or older?
even among those aged 70 or older, the new meaning was more common とあるので、高齢層でも新しい意味が多いと分かる。C。
The Japanese adverb "gazen" is written with a character that means "sudden," and its traditional sense is "all of a sudden." The word goes back to classical Chinese. It appears in the old tale in which Zhuangzi dreams he is a butterfly and then wakes up with a start.
But in a national survey run by the Agency for Cultural Affairs in March 2021, 67.0 percent of the 3,794 respondents said it means "very" or "by far." Just 23.6 percent chose "suddenly." People in their twenties picked the traditional sense least often, at 12.7 percent, compared with 32.5 percent of those aged 70 or older.
Part of the confusion may come from sentences like "gazen yaruki ga deta," which make sense with either meaning. The emphatic use is not new, either. A major Japanese dictionary lists it as a fashionable expression of the early Showa era and quotes a comic monologue from 1929. The dictionary does not say whether that fad led to the way people use the word today.
170 words ・ CEFR B2
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日本語の副詞「がぜん」は「急な」という意味の漢字で書かれ、伝統的な意味は「突然」だ。この語は古典中国語にさかのぼる。荘子が蝶になった夢を見て、はっと目を覚ます昔話に出てくるのだ。
ところが、2021年3月に文化庁が行った全国調査では、回答者3,794人のうち67.0%が「とても」「断然」の意味だと答えた。「急に」を選んだのは23.6%だけだった。伝統的な意味を選んだ割合がいちばん低かったのは20代で12.7%、70歳以上では32.5%だった。
混乱の一因は、「がぜんやる気が出た」のように、どちらの意味でも通じる文にあるのかもしれない。強める使い方も新しいものではない。日本の大きな辞書は、それを昭和初期の流行表現として載せ、1929年の漫談を用例に引いている。その流行が今日の使い方につながったのかどうかは、辞書には書かれていない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
多くの人が伝統的な意味とは別の意味で使っているが、その使い方も昭和初期からある、という内容なので B。
Q2. According to the passage, which group chose "suddenly" least often?
People in their twenties picked the traditional sense least often, at 12.7 percent とあるので B。
Q3. Why does the writer mention the sentence "gazen yaruki ga deta"?
which make sense with either meaning とあり、どちらでも通じる文が混乱の一因かもしれないと述べているので C。
重要単語
- suddenlyA2副詞急に、突然Suddenly, the phone rang.
形容詞は sudden。all of a sudden も同じ意味の決まった言い方。 - by farB1熟語断然、ずば抜けてThis is by far the best ramen in town.
最上級や比較級を強める。「断然いい」の「断然」にあたる。 - traditionalB1形容詞伝統的な、従来のThe traditional meaning of the word is "suddenly."
tradition(伝統)+-al。traditional meaning「本来の意味」は辞書の説明でよく使う。 - emphaticC1形容詞強調の、語気を強めた"Really" is often used in an emphatic way.
名詞は emphasis(強調)、動詞は emphasize。 - respondentC1名詞(調査の)回答者Most respondents chose the newer meaning.
respond(答える)+-ent(人)。調査の英文で頻出。 - with a startB2熟語はっとして、ぎくっとしてHe woke up with a start.
start は名詞で「びくっとすること」。wake up with a start は「はっと目を覚ます」。
公式・一次情報をチェック
- 「国語に関する世論調査」の結果(文化庁)bunka.go.jp
- presently(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
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「がぜん楽しくなってきた」の“がぜん”、本来は「急に、突然」。文化庁の調査で本来の意味を選んだ人は23.6%、「とても、断然」は67.0%。でも“強める”使い方も、昭和初期にすでにはやっていた。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- 文化庁 (2021) 令和2年度「国語に関する世論調査」の結果の概要(問10)bunka.go.jp
- 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉・普及版 字通「俄然」(小学館・平凡社、コトバンク掲載)kotobank.jp
- presently(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉「胡蝶の夢」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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