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英語のマジか!?ホント

「エチケット」と「チケット」は、もとは同じフランス語の“札”だった

「エチケット」と「チケット」は、もとは同じフランス語の“札”だった

読む前に予想してみよう!

英語の etiquette(礼儀作法)と ticket(切符)は、語源がまったく別の言葉だ

研究カード(どんな研究?)
対象
英語・日本語の辞書と百科事典
規模
英語の辞書3種+日本語の辞書・事典
研究の種類
辞書の語源記述の照合
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

etiquette(礼儀作法)と ticket(切符)は、どちらも古いフランス語の“札・ラベル”から。英語はこの語を、16世紀に ticket、18世紀に etiquette として2回取り入れた。

ひとことで言うと「エチケット」と「チケット」は、もとは同じ「ふだ」という言葉だった!

もくじ
  1. etiquette をひくと「ticket を見よ」
  2. 英語は同じ言葉を2回取り入れた
  3. ticket は今も「札」、エチケットも「ラベル」
  4. さかのぼると stick も steak も親戚
  5. 英語で etiquette を使ってみよう
  6. どんでん返し:「札」がなぜ「作法」に? 辞書は答えていない
  7. まとめ

エチケットとチケット。

カタカナで並べると、違いは頭の「エ」があるかないかだけです。でも意味は「礼儀作法」と「切符」。まるで関係なさそうに見えます。

ところが英語の辞書をひくと、etiquette と ticket は、もとは同じフランス語の“札(ふだ)・ラベル”だと書かれています。そのうえ、さらに古くさかのぼると、英語の stick(棒)や steak(ステーキ)とも同じ根っこにたどり着くのです。

01etiquette をひくと「ticket を見よ」

アメリカの辞書『American Heritage Dictionary』(第5版)で etiquette をひくと、語源欄はこうです。

  • etiquette:フランス語から。古フランス語(中世の古い時代のフランス語)の estiquet(ラベル)から。「TICKET を見よ」

そこで ticket をひくと、こちらにも同じ単語が出てきます。

  • ticket:今は使われないフランス語 etiquet(ラベル、メモ)から。それは古フランス語 estiquet(ある種の競技で的にした杭、掲示、ラベル)から。さらにそれは estiquier(刺す・くっつける)から

つまり2つの語は、同じ estiquet という語から分かれた兄弟です。

Dictionary.com(ランダムハウス大辞典)も同じ流れを書いています。etiquette はフランス語 étiquette、その前の中期フランス語(古フランス語のあとの時代のフランス語)estiquette は「チケット、ラベル、覚え書き」。もとは estiqu(i)er「取りつける、くっつける」で、ゲルマン系の言葉から来た、という説明です。

02英語は同じ言葉を2回取り入れた

ここで年代を見てみましょう。Dictionary.com によると、

  • ticket:最初の記録は1520〜30年。古い形は tiket で、中期フランス語の etiquet(覚え書き)から
  • etiquette:最初の記録は1730〜40年

英語は、同じフランス語を約200年の間をあけて2回取り入れたことになります。1回目は頭の e がない tiket(のちの ticket)の形。2回目は etiquette の形で、こんどは「作法」の意味とともに入ってきました。

イギリスの学習辞典『Oxford Learner's Dictionaries』は、etiquette を「18世紀半ば」の語とし、もとのフランス語 étiquette には「宮廷の儀式の決まりを並べた一覧」という意味と、「ラベル」の意味の両方があった、と説明しています。

etiquette と ticket のもとは、古フランス語 estiquet(札・ラベル)。さらに estiquier(刺す・くっつける)にさかのぼる
etiquette と ticket のもとは、古フランス語 estiquet(札・ラベル)。さらに estiquier(刺す・くっつける)にさかのぼる

03ticket は今も「札」、エチケットも「ラベル」

意味が分かれた今でも、もとの「札」の意味は両方の語に残っています。

American Heritage Dictionary の ticket には、切符のほかに「商品につけた、品物を示す札。ラベル」という意味が載っています。Dictionary.com も、物に貼ったり取りつけたりして、その品の性質や値段を示す紙、という意味を挙げています。

一方、フランス語の étiquette は今でも「ラベル」の意味でも使われます(Oxford の語源欄では「also 'label'」)。そして日本語にも、その名残があります。講談社の『飲み物がわかる辞典』によると、ワインの世界で「エチケット」はワインのラベルのこと。ワインの話で「エチケットがきれい」と言えば、マナーではなくラベルのことです。

ticket の意味は、英語の中でさらに広がりました。American Heritage Dictionary によると、

  • a theater ticket(劇場の入場券)
  • a parking ticket(駐車違反の切符。法律違反を知らせる紙)
  • 政党が推す候補者の名簿
  • just the ticket(まさにうってつけのもの):A change of scene would be just the ticket for us.(気分転換こそ、私たちにうってつけだ)

入場券も違反切符も候補者名簿も、紙に書かれた札から広がった意味です。

04さかのぼると stick も steak も親戚

American Heritage Dictionary には、英語の語を、遠い祖先の言葉(インド・ヨーロッパ祖語。記録が残っていないため、学者が復元した言葉)の「語根」(言葉のいちばんもとになる部分)までたどる付録があります。その中で etiquette と ticket は、steig-(刺す、とがった)という語根の項目に入っています。同じ項目に並ぶ英単語は、たとえばこうです。

  • stick(棒)・stitch(ひと針、縫い目。古英語では「刺すこと」)
  • steak(ステーキ):古ノルド語(昔の北欧の言葉)の steik(焼き肉)、steikja(串に刺して焼く)から
  • stigma(汚名):ギリシャ語の「刺す、入れ墨をする」から
  • distinguish(区別する)・extinguish(火を消す)・instinct(本能)
  • tiger(トラ):古いイランの言葉の「とがった」「矢」と同じ源

「刺す」から、刺して留める札(ticket)、札から作法(etiquette)、串に刺して焼く肉(steak)。チケットとエチケットとステーキは、同じ一族というわけです。

05英語で etiquette を使ってみよう

発音はエティケット(/ˈetɪkət/ または /ˈetɪket/)。頭にアクセントがあります。日本語の「エチケット」とは少し違うので注意しましょう。

Oxford Learner's の例を参考にすると、こんな使い方ができます。

  • phone etiquette(電話のマナー)、email etiquette(メールのマナー)
  • a breach of etiquette(作法に反すること)
  • netiquette(ネット上のマナー。net+etiquette)
  • What's the correct etiquette here?(ここではどうふるまうのが正しいの?)

06どんでん返し:「札」がなぜ「作法」に? 辞書は答えていない

ここで一番気になるのは、「札」がどうして「作法」になったのか、でしょう。

今回調べた英語の辞書3つ(American Heritage、Oxford Learner's、Dictionary.com)は、どういう流れで意味が移ったのかまでは書いていません。Oxford が教えてくれるのは、フランス語の étiquette に「宮廷の儀式の決まりの一覧」という意味があった、というところまでです。

日本の百科事典には説明があります。平凡社の『百科事典マイペディア』は、宮廷に招かれた人のふるまい方を示した札(通用札)をそう呼び、そこから宮廷の儀礼の意味になった、と書いています。ところが小学館の『日本大百科全書(ニッポニカ)』は、同じ話を「ともいう」として紹介し、その前に、相手の身分によって手紙の形式を変える必要から宮中の礼法をさすようになった、という別の説明を「といわれる」の形で挙げています。

つまり、ニッポニカは説明を2つ挙げ、どちらも「〜といわれる」「〜ともいう」という伝え聞きの形で書いています。札から作法への道すじは、はっきり確かめられた話ではない、と読むのが正直なところです。

07まとめ

礼儀作法の etiquette と、切符の ticket。どちらも古いフランス語の「札・ラベル」から生まれ、英語には16世紀と18世紀に別々に入ってきました。

さかのぼれば stick(棒)にも steak にもつながる一族です。次にライブのチケットを手にしたら、それが「エチケット」の兄弟だと思い出してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerA ticket gets you onto a train. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

A ticket gets you onto a train. Etiquette tells you how to behave once you are on it. The two words seem to have nothing in common, but dictionaries say they share a parent. Both come from estiquet, an Old French word for a label or notice.

English first borrowed it in the early 1500s, and the form without the first "e" became "ticket." About 200 years later, English borrowed the word again. This time it came in as "etiquette," with the meaning of polite rules.

The old meaning has not disappeared. In English, a ticket can still be a tag on something for sale, and in French, "étiquette" can still mean a label. In Japanese, too, the borrowed word "etiquette" can mean the label on a wine bottle.

129 words ・ CEFR B1

和訳を見る

チケットがあれば電車に乗れる。エチケットは、乗ったあとでどうふるまうかを教えてくれる。2つの語には何の共通点もなさそうだが、辞書によると親は同じだ。どちらも、ラベルや掲示を表す古フランス語の estiquet から来ている。

英語は1500年代の初めにこれを最初に取り入れ、頭の「e」がない形が「ticket」になった。約200年後、英語はこの語をもう一度取り入れた。今度は「etiquette」として、礼儀の決まりという意味で入ってきた。

古い意味は消えていない。英語では ticket は今も売り物に付けた札を指すことがあり、フランス語の étiquette は今もラベルを意味することがある。日本語でも、借用語の「エチケット」はワインのびんのラベルを指すことがある。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. How long after "ticket" did English borrow "etiquette"?

Q3. Why does the writer mention wine labels in Japan?

重要単語

  • etiquetteB2
    名詞礼儀作法、エチケットIt is good etiquette to reply to an invitation. 数えられない名詞。発音は頭にアクセントの「エティケット」。phone etiquette(電話のマナー)、a breach of etiquette(作法違反)。
  • ticketA1
    名詞切符、券;違反切符;(商品の)札I got a parking ticket yesterday. just the ticket で「まさにうってつけのもの」。etiquette と同じ古フランス語 estiquet から。
  • labelB1
    名詞ラベル、札Read the label before you buy the medicine. 発音は「レイベル」。カタカナの「ラベル」とは違うので注意。
  • borrowA2
    動詞借りる;(他の言語から語を)取り入れるEnglish borrowed many words from French. 言語学では、他の言語から入った語を loanword(借用語)と言う。
  • courtB1
    名詞宮廷;法廷;(テニスなどの)コートThe king's court had strict rules about who could speak first. Oxford によると、フランス語の étiquette には「宮廷の儀式の決まりの一覧」という意味があった。
  • mannersA2
    名詞行儀、作法My grandmother taught me good table manners. 「行儀」の意味では複数形 manners。単数の manner は「やり方、態度」。
etiquette(礼儀作法)と ticket(切符)は、もとは同じ古いフランス語の“札・ラベル”。英語は16世紀に ticket、18世紀に etiquette として2回取り入れた。さかのぼれば steak(ステーキ)とも親戚。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.(HarperCollins, 2022)「etiquette」ahdictionary.com
  2. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.(HarperCollins, 2022)「ticket」・付録 Indo-European Roots「steig-」ahdictionary.com
  3. Oxford Learner's Dictionaries(Oxford University Press)「etiquette」oxfordlearnersdictionaries.com
  4. Dictionary.com(Random House Unabridged Dictionary)「etiquette」「ticket」dictionary.com
  5. 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉(小学館)、日本大百科全書(小学館)、飲み物がわかる辞典(講談社)ほか、コトバンク掲載「エチケット」kotobank.jp

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