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英語のマジか!?ホント

英語の dog は、どこから来た言葉か分かっていない。最古の記録は1回だけ、しかも悪口

英語の dog は、どこから来た言葉か分かっていない。最古の記録は1回だけ、しかも悪口

読む前に予想してみよう!

英語の dog は、ラテン語の「犬」canis から来た言葉である

研究カード(どんな研究?)
対象
英語辞書の語源欄・語源学者の論考
規模
11世紀の写本の用例と、英語・ヨーロッパの言語の「犬」の名前
研究の種類
語源調査(辞書と学者の論考の照合)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

dog の語源は、オックスフォードの辞書でも「不明」。古い英語の記録に出てくるのは11世紀半ばの1回だけで、それも人をののしる言葉だった。もとの「犬」は hound。

ひとことで言うとdog(犬)は、どこから来た言葉か、だれにも分かっていないんだ!

もくじ
  1. 辞書が「語源不明」と書く、身近な単語
  2. 最古の dog は、拷問を受けた男が投げつけた悪口
  3. それまでの「犬」は hound だった
  4. hound の親戚は、コーギーや星の名前にもいる
  5. dog の仲間? frog・stag・pig
  6. どんでん返し:犬の名前は、ほかの言語でも謎だらけ
  7. まとめ

英語の授業で、いちばん最初のころに習う単語のひとつ、dog(犬)。

ところがこの dog、どこから来た言葉なのか、だれにも分かっていません。オックスフォード大学出版局の学習辞典は、語源の欄にはっきり「of unknown origin(語源不明)」と書いています。

しかも、古い英語の記録に dog が出てくるのは、11世紀半ばの写本の、たった1回だけ。その1回は、人を「犬ども」とののしる悪口でした。

01辞書が「語源不明」と書く、身近な単語

Oxford Learner's Dictionaries の dog の語源欄は、たった1行です。

  • 古英語(およそ1100年ごろまでの英語)の docga から
  • of unknown origin(語源不明)

アメリカの辞書 American Heritage Dictionary(AHD)は、ひとつの案を書いています。古英語の dox(暗い色の)から来た、「黒っぽいの」くらいの意味の愛称だったのでは、というものです。ただしこれも「perhaps(たぶん)」つきです。

『An Analytic Dictionary of English Etymology』などの著書がある語源学者アナトリー・リバーマン(Anatoly Liberman)は、オックスフォード大学出版局のブログの連載「The Oxford Etymologist」で、2016年に dog の語源を何回にもわたって取り上げました。それによると、これまでに出された説はたくさんあります。

  • もとは特定の犬種の名前で、毛の色(茶色?)を指していた
  • 犬を呼ぶときのかけ声から
  • 「走るもの」「役に立つ動物」という意味から

どれも決め手がありません。ギリシャ語の dákno(かむ)や、dogma(ドグマ)と結びつける説もありましたが、リバーマンは「行き止まり」「奇妙」と退けています。

02最古の dog は、拷問を受けた男が投げつけた悪口

では、英語で最初に記録された dog は、どんな場面だったのでしょう。

リバーマンは、スペイン語の「犬」perro も事情が似ていると書いています。perro が初めて記録されたのは1136年で、こちらも人をけなす下品な俗語としてでした。

英語の dog には、今も悪い意味が多く残っています。AHD によると、doggerel(へたな詩、ふざけた詩)は、中世の英語の「つまらない、値打ちのない」という意味の語から来ていて、その語は dogge(犬)から作られました。Oxford Learner's Dictionaries には go to the dogs(すっかりだめになる)という熟語も載っています。

dog の最古の記録は、ラテン語の詩に古英語の訳を書きそえた11世紀の書きこみ。意味は「犬どもの」(Liberman 2016)
dog の最古の記録は、ラテン語の詩に古英語の訳を書きそえた11世紀の書きこみ。意味は「犬どもの」(Liberman 2016)

03それまでの「犬」は hound だった

では、古い英語で「犬」はなんと言ったのでしょう。答えは hund(フンド)。今の hound(ハウンド) のもとです。

  • 古英語の hund は、ふつうに「犬」という意味だった(Oxford Learner's Dictionaries)
  • ドイツ語の Hund、オランダ語の hond(どちらも今の「犬」)と親戚(同)
  • リバーマンによると、dog が hound を押しのけて「犬」のふつうの言葉になったのは、中英語(1100〜1500年ごろの英語)の時代。hound はおもに「猟犬」を指すようになった

AHD は、中英語の dogge の意味を「ふつうの犬、雑種の犬。猟犬や値打ちのある犬と区別して言うことが多い」と説明しています。高級な猟犬が hound、そのへんにいる犬が dog。やがて dog がすべての犬を指すようになり、hound は猟犬だけを指す言葉になりました。

今の Oxford Learner's Dictionaries も、hound を「足が速く鼻のきく、狩りに使う犬」と説明しています。

04hound の親戚は、コーギーや星の名前にもいる

dog には、はっきりした親戚が見つかっていません。いっぽう、古い hound のほうには親戚がたくさんあります。AHD の「印欧祖語(ヨーロッパやインドの多くの言語の共通の祖先)」の付録によると、hound は kwon-(犬) という、大昔の言葉のもと(語根)にさかのぼります。同じもとから来た英語を並べると、こうなります。

  • canine(犬の、犬歯)・kennel(犬小屋):ラテン語の canis(犬)から
  • corgi(コーギー):ウェールズ語の cor(小人)+ ci(犬)。つまり「小人の犬」
  • dachshund(ダックスフント):ドイツ語の Dachs(アナグマ)+ Hund(犬)。アナグマ狩りのために作られた犬種で、名前は「アナグマ犬」
  • chenille(シェニール。毛足の長い飾りひもや布):フランス語で「毛虫」。もとはラテン語の canicula(小さい犬)
  • cynosure(注目の的):ギリシャ語の kunosoura(犬のしっぽ)。北極星をふくむ「こぐま座」のことだった
  • Procyon(プロキオン。こいぬ座のα星で、冬の大三角の1つ):ギリシャ語の pro-(前の)+ kuōn(犬)
  • cynic(皮肉屋):ギリシャ語の kuōn(犬)から来た kunikos(キュニコス派の哲学者)

冬の夜空のプロキオンも、コーギーも、ダックスフントも、hound の遠い親戚です。それなのに、毎日使う dog だけが親戚のいない「みなしご」なのです。

05dog の仲間? frog・stag・pig

親戚はいなくても、「形の似た仲間」はいます。リバーマンによると、古英語で docga と同じ -cga(ッガ) で終わる動物の名前がありました(辞書では -gga と書くこともあります)。

  • frog(カエル):古英語 frogga(AHD)
  • stag(雄ジカ):古英語 stagga(AHD)
  • earwig(ハサミムシ):古英語 ēarwicga。ēare(耳)+ wicga(虫)(AHD)
  • pig(ブタ):おそらく古英語の *picga。記録に残るのは picbrēd(ドングリ。文字どおりには「ブタのパン」)という組み合わせの言葉の中だけ(AHD・オックスフォード)

リバーマンは、こうした語は「わんちゃん」「にゃんこ」のような呼び名・愛称として生まれたものだろう、という多くの学者の考えを紹介しています。pig も、それまでの swine(ブタ)を押しのけた「新入り」でした。

リバーマン自身は、さらに一歩ふみこみます。bug、big、bad、dig、pig のような、短くて形の似た英単語を調べると、音まねや赤ちゃん言葉から生まれたものが多い。dog も、小さい子が「おもちゃ」「ペット」「こわいもの」をまとめて呼んだ短い音だったのでは、というのです。

06どんでん返し:犬の名前は、ほかの言語でも謎だらけ

「dog だけが謎」というわけではありません。リバーマンは、犬の名前は、多くの言語で特に語源がはっきりしないと書いています。

  • ラテン語の canis:辞書は hound と同じ古い根につなげているが、フランスの大言語学者メイエは「canis がどうできたかを突き止めようとする試みはすべてむだ」と書いた。リバーマンも、canis についてはメイエが正しかったのかもしれない、としている
  • スペイン語の perro:フランス語やイタリア語など、ラテン語から分かれた言語の中に親戚が見つからない「みなしご」で、有名な難問
  • ロシア語の sobaka(サバーカ):ふつうはイランの言葉から借りた語とされるが、反対する学者もいる

そして、リバーマンの「赤ちゃん言葉」説も、本人が「この連載で出した仮説はどれも受け入れられないだろう」と書いているとおり、ひとつの考えにすぎません。辞書はいまも「語源不明」のままです。

07まとめ

dog は、英語でいちばん身近な単語のひとつなのに、どこから来たのかが分かっていません。最古の記録はたった1回で、それも「犬ども」という悪口。それまでの「犬」は hound で、こちらは canine やコーギー、プロキオンとまで親戚です。

次に犬を見かけたら、「この子の名前、じつは語源不明なんだよ」と誰かに話してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerDictionaries can tell us where most everyday English words come from, but not "dog." The Oxford Learner's… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

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この研究を英語で読もう

Dictionaries can tell us where most everyday English words come from, but not "dog." The Oxford Learner's Dictionaries list it as "of unknown origin." In Old English, the normal word for the animal was "hund," which is related to German "Hund" and Dutch "hond." During the Middle Ages, "dog" slowly took its place, and "hound" came to mean a dog used for hunting.

The oldest record of "dog" comes from the eleventh century. It is a note written next to a Latin poem, and it appears only once. In that poem, a man who is being tortured calls the torturer's men "dogs." So the first "dog" in English was an insult.

111 words ・ CEFR B1

和訳を見る

辞書は、日常的な英単語のほとんどについて、どこから来たかを教えてくれる。でも「dog」は違う。Oxford Learner's Dictionaries は、これを「語源不明」としている。古英語では、この動物を表すふつうの言葉は「hund」で、これはドイツ語の「Hund」やオランダ語の「hond」と親戚だ。中世の間に「dog」が少しずつその座を奪い、「hound」は狩りに使う犬を指すようになった。

「dog」の最古の記録は11世紀のものだ。それはラテン語の詩のそばに書かれた書きこみで、一度しか出てこない。その詩の中で、拷問を受けている男が、拷問する者の手下たちを「犬ども」と呼ぶ。つまり、英語の最初の「dog」は悪口だったのだ。

4択リーディングクイズ

Q1. What happened to the word "hound" during the Middle Ages?

Q2. Where does the oldest record of "dog" come from?

Q3. Why does the writer say the first "dog" was an insult?

重要単語

  • houndB2
    名詞猟犬The hounds followed the smell of the fox. 古英語の hund(犬)から。ドイツ語の Hund と親戚。動詞では「しつこく追い回す」。
  • originB1
    名詞起源、由来The origin of the word is still a mystery. of unknown origin「起源不明の」は辞書の語源欄の決まった言い方。形容詞は original。
  • insultB2
    名詞・動詞侮辱、悪口;侮辱するCalling someone a dog was an insult. 名詞は前にアクセント(イ́ンサルト)、動詞は後ろ(インサ́ルト)。
  • canineC1
    形容詞・名詞犬の;犬歯The dentist checked my canine teeth. ラテン語 canis(犬)から。hound と同じ古い「犬」の語根につながる。
  • kennelB2
    名詞犬小屋;犬の預かり所We left our dog at a kennel during the trip. これもラテン語 canis から。
  • baby talkB2
    名詞赤ちゃん言葉、幼児語"Doggie" is baby talk for "dog." doggie、tummy(おなか)など。小さい子に話しかけるときの言い方も指す。
  • replaceB1
    動詞~に取って代わる"Dog" slowly replaced "hound" as the everyday word. replace A with B「A を B と取りかえる」。名詞は replacement。
英語の dog は、オックスフォードの辞書で「語源不明」。古い英語の記録に出てくるのは11世紀半ばの1回だけで、それも人を「犬ども」とののしる悪口だった。それまでの「犬」は hound。dog が広まったのは、その後のこと。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. Oxford Learner's Dictionaries「dog」「hound」「pig」「frog」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  2. The American Heritage Dictionary「dog」「hound」「doggerel」「pig」「stag」「earwig」「big」「canine」「kennel」「corgi」「dachshund」「chenille」「cynic」「cynosure」「Procyon」ahdictionary.com
  3. The American Heritage Dictionary, Appendix I: Indo-European Roots「kwon-」ahdictionary.com
  4. Liberman, A. (2016) I double dog dare you to reject my etymology, or the dog's chances increase (even if ever so slightly), OUPblog(The Oxford Etymologist)blog.oup.com
  5. Liberman, A. (2016) The Etymology of Dog, Part 4, Conclusion, OUPblog(The Oxford Etymologist)blog.oup.com
  6. 国立天文台暦計算室「こよみ用語解説 おもな恒星」(プロキオン)eco.mtk.nao.ac.jp

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