「チェック」の正体はペルシャ語の「王さま」。小切手も、チェスの「王手」から生まれた

読む前に予想してみよう!
「確かめる」という意味の英語 check は、チェスの用語から生まれた
オックスフォードの学習辞典によると、チェスの「王手」から「止める・抑える」の意味が生まれ、17世紀後半に「正しいか確かめる」の意味になった。
- 対象
- 英語の辞書の語源記述と英国政府・議会の歴史資料
- 規模
- 主要辞書3種+公的資料2件
- 研究の種類
- 歴史言語学(文献調査)
- 確かさ
- ★★★★☆
「確かめる」の check も小切手も、語源はチェスの「王手」で、もとはペルシャ語の shāh(王)。チェック柄もおそらく「チェス盤」から。英国の昔の財務府 Exchequer は「チェス盤」という名前。
ひとことで言うと「チェック」は、チェスで「王さまがあぶないぞ!」と言う言葉だった!
もくじ
ホテルの「チェックイン」、試験前の「見直しチェック」、シャツの「チェック柄」。日本語でも毎日のように使う「チェック」です。
この言葉、もとをたどるとペルシャ語の「シャー(shāh)=王さま」に行き着きます。
チェスで相手の王を攻めたとき「王さま(があぶないぞ)!」と声をかけた。その一言がヨーロッパに渡り、「確かめる」「小切手」に広がって、イギリスの昔の財務府の名前にもなりました。今も財務大臣の肩書きに残っています。
01check の語源は「王手」の掛け声
アメリカの辞書『American Heritage Dictionary』(AHD)の語源コラムによると、英語の check、chess(チェス)、shah(イランの王の称号)は、みな親せきです。
チェスはヨーロッパに伝わるずっと前からペルシャで遊ばれていました。相手の王を攻めたときには、警告として「shāh」と言いました。この言葉がアラビア語、おそらく古いスペイン語、古いフランス語の eschec を通って、約700年前の英語(中英語)に chek として入ったといいます。
02「王手」→「食い止める」→「確かめる」
では、チェスの言葉がなぜ「確かめる」になったのでしょう。
オックスフォードの学習辞典(Oxford Learner's Dictionaries)の語源欄は、こう説明しています。まずチェスの使い方から「止める、抑える」の意味が生まれ、それが17世紀後半に「正しいかどうか調べる」の意味につながった。
王手をかけられた側は、ほかの手をあきらめて王を守るしかありません。相手の動きを止める言葉だったわけです。この「止める」の意味は、今の英語にもそのまま残っています。
- Press hard on the cut to check the bleeding.(傷口を強く押さえて出血を止めて)
- Count to ten to keep your anger in check.(10数えて、怒りを抑えよう)
in check は、チェスでは「王手をかけられている」状態。ふだんの英語では「抑えられて」の意味で使います。
03小切手は「照合するための控え」
小切手を意味する英語は、アメリカでは check、イギリスでは cheque とつづります。
オックスフォードの学習辞典によると、cheque は18世紀の初めに、もとは控え(counterfoil)、つまり金額を照合するための切り取り部分を指していました。「確かめる」の check から、「金額をチェックするための道具」という意味で生まれた言葉です。AHD も、check はまず「控え」を指し、やがて控えのついた書類、最後には控えがなくても小切手を指すようになった、と説明しています。
辞書の check の項目には、こんな意味も並んでいます。
- レストランの伝票(アメリカ英語):Can I have the check, please?(お会計をお願いします)。イギリスでは bill を使うのがふつう
- コートや荷物の預かり(アメリカ英語):Do you want to check your coats?
- チェックマーク(✓)
04チェック柄は「チェス盤もよう」
シャツのチェック柄も、AHD では check の意味のひとつで、「チェス盤のような小さな正方形のもよう」と書かれています。
オックスフォードの学習辞典は、柄の check はおそらく chequer(市松もよう)から来たとしています。その chequer(アメリカでは checker)は、AHD によると中英語で「チェス盤」を意味した語です。盤上ゲームのチェッカー(checkers)も同じ仲間です。

05イギリスの財務府は「チェス盤」という名前
イギリスの財務大臣は Chancellor of the Exchequer(直訳すると「財務府の長官」)と呼ばれます。この Exchequer、語源は「チェス盤」です。
オックスフォードの学習辞典によると、Exchequer は昔のイギリスで国のお金を管理した役所のことで、その役目は今は財務省(the Treasury)が受け持っています。
同じ辞書の語源欄によると、exchequer は中世ラテン語の scaccarium(チェス盤)から来た語で、もとの意味も「チェス盤」。ノルマン王朝で王の収入をあつかった役所では、市松もようの布をかけた机に計算用の駒を置いて、帳簿をつけていました。この布にちなんで、役所そのものが Exchequer と呼ばれるようになりました。頭の ex- は、ラテン語の ex-(外へ)につられて後から変わったつづりです。
英国政府の歴史ブログ(GOV.UK)の記事によると、この布の上で、役人たちが「いくら払うべきか」「いくら納めたか」を目に見える形で並べ、会計の監査をしていました。12世紀のようすは、王の財務官リチャード・フィッツナイジェルが書いた『財務府についての対話』に詳しく残っています。
06木の棒の「領収書」が国会議事堂を燃やした
この財務府では、納めたお金の証拠に、刻み目を入れた木の棒(タリー)も使われていました。英国議会の歴史ページによると、借りができたときに棒を2つに割り、支払いが済むと2本を突き合わせて確かめるしくみです。
この木の棒は1826年に使われなくなりましたが、1834年になっても荷車2台分残っていました。処分を頼まれた係は、貴族院の地下にある2つの暖房炉で燃やすことにします。
10月16日の午後、床が熱く、煙がしみ出していることに見学者が気づきました。それでも作業は続けられ、炉の火は午後5時までに消されます。ところが午後6時、貴族院から火の手が上がりました。上院と下院の建物はどちらも焼け落ち、古いウェストミンスター・ホールは消火活動と夜中の風向きの変化で助かりました。
07どんでん返し:checkmate は「王は死んだ」?
チェスの勝ちを決める checkmate(チェックメイト)の語源は、アラビア語の shāh māt です。ここまでは AHD も Dictionary.com も同じです。
ところが、māt の意味の説明が辞書によって分かれます。
- AHD:「王は死んだ(the king is dead)」。māt はアラビア語の「死ぬ」から
- Dictionary.com:ペルシャ語で「王は止められた、途方に暮れた(checked, nonplussed)」
「王は死んだ」のほうが話としては派手ですが、どちらにも辞書の裏付けがあり、ここではどちらが正しいとは決められません。
おまけに、チェスの駒の名前にも旅の跡があります。AHD によると、城の形の駒 rook(ルーク)はペルシャ語 rukh から来ていて、さらにさかのぼるとサンスクリット語の「戦車(ratha)」。インドの古いチェスでは、この駒は戦車でした。歩兵の pawn(ポーン)は、中世ラテン語の「歩兵(pedō)」から来ていて、そのもとはラテン語の「足(pēs)」です。
08まとめ
ペルシャの盤の上で「王さま!」と声をかけた一言が、アラビア語、フランス語を経て英語の check になりました。そこから「抑える」「確かめる」「小切手」、そしてイギリスの財務府の名前まで生まれています。チェック柄も、おそらく「チェス盤」を表す chequer を通じて、同じ仲間です。
次にホテルで check in するとき、レストランで check を頼むとき、心の中で「王手!」とつぶやいてみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn chess, a player says "check" when the other player's king is under attack.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
When you attack the other player's king in chess, you say "Check!" This word comes from "shah," the Persian word for "king." Long ago, players in Persia used it as a warning.
Later it moved into English. A check makes the other player stop and protect the king, so the word came to mean "stop." Then it also meant "look at something to see if it is right." The British word "cheque" comes from the same word.
77 words ・ CEFR A2
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チェスで相手の王を攻めるとき、「チェック!」と言います。この言葉は、ペルシャ語で「王」を意味する「shah」から来ています。
昔、ペルシャのプレーヤーたちはこれを警告として使っていました。その後、この言葉は英語に入りました。チェックをかけられた人は手を止めて王を守らなければならないので、この言葉は「止める」という意味になりました。それから「正しいかどうか見て確かめる」という意味にもなりました。イギリス英語の「cheque(小切手)」も同じ言葉から来ています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
check という語がペルシャ語の shah から来て意味を広げた話なので B。
Q2. What does "shah" mean in Persian?
"shah," the Persian word for "king" とあるので C。
Q3. In the passage, what does "warning" mean?
warning は「警告」。王が危ないと知らせる言葉として使われたので A。
In chess, a player says "check" when the other player's king is under attack. The word started in Persia, where "shah" meant "king," and it reached English through Arabic and French about 700 years ago. Even the name "chess" comes from the plural of the French word. A check forces the other player to stop and protect the king, so the word came to mean "stop" or "control."
By the late 1600s, it could mean "examine something to see if it is correct." A cheque was first the part of a payment form that you kept to check the amount. In Britain, the old government office in charge of money was called the Exchequer, a name that once meant "chessboard." The finance minister is still the Chancellor of the Exchequer.
130 words ・ CEFR B1
和訳を見る
チェスでは、相手の王が攻められているときに「チェック」と言う。この言葉は「shah」が「王」を意味したペルシャで始まり、約700年前にアラビア語とフランス語を通って英語に入った。「chess(チェス)」という名前でさえ、そのフランス語の複数形から来ている。チェックをかけられた側は手を止めて王を守らなければならないので、この語が「止める」「抑える」という意味になった。
1600年代後半には、「正しいかどうか調べる」という意味でも使えるようになった。cheque(小切手)は、はじめは金額を照合するために手元に残す、支払い用紙の一部を指していた。イギリスでは、昔お金を担当した政府の役所が Exchequer と呼ばれ、この名前はかつて「チェス盤」を意味していた。財務大臣は今も Chancellor of the Exchequer だ。
4択リーディングクイズ
Q1. Which of these is the best title for the passage?
チェスの言葉 check が英語の中で意味を広げた話なので A。
Q2. When did "check" start to mean "examine something to see if it is correct"?
By the late 1600s, it could also mean "examine something to see if it is correct." とあるので B。700年前は英語に入った時期。
Q3. Why does the writer mention the Exchequer?
Exchequer の名前がかつて「チェス盤」を意味した、とチェスにつながる別の例として出しているので C。
Every time someone checks an answer or pays by cheque, they are using a word that began on a chessboard. Players in Persia warned an opponent that his king was under attack by saying "shah," the Persian word for "king." The warning passed through Arabic and French and entered English around 700 years ago.
Since a check stops the other side's plans, the word came to mean "hold back," and by the late seventeenth century, "make sure something is right." In medieval England, royal officials went over the king's accounts by moving counters on a table covered with a checkered cloth, and their office became known as the Exchequer. Payments there were also recorded on notched wooden sticks called tallies.
In 1834, workers burned two cartloads of old tallies in stoves under the House of Lords, and the fire that followed destroyed the buildings of both Houses of Parliament. Two major dictionaries agree that "checkmate" comes from "shah mat," but they explain "mat" in different ways. One says it means "dead," while another says it means "stopped" or "at a loss."
181 words ・ CEFR B2
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答えを確かめたり、小切手で支払ったりするたびに、人はチェス盤の上で始まった言葉を使っている。ペルシャのプレーヤーたちは、相手の王が攻められていることを、ペルシャ語で「王」を意味する「shah」と言って知らせた。この警告はアラビア語とフランス語を経て、約700年前に英語に入った。
チェックは相手の計画を止めるので、この語は「抑える」という意味になり、17世紀後半には「正しいか確かめる」という意味になった。中世のイングランドでは、王の役人たちが市松模様の布をかけた机の上で駒を動かして王の会計を点検し、その役所は Exchequer と呼ばれるようになった。そこでの支払いは、タリーと呼ばれる刻み目のついた木の棒にも記録された。
1834年、作業員が古いタリーを荷車2台分、貴族院の地下の炉で燃やし、その後に起きた火事で上院と下院の建物がどちらも焼け落ちた。2つの主な辞書は、「checkmate」が「shah mat」から来たという点では一致しているが、「mat」の説明は分かれている。ある辞書は「死んだ」、別の辞書は「止められた」「途方に暮れた」という意味だとしている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
ペルシャのチェスの警告 shah から、check・Exchequer など英語の語や名前が生まれた話なので B。
Q2. According to the passage, what caused the fire of 1834?
workers burned two cartloads of old tallies in stoves under the House of Lords, and the fire that followed とあるので C。
Q3. What can be inferred about the meaning of "checkmate"?
shah mat から来たことは一致しているが、mat の説明が辞書で分かれるとあるので、後半の意味は決着していないと推測できる。A。
重要単語
- checkA2動詞・名詞確かめる;抑える;(米)伝票、小切手Can you check my spelling before I hand this in?
語源はペルシャ語の shāh(王)。チェスの「王手」→「抑える」→「確かめる」の順に意味が広がった。 - chequeB1名詞(英)小切手My grandmother still pays her rent by cheque.
アメリカでは check とつづる。もとは金額を照合するための「控え」のこと。 - in checkB2熟語抑えられて、食い止められてThe new rules helped keep prices in check.
keep/hold 〜 in check の形でよく使う。チェスでは「王手をかけられている」状態。 - verifyB2動詞(正しいかどうか)確かめるThe bank called me to verify the payment.
check よりかたい語。verify a fact / verify an identity などと使う。 - warningB1名詞警告The sign was a warning about falling rocks.
warn(警告する)+-ing。give a warning「警告する」。 - treasuryC1名詞国庫;(the Treasury で)財務省The tax money goes into the national treasury.
treasure(宝)と同じ仲間。イギリスでは財務大臣を Chancellor of the Exchequer と呼ぶ。 - patternB1名詞模様、柄He wore a shirt with a blue and white check pattern.
check pattern / checked shirt で「チェック柄(のシャツ)」。
公式・一次情報をチェック
- check(Oxford Learner's Dictionaries・名詞)oxfordlearnersdictionaries.com
- rook(American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
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「チェック」の語源はペルシャ語の「王(シャー)」。チェスの王手から「止める」→「確かめる」→小切手と意味が広がった。イギリスの昔の財務府 Exchequer(今も財務大臣の肩書きに残る)の名前も、市松模様の布をかけた計算机=「チェス盤」から。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「check」(Word History)・「tally」ahdictionary.com
- Oxford Learner's Dictionaries「check」(動詞・Word Origin)・「cheque」oxfordlearnersdictionaries.com
- Oxford Learner's Dictionaries「exchequer」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
- Dictionary.com「checkmate」(Origin)dictionary.com
- Barratt (2013) The Exchequer – a chequered history, History of government blog(GOV.UK)history.blog.gov.uk
- UK Parliament「The Great Fire of 1834」(Living Heritage)parliament.uk
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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