本館「マジカ!?サイエンス」科学の雑学とニュースを論文でウラ取り読みに行く →
英語のマジか!?ホント

「チェック」の正体はペルシャ語の「王さま」。小切手も、チェスの「王手」から生まれた

「チェック」の正体はペルシャ語の「王さま」。小切手も、チェスの「王手」から生まれた

読む前に予想してみよう!

「確かめる」という意味の英語 check は、チェスの用語から生まれた

研究カード(どんな研究?)
対象
英語の辞書の語源記述と英国政府・議会の歴史資料
規模
主要辞書3種+公的資料2件
研究の種類
歴史言語学(文献調査)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「確かめる」の check も小切手も、語源はチェスの「王手」で、もとはペルシャ語の shāh(王)。チェック柄もおそらく「チェス盤」から。英国の昔の財務府 Exchequer は「チェス盤」という名前。

ひとことで言うと「チェック」は、チェスで「王さまがあぶないぞ!」と言う言葉だった!

もくじ
  1. check の語源は「王手」の掛け声
  2. 「王手」→「食い止める」→「確かめる」
  3. 小切手は「照合するための控え」
  4. チェック柄は「チェス盤もよう」
  5. イギリスの財務府は「チェス盤」という名前
  6. 木の棒の「領収書」が国会議事堂を燃やした
  7. どんでん返し:checkmate は「王は死んだ」?
  8. まとめ

ホテルの「チェックイン」、試験前の「見直しチェック」、シャツの「チェック柄」。日本語でも毎日のように使う「チェック」です。

この言葉、もとをたどるとペルシャ語の「シャー(shāh)=王さま」に行き着きます。

チェスで相手の王を攻めたとき「王さま(があぶないぞ)!」と声をかけた。その一言がヨーロッパに渡り、「確かめる」「小切手」に広がって、イギリスの昔の財務府の名前にもなりました。今も財務大臣の肩書きに残っています。

01check の語源は「王手」の掛け声

アメリカの辞書『American Heritage Dictionary』(AHD)の語源コラムによると、英語の check、chess(チェス)、shah(イランの王の称号)は、みな親せきです。

チェスはヨーロッパに伝わるずっと前からペルシャで遊ばれていました。相手の王を攻めたときには、警告として「shāh」と言いました。この言葉がアラビア語、おそらく古いスペイン語、古いフランス語の eschec を通って、約700年前の英語(中英語)に chek として入ったといいます。

02「王手」→「食い止める」→「確かめる」

では、チェスの言葉がなぜ「確かめる」になったのでしょう。

オックスフォードの学習辞典(Oxford Learner's Dictionaries)の語源欄は、こう説明しています。まずチェスの使い方から「止める、抑える」の意味が生まれ、それが17世紀後半に「正しいかどうか調べる」の意味につながった。

王手をかけられた側は、ほかの手をあきらめて王を守るしかありません。相手の動きを止める言葉だったわけです。この「止める」の意味は、今の英語にもそのまま残っています。

  • Press hard on the cut to check the bleeding.(傷口を強く押さえて出血を止めて)
  • Count to ten to keep your anger in check.(10数えて、怒りを抑えよう)

in check は、チェスでは「王手をかけられている」状態。ふだんの英語では「抑えられて」の意味で使います。

03小切手は「照合するための控え」

小切手を意味する英語は、アメリカでは check、イギリスでは cheque とつづります。

オックスフォードの学習辞典によると、cheque は18世紀の初めに、もとは控え(counterfoil)、つまり金額を照合するための切り取り部分を指していました。「確かめる」の check から、「金額をチェックするための道具」という意味で生まれた言葉です。AHD も、check はまず「控え」を指し、やがて控えのついた書類、最後には控えがなくても小切手を指すようになった、と説明しています。

辞書の check の項目には、こんな意味も並んでいます。

  • レストランの伝票(アメリカ英語):Can I have the check, please?(お会計をお願いします)。イギリスでは bill を使うのがふつう
  • コートや荷物の預かり(アメリカ英語):Do you want to check your coats?
  • チェックマーク(✓)

04チェック柄は「チェス盤もよう」

シャツのチェック柄も、AHD では check の意味のひとつで、「チェス盤のような小さな正方形のもよう」と書かれています。

オックスフォードの学習辞典は、柄の check はおそらく chequer(市松もよう)から来たとしています。その chequer(アメリカでは checker)は、AHD によると中英語で「チェス盤」を意味した語です。盤上ゲームのチェッカー(checkers)も同じ仲間です。

チェック柄も小切手も、英語ではどちらも check。小切手はチェスの「王手」から、チェック柄もおそらく「チェス盤」から
チェック柄も小切手も、英語ではどちらも check。小切手はチェスの「王手」から、チェック柄もおそらく「チェス盤」から

05イギリスの財務府は「チェス盤」という名前

イギリスの財務大臣は Chancellor of the Exchequer(直訳すると「財務府の長官」)と呼ばれます。この Exchequer、語源は「チェス盤」です。

オックスフォードの学習辞典によると、Exchequer は昔のイギリスで国のお金を管理した役所のことで、その役目は今は財務省(the Treasury)が受け持っています。

同じ辞書の語源欄によると、exchequer は中世ラテン語の scaccarium(チェス盤)から来た語で、もとの意味も「チェス盤」。ノルマン王朝で王の収入をあつかった役所では、市松もようの布をかけた机に計算用の駒を置いて、帳簿をつけていました。この布にちなんで、役所そのものが Exchequer と呼ばれるようになりました。頭の ex- は、ラテン語の ex-(外へ)につられて後から変わったつづりです。

英国政府の歴史ブログ(GOV.UK)の記事によると、この布の上で、役人たちが「いくら払うべきか」「いくら納めたか」を目に見える形で並べ、会計の監査をしていました。12世紀のようすは、王の財務官リチャード・フィッツナイジェルが書いた『財務府についての対話』に詳しく残っています。

06木の棒の「領収書」が国会議事堂を燃やした

この財務府では、納めたお金の証拠に、刻み目を入れた木の棒(タリー)も使われていました。英国議会の歴史ページによると、借りができたときに棒を2つに割り、支払いが済むと2本を突き合わせて確かめるしくみです。

この木の棒は1826年に使われなくなりましたが、1834年になっても荷車2台分残っていました。処分を頼まれた係は、貴族院の地下にある2つの暖房炉で燃やすことにします。

10月16日の午後、床が熱く、煙がしみ出していることに見学者が気づきました。それでも作業は続けられ、炉の火は午後5時までに消されます。ところが午後6時、貴族院から火の手が上がりました。上院と下院の建物はどちらも焼け落ち、古いウェストミンスター・ホールは消火活動と夜中の風向きの変化で助かりました。

07どんでん返し:checkmate は「王は死んだ」?

チェスの勝ちを決める checkmate(チェックメイト)の語源は、アラビア語の shāh māt です。ここまでは AHD も Dictionary.com も同じです。

ところが、māt の意味の説明が辞書によって分かれます。

  • AHD:「王は死んだ(the king is dead)」。māt はアラビア語の「死ぬ」から
  • Dictionary.com:ペルシャ語で「王は止められた、途方に暮れた(checked, nonplussed)」

「王は死んだ」のほうが話としては派手ですが、どちらにも辞書の裏付けがあり、ここではどちらが正しいとは決められません。

おまけに、チェスの駒の名前にも旅の跡があります。AHD によると、城の形の駒 rook(ルーク)はペルシャ語 rukh から来ていて、さらにさかのぼるとサンスクリット語の「戦車(ratha)」。インドの古いチェスでは、この駒は戦車でした。歩兵の pawn(ポーン)は、中世ラテン語の「歩兵(pedō)」から来ていて、そのもとはラテン語の「足(pēs)」です。

08まとめ

ペルシャの盤の上で「王さま!」と声をかけた一言が、アラビア語、フランス語を経て英語の check になりました。そこから「抑える」「確かめる」「小切手」、そしてイギリスの財務府の名前まで生まれています。チェック柄も、おそらく「チェス盤」を表す chequer を通じて、同じ仲間です。

次にホテルで check in するとき、レストランで check を頼むとき、心の中で「王手!」とつぶやいてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn chess, a player says "check" when the other player's king is under attack. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In chess, a player says "check" when the other player's king is under attack. The word started in Persia, where "shah" meant "king," and it reached English through Arabic and French about 700 years ago. Even the name "chess" comes from the plural of the French word. A check forces the other player to stop and protect the king, so the word came to mean "stop" or "control."

By the late 1600s, it could mean "examine something to see if it is correct." A cheque was first the part of a payment form that you kept to check the amount. In Britain, the old government office in charge of money was called the Exchequer, a name that once meant "chessboard." The finance minister is still the Chancellor of the Exchequer.

130 words ・ CEFR B1

和訳を見る

チェスでは、相手の王が攻められているときに「チェック」と言う。この言葉は「shah」が「王」を意味したペルシャで始まり、約700年前にアラビア語とフランス語を通って英語に入った。「chess(チェス)」という名前でさえ、そのフランス語の複数形から来ている。チェックをかけられた側は手を止めて王を守らなければならないので、この語が「止める」「抑える」という意味になった。

1600年代後半には、「正しいかどうか調べる」という意味でも使えるようになった。cheque(小切手)は、はじめは金額を照合するために手元に残す、支払い用紙の一部を指していた。イギリスでは、昔お金を担当した政府の役所が Exchequer と呼ばれ、この名前はかつて「チェス盤」を意味していた。財務大臣は今も Chancellor of the Exchequer だ。

4択リーディングクイズ

Q1. Which of these is the best title for the passage?

Q2. When did "check" start to mean "examine something to see if it is correct"?

Q3. Why does the writer mention the Exchequer?

重要単語

  • checkA2
    動詞・名詞確かめる;抑える;(米)伝票、小切手Can you check my spelling before I hand this in? 語源はペルシャ語の shāh(王)。チェスの「王手」→「抑える」→「確かめる」の順に意味が広がった。
  • chequeB1
    名詞(英)小切手My grandmother still pays her rent by cheque. アメリカでは check とつづる。もとは金額を照合するための「控え」のこと。
  • in checkB2
    熟語抑えられて、食い止められてThe new rules helped keep prices in check. keep/hold 〜 in check の形でよく使う。チェスでは「王手をかけられている」状態。
  • verifyB2
    動詞(正しいかどうか)確かめるThe bank called me to verify the payment. check よりかたい語。verify a fact / verify an identity などと使う。
  • warningB1
    名詞警告The sign was a warning about falling rocks. warn(警告する)+-ing。give a warning「警告する」。
  • treasuryC1
    名詞国庫;(the Treasury で)財務省The tax money goes into the national treasury. treasure(宝)と同じ仲間。イギリスでは財務大臣を Chancellor of the Exchequer と呼ぶ。
  • patternB1
    名詞模様、柄He wore a shirt with a blue and white check pattern. check pattern / checked shirt で「チェック柄(のシャツ)」。
「チェック」の語源はペルシャ語の「王(シャー)」。チェスの王手から「止める」→「確かめる」→小切手と意味が広がった。イギリスの昔の財務府 Exchequer(今も財務大臣の肩書きに残る)の名前も、市松模様の布をかけた計算机=「チェス盤」から。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「check」(Word History)・「tally」ahdictionary.com
  2. Oxford Learner's Dictionaries「check」(動詞・Word Origin)・「cheque」oxfordlearnersdictionaries.com
  3. Oxford Learner's Dictionaries「exchequer」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  4. Dictionary.com「checkmate」(Origin)dictionary.com
  5. Barratt (2013) The Exchequer – a chequered history, History of government blog(GOV.UK)history.blog.gov.uk
  6. UK Parliament「The Great Fire of 1834」(Living Heritage)parliament.uk

本館

マジカ!?サイエンスで読む、ことばの研究

論文でウラ取りした科学の「マジか!?」。言語・脳・学習の研究も

マジカ!?サイエンスのトップへ →