午後は arvo、救急隊員は ambo。オーストラリア英語は何でも縮める

読む前に予想してみよう!
オーストラリアの人に「縮め語」を思いつくだけ書いてもらった研究では、10分で1,500種類以上が集まった
17〜84歳の115人に10分で書き出してもらったところ、全員分で1,500以上の異なる語が出た(Kidd ほか 2011、2016年の論文での紹介による)。
- 対象
- オーストラリアの大学生
- 規模
- 84人+59人(2つの実験)
- 研究の種類
- 地図を使った会話実験(役を演じる話し手と組ませる)
- 確かさ
- ★★★☆☆
午後は arvo、救急隊員は ambo、消防士は firie。オーストラリア英語は語を縮めて -o や -ie をつける。日本人の両親をもつメルボルン育ちの女性が話し相手を務めた実験では、彼女がオーストラリアなまりでこうした縮めた言葉を使うと、学生は「この人とは共通点が多い」と感じやすくなった。ただし、別の実験では変わらなかった。
ひとことで言うとオーストラリアでは「午後」を arvo(アーヴォ)と言う。縮めた言葉は仲間のあいずにもなるらしい!
"See you this arvo!"
オーストラリアでこう言われたら、「今日の午後ね!」という意味です。arvo は afternoon を縮めて、最後に -o をつけた言葉です。
救急隊員は ambo、消防士は firie、ガソリンスタンドは servo、大学は uni。オーストラリア英語は、とにかく何でも縮めます。
しかも実験してみると、この縮めた言葉(ここでは「縮め語」と呼びます)には、条件しだいで「この人とは共通点が多い」と感じさせる力がありました。
01縮めて、-o か -ie をつける
オーストラリア国立大学(ANU)のオーストラリア国立辞典センターは、ウェブサイトでオーストラリア英語の語の意味と由来を解説しています。それによると、語を縮めて -o や -ie(-y) をつけるのは、オーストラリア英語の大きな特徴です。
-o がつく例:
- arvo:afternoon(午後)。1920年代から記録がある。this arvo(今日の午後)は、さらに縮めて sarvo とも言う
- ambo:ambulance officer(救急隊員)。1980年代から
- journo(記者)、garbo(ごみ収集の人)、Salvo(救世軍の人)
-ie がつく例:
- Aussie:オーストラリア(人)。いちばん古い例は第一次世界大戦のころ
- firie:消防士。1980年代から
- tradie(大工などの職人)、rellie(親せき)
- sickie:病気休暇。1953年から記録があり、chuck a sickie は「(本当は元気なのに)病欠をとる」
人のあだ名にも -o がつきます。Johno、Jacko、Robbo のような形です。
オックスフォードの学習辞典によると、arvo は afternoon の af- の f を v のように濁らせて、-o をつけた形です。
02「Oz」は『オズの魔法使い』の影響?
オーストラリアのことを Oz とも言います。国立辞典センターによると、最初の記録は1908年の Oss というつづりで、boss(ボス)と同じ「オス」で終わる発音だったようです。
ところがその後、つづりはほとんど Oz になり、最後も「ズ」の音になりました。センターは、1939年に公開されて世界中で人気になった映画『オズの魔法使い』の影響を受けた可能性があるとしています。「オーストラリア」の意味の Oz の最初の記録は、そのすぐ後の1944年。戦争中の部隊の会報でした。
もう一つ、縮め語が入った言い回しを紹介します。男性用の、体にぴったりした小さな水着のことを budgie smugglers と言います。直訳すると「セキセイインコの密輸人」。budgie は budgerigar(セキセイインコ)を縮めた語で、もとはオーストラリア先住民のカミラロイ語の言葉です。水着の見た目をからかった冗談で、1990年代の終わりから記録があります。

03縮め語を使うと、相手との距離も縮まる?
縮め語は「くだけていて、親しみがある」と言われてきました。でも、それは本当なのか。Kidd らは2016年、これを実験で確かめました。
やり方はこうです。大学生に、初対面の相手と地図を見ながら交代で道案内をしてもらいます。相手は、じつは台本どおりに話す研究チーム側の人。2人のあいだには地図を立てて置き、おたがいの顔が見えないようにしました(表情や身ぶりの影響を除くため)。相手は、半分の学生には uni(大学)や servo(ガソリンスタンド)のような縮め語を使い、残り半分には university や service station のような、ふつうの語を使って道を案内しました。終わったあと、「この人とはどれくらい共通点があると思うか」「外で会ったら仲良くなれそうか」などを10段階で答えてもらいます。
1つめの実験(タスマニア大学の84人):相手はイギリス・アイルランド系(アングロ・ケルト系)で、オーストラリアなまりで話す男女。
- 相手が縮め語を使うと、学生もつられて縮め語を使った(学生1人が使った縮め語は平均4.32語。ふつうの語で案内された学生は0.58語)
- ただし「共通点がある」という感じ方は、全体では変わらなかった(縮め語で案内された学生6.91点、ふつうの語で案内された学生6.89点)
2つめの実験(メルボルンのラ・トローブ大学の59人):相手は、日本人の両親のもとメルボルンで育った26歳の女性。ふだんはオーストラリアなまりで話しますが、外国なまりの英語も本物らしく話せます。この1人が、なまりを変えて全員の相手をしました。
研究チームは、見た目だけでは「仲間かどうか」が分かりにくい話し手にとって、縮め語は「私もこっち側の人間です」とはっきり伝えるしるしになる、と考えています。
04どんでん返し:「使えば仲良くなれる」わけではない
この結果を「縮め語を使えばだれとでも仲良くなれる」と読むのは、行きすぎです。
- 1つめの実験では、相手が縮め語を使っただけでは「共通点がある」という感じ方は上がらなかった。点が高かったのは、学生自身がつられて縮め語をたくさん使った場合や、自分を「オーストラリア人だ」と強く感じている学生の場合だった
- 実験の人数は84人と59人。2つめの実験は人数が少ないことを、研究チーム自身が認めている
- 答えは本人の自己申告。つられて使ったから親しく感じたのか、親しく感じたからつられたのか、順番はこのデータでは決められない、と論文は書いている
それに、-o で終わる語がすべてオーストラリア生まれとは限りません。国立辞典センターが紹介する1989年の新聞記事では、オックスフォード英語辞典の編集者が「aggro(もめごと)や cheapo(安物)はオーストラリアの語ではない」と話しています。arvo の始まりも、オーストラリアの辞典センターは1920年代、オックスフォードの学習辞典は1930年代と、少しずれています。
05まとめ
オーストラリア英語では、午後は arvo、救急隊員は ambo、消防士は firie。語を縮めて -o や -ie をつけるのが大の得意です。
その縮め語は、ただの省エネではないようです。日系の女性が話し相手を務めた実験では、彼女がオーストラリアなまりで uni や servo と言うと、「この人とは共通点が多い」と感じる度合いが上がりました。縮めた言葉は、「私も仲間だよ」というあいずとして働いているのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAustralian English has a habit of clipping words and adding an ending.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In Australia, people often make words shorter. Then they add "-o" or "-ie" to the end. "Afternoon" becomes "arvo," and an ambulance officer is an "ambo." A firefighter is a "firie."
Researchers asked 115 Australians to write down short words like these for ten minutes. Together, they wrote more than 1,500 different words! Short words can also be friendly. They can show that you belong to the group.
68 words ・ CEFR A2
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オーストラリアでは、人々がよく語を短くします。そして最後に「-o」や「-ie」をつけます。「afternoon(午後)」は「arvo」になり、救急隊員は「ambo」です。消防士は「firie」です。
研究者たちは115人のオーストラリア人に、こうした短い語を10分間書き出してもらいました。全員で、1,500以上の異なる語を書きました!短い語は親しみやすくもあります。自分がそのグループの一員だと示すことができるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
people often make words shorter から始まり、arvo や ambo などの縮め語の話なので A。
Q2. How many different short words did the 115 people write?
they wrote more than 1,500 different words とあるので D。
Q3. In the passage, what does "arvo" mean?
"Afternoon" becomes "arvo," とあるので B。
Australian English has a habit of clipping words and adding an ending. A service station is a "servo," a university is "uni," and taking a day off when you are not really sick is "chucking a sickie." Some of these short forms are now more common than the full words. In 2016, researchers tested whether they also bring people closer.
University students took turns giving directions on a map with a stranger, who was secretly working for the researchers. When she used short forms with an Australian accent, students felt they had more in common with her. When she used the same words with a foreign accent, their feelings did not change.
112 words ・ CEFR B1
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オーストラリア英語には、語を切り縮めて語尾をつけるくせがある。ガソリンスタンドは「servo」、大学は「uni」で、本当は病気でもないのに仕事を休むことは「chucking a sickie」だ。こうした短い形の中には、今ではもとの語よりよく使われるものもある。2016年、研究者たちはそれが人と人を近づけるかどうかを調べた。大学生が初対面の相手と、地図を見ながら交代で道案内をした。
相手は、実はこっそり研究者側で働いている人だった。彼女がオーストラリアなまりで短い形を使うと、学生たちは彼女との共通点が多いと感じた。同じ語を外国なまりで使ったときは、学生の気持ちは変わらなかった。
4択リーディングクイズ
Q1. What does "chucking a sickie" mean?
taking a day off when you are not really sick is "chucking a sickie" とあるので C。
Q2. Who was the stranger in the experiment?
a stranger, who was secretly working for the researchers とあるので B。
Q3. What does the experiment suggest?
オーストラリアなまりでは共通点の感じ方が上がり、外国なまりでは変わらなかったので D。
Ask Australians to list clipped words like "arvo" and "uni" for ten minutes and they will not run dry. In a 2011 study, 115 people aged 17 to 84 came up with more than 1,500 different forms. A later study asked what these words do in conversation. Students did a map task with a stranger who secretly followed a script, giving directions with either short forms or standard words. In the first experiment, the partners were Anglo-Celtic Australians.
Students copied the short forms, using about seven times as many as students who heard standard words, yet their overall sense of common ground stayed the same. Those who copied more did feel closer, but the ratings were collected after the talk, so it is hard to say which came first. The second experiment used one partner, a 26-year-old woman with Japanese parents who grew up in Melbourne and could switch to a convincing foreign accent. Only 59 students took part.
Even so, the pattern was clear. With her Australian accent and short forms, she scored 7.24 out of 10 for common ground, against 5.93 with standard words. With the foreign accent, the short forms made no difference.
196 words ・ CEFR B2
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オーストラリアの人に「arvo」や「uni」のような縮めた語を10分間書き出してもらうと、ネタ切れにはならない。2011年の研究では、17〜84歳の115人が1,500以上の異なる形を出した。その後の研究は、こうした語が会話の中で何をしているのかを調べた。学生たちは、ひそかに台本に従っている初対面の相手と地図の課題を行い、相手は短い形か標準的な語のどちらかで道案内をした。1つめの実験では、相手はアングロ・ケルト系のオーストラリア人だった。
学生たちは短い形をまねして、標準的な語を聞いた学生の約7倍も使ったが、全体としての「共通点がある」という感覚は変わらなかった。たくさんまねした学生ほど近さを感じていたが、評価は会話のあとに集めたので、どちらが先だったのかは言いにくい。2つめの実験では、相手は1人で、日本人の両親のもとメルボルンで育ち、本物らしい外国なまりに切りかえることもできる26歳の女性だった。参加した学生は59人と少なかった。
それでも、傾向ははっきりしていた。オーストラリアなまりで短い形を使うと、共通点の点数は10点中7.24で、標準的な語のときの5.93を上回った。外国なまりでは、短い形を使っても違いはなかった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
1,500語以上という調査と、縮め語が「共通点」の感じ方にどう影響するかの実験の話なので B。
Q2. What happened in the first experiment?
Students copied the short forms ... yet their overall sense of common ground stayed the same. とあるので C。
Q3. In the first experiment, why is it hard to say which came first?
Those who copied more did feel closer, but the ratings were collected after the talk, so it is hard to say which came first. とあるので D。
重要単語
- arvoB2名詞(豪・NZ・くだけて)午後Do you want to go to the beach this arvo?
afternoon の af- の f を v に濁らせて -o をつけた形。this arvo は sarvo とも縮める。 - clipB2動詞(語を)切り縮める;はさみで切るAustralians often clip long words, so "university" becomes "uni."
言語学では clipping「短縮(語の一部を切ること)」。exam(examination)、phone(telephone)も同じ仕組み。 - informalB1形容詞くだけた、改まっていない"Uni" is informal, so don't use it in a job application.
反対語は formal。辞書の (informal) 表示は「会話向き」のサイン。 - accentB1名詞なまり、話し方のくせShe grew up in Melbourne, so she has an Australian accent.
日本語の「アクセント(音の高低)」より意味が広く、地域や国による発音の特徴全体を指す。 - in commonB1句共通してWe have a lot in common.
have something in common with ~「~と共通点がある」。common ground は「共通の基盤、通じ合える部分」。 - sick leaveB2名詞病気休暇He took a day of sick leave because of a fever.
豪州英語の sickie はこれを縮めた語。chuck a sickie は「(仮病で)休む」なので使う場面に注意。 - strangerA2名詞見知らぬ人、初対面の人Don't get into a car with a stranger.
strange(見慣れない)+-er。「よそから来た人」の意味もある:I'm a stranger here.「このあたりは初めてです」。
公式・一次情報をチェック
- arvo(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- Australian National Dictionary Centre(オーストラリア国立大学)history.cass.anu.edu.au
このネタ、誰かに教えたくなった?
オーストラリア英語では午後が arvo、救急隊員が ambo、病欠が sickie。何でも縮めて -o や -ie をつける。日系の女性が話し相手を務めた実験では、彼女がオーストラリアなまりで uni(大学)などの縮めた言葉を使うと、学生が「この人とは共通点が多い」と感じる度合いが上がった。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Kidd, Kemp, Kashima & Quinn (2016) Language, Culture, and Group Membership, Journal of Cross-Cultural Psychology 47(5)doi.org
- Kidd, Kemp & Quinn (2011) Did you have a choccie bickie this arvo? A quantitative look at Australian hypocoristics, Language Sciences 33(3)doi.org
- Australian National Dictionary Centre(ANU)「Meanings and origins of Australian words and idioms」history.cass.anu.edu.au
- Oxford Advanced Learner's Dictionary「arvo」oxfordlearnersdictionaries.com
- Cambridge Dictionary「servo」dictionary.cambridge.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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