Cross of Gold(ウィリアム・ジェニングス・ブライアン「金の十字架」演説)の挿絵

Cross of Gold

ウィリアム・ジェニングス・ブライアン「金の十字架」演説

  • 📖 1,020 words
  • ⏱ 約9分
  • YL 5.0+
  • 英検1級・ネイティブ目安
  • 📝 全訳つき

あらすじ1890年代のアメリカでは、通貨を金だけで裏づける「金本位制」を続けるか、銀も使う「金銀複本位制」にするかが大問題でした。金本位制は借金に苦しむ農民や労働者に不利だと考えられていたのです。まだ36歳の無名に近い元下院議員ブライアンは、この演説で農民と労働者の側に立って会場を熱狂させ、翌7月10日、5回目の投票で大統領候補に選ばれました。「人類を金の十字架にはりつけにしてはならない」という結びは、アメリカ政治史に残る名文句です。

ウィリアム・ジェニングス・ブライアン、シカゴの民主党全国大会で政策綱領の討論をしめくくった演説(1896年7月9日)。底本: ブライアン『最初の戦い――1896年選挙戦の物語』(1896年)の章「政策綱領をめぐる争い」、Internet Archive の画像による(抜粋。冒頭と結びの部分。通貨問題の細かい議論をした中間部は省略)

キーワード(14語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • presumptuous思い上がった
  • hosts大群
  • metropolis大都市
  • board of trade商品取引所
  • magnates大物、大資本家
  • corner買い占める
  • aggressors侵略者
  • posterity子孫
  • the masses大衆
  • gold standard金本位制
  • slander中傷する
  • bimetallism金銀複本位制
  • crown of thornsいばらの冠
  • crucify十字架にはりつけにする

🔊 音声は準備中です。もうしばらくお待ちください。

Mr. Chairman and Gentlemen of the Convention: I would be presumptuous, indeed, to present myself against the distinguished gentlemen to whom you have listened if this were a mere measuring of abilities; but this is not a contest between persons. The humblest citizen in all the land, when clad in the armor of a righteous cause, is stronger than all the hosts of error. I come to speak to you in defense of a cause as holy as the cause of liberty—the cause of humanity.

議長、ならびに代議員のみなさん。もしこれがただの能力の比べ合いであるなら、みなさんがいま耳を傾けた立派な方々に、私などが立ち向かうのは、まことに身のほど知らずというものでしょう。しかし、これは人と人との争いではありません。この国でもっとも身分の低い市民でも、正しい大義という鎧をまとえば、間違った側のどんな大軍よりも強いのです。私は、自由の大義と同じように神聖な大義、すなわち人類の大義を守るために、ここに話しに来ました。

We say to you that you have made the definition of a business man too limited in its application. The man who is employed for wages is as much a business man as his employer; the attorney in a country town is as much a business man as the corporation counsel in a great metropolis; the merchant at the cross-roads store is as much a business man as the merchant of New York; the farmer who goes forth in the morning and toils all day—who begins in the spring and toils all summer—and who by the application of brain and muscle to the natural resources of the country creates wealth, is as much a business man as the man who goes upon the board of trade and bets upon the price of grain; the miners who go down a thousand feet into the earth, or climb two thousand feet upon the cliffs, and bring forth from their hiding places the precious metals to be poured into the channels of trade are as much business men as the few financial magnates who, in a back room, corner the money of the world. We come to speak for this broader class of business men.

申し上げます。みなさんは、「実業家」という言葉の意味を、あまりにも狭くとらえてきました。賃金で雇われている人も、雇い主と同じように実業家です。田舎町の弁護士も、大都会の大企業の顧問弁護士と同じように実業家です。四つ辻の雑貨屋の主人も、ニューヨークの大商人と同じように実業家です。農民は朝早く出かけて一日じゅう働き、春に仕事を始めて夏じゅう働き、国の天然資源に頭と筋肉を注いで富を生み出します。この農民も、商品取引所に出かけて穀物の値段に賭ける人と同じように実業家です。鉱夫たちは、地下千フィートにもぐり、崖を二千フィートもよじ登って、隠れた場所から貴金属を掘り出し、取引の流れに注ぎこみます。この鉱夫たちも、奥の部屋で世界のお金を買い占める、ひとにぎりの金融界の大物たちと同じように実業家なのです。私たちは、こうしたもっと幅広い実業家のために話しに来たのです。

Ah, my friends, we say not one word against those who live upon the Atlantic coast, but the hardy pioneers who have braved all the dangers of the wilderness, who have made the desert to blossom as the rose—the pioneers away out there (pointing to the West), who rear their children near to Nature's heart, where they can mingle their voices with the voices of the birds—out there where they have erected schoolhouses for the education of their young, churches where they praise their Creator, and cemeteries where rest the ashes of their dead—these people, we say, are as deserving of the consideration of our party as any people in this country. It is for these that we speak. We do not come as aggressors. Our war is not a war of conquest; we are fighting in the defense of our homes, our families, and posterity. We have petitioned, and our petitions have been scorned; we have entreated, and our entreaties have been disregarded; we have begged, and they have mocked when our calamity came. We beg no longer; we entreat no more; we petition no more. We defy them.

ああ、みなさん、私たちは、大西洋岸に住む人々を悪く言うつもりは少しもありません。しかし、あの遠い西部にいる、たくましい開拓者たちのことを考えてください(と、西を指さす)。荒野のあらゆる危険に立ち向かい、砂漠をバラのように花咲かせてきた人々です。自然のふところ近くで子どもを育て、子どもたちの声が鳥たちの声と混じり合う土地に住む人々です。あの向こうで、子どもたちを教える校舎を建て、創造主をたたえる教会を建て、亡くなった人々の遺灰が眠る墓地をつくってきた人々です。こうした人々も、この国のほかのどんな人々にも劣らず、わが党が心を配るに値する。私たちはそう言っているのです。私たちが話しているのは、この人々のためです。私たちは攻めこむ者として来たのではありません。私たちの戦いは、征服のための戦いではありません。家庭を、家族を、子孫を守るために戦っているのです。私たちは請願しましたが、請願は鼻であしらわれました。懇願しましたが、懇願は無視されました。嘆願しましたが、災いが私たちを襲ったとき、彼らはあざ笑いました。もう嘆願はしません。もう懇願もしません。もう請願もしません。私たちは、彼らに戦いを挑むのです。

Mr. Carlisle said in 1878 that this was a struggle between "the idle holders of idle capital" and "the struggling masses, who produce the wealth and pay the taxes of the country;" and, my friends, the question we are to decide is: Upon which side will the Democratic party fight; upon the side of "the idle holders of idle capital" or upon the side of "the struggling masses?" That is the question which the party must answer first, and then it must be answered by each individual hereafter. The sympathies of the Democratic party, as shown by the platform, are on the side of the struggling masses who have ever been the foundation of the Democratic party. There are two ideas of government. There are those who believe that, if you will only legislate to make the well-to-do prosperous, their prosperity will leak through on those below. The Democratic idea, however, has been that if you legislate to make the masses prosperous, their prosperity will find its way up through every class which rests upon them.

カーライル氏は1878年に、これは「遊んでいる資本を抱えて遊んでいる者たち」と、「この国の富を生み出し、税を納めている、苦しみながら働く大衆」との戦いだと言いました。そこでみなさん、私たちが決めなければならない問題はこうです。民主党は、どちらの側に立って戦うのか。「遊んでいる資本を抱えて遊んでいる者たち」の側か、それとも「苦しみながら働く大衆」の側か。これこそ、党がまず答えなければならない問題です。そしてこれから先、一人一人が答えなければならない問題です。綱領に示されているとおり、民主党の心は、苦しみながら働く大衆の側にあります。この大衆こそが、いつも民主党の土台だったのです。政治については、二つの考え方があります。裕福な人々を豊かにする法律さえつくれば、その豊かさは下の人々にもしみ出していく、と信じる人々がいます。しかし民主党は、これまでずっと、こう考えてきました。大衆を豊かにする法律をつくれば、その豊かさは、大衆の上に乗っているあらゆる階層へと、下から上へ行きわたっていくのだ、と。

You come to us and tell us that the great cities are in favor of the gold standard; we reply that the great cities rest upon our broad and fertile prairies. Burn down your cities and leave our farms, and your cities will spring up again as if by magic; but destroy our farms and the grass will grow in the streets of every city in the country.

みなさんは私たちのところへ来て、大都市は金本位制に賛成している、と言います。私たちはこう答えます。大都市は、私たちの広く肥えた大草原の上に立っているのだ、と。都市を焼き払っても、農場さえ残しておけば、都市はまるで魔法のように、またたちまちよみがえるでしょう。しかし、農場をつぶしてしまえば、この国のあらゆる都市の通りに、草がぼうぼうと生えることでしょう。

My friends, we declare that this nation is able to legislate for its own people on every question, without waiting for the aid or consent of any other nation on earth; and upon that issue we expect to carry every State in the Union. I shall not slander the inhabitants of the fair State of Massachusetts nor the inhabitants of the State of New York by saying that, when they are confronted with the proposition, they will declare that this nation is not able to attend to its own business. It is the issue of 1776 over again.

みなさん、私たちは宣言します。この国は、地上のほかのどんな国の助けも同意も待たずに、あらゆる問題について、自分の国民のための法律をつくることができる、と。そしてこの争点で、私たちは連邦のすべての州で勝つつもりです。美しいマサチューセッツ州の人々も、ニューヨーク州の人々も、この問いを突きつけられたら、この国は自分のことを自分で始末できない、と言うだろう。そんなことを言って、私はこの人々を中傷するつもりはありません。これは、1776年の争点がもう一度現れたものなのです。

Our ancestors, when but three millions in number, had the courage to declare their political independence of every other nation; shall we, their descendants, when we have grown to seventy millions, declare that we are less independent than our forefathers? No, my friends, that will never be the verdict of our people. Therefore, we care not upon what lines the battle is fought. If they say bimetallism is good, but that we cannot have it until other nations help us, we reply that, instead of having a gold standard because England has, we will restore bimetallism, and then let England have bimetallism because the United States has it. If they dare to come out in the open field and defend the gold standard as a good thing, we will fight them to the uttermost. Having behind us the producing masses of this nation and the world, supported by the commercial interests, the laboring interests, and the toilers everywhere, we will answer their demand for a gold standard by saying to them: You shall not press down upon the brow of labor this crown of thorns, you shall not crucify mankind upon a cross of gold.

私たちの祖先は、わずか300万人しかいなかったときに、ほかのすべての国から政治的に独立すると宣言する勇気をもっていました。その子孫である私たちが、7000万人にまで成長したいまになって、祖先よりも独立していない、と宣言するのでしょうか。いいえ、みなさん、私たちの国民が、そんな判決を下すことは決してありません。ですから、どんな戦線で戦うことになろうと、かまいません。もし相手が、金銀複本位制はよいものだが、ほかの国々が手を貸してくれるまでは実現できない、と言うなら、私たちはこう答えます。イギリスが金本位制だから私たちも金本位制にする、のではない。私たちが金銀複本位制を取り戻し、合衆国がそうしているからイギリスにも金銀複本位制をとらせるのだ、と。もし相手が、正々堂々と表に出てきて、金本位制はよいものだと言いはるなら、私たちはとことん戦います。私たちの後ろには、この国と世界の、ものをつくり出す大衆がいます。商業にたずさわる人々、労働にたずさわる人々、そしてあらゆる場所で汗を流す人々が、私たちを支えています。金本位制を求める相手の声に、私たちはこう答えましょう。労働する者の額に、このいばらの冠を押しつけてはならない。人類を、金の十字架にはりつけにしてはならない!

📖 全訳をまとめて読む 読み終わってからの答え合わせに

議長、ならびに代議員のみなさん。もしこれがただの能力の比べ合いであるなら、みなさんがいま耳を傾けた立派な方々に、私などが立ち向かうのは、まことに身のほど知らずというものでしょう。しかし、これは人と人との争いではありません。この国でもっとも身分の低い市民でも、正しい大義という鎧をまとえば、間違った側のどんな大軍よりも強いのです。私は、自由の大義と同じように神聖な大義、すなわち人類の大義を守るために、ここに話しに来ました。

申し上げます。みなさんは、「実業家」という言葉の意味を、あまりにも狭くとらえてきました。賃金で雇われている人も、雇い主と同じように実業家です。田舎町の弁護士も、大都会の大企業の顧問弁護士と同じように実業家です。四つ辻の雑貨屋の主人も、ニューヨークの大商人と同じように実業家です。農民は朝早く出かけて一日じゅう働き、春に仕事を始めて夏じゅう働き、国の天然資源に頭と筋肉を注いで富を生み出します。この農民も、商品取引所に出かけて穀物の値段に賭ける人と同じように実業家です。鉱夫たちは、地下千フィートにもぐり、崖を二千フィートもよじ登って、隠れた場所から貴金属を掘り出し、取引の流れに注ぎこみます。この鉱夫たちも、奥の部屋で世界のお金を買い占める、ひとにぎりの金融界の大物たちと同じように実業家なのです。私たちは、こうしたもっと幅広い実業家のために話しに来たのです。

ああ、みなさん、私たちは、大西洋岸に住む人々を悪く言うつもりは少しもありません。しかし、あの遠い西部にいる、たくましい開拓者たちのことを考えてください(と、西を指さす)。荒野のあらゆる危険に立ち向かい、砂漠をバラのように花咲かせてきた人々です。自然のふところ近くで子どもを育て、子どもたちの声が鳥たちの声と混じり合う土地に住む人々です。あの向こうで、子どもたちを教える校舎を建て、創造主をたたえる教会を建て、亡くなった人々の遺灰が眠る墓地をつくってきた人々です。こうした人々も、この国のほかのどんな人々にも劣らず、わが党が心を配るに値する。私たちはそう言っているのです。私たちが話しているのは、この人々のためです。私たちは攻めこむ者として来たのではありません。私たちの戦いは、征服のための戦いではありません。家庭を、家族を、子孫を守るために戦っているのです。私たちは請願しましたが、請願は鼻であしらわれました。懇願しましたが、懇願は無視されました。嘆願しましたが、災いが私たちを襲ったとき、彼らはあざ笑いました。もう嘆願はしません。もう懇願もしません。もう請願もしません。私たちは、彼らに戦いを挑むのです。

カーライル氏は1878年に、これは「遊んでいる資本を抱えて遊んでいる者たち」と、「この国の富を生み出し、税を納めている、苦しみながら働く大衆」との戦いだと言いました。そこでみなさん、私たちが決めなければならない問題はこうです。民主党は、どちらの側に立って戦うのか。「遊んでいる資本を抱えて遊んでいる者たち」の側か、それとも「苦しみながら働く大衆」の側か。これこそ、党がまず答えなければならない問題です。そしてこれから先、一人一人が答えなければならない問題です。綱領に示されているとおり、民主党の心は、苦しみながら働く大衆の側にあります。この大衆こそが、いつも民主党の土台だったのです。政治については、二つの考え方があります。裕福な人々を豊かにする法律さえつくれば、その豊かさは下の人々にもしみ出していく、と信じる人々がいます。しかし民主党は、これまでずっと、こう考えてきました。大衆を豊かにする法律をつくれば、その豊かさは、大衆の上に乗っているあらゆる階層へと、下から上へ行きわたっていくのだ、と。

みなさんは私たちのところへ来て、大都市は金本位制に賛成している、と言います。私たちはこう答えます。大都市は、私たちの広く肥えた大草原の上に立っているのだ、と。都市を焼き払っても、農場さえ残しておけば、都市はまるで魔法のように、またたちまちよみがえるでしょう。しかし、農場をつぶしてしまえば、この国のあらゆる都市の通りに、草がぼうぼうと生えることでしょう。

みなさん、私たちは宣言します。この国は、地上のほかのどんな国の助けも同意も待たずに、あらゆる問題について、自分の国民のための法律をつくることができる、と。そしてこの争点で、私たちは連邦のすべての州で勝つつもりです。美しいマサチューセッツ州の人々も、ニューヨーク州の人々も、この問いを突きつけられたら、この国は自分のことを自分で始末できない、と言うだろう。そんなことを言って、私はこの人々を中傷するつもりはありません。これは、1776年の争点がもう一度現れたものなのです。

私たちの祖先は、わずか300万人しかいなかったときに、ほかのすべての国から政治的に独立すると宣言する勇気をもっていました。その子孫である私たちが、7000万人にまで成長したいまになって、祖先よりも独立していない、と宣言するのでしょうか。いいえ、みなさん、私たちの国民が、そんな判決を下すことは決してありません。ですから、どんな戦線で戦うことになろうと、かまいません。もし相手が、金銀複本位制はよいものだが、ほかの国々が手を貸してくれるまでは実現できない、と言うなら、私たちはこう答えます。イギリスが金本位制だから私たちも金本位制にする、のではない。私たちが金銀複本位制を取り戻し、合衆国がそうしているからイギリスにも金銀複本位制をとらせるのだ、と。もし相手が、正々堂々と表に出てきて、金本位制はよいものだと言いはるなら、私たちはとことん戦います。私たちの後ろには、この国と世界の、ものをつくり出す大衆がいます。商業にたずさわる人々、労働にたずさわる人々、そしてあらゆる場所で汗を流す人々が、私たちを支えています。金本位制を求める相手の声に、私たちはこう答えましょう。労働する者の額に、このいばらの冠を押しつけてはならない。人類を、金の十字架にはりつけにしてはならない!

日本語訳:多読ベスト

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このお話の教訓 Moral

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you shall not crucify mankind upon a cross of gold.

人類を金の十字架にはりつけにしてはならない。

理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. Which of these people does Bryan call 'as much a business man' as a rich merchant?

Q2. What does Bryan say would happen if the farms were destroyed?

Q3. What does Bryan want the United States to do about bimetallism?

🎥 本物を見る・聞く 実際のスピーチ

🔗 ページ・NPRWilliam Jennings Bryan: An Electrifying OratorNPR(米国公共ラジオ)の記事ページ。ブライアン本人が後年(1920年代)に吹き込んだ「金の十字架」演説の録音を聞ける

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この読み物の使い方 3ステップ

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