Toshishun(杜子春)の挿絵

Toshishun

杜子春

  • 639 words
  • 約8分
  • YL 1.0–1.4
  • 英検3級目安
  • 全訳つき

あらすじお金を使いはたした若者、杜子春。ふしぎな老人のおかげで二度も大金持ちになりますが、やがて仙人になりたいと願い出ます。けっして声を出してはいけない、という約束の先に待っていたのは……。

芥川龍之介『杜子春』(1920年)をもとに再話

ORIGINAL TEXT

まずは原文をチェック

この話は日本語の原文(青空文庫)でも読めます。青空文庫の本文を、そのまま載せています。やさしい版で筋をつかんでから原文へ進むと、作者の言葉をじっくり味わえます。

『杜子春』芥川龍之介の日本語の原文を読む →

青空文庫の本文(新字新仮名・約9,100字)。

同じお話の別のレベル:Level 4

キーワード(10語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • Tang China唐(昔の中国)
  • shadow影
  • luxuryぜいたく
  • sennin仙人
  • trickだます
  • armorよろい
  • spear槍(やり)
  • demons鬼
  • whipsむち
  • peach桃

音声は準備中です。もうしばらくお待ちください。

日本語訳の一部には生成AIを使っており、AIによる3重のチェックと人の目で確かめています。まだ人の目を通っていない訳もあるため、ニュアンスがずれている所があるかもしれません。日本語訳について

One spring evening, a young man named Toshishun was standing under the west gate of Luoyang, the great capital of Tang China. He was once the son of a rich man, but now all his money was gone. He had nothing to eat and no place to sleep.

ある春の夕暮れのことです。唐の都、洛陽の西の門の下に、杜子春という若者が立っていました。もとは金持ちの息子でしたが、今はお金をすっかり使いはたしていました。食べるものもなく、寝る所もありませんでした。

"What are you thinking about?" asked an old man who was blind in one eye. "I have no place to sleep tonight," said Toshishun. "Then stand in the evening sun," said the old man. "Tonight, dig where the head of your shadow falls. You will find a cart full of gold." Toshishun looked up in surprise, but the old man was gone.

「おまえは何を考えているのだ」と、片方の目が見えない老人がたずねました。「今夜寝る所もないのです」と杜子春は答えました。「では、夕日の中に立ってみるがいい」と老人は言いました。「今夜、おまえの影の、頭にあたる所を掘ってみろ。車にいっぱいの黄金が埋まっているはずだ」杜子春はおどろいて顔を上げましたが、老人の姿はもうどこにもありませんでした。

Toshishun dug there and found a mountain of gold. He became the richest man in Luoyang and lived in luxury. Friends who never said hello before came to see him every day.

杜子春がそこを掘ってみると、黄金が山のように出てきました。杜子春は洛陽でいちばんの大金持ちになり、ぜいたくな暮らしを始めました。それまであいさつさえしなかった友だちが、毎日遊びに来るようになりました。

But after three years, all the money was gone, and so were his friends.

けれども三年たつと、お金はすっかりなくなり、友だちもみんないなくなってしまいました。

The old man came to him again at the gate. This time, the gold was under the chest of his shadow. But in three years, that money was gone too.

老人は、また門のところへやって来ました。今度は、影の胸にあたる所に黄金が埋まっていました。けれども三年たつと、そのお金もなくなってしまいました。

When the old man came for the third time, Toshishun said, "I don't want money anymore. When I'm rich, people are nice to me. When I'm poor, they don't even smile at me. I'm tired of people. You must be a sennin with magic powers. Please make me your student."

老人が三度目にやって来たとき、杜子春は言いました。「お金はもういらないのです。金持ちのときは、人はみんな親切にしてくれます。でも貧乏になると、やさしい顔ひとつ見せてくれません。人間というものに、愛想がつきたのです。あなたは不思議な力を持った仙人でしょう。どうか私を弟子にしてください」

The old man smiled. "Yes, I am Tekkanshi, a sennin of Mount Gabi. Come with me." They sat on a bamboo stick, and it flew into the sky like a dragon.

老人はにっこり笑いました。「いかにも、おれは峨眉山に住む鉄冠子という仙人だ。一緒に来るがいい」二人が竹の杖にまたがると、杖は竜のように大空へ舞い上がりました。

On Mount Gabi, Tekkanshi sat Toshishun down on a big rock. "I am going to heaven for a while," he said. "Strange things will come and try to trick you. But don't say a word. If you speak, you can never become a sennin." "I won't say a word, even if I die," said Toshishun.

峨眉山に着くと、鉄冠子は杜子春を大きな岩の上に座らせました。「おれはこれから、しばらく天上へ行ってくる」と鉄冠子は言いました。「いろいろな魔物が出てきて、おまえをだまそうとするだろう。だが、決して声を出してはならんぞ。口をきいたら、おまえは仙人にはなれない」「大丈夫です。命がなくなっても、黙っています」と杜子春は答えました。

A tiger and a huge white snake came at him, but they disappeared like fog. A storm came and went. Then a tall god in gold armor appeared. "Who are you? Answer me!" Toshishun kept quiet. The angry god struck him with his spear, and Toshishun died.

虎と大きな白い蛇がおそいかかってきましたが、霧のように消えてしまいました。嵐も来ましたが、やがておさまりました。すると今度は、金のよろいを着た、背の高い神将があらわれました。「おまえは何者だ。答えろ」それでも杜子春は黙っていました。怒った神将は槍で杜子春を突き、杜子春は死んでしまいました。

His spirit went down to Hell. King Enma asked him, "Why were you sitting on Mount Gabi?" Toshishun did not answer. So demons threw him into a valley of fire, a sea of ice and other terrible places. Still, he did not say a word.

杜子春の魂は、地獄へ下りていきました。閻魔大王が「おまえは何のために、峨眉山の上に座っていたのだ」とたずねても、杜子春は答えませんでした。そこで鬼たちは、杜子春を炎の谷や氷の海や、そのほかのおそろしい地獄へ投げこみました。それでも杜子春は、一言も口をききませんでした。

Then King Enma said, "Bring his father and mother!" A demon brought two thin horses with the faces of Toshishun's dead parents. "Answer me, or they will suffer," said the king. Toshishun stayed silent, and the demons began to hit the horses with iron whips.

すると閻魔大王は、「この男の父と母を連れてこい」と言いつけました。鬼が連れてきたのは、やせた二頭の馬でした。その顔は、死んだ杜子春の父と母の顔だったのです。「答えなければ、親たちを痛い目にあわせるぞ」と大王は言いました。それでも杜子春が黙っていると、鬼たちは鉄のむちで馬を打ちはじめました。

Then he heard a soft voice. "Don't worry about us. If you can be happy, that is all we want. Don't speak if you don't want to." It was his mother. Even in such pain, she was thinking only of her son. Toshishun forgot Tekkanshi's words. He ran to her, held her neck and cried, "Mother!"

そのとき、かすかな声が聞こえてきました。「私たちのことは心配をおしでない。お前さえ幸せになれるのなら、それでいいのだからね。言いたくないことは、黙っておいで」それは母の声でした。こんなに苦しいときでも、母は息子のことだけを思っていたのです。杜子春は、鉄冠子の言葉も忘れて、母のそばへ駆けよりました。そしてその首をだきかかえて、「お母さん」と叫びました。

The next moment, Toshishun was standing under the west gate of Luoyang. The old man was smiling. "You can't become a sennin, can you?" "No, I can't," said Toshishun with tears in his eyes. "But I'm glad. I couldn't stay silent when my parents were in pain."

次の瞬間、杜子春はまた、洛陽の西の門の下に立っていました。老人はほほえんでいました。「どうだな。やはり仙人にはなれまい」「なれません」と、杜子春は目に涙をうかべたまま言いました。「でも、うれしいのです。父と母が苦しんでいるのを見て、黙ってなどいられません」

Tekkanshi's face became serious. "If you had said nothing, I was going to take your life. Now, what will you do?" "I will live an honest life, as a good human being," Toshishun answered in a clear, happy voice.

鉄冠子は、急にきびしい顔になりました。「もしおまえが黙っていたら、おれはおまえの命を絶ってしまうつもりだったのだ。さて、これからどうするつもりだ」「人間らしい、正直な暮らしをするつもりです」と答えた杜子春の声は、明るく晴れ晴れとしていました。

As he walked away, Tekkanshi turned back. "Oh, I have a house at the foot of Mount Taizan. It is yours, with its fields. The peach trees must be in flower all around it now," he added happily.

鉄冠子は歩き出しましたが、ふとふり返りました。「おお、そうだ。おれは泰山のふもとに一軒の家を持っている。その家を畑ごとおまえにやろう。今ごろはちょうど、家のまわりに桃の花が一面に咲いているだろう」と、鉄冠子はさも愉快そうにつけ加えました。

全訳をまとめて読む 読み終わってからの答え合わせに

ある春の夕暮れのことです。唐の都、洛陽の西の門の下に、杜子春という若者が立っていました。もとは金持ちの息子でしたが、今はお金をすっかり使いはたしていました。食べるものもなく、寝る所もありませんでした。

「おまえは何を考えているのだ」と、片方の目が見えない老人がたずねました。「今夜寝る所もないのです」と杜子春は答えました。「では、夕日の中に立ってみるがいい」と老人は言いました。「今夜、おまえの影の、頭にあたる所を掘ってみろ。車にいっぱいの黄金が埋まっているはずだ」杜子春はおどろいて顔を上げましたが、老人の姿はもうどこにもありませんでした。

杜子春がそこを掘ってみると、黄金が山のように出てきました。杜子春は洛陽でいちばんの大金持ちになり、ぜいたくな暮らしを始めました。それまであいさつさえしなかった友だちが、毎日遊びに来るようになりました。

けれども三年たつと、お金はすっかりなくなり、友だちもみんないなくなってしまいました。

老人は、また門のところへやって来ました。今度は、影の胸にあたる所に黄金が埋まっていました。けれども三年たつと、そのお金もなくなってしまいました。

老人が三度目にやって来たとき、杜子春は言いました。「お金はもういらないのです。金持ちのときは、人はみんな親切にしてくれます。でも貧乏になると、やさしい顔ひとつ見せてくれません。人間というものに、愛想がつきたのです。あなたは不思議な力を持った仙人でしょう。どうか私を弟子にしてください」

老人はにっこり笑いました。「いかにも、おれは峨眉山に住む鉄冠子という仙人だ。一緒に来るがいい」二人が竹の杖にまたがると、杖は竜のように大空へ舞い上がりました。

峨眉山に着くと、鉄冠子は杜子春を大きな岩の上に座らせました。「おれはこれから、しばらく天上へ行ってくる」と鉄冠子は言いました。「いろいろな魔物が出てきて、おまえをだまそうとするだろう。だが、決して声を出してはならんぞ。口をきいたら、おまえは仙人にはなれない」「大丈夫です。命がなくなっても、黙っています」と杜子春は答えました。

虎と大きな白い蛇がおそいかかってきましたが、霧のように消えてしまいました。嵐も来ましたが、やがておさまりました。すると今度は、金のよろいを着た、背の高い神将があらわれました。「おまえは何者だ。答えろ」それでも杜子春は黙っていました。怒った神将は槍で杜子春を突き、杜子春は死んでしまいました。

杜子春の魂は、地獄へ下りていきました。閻魔大王が「おまえは何のために、峨眉山の上に座っていたのだ」とたずねても、杜子春は答えませんでした。そこで鬼たちは、杜子春を炎の谷や氷の海や、そのほかのおそろしい地獄へ投げこみました。それでも杜子春は、一言も口をききませんでした。

すると閻魔大王は、「この男の父と母を連れてこい」と言いつけました。鬼が連れてきたのは、やせた二頭の馬でした。その顔は、死んだ杜子春の父と母の顔だったのです。「答えなければ、親たちを痛い目にあわせるぞ」と大王は言いました。それでも杜子春が黙っていると、鬼たちは鉄のむちで馬を打ちはじめました。

そのとき、かすかな声が聞こえてきました。「私たちのことは心配をおしでない。お前さえ幸せになれるのなら、それでいいのだからね。言いたくないことは、黙っておいで」それは母の声でした。こんなに苦しいときでも、母は息子のことだけを思っていたのです。杜子春は、鉄冠子の言葉も忘れて、母のそばへ駆けよりました。そしてその首をだきかかえて、「お母さん」と叫びました。

次の瞬間、杜子春はまた、洛陽の西の門の下に立っていました。老人はほほえんでいました。「どうだな。やはり仙人にはなれまい」「なれません」と、杜子春は目に涙をうかべたまま言いました。「でも、うれしいのです。父と母が苦しんでいるのを見て、黙ってなどいられません」

鉄冠子は、急にきびしい顔になりました。「もしおまえが黙っていたら、おれはおまえの命を絶ってしまうつもりだったのだ。さて、これからどうするつもりだ」「人間らしい、正直な暮らしをするつもりです」と答えた杜子春の声は、明るく晴れ晴れとしていました。

鉄冠子は歩き出しましたが、ふとふり返りました。「おお、そうだ。おれは泰山のふもとに一軒の家を持っている。その家を畑ごとおまえにやろう。今ごろはちょうど、家のまわりに桃の花が一面に咲いているだろう」と、鉄冠子はさも愉快そうにつけ加えました。

日本語訳の一部には生成AIを使っており、AIによる3重のチェックと人の目で確かめています。まだ人の目を通っていない訳もあるため、ニュアンスがずれている所があるかもしれません。日本語訳について

日本語訳:多読ベスト

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理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. Why did Toshishun stop wanting money?

Q2. What did Tekkanshi tell Toshishun to do on the mountain?

Q3. Why did Toshishun speak at last?

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  • A1中学基礎 85.1%
  • A2高校入門 6.4%
  • B1受験コア 2.5%
  • B2難関大 0.7%
  • リストにない語 5.3%

本文の語の割合(人名などは数えていません)。「リストにない語」は固有名詞・古い言い方・やさしい複合語などです。

B2難関大の語 3語

B1受験コアの語 13語

A2高校入門の語 31語

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この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む 計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。1文リピートで音読・シャドーイングも。

聞き読みの効果とやり方/多読三原則

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