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日本語のマジか!?ホント

無視する「シカト」は花札から来たらしい。もみじの札の鹿が、そっぽを向いている

無視する「シカト」は花札から来たらしい。もみじの札の鹿が、そっぽを向いている

読む前に予想してみよう!

「シカト」は、花札の鹿がそっぽを向いている絵柄から来た、と国語辞典に書かれている

研究カード(どんな研究?)
対象
国語辞典・百科事典の記述
規模
国語辞典2種・百科事典3種
研究の種類
辞書の記述の比較
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

無視する意味の「シカト」は、花札の10月の札で、もみじの下の鹿が横を向いているところから、と国語辞典は説明している。鹿の札は10点札。若者の間で使われ始めたのは昭和30年代後半。

ひとことで言うと「シカト」は、花札の鹿がそっぽを向いている絵から来たんだって!

もくじ
  1. 10月の札の鹿が、横を向いている
  2. 花札の「10月」は、もみじと鹿
  3. 「猪鹿蝶」の鹿と同じ札
  4. 「もみじに鹿」の絵は、花札より古い
  5. 英語で「シカトする」は?
  6. どんでん返し:辞書も「〜という」としか書いていない
  7. まとめ

「既読なのに返事がない。これ、シカトされてる?」

人をわざと無視する「シカト」。じつはこの言葉、花札(はなふだ)から来たと国語辞典に書いてあります。

辞書が挙げるのは、10月の札。赤いもみじの下に鹿が1頭いて、その鹿がぷいっとそっぽを向いているのです。

0110月の札の鹿が、横を向いている

小学館の『日本国語大辞典』と『デジタル大辞泉』は、「しかと」をこう説明しています。

『日本国語大辞典』は、「鹿が横を向いている」ことに加えて、その札が「10点札である」ことも語源の説明に入れています。ただ、10点札であることが「しかと」という言葉とどうつながるのかまでは、書かれていません。

02花札の「10月」は、もみじと鹿

花札をよく知らない人のために、しくみを確かめておきましょう。

『デジタル大辞泉』によると、花札は1月から12月までの各月に、松・梅・桜・藤・菖蒲(あやめ)・牡丹(ぼたん)・萩(はぎ)・薄(すすき)・菊・紅葉(もみじ)・柳・桐の12の草木をあてて描いた札です。1つの月に4枚ずつで、全部で48枚。10月はもみじです。

『世界大百科事典』によると、札にはそれぞれ点数が決まっていて、点数の高い札には動物や道具などが描き添えてあります。もみじの4枚のうち、鹿が描かれているのが10点の札です。

03「猪鹿蝶」の鹿と同じ札

花札の遊び方を知っている人なら、「猪鹿蝶(いのしかちょう)」という役(そろえると得点になる組み合わせ)を聞いたことがあるかもしれません。

『デジタル大辞泉』によると、猪鹿蝶は次の3枚です。

  • 萩の10点札(猪)
  • もみじの10点札(鹿)
  • 牡丹の10点札(蝶)

「シカト」の鹿は、この猪鹿蝶の「鹿」と同じ札です。花札で遊ぶ人にとっては、よく目にする札なのです。

花札の10月の10点札は「もみじに鹿」。この鹿が横を向いていることから「シカト」と言うようになった、と辞書は説明している(日本国語大辞典・デジタル大辞泉)
花札の10月の10点札は「もみじに鹿」。この鹿が横を向いていることから「シカト」と言うようになった、と辞書は説明している(日本国語大辞典・デジタル大辞泉)

04「もみじに鹿」の絵は、花札より古い

もみじと鹿の組み合わせは、花札が生まれる前からありました。

『世界大百科事典』(平凡社)によると、花札のもとになったと考えられているものの1つが、「花鳥合せ」という、絵を合わせて遊ぶかるたです(教育用のかるたの流れをくむもの)。安永年間(1772〜81年)ごろのもの(上流の人々だけが遊んだと思われる、200枚をこえる組)には、松に鶴、梅に鶯(うぐいす)、もみじに鹿など、今の花札と同じ組み合わせが見られるといいます。

同じ事典は、18世紀後半の寛政の改革で賭けごとに使うかるたが禁止されたため、その代わりとして花札が作られた、という説が有力だとしています。優雅な花鳥風月の絵にしたのは、取り締まりの目をごまかす工夫だったと考えられています。今ふつうに使われている絵柄が定着したのは、明治20年代の後半と思われる、とも書かれています。

05英語で「シカトする」は?

英語には「鹿」の出てくる言い方はありませんが、「無視する」を表す言い方はいろいろあります。Oxford Learner's Dictionaries で確かめたものを並べます。

deer(鹿)は、1頭でも2頭でも deer のまま。three deer と言い、three deers とは言いません。

06どんでん返し:辞書も「〜という」としか書いていない

ここまで読むと「シカトの語源は花札で決まり」と思えます。でも、辞書の書き方をよく見てください。

『日本国語大辞典』も『デジタル大辞泉』も、「〜ところからという」と書いています。これは「そう言われている」という書き方で、言い切ってはいません。だれが言い出したのか、どうやって若者に広まったのか。その道筋は、今回調べた辞書や事典では確かめられませんでした。

もう一つ、ややこしい話があります。「しかと」という音の言葉は、もっと古くからあるのです。

『日本国語大辞典』によると、副詞の「しかと(確と)」は『万葉集』(8世紀後半)にも出てくる言葉で、「はっきりと」「たしかに」「しっかりと」という意味です。「しかと見届けた」「しかと受け取りました」の「しかと」ですね。

辞書では、無視の「しかと」とは別の言葉として載っていて、語源の説明でも結びつけられていません。同じ「しかと」でも、片方は「しかと見届ける」の「しっかり」、もう片方は「わざと見ない」。音は同じでも、向きは正反対です。

07まとめ

人を無視する「シカト」は、花札の10月の札で、もみじの下の鹿がそっぽを向いていることから、と国語辞典は説明しています。その札は猪鹿蝶の「鹿」と同じ10点札。若者の間で広まったのは昭和30年代後半からです。

ただし、辞書の書き方はあくまで「〜という」。次に花札を見る機会があったら、10月の鹿の顔の向きを、自分の目で確かめてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English Corner"Shikato" is a slang word that means deliberately ignoring someone or leaving them out of a group. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

"Shikato" is a slang word that means deliberately ignoring someone or leaving them out of a group. Two major Japanese dictionaries trace it to hanafuda, a card game with 48 cards, four for each month of the year. The October cards are decorated with maple leaves, and one of them shows a deer with its head turned away.

One dictionary also points out that this deer card is worth 10 points. The Digital Daijisen adds that young people started using "shikato" in the early 1960s. Both dictionaries end their explanation with a phrase meaning "it is said," so they do not claim to be sure.

105 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「シカト」は、人をわざと無視したり、仲間はずれにしたりすることを意味する俗語だ。日本の大きな辞書2つは、この語を花札にさかのぼらせている。花札は48枚の札で、1年の各月に4枚ずつある。10月の札にはもみじが描かれ、その中の1枚には顔をそむけた鹿がいる。

ある辞書は、この鹿の札が10点札であることにも触れている。『デジタル大辞泉』は、若者が1960年代前半に「シカト」を使い始めたと書いている。どちらの辞書も「〜と言われている」という意味の言い回しで説明を締めくくっており、確かだとは言っていない。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. When did young people start using "shikato," according to the passage?

Q3. Why does the writer mention the phrase meaning "it is said"?

重要単語

  • ignoreA2
    動詞無視するShe saw me but ignored me. 名詞 ignorance は「無知」で意味がずれるので注意。ignore a warning「警告を無視する」もよく使う。
  • deliberatelyB2
    副詞わざと、故意にHe deliberately looked the other way. on purpose とほぼ同じ。形容詞 deliberate は「意図的な」のほか「慎重な」の意味もある。
  • give someone the cold shoulderB2
    句(人に)冷たくする、そっけなくするAfter the argument, she gave me the cold shoulder for a week. 直訳は「冷たい肩を与える」。くだけた言い方。「シカトする」に近い。
  • ghostB2
    動詞(急に連絡を断って)相手との関係を終わらせるHe ghosted me after our second date. もとは名詞「幽霊」。おもにネット上のやりとりについて言う新しい用法。
  • deerA2
    名詞鹿We saw three deer in the park. 複数形も deer。three deers とは言わない。sheep や fish も同じ仲間。
  • mapleB1
    名詞カエデ、もみじThe maple leaves turn red in autumn. maple syrup(メープルシロップ)の maple。カナダの国旗の葉もこれ。
  • deckB1
    名詞(トランプなどの)札のひと組A deck of hanafuda cards has 48 cards. 主にアメリカ英語。イギリス英語では a pack of cards とも言う。
無視する「シカト」の語源は花札、と国語辞典にある。10月の「もみじに鹿」の10点札で、鹿がそっぽを向いている。ただし辞書も「〜という」と書くだけで、言い切ってはいない。英語なら give someone the cold shoulder。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. 精選版 日本国語大辞典「しかと」・デジタル大辞泉「しかと」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  2. デジタル大辞泉「猪鹿蝶」・精選版 日本国語大辞典「猪鹿蝶」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  3. 改訂新版 世界大百科事典「花札」(村井省三、平凡社)・デジタル大辞泉「花札」ほか(コトバンク掲載)kotobank.jp
  4. 精選版 日本国語大辞典「確と」・デジタル大辞泉「確と」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp

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