サーもセニョールもムッシュも、語源は同じ「年上の」。ローマの伝承では46歳を過ぎるとシニア

読む前に予想してみよう!
英語の sir とスペイン語の señor は、まったく別の語から生まれた
どちらもラテン語の senior(もっと年上の)から。sir は sire が短くなった形で、sire はラテン語 senior が変わった形にさかのぼる。
- 対象
- 英語・ラテン語の辞書の語源記述と古典の用例
- 規模
- 古代ローマ〜16世紀の用例
- 研究の種類
- 歴史言語学(辞書・文献の調査)
- 確かさ
- ★★★★☆
英語の sir、スペイン語の señor、フランス語の monsieur、イタリア語の signore は、どれもラテン語の senior(もっと年上の)から。ローマの伝承では、昔の王が兵を年齢で分け、46歳より上を seniores と呼んだという。
ひとことで言うとサーもセニョールもムッシュも、もとをたどるとラテン語の「もっと年上の」!
もくじ
イギリスのナイトの称号「サー(Sir)」。スペイン語の「セニョール(señor)」。フランス語の「ムッシュ(monsieur)」。日本のお店の「シニア割引」。
国も意味もばらばらに見えるこの4つ、どれもラテン語の senior(セニオル)=「もっと年上の」から生まれた言葉です。
しかもローマに伝わる話では、兵を年齢で分けたとき、46歳を過ぎると「シニア」の組でした。
01senior は「もっと年寄りの」
アメリカン・ヘリテージ英語辞典によると、英語の senior はラテン語から来た語で、senex(年をとった)の比較級です。Dictionary.com(ランダムハウス大辞典)は、sen(ex)「年寄りの、老人」に、比較級をつくる -ior がついた形だと説明しています。英語で言えば old に対する older。英語に入ったのは1350〜1400年ごろです。
では、ローマで「senior」と呼ばれたのは何歳からでしょう。
46歳を過ぎたら「シニア」。今の日本の感覚だと、まだ働き盛りです。ただし、セルウィウス王は伝承の中の王なので、この区分が実際にどこまでこの通りだったかは分かっていません。
02「年上の人」が「ご主人さま」になった
やがてラテン語の senior は「年上の人」から「目上の人、領主、ご主人さま」の意味へ移りました。アメリカン・ヘリテージ英語辞典は、中世のラテン語の senior を lord(領主、主人)と訳しています。この senior が、ヨーロッパ各地のことばに入っていきます。
- スペイン語 señor(セニョール):ラテン語 senior から
- イタリア語 signore(シニョーレ):中世ラテン語 senior(領主)から
- フランス語 seigneur(セニュール、領主):古フランス語 seignor から。同じ語が英語にも seignior として入った
- フランス語 monsieur(ムッシュ):mon(わたしの)+ sieur(ご主人さま)。直訳すると「わが主人」
英語の sir は、sire を強く読まないときの形から生まれました(Dictionary.com、初出1250〜1300年)。その sire は、古フランス語で「主人、領主」。もとをたどると、ラテン語の senior が変わった形にたどり着きます。
つまりナイトの「サー」も「セニョール」も「ムッシュ」も、もとをたどれば「年上の方」。

英語の「Mr. の複数形」にも、このフランス語が顔を出します。Mr. の複数形として使う Messrs.(メサーズ)は、アメリカン・ヘリテージ英語辞典によると Messieurs(ムッシュの複数形)の略。英語の Mr. 自体は master が変わった形なので、単数と複数でまったく別の語を使っていることになります。
03sire は、競走馬の「お父さん」
sir のもとになった sire は、今の英語でも生きています。アメリカン・ヘリテージ英語辞典では、意味の1番目が「父親」、2番目が「動物の父親、とくに家畜の父親」。家畜の血統を話すときなどに使う語です。
- The horse's sire won three big races.(その馬の父親は大レースを3つ勝った)
- 動詞にもなる:The stallion sired over 100 foals.(その種馬は100頭以上の子馬の父親になった)
一方で、昔の物語では王様への呼びかけにも使われました。Yes, Sire.(はい、陛下)。辞書では「古風な言い方」とされています。
04Senate は「長老の会」
アメリカ議会の上院 Senate も、同じ senex(年寄り)の仲間です。Dictionary.com は、ラテン語の senatus を「council of elders(長老の会)」と説明しています。
ルイス&ショートのラテン語辞典は、senatus の項でキケロの『老年について』を引いています。この本には、思慮・道理・判断力が老人(senes)になかったら、祖先は国の最高会議を senatus とは呼ばなかっただろう、という一節があります(本の中で語っているのは大カトーです)。元老院は、文字どおり「お年寄りの会議」でした。
同じ senex からは、ちょっと耳の痛い語も出ています。senile(老いて衰えた、もうろくした)です。
05おまけ:不機嫌な surly も sir から
sir の仲間には、悪い意味に転んだ語もあります。
- surly(不機嫌な、無愛想な):もとのつづりは sirly。sir + -ly で「ご主人さまのような=えらそうな、横柄な」(Dictionary.com、初出1560〜70年)。a surly waiter(無愛想なウェイター)
- sirrah(おい、こら):sir が変わった形。アメリカン・ヘリテージ英語辞典によると、相手を見下して呼ぶときに使った、今はすたれた呼びかけ
- seigniorage(通貨発行益):硬貨を造ることで得られるもうけ(材料の金属の値打ちと、硬貨の額面との差)。名前は seignior(領主)から
06どんでん返し:sir は「年上」だけでできていない
アメリカン・ヘリテージ英語辞典は、sire のもとになった、ローマの人々がふだん話していたラテン語(俗ラテン語)の形(*seior)について、ラテン語 senior が、maior(より大きい、より偉い)の影響を受けて変わった形だと書いています。maior は英語の mayor(市長) のもとになった語です。つまり sir には、「年上の」と「より偉い」の2つの比較級が混ざっている可能性があります。
それから、今の英語の senior は「高齢者」の意味でも使われます。同じ辞典の使い方の注によると、オックスフォード英語辞典(OED)は「年配の人」という意味の senior を15世紀までさかのぼっています。注はさらに、senior は昔から「知恵」「威厳」「目上の立場」といった、年を重ねることのよい面を感じさせてきた語で、いかにも作った言い方の senior citizen(高齢者)より、見下した感じになりにくいと書いています。
07まとめ
ナイトの「サー」も、スペインの「セニョール」も、パリの「ムッシュ」も、アメリカの上院も、シニア割引も。もとをたどると、ラテン語の「もっと年上の」というたった一語でした。
ちなみにローマに伝わる兵の区分なら、46歳を過ぎたら、あなたも立派な senior です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen a shop assistant says, "Can I help you, sir?", they are using a word whose roots mean "older." English…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
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"Sir" in English, "señor" in Spanish and "monsieur" in French look very different. But they all come from one Latin word, "senior." It meant "older." Roman writers say that long ago, the men in the army were put into two groups.
Men up to the age of 46 were the young group. Men over 46 were the "seniores," or the older group. Later, "senior" came to mean "lord" or "master," and people used it to speak politely to men.
79 words ・ CEFR A2
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英語の「sir」、スペイン語の「señor」、フランス語の「monsieur」は、見た目がまったくちがいます。でも、どれもラテン語の「senior」という一つの単語から来ています。それは「もっと年上の」という意味でした。ローマの書き手たちによると、昔、軍の男たちは2つのグループに分けられました。
46歳までの男たちは若いグループでした。46歳より上の男たちは「seniores」、つまり年上のグループでした。のちに「senior」は「領主」や「主人」という意味になり、人々は男性にていねいに話しかけるのにこの語を使うようになりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
sir・señor・monsieur がどれもラテン語の senior から来た話なので B。
Q2. In Rome, who were the "seniores"?
Men over 46 were the "seniores" とあるので C。
Q3. In the passage, what does "older" mean?
older は old の比較級で「もっと年をとった」。A。
When a shop assistant says, "Can I help you, sir?", they are using a word whose roots mean "older." English "sir" is a shortened form of "sire," which came from Old French and goes back to the Latin "senior." The same Latin word gave Spanish "señor," Italian "signore" and the French "seigneur," a lord. "Monsieur" is simply "mon" plus "sieur," or "my lord."
In the Middle Ages, "senior" had moved from "an older man" to "a lord or master." The Roman Senate also takes its name from "senex," the Latin word for an old man, and one dictionary describes it as a "council of elders." Even the unfriendly word "surly" belongs here. It was once spelled "sirly" and meant "acting like a lord."
123 words ・ CEFR B1
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店員が「Can I help you, sir?(いらっしゃいませ)」と言うとき、その人は「もっと年上の」という意味にさかのぼる単語を使っている。英語の「sir」は「sire」が短くなった形で、sire は古フランス語から来ており、ラテン語の「senior」にさかのぼる。同じラテン語から、スペイン語の「señor」、イタリア語の「signore」、そしてフランス語で領主を表す「seigneur」が生まれた。「monsieur」は単に「mon」に「sieur」を足したもので、「わたしのご主人さま」という意味だ。
中世には「senior」は「年上の男」から「領主、主人」へと意味を移していた。ローマの元老院(Senate)も、老人を表すラテン語「senex」から名前をとっており、ある辞書はそれを「長老の会」と説明している。無愛想な感じの単語「surly」もこの仲間だ。かつては「sirly」とつづり、「領主のようにふるまう」という意味だった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
sir・señor・signore・monsieur・Senate がラテン語の「年上」の語から来た話なので B。
Q2. What does "monsieur" literally mean, according to the passage?
"mon" plus "sieur," or "my lord." とあるので A。
Q3. Why does the writer mention "surly"?
Even the unfriendly word "surly" belongs here. とあり、同じ仲間でも悪い意味になった例として挙げているので B。
A knight called Sir Paul, a waiter calling out "Señor!" and a Paris shopkeeper saying "Monsieur" are all, in a sense, addressing someone as "older." The Latin "senior" was the comparative of "senex," meaning "old," and in early Rome the word could mark a clear age line. According to a source quoted by the writer Gellius, King Servius Tullius counted soldiers from 17 to 46 as "juniores" and those above that age as "seniores."
By the Middle Ages, "senior" had come to mean "lord," and it spread into Spanish "señor," Italian "signore" and French "seigneur." English "sir" took a slightly different route. It is a shortened form of "sire," which goes back to a Vulgar Latin form that, according to one dictionary, was influenced by "maior," meaning "greater," the word behind English "mayor."
So "sir" may carry two ideas at once: older and higher in rank. The Senate belongs to the same family, since the Romans named their highest council after old men. The less flattering "senile" comes from "senex" too, and "surly" began as "sirly," meaning "lordly" or "arrogant."
180 words ・ CEFR B2
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サー・ポールと呼ばれる騎士、「セニョール!」と声をかけるウェイター、「ムッシュ」と言うパリの店主は、みな、ある意味で相手を「年上の人」と呼んでいる。ラテン語の「senior」は「年をとった」を意味する「senex」の比較級で、初期のローマでは、この語がはっきりした年齢の線を表すこともあった。作家ゲッリウスが引く資料によると、セルウィウス・トゥッリウス王は17歳から46歳までの兵を「juniores」、それより上の年齢の兵を「seniores」と数えた。
中世までに「senior」は「領主」の意味になり、スペイン語の「señor」、イタリア語の「signore」、フランス語の「seigneur」へと広がった。英語の「sir」は少しちがう道をたどった。sir は「sire」の短くなった形で、sire は俗ラテン語の形にさかのぼる。
ある辞書によると、その形は英語の「mayor(市長)」のもとになった「より大きい」という意味の「maior」の影響を受けていた。つまり「sir」には、「年上」と「位が上」という2つの考えが同時にこめられているのかもしれない。元老院(Senate)も同じ仲間で、ローマ人は最高の会議を老人にちなんで名づけた。あまりうれしくない「senile(もうろくした)」も「senex」から来ており、「surly(無愛想な)」は「領主のような」「横柄な」という意味の「sirly」として始まった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
sir・señor・monsieur などがラテン語 senior から生まれた流れを説明しているので B。ローマの兵の区分はその一例。
Q2. According to the passage, which word may have influenced the form behind "sire"?
a Vulgar Latin form that ... was influenced by "maior" とあるので B。
Q3. What can be inferred about the word "sir"?
So "sir" may carry two ideas at once: older and higher in rank. から、年齢と地位の両方の意味が混ざっていると推測できるので C。
重要単語
- seniorB1形容詞・名詞年上の;上級の;(米)最上級生She is three years my senior.
be ... years one's senior で「〜歳年上だ」。反対語は junior。ラテン語 senex(年をとった)の比較級。 - sirA2名詞(男性への呼びかけ)お客さま、先生;(称号)サーExcuse me, sir, you dropped your wallet.
名前を知らない男性へのていねいな呼びかけ。女性には ma'am。称号のときは Sir Paul のように名前の前に。 - senateB2名詞上院;(古代ローマの)元老院The bill was passed by the Senate.
議員は senator。ラテン語 senatus(長老の会)から。 - surlyC1形容詞不機嫌な、無愛想なThe surly waiter didn't even look at us.
もとは sirly=sir+-ly(えらそうな)。発音は sir と同じ「サー」で始まる。 - sireC1名詞・動詞(動物の)父親;(動物の)父親になるThe horse's sire won three big races.
sir のもとの形。古い物語では王への呼びかけ Sire(陛下)としても使う。 - elderB2名詞・形容詞年長者、長老;年上のVillage elders met to settle the argument.
my elder sister のように家族の年上を言うときにも使う。Senate のもとの意味「長老の会」は council of elders。 - mayorB1名詞市長、町長The mayor opened the new library.
ラテン語 maior(より大きい、より偉い)から。sir のもとの形に影響した可能性がある語。
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ナイトの「サー」、スペイン語の「セニョール」、フランス語の「ムッシュ」。全部ラテン語の senior(もっと年上の)から来ています。ローマの伝承では、昔の王が兵を年齢で分け、46歳より上を「シニア(seniores)」と呼んだそうです。アメリカの上院 Senate も、語源は“長老の会”。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「sire」ahdictionary.com
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「senior」ahdictionary.com
- Dictionary.com(Random House Unabridged)「sir」「sire」dictionary.com
- Lewis & Short (1879) A Latin Dictionary「senex」(Perseus Digital Library, Tufts University)perseus.tufts.edu
- Lewis & Short (1879) A Latin Dictionary「senatus」(Perseus Digital Library, Tufts University)perseus.tufts.edu
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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