「秒」と「2番目」が英語で同じ second なのは、1時間を60で“2回”割るから

読む前に予想してみよう!
時間の「秒」を表す second は、「2番目」の second とは語源がまったく別の単語だ
中世ラテン語の pars minuta secunda(2番目の小さな部分)の略。60で2回目に割った部分なので「2番目」。
- 対象
- 英語・ラテン語・古英語の語源と時間の単位の歴史
- 規模
- 辞書3種+古英語辞典+米国国立標準技術研究所(NIST)の解説
- 研究の種類
- 辞書の語源記述と公的資料の照合
- 確かさ
- ★★★★☆
時間の second は、ラテン語の「2番目の小さな部分」の略。60で1回割ったのが minute(分)、もう1回割ったのが second(秒)。もとは角度の単位だった。
ひとことで言うと「秒」の second は、1時間を60で2回割った“2番目のかけら”だった!
もくじ
Wait a second.(ちょっと待って)。He came second.(彼は2位だった)。
英語の second には「秒」と「2番目」の意味があります。たまたま同じつづりになったわけではありません。秒は「2番目」だから second なのです。
何の2番目かというと、「60で割った小さなかけら」の2番目。1時間を60で1回割ったのが「1番目の小さな部分」= minute(分)。それをもう1回60で割ったのが「2番目の小さな部分」= second(秒)です。
01second(秒)の語源は「2番目の小さな部分」
アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)によると、時間の second は中世ラテン語の (pars minūta) secunda、「2番目の(小さな部分)」から来ています。minute のほうは (pars) minūta (prīma)、「1番目の小さな部分」です。
つまり英語の「分」は名前の中身が「小さい」、「秒」は「2番目」。分と秒は、長い名前の別々の部分を受けついだ兄弟です。
02もとは時計ではなく「角度」の単位だった
分と秒は、もともと時間の単位ではありませんでした。
アメリカの国立標準技術研究所(NIST)の解説によると、分と秒の考え方は時計ではなく天文学から生まれました。バビロニアやギリシャの天文学者は、空を360度に分けていました。そして紀元150年ごろ、ギリシャの天文学者プトレマイオスが著書『アルマゲスト』で、1度を60の「分」に、1分を60の「秒」に分けることを提案します。
この単位が時計に入ったのは、何百年もあとのことです。NIST によると、14世紀のヨーロッパの最初の機械時計は、1日に15分ほども狂いました。1500年代には秒針をつけた時計も出てきますが、その「秒」は正確ではありませんでした。1657年、オランダのホイヘンスが振り子時計を作らせると、まもなく、時間の単位と呼べる「秒」を刻む秒針が作られるようになります。
いまでも OALD の second(秒)の項には「角度をはかる単位。1分は60秒」という意味がのっています。日本語でも、地図の「北緯35度40分」のように、角度に「分」を使います。

03minute(分)と minute(ごく小さい)は、もとは同じラテン語
minute の「小さい」は、いまの英語にもそのまま残っています。
形容詞の minute は、発音が「マイニュート」に変わって、意味は「ごく小さい」「細かい」。OALD の例文に The kitchen on the boat is minute.(その船のキッチンはとても小さい)があります。in minute detail なら「こと細かに」。「分」のミニットと、つづりは1文字も違いません。
会議の minutes(議事録)も同じ minute です。OALD によると、もとは「小さな字で書いた下書き」という考えから来ています。
04漢字の「秒」も「ごく小さいもの」
漢字の「秒」も、名前のつけ方がよく似ています。
白川静の『字通』によると、「秒」は「禾(イネ)」+「少」。もとの意味は「のぎ」、つまりイネなどの穂の先にある細い毛です。とても細いものなので「かすか」「わずか」の意味になり、時間や角度の単位として「分の60分の1」を表すようになりました。
ラテン語の minute も漢字の「秒」も、「ごく小さいもの」から時間の単位の名前を作ったわけです。
052番目の second は「あとに続くもの」
では「2番目」の second は、もともと何だったのでしょう。
OALD によると、second はフランス語を通って英語に入った言葉で、もとはラテン語の secundus(あとに続く、2番目の)。これは sequi(ついて行く) と同じ根っこです。「1番目のあとについて来るもの」が「2番目」なのです。
AHD の巻末の「インド・ヨーロッパ語の語根」の表を見ると、同じ「ついて行く」の仲間に、身近な英単語がずらりと並んでいます。
- sequel(続編)・sequence(連続、順番)
- suit(スーツ)・suite(ホテルのスイートルーム)
- pursue(追いかける)
- society(社会)・social(社会の):ラテン語の socius(仲間)は、もとは「ついて来る人」
映画の続編もスーツも「社会」も、「2番目」の second と親戚です。
06古英語には second がなかった
英語の歴史をさかのぼると、もう1つ発見があります。1000年ほど前の古英語には、second という単語がありませんでした。
では「2番目」は何と言っていたのか。その1つが other の先祖、ōðer です。
古英語の辞書(ボズワース=トラー古英語辞典)を見ると、ōðer の意味に「順番の2番目、次の」がのっています。用例には、聖書のマタイによる福音書の7人兄弟の話に出てくる「1番目の者…、2番目の者、3番目の者」の「2番目」や、創世記の「2番目の川の名前」に ōðer を使った例が挙がっています。同じ辞書には、æfterra という語を「2番目の」の意味で使った例(se æfterra deáþ=2番目の死)ものっています。
second はそのあと、中英語の時代にフランス語から入ってきた外来語です(OALD)。AHD によると、first は古英語の fyrst、third は古英語の thridda から。first・second・third のうち、second だけがフランス語経由なのです。なぜ ōðer などが second に入れかわったのかは、今回確かめた辞書には書かれていませんでした。
07どんでん返し:いまの1秒は「60で割って」いない
「2番目に60で割った部分」という名前は残っていますが、いまの1秒は、もう時間を割って決めていません。
NIST によると、1960年まで1秒は「地球が1回自転する1日の86,400分の1」でした。ところが地球の自転の速さは少しずつ変わるので、秒の長さも一定になりません。そこで1960年に、地球が太陽のまわりを回る1年をもとにした定義に変わりました(1900年の1年の31,556,925.9747分の1)。
そして1967年、国際度量衡総会は、秒を、セシウム原子が出したり吸いこんだりする特定のマイクロ波が、9,192,631,770回振動する時間と決めなおしました。名前は「60の2回目」でも、中身は原子の振動の回数になったのです。
08まとめ
second(秒)は「2番目の小さな部分」、minute(分)は「1番目の小さな部分」。60で1回割ると分、2回割ると秒で、もとは天文学の角度の単位でした。「2番目」の second はラテン語の「ついて行く」から来ていて、sequel や suit や society と親戚です。
時計の秒針を見たら、その針は「2回目のかけら」を数えていると思ってみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe minute and the second did not start as units of time.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In English, "second" can mean "number two." It is also a short unit of time.
Why is it the same word? Long ago, people cut an hour into 60 small parts. They called one part the "first small part." That became "minute."
Then they cut a minute into 60 parts again. One of these was the "second small part." That became "second." So a second of time is really the second small part.
73 words ・ CEFR A2
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英語の「second」は「2番目」という意味になります。また、短い時間の単位でもあります。
どうして同じ単語なのでしょう。昔、人々は1時間を60の小さな部分に分けました。その1つを「1番目の小さな部分」と呼びました。それが「minute(分)」になりました。
次に、1分をもう一度60に分けました。その1つが「2番目の小さな部分」でした。それが「second(秒)」になりました。つまり、時間の秒は、本当に「2番目の小さな部分」なのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
second が「2番目」と「秒」の両方の意味を持つ理由の話なので B。
Q2. What did the "first small part" become?
They called one part the "first small part." That became "minute." とあるので C。
Q3. In the passage, what does "cut" mean in "people cut an hour into 60 small parts"?
ここでの cut A into B は「A を B に分ける」。1時間を60に分けた、という意味なので A。
The minute and the second did not start as units of time. They came from astronomy. Around the year 150, the Greek astronomer Ptolemy suggested dividing each degree of a circle into 60 parts, and each of those into 60 smaller parts. In medieval Latin, the first kind of part was called the "first small part," and the next was the "second small part."
English kept only one word from each name. From the first we got "minute," and from the second we got "second." The adjective "minute," pronounced "my-NOOT," keeps the old sense of "tiny." Clocks with second hands appeared in the 1500s, but they did not keep good time until after the first pendulum clock was built in 1657.
121 words ・ CEFR B1
和訳を見る
分と秒は、時間の単位として始まったわけではない。天文学から生まれたのだ。紀元150年ごろ、ギリシャの天文学者プトレマイオスは、円の1度を60の部分に分け、さらにその1つを60のもっと小さな部分に分けることを提案した。中世ラテン語では、最初の部分は「1番目の小さな部分」、次の部分は「2番目の小さな部分」と呼ばれた。
英語はそれぞれの名前から1語だけを残した。最初の名前からは「minute」が、2番目の名前からは「second」が生まれた。「マイニュート」と発音する形容詞の「minute」は、「ごく小さい」という昔の意味をいまも持っている。秒針のある時計は1500年代に登場したが、1657年に最初の振り子時計が作られるまでは、正確な時を刻めなかった。
4択リーディングクイズ
Q1. Where did the minute and the second first come from, according to the passage?
They came from astronomy. とあるので B。
Q2. What happened in 1657?
after the first pendulum clock was built in 1657 とあるので C。秒針つきの時計は1500年代。
Q3. What does the writer suggest by mentioning the adjective "minute"?
形容詞の minute が keeps the old sense of "tiny" とあり、「小さい」という意味がいまも生きていることを示しているので A。
Old English had no word "second." When speakers needed to say "number two," they could use "other," and a standard Old English dictionary gives examples such as the second of seven brothers in a Gospel story. "Second" arrived later through French. It is built on the Latin "secundus," meaning "following," which comes from the verb for "follow." That makes it a relative of "sequel," "sequence" and even "suit."
Of "first," "second" and "third," it is the only one English borrowed. The time unit took its own path. Medieval Latin called a sixtieth of a degree or an hour the "first small part" and a sixtieth of that the "second small part," and English cut these down to "minute" and "second." The name still describes a division by sixty, but the definition has moved on.
Until 1960 a second was officially one 86,400th of a day, and it was not perfectly stable because the Earth's spin varies a little. Since 1967 it has been defined by the cesium atom. A second is the time taken by 9,192,631,770 cycles of the microwave radiation that the atom absorbs and gives off.
188 words ・ CEFR B2
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古英語には「second」という語がなかった。「2番目」と言う必要があるとき、「other」を使うことができた。代表的な古英語辞典には、福音書の話に出てくる7人兄弟の2番目のような用例が挙がっている。「second」はあとになってフランス語を通って入ってきた。もとはラテン語の「secundus」(あとに続く)で、これは「ついて行く」という動詞から来ている。
そのため「sequel」や「sequence」、さらには「suit」の親戚でもある。「first」「second」「third」のうち、英語が借りてきたのは second だけだ。時間の単位は別の道をたどった。中世ラテン語では、角度や1時間の60分の1を「1番目の小さな部分」、さらにその60分の1を「2番目の小さな部分」と呼び、英語はこれを「minute」と「second」に縮めた。名前はいまも60で割ることを表しているが、定義はもう先へ進んでいる。
1960年まで、1秒は公式には1日の86,400分の1で、地球の自転がわずかに変わるため、完全には安定していなかった。1967年からは、セシウム原子で定義されている。1秒は、この原子が吸収したり出したりするマイクロ波の9,192,631,770回の振動にかかる時間だ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
「2番目」の second の歴史と、時間の単位の second がたどった道をそれぞれ説明しているので A。
Q2. How did Old English speakers say "number two"?
When speakers needed to say "number two," they could use "other," とあるので C。
Q3. According to the passage, why was the day-based second replaced?
it was not perfectly stable because the Earth's spin varies a little とあり、1日をもとにした秒が安定しなかったことが理由と読み取れるので B。
重要単語
- secondA2名詞秒;ちょっとの間I'll be with you in a second.
Wait a second. / Just a second.(ちょっと待って)でおなじみ。角度の「秒」にも使う。 - minuteC1形容詞ごく小さい;細かいShe described the room in minute detail.
発音は「マイニュート」。名詞の minute(ミニット、分)と同じラテン語 minūtus から。in minute detail で「こと細かに」。 - minutesB2名詞議事録Who is going to take the minutes today?
複数形で使う。take the minutes で「議事録をとる」。もとは「小さな字の下書き」。 - sequelB2名詞続編The sequel was even better than the first movie.
second と同じ「ついて行く」の仲間。「あとに続くもの」。 - degreeA2名詞(角度・温度の)度A right angle is 90 degrees.
1度=60分=3,600秒。分と秒はもともと角度の単位だった。 - secondsB1名詞(食べ物の)おかわりCan I have seconds, please?
複数形で使う。「2回目の分」の意味から。 - pendulumC1名詞振り子The pendulum swung slowly back and forth.
pendulum clock は「振り子時計」。1657年に最初のものが作られた。
公式・一次情報をチェック
- Second: Introduction(NIST)nist.gov
- 秒(普及版 字通、コトバンク)kotobank.jp
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時間の「秒(second)」と「2番目(second)」が同じ単語なのは、秒が「2番目の小さな部分」だから。1時間を60で1回割ると minute(小さな部分)、もう1回割ると second。しかも、もとは時計ではなく角度の単位だった。古英語(1000年ほど前の英語)には second という語がなく、2番目は other の先祖 ōðer などで表していた。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「second」「minute」・Appendix of Indo-European Roots「sekw-」ahdictionary.com
- Oxford Advanced Learner's Dictionary「second」「minute」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
- NIST「Second: The Past」(米国国立標準技術研究所)nist.gov
- NIST「Second: Introduction」(米国国立標準技術研究所)nist.gov
- Bosworth–Toller Anglo-Saxon Dictionary online「óðer」(カレル大学)bosworthtoller.com
- 白川静『普及版 字通』「秒」(平凡社、コトバンク掲載)kotobank.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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