本館「マジカ!?サイエンス」科学の雑学とニュースを論文でウラ取り読みに行く →
🌍 世界のことばホント

「ラテ」はイタリア語でただの「牛乳」、ピザの「ペパロニ」はイタリアではピーマン

「ラテ」はイタリア語でただの「牛乳」、ピザの「ペパロニ」はイタリアではピーマン

読む前に予想してみよう!

ピザにのせる辛いサラミ「ペパロニ」は、もともとイタリアの伝統的なサラミの名前だ

研究カード(どんな研究?)
対象
英語とイタリア語の辞書の語源欄
規模
辞書5種(Treccani・AHD・Oxford ほか)
研究の種類
語源調査(辞書)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

イタリア語で latte は「牛乳」、peperoni はピーマン。辛いサラミのペパロニは「イタリアでは知られていなかった」と米国の辞書は書く。紙吹雪の confetti は、イタリアでは結婚式のお菓子。

ひとことで言うと「ラテ」はイタリア語で「牛乳」、ピザの「ペパロニ」はイタリア語だと「ピーマン」なんだって!

もくじ
  1. 「ラテ」は「カフェ・ラッテ」の後ろ半分だった
  2. ペパロニは、イタリアでは「ピーマン」
  3. 紙吹雪の「コンフェッティ」は、イタリアでは結婚式のお菓子
  4. panini は「サンドイッチたち」
  5. どんでん返し:ペパロニの名前は「ピーマン」から?「唐辛子」から?
  6. まとめ

カフェで「ラテください」。日本でも毎日のように聞く注文です。

ところが、イタリア語の辞書を引くと latte(ラッテ)は、ただの「牛乳」。「ラッテ」とだけ言えば、言葉の上では「牛乳ください」です。

ピザの「ペパロニ」も同じです。イタリア語の peperoni(ペペローニ)は、ピーマンやパプリカのような野菜のこと。あの辛いサラミのペパロニは、イタリアでは知られていなかったタイプのサラミで、名前もアメリカのイタリア系の人たちがつけたと、アメリカの辞書は書いています。

01「ラテ」は「カフェ・ラッテ」の後ろ半分だった

イタリアの代表的な国語辞典『Treccani(トレッカーニ)』で latte を引くと、最初に出てくる意味は「哺乳類の乳腺から出る白い液体」。つまり、牛乳や母乳のことです。

では、カフェラテはイタリアにないのかというと、あります。同じ辞書には caffellatte(カッフェッラッテ)という語が載っていて、意味は「コーヒーと牛乳でつくる飲み物。たいてい朝食に飲む」。

英語の辞書もこれを裏づけています。アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)によると、英語の caffe latte はイタリア語の caffè (e) latte、つまり「コーヒー(と)牛乳」から来ていて、latte の1語だけで caffe latte のこととしています。オックスフォードの学習辞典も、latte の語源を「イタリア語で、文字どおりには『牛乳(のコーヒー)』」と説明しています。

英語は「コーヒー」の部分を落として、「牛乳」の部分だけを残したわけです。日本の「ラテ」も、この短い呼び方と同じ形です。

ラッテ・マッキアートを直訳すると「しみのついた牛乳」。白い牛乳に、コーヒーを数滴たらして「しみ」をつけた飲み物というわけです。

02ペパロニは、イタリアでは「ピーマン」

次はピザです。Treccani で peperone(ペペローネ)を引くと、トウガラシの仲間の植物と、その実のことだと書いてあります。実の形は細長いもの、丸いもの、角ばったものなど。色は緑・赤・オレンジがかった黄色・紫、味は辛いものから甘いものまで。料理の例には「フライパンで焼いたペペローニ」「オーブン焼き」「酢漬け」などが並びます。日本で言えば、ピーマンやパプリカです。peperoni は、その複数形です。

ではサラミのほうは? AHD の pepperoni の語源欄には、こうあります。

  • もとはアメリカのイタリア系の人たちの言葉
  • このスタイルのサラミは、イタリアでは知られていなかった
  • おそらくイタリア語の peperoni(ペペローネの複数形)を、英語の pepper(コショウ)につられて書きかえたもの

イタリア語は p が1つの peperoni、英語は p が2つの pepperoni。つづりの違いにも、英語の pepper の影がのぞいています。米国の辞書サイト Dictionary.com は、英語の pepperoni の最初の記録を1920〜25年ごろとしています。

ちなみに、イタリア語には「ペペローネみたいに赤くなる(rosso come un peperone)」という言い方もあります。Treccani によると、恥ずかしさや照れで顔が真っ赤になること。日本語の「ゆでダコみたい」に近い表現です。

イタリア語の peperoni は野菜のピーマン・パプリカ。辛いサラミの pepperoni はアメリカで生まれた呼び名(AHD)
イタリア語の peperoni は野菜のピーマン・パプリカ。辛いサラミの pepperoni はアメリカで生まれた呼び名(AHD)

03紙吹雪の「コンフェッティ」は、イタリアでは結婚式のお菓子

パーティーや結婚式でまく紙吹雪は、英語で confetti(コンフェッティ)。これもイタリア語から来た言葉ですが、イタリア語の意味はまったく別物です。

Treccani によると、confetto(コンフェット)はアーモンドなどを砂糖でくるんだ小さなお菓子。結婚式でよく使われ、友だちや招待客に配られます。そこから「コンフェッティはいつ食べられるの?(quando si mangiano i confetti?)」は、「2人はいつ結婚するの?」という意味になるそうです。

ではなぜ、英語ではそれが紙吹雪になったのか。オックスフォードの学習辞典によると、英語の confetti は19世紀初めの言葉で、もとはイタリアのカーニバル(お祭り)で投げた本物のお菓子、またはお菓子に見せかけたつぶのこと。AHD も「お祝いの席でお菓子を投げるイタリアの習慣から」と書いています。

では、イタリア語で紙吹雪は何と言うのか。答えは coriandoli(コリアンドリ)。Treccani で coriandolo を引くと、1つ目の意味はハーブのコリアンダー(パクチー)、2つ目は「コリアンダーの種を砂糖でくるんだお菓子」。3つ目に、カーニバルでふざけて人に投げる小さな石こうの玉と書かれ、いまはそれが軽い紙の小さな丸に置きかわった、とあります。

英語は「お菓子」の名前で、イタリア語は「コリアンダー」という植物の名前で、同じ紙吹雪を呼んでいるのです。

04panini は「サンドイッチたち」

イタリア語から英語に入った食べ物の名前には、イタリア語では複数形のものがたくさんあります。どれも AHD で確かめました。

  • panini(パニーニ):panino(パン+「小さい」を表す語尾)の複数形。AHD は「英語では単数として扱う」と書いています。英語の a panini は、イタリア語の感覚では「1つのサンドイッチたち」です
  • spaghetti(スパゲッティ):spago(ひも)に「小さい」をつけた形の複数形。つまり「小さなひもたち」
  • zucchini(ズッキーニ):zucca(ウリ・ヒョウタンの仲間)に「小さい」をつけた zucchino の複数形
  • paparazzi(パパラッチ):1人なら paparazzo。フェデリコ・フェリーニ監督の映画『甘い生活』(1960年)に出てくる、有名人を追いかけるカメラマンの名字です

biscotti(ビスコッティ)も複数形です。単数の biscotto は、中世のラテン語の「2度焼いた」から。AHD では英語の biscotti は「かたいイタリアのクッキーで、伝統的にアニスで香りをつけ、アーモンドなどが入ることが多い」。ところが Treccani では、biscotto は小麦粉・砂糖・油脂でつくる焼き菓子全般で、「紅茶用のビスケット」も「中に詰め物をしたもの」もみんな biscotti。英語は、イタリア語の「クッキー」をある1種類だけの名前にしたのです。

05どんでん返し:ペパロニの名前は「ピーマン」から?「唐辛子」から?

タイトルでは「ピーマン」と書きましたが、話はもう少し入り組んでいます。

Treccani を読むと、イタリア語の peperone は甘いピーマンだけの名前ではありません。辛い種類もふくむトウガラシの仲間全体の名前で、乾かして粉にすればパプリカやカイエンペッパーにもなります。小さく細長くてとても辛い種類は、「小さい」をつけた peperoncino(ペペロンチーノ)と呼びます。日本ではパスタの名前としておなじみの言葉です。

そのため、英語の辞書の説明も分かれています。AHD は「赤いピーマン、ピメント」、オックスフォードの学習辞典は「chilli(唐辛子)」、Dictionary.com は「カイエンペッパーの植物」。辛いサラミの名前が、甘いピーマンと辛い唐辛子のどちらを思い浮かべてつけられたのかは、今回調べた辞書からは分かりませんでした。

ただ、どの辞書も「イタリア語の peperone の複数形から」という点では一致しています。

06まとめ

ラテは「牛乳」、ペペローニは「ピーマン」、コンフェッティは「結婚式のお菓子」、パニーニは「サンドイッチたち」。イタリア語の言葉は、英語に入るときに一部を落としたり、意味を変えたり、複数形のまま使われたりしてきました。

英語はイタリア語の言葉を「借りる」たびに、少しずつ形や意味を変えてきたのです。今度ラテを頼むとき、「これ、イタリア語だとただの牛乳なんだよ」と話してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerEnglish has borrowed many food words from Italian, and some of them changed along the way. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

English has borrowed many food words from Italian, and some of them changed along the way. In an Italian dictionary, "latte" simply means milk. The breakfast drink of coffee and milk is "caffellatte," and English dropped the coffee part. "Peperoni" is the plural of "peperone," the name for bell peppers and other plants in the same family.

According to the American Heritage Dictionary, "pepperoni" was first used by Italian Americans for a style of sausage that was unknown in Italy. Confetti has its own story. In Italy, "confetti" are sugar-coated almonds or other nuts that are handed out at weddings. Italians call paper confetti "coriandoli," after a candy made with a coriander seed inside.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

英語はイタリア語から多くの食べ物の言葉を借りてきたが、その途中で変わったものもある。イタリア語の辞書では、「latte」は単に牛乳を意味する。コーヒーと牛乳でつくる朝食の飲み物は「caffellatte」で、英語はコーヒーの部分を落とした。「peperoni」は「peperone」の複数形で、ピーマンやその仲間の植物の名前だ。

アメリカン・ヘリテージ辞典によると、「pepperoni」はイタリアでは知られていなかったスタイルのソーセージを指して、イタリア系アメリカ人が使い始めた言葉だった。紙吹雪にも独自の話がある。イタリアでは「confetti」は、結婚式で配られる、アーモンドなどのナッツを砂糖でくるんだものだ。イタリア人は紙吹雪を「coriandoli」と呼ぶが、これは中にコリアンダーの種が入ったお菓子にちなんだ名前だ。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. According to the American Heritage Dictionary, who first used the word "pepperoni"?

Q3. What can we guess from the part about confetti?

重要単語

  • latteA2
    名詞カフェラテ(イタリア語では「牛乳」)I'd like a large latte with oat milk, please. 英語の発音は「ラーテイ」に近い。イタリア語 caffè latte の後ろ半分だけが残った語。
  • bell pepperB1
    名詞ピーマン、パプリカCan you cut up a red bell pepper for the salad? 英国では単に pepper とも言う(Oxford Learner's)。辛いものは chili (pepper)。
  • sausageA2
    名詞ソーセージ、腸詰めPepperoni is a kind of spicy sausage. 発音は「ソーシッジ」に近い。salami や pepperoni も sausage の一種。
  • pluralB1
    名詞・形容詞複数形(の)"Panini" is the plural of "panino" in Italian. 反対語は singular(単数)。the plural of 〜「〜の複数形」。
  • confettiB2
    名詞紙吹雪The kids threw confetti when the bride and groom came out. 数えない名詞なので a confetti とは言わない。イタリア語では「砂糖がけのお菓子」。
  • borrowA2
    動詞借りる;(言葉を)取り入れるEnglish borrowed many food words from Italian. 借用語は loanword または borrowing。borrow A from B「B から A を借りる」。
  • sugar-coatedB2
    形容詞砂糖でくるんだThe guests each got a bag of sugar-coated almonds. 比喩で「うわべだけよく見せた」の意味にも。a sugar-coated message「耳ざわりよく包んだ話」。
カフェの「ラテ」、イタリア語の latte はただの「牛乳」。ピザのペパロニも、イタリア語の peperoni はピーマンやパプリカ。辛いサラミのペパロニは、イタリアでは知られていなかったタイプだと米国の辞書は書いている。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Vocabolario Treccani「latte」「caffellatte」(Istituto della Enciclopedia Italiana)treccani.it
  2. Vocabolario Treccani「peperone」(Istituto della Enciclopedia Italiana)treccani.it
  3. American Heritage Dictionary, 5th ed.「pepperoni」「panini」「spaghetti」「zucchini」「paparazzo」ahdictionary.com
  4. Vocabolario Treccani「confetto」「coriandolo」(Istituto della Enciclopedia Italiana)treccani.it
  5. Oxford Learner's Dictionaries「confetti」「pepperoni」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com

本館

マジカ!?サイエンスで読む、ことばの研究

論文でウラ取りした科学の「マジか!?」。言語・脳・学習の研究も

マジカ!?サイエンスのトップへ →