イギリス一長い地名(58文字)は、観光客を呼ぶために引きのばされた名前だった

読む前に予想してみよう!
ウェールズの58文字の村の名前は、中世から続く由緒ある正式名だ
NASA やウェールズ政府観光局によると、長い名前は1860年代に観光客を呼ぶために作られた。もとの名前は Llanfairpwllgwyngyll。
- 対象
- 公的機関の解説(NASA・ウェールズ政府観光局)と英語辞書の語源欄
- 規模
- 1860年代の改名と、ウェールズ語から英語に入った語
- 研究の種類
- 地名・語源の文献調査
- 確かさ
- ★★★☆☆
ウェールズの村の58文字の名前は、昔からの地名ではない。NASA やウェールズ政府観光局によると、1860年代に観光客を呼び、駅名をイギリス一長くするために引きのばされた。地元の人はふだん Llanfairpwll などと短く呼ぶ。
ひとことで言うとイギリス一長い村の名前は、観光客を呼ぶために、わざと長くしたものだった!
もくじ
Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch
キーボードの打ち間違いではありません。イギリス・ウェールズの本土の沖にあるアングルシー島の、南東の岸辺にある村の名前です。カタカナで書くと「スランヴァイル…ゴゴゴホ」のようになります。全部で 58文字。イギリスで一番長い地名です。
ところがこの名前、昔からの由緒ある地名ではありません。NASA やウェールズ政府観光局の解説によると、1860年代に「駅の名前をイギリス一長くして、観光客を呼ぼう」と、わざと引きのばした名前なのです。
01もとの名前は Llanfairpwllgwyngyll だった
もとの名前 Llanfairpwllgwyngyll も20文字あって、十分に長い名前です。そこに、近くの地形や教会の説明を、ずらずらと足していったわけです。
ウェールズ政府観光局のページには、こんな一言もあります。この作戦は「今も効いている」。駅の看板の前で自撮りをしに来る人の多さを見れば分かる、というのです。150年以上前の村おこしが、SNS の時代にもまだ人を呼んでいます。
0258文字の中身は「〇〇の近くの〇〇の教会」
長い名前の意味は、ウェールズ政府観光局の英訳ではこうなっています(NASA の英訳もほぼ同じ)。
St Mary's Church in the hollow of the white hazel near the rapid whirlpool and the Church of St Tysilio of the red cave
日本語にすると「白いハシバミのくぼ地にある聖マリア教会、速いうず潮の近く、そして赤い洞窟の聖ティシリオ教会」。名前というより、道案内です。
NASA の解説によると、ウェールズには、教会や近くの地形から町の名前をつける伝統があります。名前の中の「速いうず潮」は、村の前を流れるメナイ海峡のうち、メナイ吊り橋とブリタニア橋のあいだにある スウェリーズ(the Swellies) という難所のことだろう、と NASA は書いています。海の底の地形が複雑で、潮が海峡の両側から時間をずらして入ってくるため、強いうずができる場所です。

駅の看板には、発音どおりのつづりで読み方が書きそえてあります(Visit Wales)。ウェールズ政府観光局は、「ウェールズの学校に通う子ならだれでも知っているとおり」駅の名前は村の名前より少し長い、とおどけて書き、この名前を有名な tongue twister(早口言葉) と呼んでいます。
03ウェールズ語の「ll」が、英語で「fl」になった例
この名前には、Llanfair、pwll、llantysilio のように ll がくり返し出てきます。英語の辞書を見ると、ウェールズ語の ll で始まる語が、英語では fl で始まる形になった例があります(Lloyd のように ll のまま英語に入った名前もあるので、いつもそうなるわけではありません)。
- flummery(フラマリー):「たわごと、おべっか」、または甘くてやわらかいデザート。ウェールズ語の llymru(すっぱいオートミールから作るやわらかいゼリー)から(AHD・Dictionary.com)。つづりを比べると、ll が fl になっています
- Floyd(フロイド):英語の男性の名前。Dictionary.com では Lloyd(ロイド)の別の形。Lloyd はウェールズ語の「灰色」を意味する語から来ています。ロイドさんとフロイドさんは、もとは同じ名前なのです
ほかにも、ウェールズ語から英語に入ったとされる身近な語があります。
- penguin(ペンギン):Dictionary.com では「語源ははっきりしない。ウェールズ語の pen gwyn(白い頭)かもしれない」。もとはオオウミガラスという別の鳥の、冬の羽毛の姿を指した名前で、あとで南半球のペンギンに名前が移ったという説明です。AHD によると gwyn(gwynn)は「白い」。村の名前の gwyngyll(英訳では white hazel=白いハシバミ)にも、この gwyn が入っています
- cwm(クーム):谷の上のほうにできる、急な斜面に囲まれたおわん形のくぼ地(英語の cirque と同じ)。ウェールズ語で「谷」(AHD)。a・e・i・o・u を1つも使わない、英語の辞書では珍しいつづりです
04どんでん返し:名付け親は分からないし、世界一でもない
長い名前を考えたのは誰なのか。仕立屋だった、靴屋だった、という話も見かけますが、今回確かめた公的な資料では「地元の住人」(NASA)、「19世紀のいたずら好き」(Visit Wales)とあるだけで、名前は分かりませんでした。
それに、58文字でも世界一ではありません。NASA の記事によると、ギネス世界記録ではタイの首都バンコクの長い正式名(儀式で使う名前)が168文字で、こちらのほうがずっと長いのです。ギネス世界記録のページでも、バンコクの正式名をローマ字に書き直すと168文字だとして、「一番長い地名」の記録にしています。NASA は、ウェールズの村の名前を「ヨーロッパで一番長い1語の地名と言われる」と書いています。
そして、地元の人がこの長い名前を毎日フルで言っているわけでもありません。ふだんは Llanfairpwll か Llanfair PG。58文字の名前は、半分は村の看板として生きているのです。
05まとめ
イギリスで一番長い58文字の地名は、1860年代の「村おこしのアイデア」から生まれたとされます。駅の看板をイギリス一長くして、観光客を呼ぶ。その作戦は、150年たった今も効いています。
英語の flummery や Floyd にも、ウェールズ語の ll の名残があります。長い名前を見かけたら、ことばの向こうにいる「仕掛け人」を想像してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAccording to NASA, a village on the island of Anglesey in Wales had a plan in the 1860s to bring in visitors.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Can you read Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch? It has 58 letters. It is the name of a village in Wales, the longest place name in Britain.
But the long name is not old. NASA says that in the 1860s, a local person made the name longer. The village wanted more visitors, and a long name for the train station seemed like a good idea. People still come to take photos of the sign. Locals use a short name, Llanfair PG.
77 words ・ CEFR A2
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Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch が読めますか?58文字あります。これはウェールズの村の名前で、イギリスで一番長い地名です。
でも、この長い名前は古くありません。NASA によると、1860年代に、地元の人が名前を長くしました。村はもっと観光客に来てほしかったので、駅にとても長い名前をつけるのはいい考えに思えたのです。今でも人々が看板の写真を撮りに来ます。地元の人は Llanfair PG という短い名前を使います。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
観光客を呼ぶために村の名前を長くした話なので A。
Q2. When did a local person make the name longer?
NASA says that in the 1860s, a local person made the name longer. とあるので C。
Q3. In the passage, what does "visitors" mean?
The village wanted more visitors とあり、写真を撮りに来る人たちの話なので、visitors は「訪れる人」。B。
According to NASA, a village on the island of Anglesey in Wales had a plan in the 1860s to bring in visitors. Its name, Llanfairpwllgwyngyll, was already long. Someone in the village pushed for an even longer version, so that the railway station would have the longest name in Britain. The result had 58 letters.
In English, it means something like "St Mary's Church in the hollow of the white hazel near the rapid whirlpool and the Church of St Tysilio of the red cave." The plan worked. Wales's tourism board says many people still come to take selfies with the station sign. The people who live there, though, usually call it Llanfairpwll or Llanfair PG.
116 words ・ CEFR B1
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NASA によると、1860年代、ウェールズのアングルシー島にある村に、観光客を呼びこむ計画があった。村の名前 Llanfairpwllgwyngyll は、すでに長かった。村のある人が、駅がイギリスで一番長い名前を持てるように、さらに長い形を推した。その結果、58文字になった。
英語では「白いハシバミのくぼ地にある聖マリア教会、速いうず潮の近く、そして赤い洞窟の聖ティシリオ教会」のような意味だ。計画はうまくいった。ウェールズの観光局によると、今も多くの人が駅の看板と自撮りをしに来る。それでも、そこに住む人たちはふだん Llanfairpwll や Llanfair PG と呼んでいる。
4択リーディングクイズ
Q1. Why was the name made longer?
a plan to bring in visitors、so that the railway station would have the longest name in Britain とあるので B。
Q2. What was the village called before the change?
Its name, Llanfairpwllgwyngyll, was already long. とあるので C。
Q3. What does the writer suggest by saying "The plan worked"?
直後に many people still come to take selfies with the station sign とあり、今も観光客を呼んでいるという意味なので A。
Visitors to a small village on Anglesey often stop at the railway station for one reason: the sign. It spells out Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch, a 58-letter name that Wales's tourism board calls a publicity stunt from the 1860s. The village had been known as Llanfairpwllgwyngyll, and a local resident pushed for the longer form to draw tourists and give the station the longest name in Britain. Nobody seems to know who that person was.
Stories about a tailor or a cobbler get passed around, but official accounts mention only "a local resident" or "a 19th century joker." The name works like a set of directions, describing churches, a hollow of white hazel and a rapid whirlpool, which NASA links to a dangerous stretch of the Menai Strait called the Swellies. It is not the longest place name in the world, though.
Guinness gives the record to the full official name of Bangkok, which has 168 letters in the Roman alphabet. Welsh has also left smaller marks on English. The word "flummery" comes from the Welsh "llymru," and the name Floyd is a form of Lloyd, so a Welsh "ll" sometimes became "fl" in English.
192 words ・ CEFR B2
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アングルシー島の小さな村を訪れる人は、たいていひとつの理由で駅に立ち寄る。看板だ。そこには Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch とつづられている。ウェールズの観光局が1860年代の話題づくりだと呼ぶ、58文字の名前だ。村はそれまで Llanfairpwllgwyngyll として知られていたが、地元の住人が、観光客を呼び、駅にイギリスで一番長い名前をつけるために、長い形を推した。その人物がだれなのかは、分かっていないようだ。
仕立屋や靴屋だったという話も伝わっているが、公的な説明には「地元の住人」や「19世紀のいたずら好き」としか書かれていない。この名前は道案内のように、教会や、白いハシバミのくぼ地や、速いうず潮を説明している。NASA はそのうず潮を、メナイ海峡のスウェリーズと呼ばれる危険な場所と結びつけている。とはいえ、これは世界で一番長い地名ではない。
ギネスは、ローマ字で書くと168文字になるバンコクの正式名に記録を認めている。ウェールズ語は英語にも小さな跡を残してきた。「flummery」という語はウェールズ語の「llymru」から来ており、Floyd という名前は Lloyd の別の形だ。つまりウェールズ語の「ll」は、英語で「fl」になることがあった。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the passage, what is known about the person who made the name longer?
Nobody seems to know who that person was. official accounts mention only "a local resident" or "a 19th century joker." とあるので C。仕立屋の話は stories にすぎない。
Q2. Which place name does the passage say is longer?
Guinness gives the record to the full official name of Bangkok, which has 168 letters とあるので B。
Q3. What can be inferred from the examples "flummery" and "Floyd"?
so a Welsh "ll" sometimes became "fl" in English とあり、llymru→flummery、Lloyd→Floyd の例から A と推測できる。
重要単語
- publicity stuntC1名詞注目を集めるための作戦、話題づくりThe long name began as a publicity stunt.
stunt は「離れ業、目立つための行動」。stuntman(スタントマン)の stunt と同じ。 - tongue twisterB2名詞早口言葉、言いにくい言葉The village name is a famous tongue twister.
twist(ねじる)+-er。舌がねじれるほど言いにくい、というイメージ。 - touristA2名詞観光客Tourists still take photos of the station sign.
tour(旅行)+-ist(人)。tourism は「観光業」。 - whirlpoolC1名詞うず潮、うずThe name mentions a rapid whirlpool.
whirl(ぐるぐる回る)+pool(水たまり)。ジェットバスの意味でも使う。 - hazelC1名詞ハシバミ(の木);薄茶色Hazel trees grow along the river.
その実が hazelnut(ヘーゼルナッツ)。hazel eyes は「薄茶色の目」。 - flummeryC2名詞たわごと、おべっか;甘いデザートAll that praise was just flummery.
ウェールズ語 llymru(やわらかいゼリー)から。つづりを比べると ll が fl になっている。 - residentB1名詞住民、居住者A local resident pushed for the longer name.
reside(住む)+-ent(人)。local resident「地元の住民」はセットでよく使う。
公式・一次情報をチェック
- A Little Town With a Long Name(NASA Earth Observatory)science.nasa.gov
- Unusual places to visit along The North Wales Way(Visit Wales)visitwales.com
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イギリスで一番長い地名、ウェールズの Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch(58文字)。じつは「駅名をイギリス一長くして観光客を呼ぼう」と引きのばした名前(ウェールズ政府観光局によると1860年代)。地元の人はふだん Llanfairpwll と短く呼んでいる。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- Voiland (2026) A Little Town With a Long Name, NASA Earth Observatory(Image of the Day, 2026年3月5日)science.nasa.gov
- Visit Wales(ウェールズ政府観光局)Unusual places to visit along The North Wales Wayvisitwales.com
- Visit Wales(ウェールズ政府観光局)Welsh myths and legends・Unique buildings in Walesvisitwales.com
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「penguin」「flummery」「cwm」ahdictionary.com
- Dictionary.com「penguin」「flummery」「Lloyd」「Floyd」dictionary.com
- Guinness World Records「Longest place name」guinnessworldrecords.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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