「カナダ」の語源は「村」が有力。1つの村の呼び名が、やがて国の名前に

読む前に予想してみよう!
「カナダ」はスペイン語の「ここには何もない(aca nada)」が国名になった
18世紀の本にも載っている有名な話だが、根拠はない。カナダ政府は、先住民の言葉 kanata(村・集落)から来た可能性が高いとしている。
- 対象
- 探検記・辞書・政府の地名資料
- 規模
- カルティエの航海記(1535〜36年)ほか4資料
- 研究の種類
- 文献調査(一次資料と辞書の照合)
- 確かさ
- ★★★★☆
「カナダ」は先住民の言葉 kanata(村)から来たとみられる。1535年、村への道を聞いた探検家カルティエが、その語を広い土地の名前に使った。
ひとことで言うと「カナダ」って、もとは「村」っていう意味の言葉だったらしいよ!
もくじ
「カナダ」という国名は、もとは「村」を表す言葉だったとみられています。
1530年代、フランスの探検家ジャック・カルティエは、今のカナダで出会った人々の言葉を書きとめて、小さな単語帳を作りました。数の数え方、体の部分、食べ物。その中に、こんな1行があります。
「町のことを、彼らは Canada と呼ぶ」
だれもが知っている国の名前が、探検家の単語帳では「町」を表すふつうの言葉として出てくるのです。
011535年、「カナタへの道はこっち」
カナダ政府(カナダ文化遺産省)の説明によると、話はこうです。
1535年、先住民の2人の若者が、カルティエに「kanata への道」を教えました。kanata は、先住民ヒューロン・イロコイの人々の言葉で「村」「集落」という意味。2人が指していたのは、今のケベック・シティのある場所にあったスタダコナという1つの村でした。
ところがカルティエは、ほかに呼び名がなかったので、「Canada」をその村だけでなく、村の長ドナコナが治めていたまわりの土地全体の名前として使いました。英訳された航海記でも、ドナコナは「Canada の領主(the lord of Canada)」と書かれています。
たとえるなら、外国の人に「ムラはあっち」と教えたら、その人が地図の広い範囲に「ムラ」と書きこんでしまったようなものです。
1つの村の呼び名が、川の名前になり、地方の名前になり、最後は国の名前になった。1535年から1867年まで、約330年かけて呼び名がどんどん広がっていったのです。

02消えた国名候補「エフィスガ」と「トゥポニア」
1867年に1つの国としてまとまる前、新しい国の名前にはたくさんの案が出ていました。カナダ政府のページに並んでいる候補はこうです。
- Albertsland、Borealia(北の国)、Britannia、Cabotia、Colonia、Hochelaga、Norland、Superior、Transatlantia、Victorialand など
- Efisga(エフィスガ):England、France、Ireland、Scotland、Germany、Aboriginal lands(先住民の土地)の頭文字をつないだ名前
- Tuponia(トゥポニア):The United Provinces of North America(北アメリカ連合州)の頭文字から作った名前
もし Efisga に決まっていたら、今ごろ「エフィスガのメープルシロップ」と呼んでいたかもしれません。
この名前さがしを笑い飛ばしたのが、政治家のトマス・ダーシー・マッギーです。1865年2月9日の演説で、こう問いかけました。ある朝目が覚めたら、カナダ人ではなく「トゥポニア人」や「ホシュラガンダー」になっていたら、議員のみなさんはどんな気持ちになりますか、と。結局、名前は Canada のまま残りました。
03俗説:「ここには何もない」「ビールは1日1杯」
「カナダ」の語源には、ほかにも有名な話があります。ブリティッシュコロンビア大学の『カナダ英語歴史辞典』(DCHP)は、「カナダの語源は、決してはっきりしてはいない。この300年でたくさんの説が出たが、ほとんどは空想的だ」と書いたうえで、昔の文献にのった説を並べています。
- 1754年の本:カルティエより先に来たスペイン人が、金が見つからずに「Aca nada(ここには何もない)」とくり返した。それを先住民がまねして言ったので、フランス人が国の名前だと思った
- 1791年の本(1698年の本の引用):スペイン人がこの土地を「Capa di Nada(何もない岬)」と呼んだ
- 1789年の雑誌:ムッシュー・カーヌという人の名前から来た
- 1811年の新聞:入植したフランス人は、役人からトウヒのビールを1日に1杯(a can)しか配ってもらえず、いつも「can a day(1日1杯)」とぼやいていた
最後の「ビール説」は、1811年6月11日の、キングストン(今のオンタリオ州)の新聞にのったものです。記事には「これ以上まともな語源を求めるのは、読者として心が狭い」とも書かれていて、どこまで本気だったのかは分かりません。
04州の名前も、先住民の言葉だらけ
カナダは、州や準州の名前にも先住民の言葉がたくさん残っています。カナダ天然資源省の地名の説明から拾ってみます。
- Quebec(ケベック):アルゴンキン語で「狭い水路、海峡」。セントローレンス川の幅が狭くなる場所を指していた
- Ontario(オンタリオ):イロコイ語の kanadario、「きらきら光る水」。Ontario という名前は1641年に記録がある
- Saskatchewan(サスカチュワン):クリー語で「流れの速い川」
- Yukon(ユーコン):おそらく「大きな川」
- Nunavut(ヌナブト):イヌイットの言葉イヌクティトゥット語で「私たちの土地」。1999年に生まれた準州
国の名前はおそらく「村」、準州の名前は「私たちの土地」。どちらも、そこに住んでいた人たちにとっては、ごくふつうの言葉でした。
05おまけ:地図の「?」から生まれたとされる地名
「呼び名の勘ちがい」から生まれた地名は、すぐ近くのアメリカ・アラスカ州にもあります。
アラスカ西部の町ノーム(Nome)。1900年の夏には、金を探す人が押し寄せて3万人もいた、ゴールドラッシュの町です。1898年、この町の始まりとなった金鉱の区域は「Cape Nome 鉱区」と名づけられました。Cape Nome は、町の南東約19kmにある岬の名前です。この岬の名前について、アメリカ地質調査所の『アラスカ地名辞典』(1967年)は、次の説明が一般的だとしています。
1850〜52年ごろ、イギリス海軍の船の上で作った手書きの海図に、名前の分からない岬があり、「? name(名前は?)」とメモされていた。ところが海軍本部の製図係が、「?」を「C」(Cape=岬の略)と読み、「a」を「o」と読んでしまった。こうして「C. Nome」が生まれた――というのです。1900年にイギリス海軍本部の主任製図官が示した説明だそうです。
同じ辞典には、1924年にアメリカ地質調査所の調査隊が「がっかりしたから」と名づけた湖、Noluck Lake(ノーラック湖=ついてない湖)ものっています。
06どんでん返し:「村」説も100%ではない
ここまで「カナダ=村」と書いてきましたが、カナダ政府のページも天然資源省のページも、「kanata から来た可能性が高い(likely)」という言い方をしています。『カナダ英語歴史辞典』が書くとおり、語源は「はっきりしてはいない」のです。
それでも「村」説が有力なのは、カルティエ本人の単語帳に「町のことを Canada と呼ぶ」と書かれていて、航海記の中でも村や土地の名前として使われているからです。昔の人がでっち上げた「何もない」説や「ビール」説とちがって、本人の書いた記録という手がかりがあります。
07まとめ
「カナダ」は、もとは「村」を表す言葉だったとみられます。1535年に2人の若者が道案内で口にした言葉を、探検家が広い土地の名前に使い、それが300年以上かけて国の名前になりました。
国名の候補には Efisga や Tuponia もありましたが、残ったのは、そこに住む人々の「村」という言葉。地図の上の大きな名前の中に、小さな村の暮らしが残っているわけです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1535, two young Indigenous men gave the French explorer Jacques Cartier directions to "kanata." In their…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
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The name "Canada" probably comes from a word that meant "village." In 1535, a French explorer named Jacques Cartier was sailing up a big river. Two young local men told him the way to "kanata." They were talking about one village.
But Cartier used the word for the whole area around it. Later, maps used the name for a much bigger place. In 1867, it became the name of a new country.
72 words ・ CEFR A2
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「カナダ」という名前は、おそらく「村」を意味する言葉から来ています。1535年、ジャック・カルティエという名前のフランスの探検家が、大きな川をさかのぼっていました。地元の2人の若者が、彼に「カナタ」への道を教えました。2人が話していたのは、1つの村のことでした。
でもカルティエは、その言葉をまわりの地域全体に使いました。のちに、地図はその名前をもっと広い場所に使いました。1867年、それは新しい国の名前になりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「村」を意味する kanata が、地域の名前になり、1867年に国の名前になった流れを書いているので A。
Q2. When did the two young men tell Cartier the way to "kanata"?
In 1535 ... Two young local men told him the way to "kanata." とあるので B。1867年は国の名前になった年。
Q3. In the passage, what is a "village"?
village は「村」。人が住む小さな集まりのことなので C。
In 1535, two young Indigenous men gave the French explorer Jacques Cartier directions to "kanata." In their language, the word meant "village," and they were talking about Stadacona, a village on the spot where Quebec City stands today. Cartier had no other name for the area, so he used "Canada" for the village and for all the land its chief ruled.
By 1547, maps were labeling everything north of the St. Lawrence River as Canada. Before the country was formed in 1867, people suggested other names. One was "Efisga," made from the first letters of England, France, Ireland, Scotland, Germany and "Aboriginal lands." Another was "Tuponia." In the end, the old name stayed.
113 words ・ CEFR B1
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1535年、先住民の2人の若者が、フランスの探検家ジャック・カルティエに「カナタ」への道を教えた。彼らの言葉でその語は「村」を意味し、2人が話していたのは、今ケベック・シティがある場所にあったスタダコナという村のことだった。カルティエはその地域を呼ぶほかの名前を持っていなかったので、「カナダ」を、その村と、村の長が治めていた土地全体に使った。
1547年までには、地図はセントローレンス川より北をすべてカナダと書くようになっていた。1867年に国ができる前には、人々はほかの名前も提案した。その1つは、イングランド、フランス、アイルランド、スコットランド、ドイツ、「先住民の土地」の頭文字から作った「エフィスガ」だった。「トゥポニア」という案もあった。結局、昔からの名前が残った。
4択リーディングクイズ
Q1. What was Stadacona?
Stadacona, a village on the spot where Quebec City stands today とあるので B。
Q2. How was the name "Efisga" made?
made from the first letters of England, France, Ireland, Scotland, Germany and "Aboriginal lands" とあるので C。
Q3. What does the passage suggest about Cartier's use of the word?
2人は1つの村の話をしていたのに、カルティエは村と土地全体に使ったので、本来より広い範囲に使ったと言える。A。
Near the end of his account of the 1535–36 voyage, Jacques Cartier added a short list of local words: numbers, parts of the body, kinds of food. One line reads, in English translation, "They call a town Canada." That fits the explanation the Canadian government gives today.
Two young guides told Cartier the way to "kanata," meaning a village, and he went on to use the word for a whole region. Other stories have been passed around for centuries. One says Spanish sailors found no gold and kept saying "aca nada," or "nothing here."
In 1811, a newspaper joked that French settlers, allowed only one can of spruce beer a day, kept grumbling "can a day." A historical dictionary of Canadian English calls most of these ideas fanciful.
But it also admits that the origin of the name is not firmly established, and the government itself says "likely." Maps can create names by accident, too. The name of Cape Nome in Alaska is usually traced to a note reading "? name" on a hand-drawn chart. A draftsman took the question mark for a "C."
184 words ・ CEFR B2
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1535〜36年の航海の記録の終わり近くに、ジャック・カルティエは土地の言葉の短いリストを付けた。数、体の部分、食べ物の種類などだ。その1行は、英訳で「彼らは町を Canada と呼ぶ」となっている。これは、今日カナダ政府がしている説明と合う。
2人の若い案内人がカルティエに、村を意味する「カナタ」への道を教え、彼はその後、その語を地域全体に使った。何百年ものあいだ、ほかの話も伝えられてきた。ある話では、スペインの船乗りが金を見つけられず、「アカ・ナダ」、つまり「ここには何もない」と言い続けたという。
1811年には、ある新聞が、トウヒのビールを1日に1杯(a can)しか許されなかったフランス人入植者が「キャン・ア・デイ(1日1杯)」とぼやき続けた、と冗談を書いた。カナダ英語の歴史辞典は、これらの説のほとんどを空想的だとしている。しかしその辞典も、名前の由来が確定しているわけではないと認めており、政府自身も「可能性が高い」という言い方をしている。
地図が偶然に名前を生むこともある。アラスカのノーム岬という名前は、ふつう、手描きの海図にあった「?name(名前は?)」というメモにさかのぼるとされる。製図係が、その疑問符を「C」と読みちがえたのだ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
カルティエの単語帳と政府の説明から「村」説を示し、ほかの話は辞典が空想的としている、という流れなので B。
Q2. According to the 1811 newspaper joke, why did settlers say "can a day"?
French settlers, allowed only one can of spruce beer a day, kept grumbling "can a day" とあるので C。
Q3. Why does the writer mention Cartier's list of local words?
単語帳の "They call a town Canada." が政府の説明と合う、と述べているので、本人の記録が「村」説の裏付けになることを示すため。A。
重要単語
- villageA2名詞村My grandmother lives in a small village by the river.
town(町)より小さい。kanata の英訳に使われる語。発音は「ヴィリッジ」。 - settlementB2名詞集落、人が住みついた所The first settlement was built near the water.
settle(住みつく)+-ment。「和解、解決」の意味もあるので文脈で見分ける。 - explorerB1名詞探検家The explorer kept a list of new words in his notebook.
explore(探検する)+-er。explore the area「その地域を探検する」。 - regionB1名詞地域、地方The name spread from one village to the whole region.
area よりかたい語。形容詞は regional「地域の」。 - acronymC1名詞頭文字をつないで作った語"NASA" is an acronym. So is "Efisga."
NASA のように1語として読むものを特にこう呼ぶ。Efisga も Tuponia もこの作り方。 - fancifulC1形容詞空想的な、根拠のないMost of the old stories about the name are fanciful.
fancy(空想)+-ful。カナダ英語の歴史辞典が昔の語源説をこう評している。 - chartB1名詞海図;図表Someone wrote "? name" on the chart.
船で使う地図は map より chart と言うことが多い。グラフの意味でも使う。 - CanadianA2名詞・形容詞カナダ人(の)、カナダのShe is Canadian, but she grew up in Japan.
Canada は /ˈkænədə/(キャナダ)、Canadian は /kəˈneɪdiən/(カネイディアン)。強く読む場所が変わる。
公式・一次情報をチェック
- Origin of the names of Canada and its provinces and territories(Natural Resources Canada)natural-resources.canada.ca
- Canada(The American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
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国名「カナダ」は、もとは「村」を表す言葉だったとみられる。1535年、先住民の若者が探検家カルティエに「カナタ(村)への道」を教え、カルティエはそれを広い土地の名前に使った。国名の候補には England・France…の頭文字をつないだ「Efisga」もあった。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Government of Canada, Canadian Heritage「Origin of the name - Canada」canada.ca
- Natural Resources Canada「Origin of the names of Canada and its provinces and territories」natural-resources.canada.ca
- A Dictionary of Canadianisms on Historical Principles(DCHP-1, ブリティッシュコロンビア大学)「Canada」dchp.arts.ubc.ca
- Baxter (1906) A Memoir of Jacques Cartier(カルティエの航海記の英訳と巻末の単語帳を収録), Dodd, Meadarchive.org
- Orth (1967) Dictionary of Alaska Place Names, U.S. Geological Survey Professional Paper 567pubs.usgs.gov
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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