hamburger の ham はハムじゃない。ドイツの港町ハンブルクの名前の一部だった

読む前に予想してみよう!
hamburger という名前は、もともとハムを使った料理だったことから来ている
ドイツの港町ハンブルク(Hamburg)に「〜の」の -er がついた語。「ハンブルク風のステーキ」の略だった(アメリカン・ヘリテージ英語辞典)。
- 対象
- 英語の辞書(米・英)・日本語の辞書
- 規模
- 19世紀末〜20世紀の用例
- 研究の種類
- 辞書の語源記述・用例調査
- 確かさ
- ★★★★☆
hamburger は「ハンブルクの」の意味で、ham はハムではない。人々が ham を肉のハムと誤解したとみられ、残りの burger が独立した言葉になって cheeseburger などができた。
ひとことで言うとハンバーガーの「ハム」は、ドイツの町ハンブルクの名前の一部だった!
もくじ
ハンバーガーに、ハムは入っていません。なのに名前は hamburger。
じつはこの ham、ハムではなく、ドイツの港町ハンブルク(Hamburg)の“ハム”です。hamburger は「ハンブルクの」という意味の言葉でした。
しかも、英語を話す人たちが ham を肉のハムと勘違いしたらしく、そこから残りの burger がひとり立ちしました。cheeseburger も veggie burger も、この勘違いから生まれた言葉なのです。
01hamburger は「ハンブルクの」
アメリカの辞書『アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)』の語源コラムによると、ドイツ語の Hamburger は、文字どおりには「ハンブルクの町の」という意味です。
ハンブルクはドイツ北部のエルベ川ぞいの町で、AHD は今も大きな港町だと紹介しています。
語の終わりの -er は、英語でもおなじみです。AHD は -er の意味の一つに「〜の出身者、〜の住人」を挙げ、例に New Yorker(ニューヨークの人)を出しています。New York + er が「ニューヨークの人」になるのと同じしくみで、Hamburg + er =「ハンブルクの」になるわけです。
02最初は「パンなし」のステーキだった
AHD の説明を、順番に並べてみましょう。
- hamburger steak:ひき肉を丸めて焼いたステーキ。お皿にのったメイン料理
- hamburger sandwich:そのステーキを2枚のパンではさんだもの。略して hamburger とも呼ばれた
- 今のハンバーガー:丸いパン(bun)に、おなじみの具をのせた形。AHD によると、これが現れたのは1900年代はじめ
つまり、最初の「ハンバーガー」は、日本でいう「ハンバーグ」に近い料理でした。
ちなみにアメリカ英語の hamburger には、今も「牛ひき肉」そのものの意味があります。AHD の最初の意味は「ひき肉(ふつうは牛肉)」で、オックスフォード学習辞典も北米英語の用法として載せています。スーパーで hamburger と書いてあったら、それはパンにはさまったものではなく、ひき肉のパックかもしれません。

03burger は“勘違い”から生まれた
AHD によると、ドイツからの移民の波がおさまるにつれて、hamburger とハンブルクの町とのつながりは忘れられていきました。すると、ときどき ham を落として、burger とだけ言う人が出てきます。AHD はその理由を、ham が肉のハムのことだと勘違いされたからだろうと説明しています。
Dictionary.com は、もっとはっきり書いています。burger は、hamburger をまちがって ham + burger と分けたこと(false analysis)から切り出された語で、初出は1935〜40年ごろ。オックスフォード学習辞典も、burger は1930年代のアメリカで生まれた hamburger の略だとしています。
本当の切れ目は Hamburg | er なのに、人々は ham | burger と切ってしまった。この切りまちがいのおかげで、burger は「パンにはさむ料理」を表すパーツになりました。
- cheeseburger:チーズをのせたハンバーガー。Dictionary.com によると1935〜40年ごろのアメリカ英語
- veggie burger:肉を使わない野菜や豆のパティ(AHD)
- beanburger:豆でつくったパティ(オックスフォード学習辞典の -burger の例)
ハンブルクとは何の関係もない「チーズ」や「豆」が、-burger の前に入るようになったのです。
04同じしくみで生まれた「パーツ」
単語の一部を切り取って、新しい語をつくる部品にする。このしくみは burger だけではありません。AHD で確かめた仲間を紹介します。
- -aholic(〜中毒の人):alcoholic(アルコール依存の人)の形を変えて切り出したもの。workaholic(仕事中毒の人)、chocoholic(チョコレート中毒の人)
- -gate(〜スキャンダル):1972年の侵入事件の舞台になった、ワシントンの建物群 Watergate から。不正とそのもみ消しが疑われる事件の名前に使われる
alcoholic を正しく分けると alcohol + -ic です。それでも英語を話す人たちは、-aholic を「〜にハマっている人」の部品として使い始めました。burger とよく似た道のりです。
05町の名前がついた食べ物たち
hamburger のように、町の名前から生まれた食べ物の名前はほかにもあります。
- frankfurter(フランクフルトソーセージ):ドイツ語の Frankfurter Wurst(フランクフルトのソーセージ)から(オックスフォード学習辞典)
- wiener(ウインナーソーセージ):ドイツ語の Wienerwurst の略。Wiener は「ウィーンの」(AHD)
- tangerine(タンジェリン、みかんの一種):モロッコの港町タンジール(Tangier)から。この実が主にここから船で送り出されていたため(AHD)
- cheddar(チェダーチーズ):イングランド南西部の村チェダーから(AHD)
ウインナーは「ウィーンの」、フランクフルトは「フランクフルトの」。ハンバーガーと同じく、「〜の」の -er が入っています。
06日本語の「ハンバーグ」は町の名前を残した
日本語ではどうでしょう。小学館の『日本国語大辞典』によると、「ハンバーグ」は英語の Hamburg から来た語で、もとはドイツの地名ハンブルクです。料理の意味は「ハンバーグステーキ」の略で、例として1941年の徳川夢声の日記が挙げられています。
一方、「ハンバーガー」の例は1955年、喜劇俳優・古川緑波(ロッパ)の食べ物エッセイです。そこにはもう「チーズバーガー」という言葉も出てきます。
英語では ham が落ちて burger が残りました。日本語の「ハンバーグ」は逆に、町の名前の部分を残したことになります。
07どんでん返し:ハンブルク生まれの料理とは限らない
「ハンブルクの」という名前なのだから、ハンブルクで生まれた料理なのでしょうか。じつは、そこははっきりしません。
Dictionary.com は、この料理が生まれたのはハンブルクか、またはニューヨークで、19世紀のニューヨーク周辺でドイツ系移民が広めた、と2つの可能性を並べています。AHD の書き方も、この料理が「ドイツ料理らしいと思われていたらしい」というものです。名前は「ドイツ風だと思われた料理」につけられたもので、生まれた場所の証明にはなりません。
また、「パンにはさんだハンバーガーを最初に売ったのはだれか」もよく話題になります。けれども、今回調べた辞書はどれも、特定の人や店の名前を挙げていませんでした。
08まとめ
hamburger の ham は、ハムではなく港町ハンブルクの一部でした。それをハムだと思いこんだことで burger がひとり立ちし、cheeseburger や veggie burger が次々に生まれました。
ことばは、ときに「まちがった切り方」から新しい部品を手に入れます。次にハンバーガーを注文するときは、ham の向こうにあるドイツの港町を思い出してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerOrder a hamburger in New York or Tokyo, and you will not find any ham in it.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
There is no ham in a hamburger. So why is it called that? The name comes from Hamburg, a port city in Germany. "Hamburger" means "from Hamburg." In the late 1800s, a hamburger was a round piece of ground beef on a plate.
Later, people put it between two pieces of bread. People probably thought "ham" meant the meat, so some started to say just "burger." That is how words like "cheeseburger" were born.
74 words ・ CEFR A2
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ハンバーガーにハムは入っていません。では、なぜそう呼ばれるのでしょう。名前は、ドイツの港町ハンブルクから来ています。「Hamburger」は「ハンブルクの」という意味です。1800年代の後半、ハンバーガーはお皿にのった丸い牛ひき肉でした。
のちに、人々はそれを2枚のパンではさむようになりました。「ham」は肉のハムのことだと思われたらしく、ただ「burger」と言う人が出てきました。こうして「cheeseburger」のような言葉が生まれたのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
hamburger という名前がハンブルクから来たことと、burger が生まれたいきさつの話なので B。
Q2. Where does the name "hamburger" come from?
The name comes from Hamburg, a port city in Germany. とあるので C。
Q3. In the passage, a "port city" is a city ...
port は「港」。port city は船が出入りする港町なので A。
Order a hamburger in New York or Tokyo, and you will not find any ham in it. The name comes from Hamburg, a large port city in northern Germany, and "Hamburger" simply means "from Hamburg." The word began to appear on American menus in the late 1800s, when many Germans were moving to the United States. At first, a "hamburger steak" was a round piece of ground beef served on a plate as a main dish.
Later, cooks put it between two slices of bread, and the modern burger in a bun came in the early 1900s. By the 1930s, some people had started to drop the "ham," probably because they thought it meant the meat. The part that was left, "burger," became a word of its own.
128 words ・ CEFR B1
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ニューヨークでも東京でも、ハンバーガーを注文してもハムは入っていない。名前はドイツ北部の大きな港町ハンブルクから来ていて、「Hamburger」は単に「ハンブルクの」という意味だ。この語は1800年代後半、多くのドイツ人がアメリカに移り住んでいたころに、アメリカのメニューに現れはじめた。最初、「hamburger steak」は、メイン料理としてお皿で出される丸い牛ひき肉だった。のちに料理人がそれを2枚のパンではさむようになり、丸いパンにはさんだ今のハンバーガーは1900年代はじめに登場した。
1930年代までには、「ham」を落とす人が出てきた。おそらく肉のハムのことだと思ったからだ。残った部分の「burger」が、独立した単語になった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
hamburger の由来と、ham が落ちて burger が独立した流れを説明しているので B。
Q2. What was a "hamburger steak" at first?
a "hamburger steak" was a round piece of ground beef served on a plate as a main dish とあるので B。
Q3. Why did people start to say just "burger"?
probably because they thought it meant the meat とあり、ham を肉のハムだと思ったからとみられるので C。
English speakers split "hamburger" in the wrong place, and the mistake gave the language a new word. The correct break is "Hamburg" plus "-er," the same ending we see in "New Yorker." The name showed up on American menus in the late 1800s, a time of heavy German immigration, and it meant a ground beef patty served on a plate.
As German immigration slowed, people forgot the link to the city. Many probably heard "ham" at the front, thought of meat, and kept only "burger." Dictionary.com dates "burger" to the late 1930s and calls the process false analysis. After that, almost anything could go in front of it, from cheese to beans.
English has done the same thing with "alcoholic," which gave us "workaholic," and with "Watergate," which turned "-gate" into a label for scandals. Whether the dish itself started in Hamburg is a separate question. Dictionary.com says it may have come from Hamburg or from New York City. Japanese went the other way. A patty served without a bun is called "hanbagu" in Japan, and that name keeps the city.
181 words ・ CEFR B2
和訳を見る
英語の話し手は「hamburger」をまちがった場所で区切り、そのまちがいがこの言語に新しい単語をもたらした。正しい切れ目は「Hamburg」+「-er」で、「New Yorker」に見られるのと同じ語尾だ。この名前は1800年代後半、ドイツからの移民が多かった時期にアメリカのメニューに現れ、お皿で出される牛ひき肉のパティを指していた。
ドイツからの移民が落ち着くにつれ、人々は町とのつながりを忘れた。おそらく多くの人が先頭の「ham」を聞いて肉を思いうかべ、「burger」だけを残したのだ。Dictionary.com は「burger」を1930年代後半のものとし、この過程を「異分析(まちがった分け方)」と呼んでいる。その後は、チーズから豆まで、ほとんど何でもその前に置けるようになった。
英語は「alcoholic」でも同じことをして「workaholic」を生み、「Watergate」からは「-gate」をスキャンダルを表すラベルにした。料理そのものがハンブルクで始まったかどうかは、別の問題だ。Dictionary.com は、ハンブルクから来たのかもしれないし、ニューヨークから来たのかもしれないとしている。日本語は逆の道をたどった。日本ではパンにはさまないパティを「ハンバーグ」と呼び、その名前には町の名前が残っている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
hamburger を ham+burger とまちがって分けたことで burger が生まれ、-aholic や -gate も似た例だという話なので B。
Q2. According to the passage, when does Dictionary.com say "burger" first appeared?
Dictionary.com dates "burger" to the late 1930s とあるので C。1800年代後半は hamburger がメニューに現れた時期。
Q3. Why does the writer mention "workaholic"?
English has done the same thing with "alcoholic," which gave us "workaholic" とあり、語の一部が新しい部品になった別の例として挙げているので B。
重要単語
- hamburgerA2名詞ハンバーガー;(米)牛ひき肉We need two pounds of hamburger for the barbecue.
Hamburg(ハンブルク)+-er(〜の)。北米では「牛ひき肉」そのものの意味でも使う。 - burgerB1名詞ハンバーガー(くだけた言い方)Let's grab a burger and fries after the game.
1930年代に hamburger から切り出された語。cheeseburger, veggie burger のように前に語をつけて使う。 - ground beefB1名詞牛ひき肉Ground beef is called "mince" in British English.
ground は grind(ひく)の過去分詞。北米では hamburger meat とも言う。 - pattyB2名詞(ひき肉などを)平たく丸めたもの、パティFlip the patty after three minutes.
ハンバーガーにはさむ肉の部分。豆や野菜でつくったものも patty と言う。 - immigrantB1名詞(外国からの)移民Many German immigrants arrived in the United States in the late 1800s.
国の外へ出ていく人は emigrant。im-(中へ)と e-(外へ)で区別する。 - portB1名詞港;港町Hamburg is a major port in northern Germany.
airport(空港)、passport(パスポート)にも port が入っている。 - scandalB2名詞スキャンダル、不祥事The press quickly gave the scandal a "-gate" name.
1972年のウォーターゲート事件から、-gate が「〜疑惑」を表す接尾辞になった。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
公式・一次情報をチェック
- hamburger(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- -aholic(The American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
- -gate(The American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
- 「ハンバーガー」(精選版 日本国語大辞典・世界大百科事典ほか、コトバンク)kotobank.jp
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ハンバーガーにハムは入っていない。hamburger の ham は、ドイツの港町ハンブルク(Hamburg)の一部。ham を肉のハムと勘違いしたらしく、残った burger が独立して cheeseburger などが生まれた。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「hamburger」(Word History)ahdictionary.com
- Dictionary.com(Random House Unabridged Dictionary)「hamburger」(Origin)dictionary.com
- Dictionary.com(Random House Unabridged Dictionary)「burger」(Origin)dictionary.com
- Oxford Learner's Dictionaries「burger」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
- 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉「ハンバーグ」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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