(^_^) は目、:) は口で笑う。日米213人の実験で“表情を読む場所”の違いが出た

読む前に予想してみよう!
「目は笑っているが口はへの字」の顔文字を、日本人はアメリカ人よりも「うれしそう」と判断した
結城ら(2007)の実験で確かめられた。目のほうが口よりうれしそうな顔文字3種の平均は、日本人5.81点、アメリカ人2.99点だった(1〜9点、5が中立)。
- 対象
- 日米の大学生
- 規模
- 213人(研究1)・176人(研究2)
- 研究の種類
- 質問紙実験(顔文字・合成した顔写真の評価)
- 確かさ
- ★★★☆☆
日本の顔文字は目、アメリカの顔文字は口で気持ちを表す。日米の大学生の実験でも、日本人はアメリカ人より目を、アメリカ人は日本人より口を重く見て表情を読んでいた。
ひとことで言うと日本人はアメリカ人より「目」を、アメリカ人は日本人より「口」を重く見て、笑っているかどうかを決めているんだって!
(^_^) と :)
どちらも「にっこり」の顔文字です。でも、よく見ると笑っている場所がちがいます。日本の (^_^) は目で笑い、アメリカの :) は口で笑っています。泣き顔も同じで、日本は (;_;) と目から涙を流し、アメリカは :( と口をへの字に曲げます。
ただの好みのちがいでしょうか。北海道大学の結城雅樹さんたちは、ここに「表情をどこで読むか」という文化のちがいが隠れていると考え、実験で確かめました。結果は、日本人はアメリカ人より目を、アメリカ人は日本人より口を重く見て、相手の気持ちを判断していたというものでした。
01「目が笑って口がへの字」の顔文字はうれしい? 悲しい?
結城さんたちは2007年、学術誌 Journal of Experimental Social Psychology に論文を出しました。最初の実験の材料は、まさに顔文字です。
注目は、目と口が逆の気持ちを示す顔文字です。「目は笑っているのに、口はへの字」。日本人はアメリカ人よりこれを「うれしそう」と答えました。反対に「目は悲しそうなのに、口は笑っている」顔は、アメリカ人のほうが「うれしそう」と答えました。
同じ記号を見ても、どこを見て気持ちを決めるかが国によってちがっていたのです。

02本物の顔写真でも同じだった
「アメリカ人は (^_^) を見慣れていないだけでは?」という疑問がわきます。論文の著者たちも、この点を自分で弱点として挙げています。
そこで2つ目の実験では、本物の人の顔写真を使いました。表情研究でよく使われる写真集から10人の顔を選び、画像ソフトで「うれしい顔の目」を「ふつうの顔」にはり合わせるなどして、目と口の気持ちを別々に変えた60枚を作りました。参加したのはアメリカの学生87人と、日本の学生89人です。
結果は1つ目の実験と同じ向きでした。笑いが目にある顔は日本人のほうが「うれしそう」と答え、笑いが口にある顔はアメリカ人のほうが「うれしそう」と答えました。顔文字だけの話ではなかったのです。
03なぜ日本人は「目」を重く見るのか
論文の説明はこうです。
笑顔には、口のまわりの筋肉と、目のまわりの筋肉の両方が働きます。論文が引くこれまでの研究によると、このうち目のまわりの筋肉は、自分の意思で動かしにくいとされます。本物の笑顔では目のまわりの筋肉も縮みますが、口のまわりだけで作った笑顔は「作り笑い」になりやすいのです。論文では、目のまわりも動く本物の笑顔を Duchenne smile(デュシェンヌ・スマイル)と呼んでいます。
著者たちは、気持ちをあまり表に出さないことがよしとされる日本では、ごまかしにくい目を見るほうが本音を読みやすい、と考えました。反対に、気持ちをはっきり出すことがよしとされるアメリカでは、いちばんよく動く口を見るほうが手っ取り早い、というわけです。
英語で言うと、こんな感じです。
- She smiled, but her eyes didn't.(彼女は笑ったけれど、目は笑っていなかった)
- a fake smile(作り笑い)
- a real smile(本物の笑顔)
ちなみに英語の顔文字は、首をかたむけて横向きに読みます。: が目、) が口です。:) と :( のように、基本の形では目は「:」のままで、気持ちを変えるのは口の記号です。論文は、顔文字の形のちがいが、表情の読み方のちがいとつながっているのかもしれないと述べています。
04どんでん返し:「目を見る」ことには弱点もあった
では、目を見るほうがすぐれているのでしょうか。そう単純ではありません。
イギリスのグラスゴー大学のジャックさんたちは2009年、視線の動きを記録して、東アジアの人と西洋の人が顔のどこを見て表情を読むかを調べました。すると、西洋の人は顔全体にまんべんなく視線を向けるのに対し、東アジアの人は目のあたりをじっと見続ける傾向がありました。目のあたりから得られる情報はあいまいなため、東アジアの人は「恐れ」と「嫌悪」の表情を正しく見分けにくかったのです。
同じチームは2012年にも、東アジア(中国)出身の人は、思い浮かべる表情の中で、気持ちの「強さ」を目の動きで表していると報告しました。目に頼る読み方は、本音を読むのに役立つかもしれない一方で、読み取りにくくなる表情もある、ということです。ただし、2つの研究はどちらも日本人に絞ったものではなく、2012年の研究の東アジア側は中国出身の15人でした。
さらに結城さんたちの実験でも、すべての顔で差が出たわけではありません。「悲しい目+ふつうの口」の顔では、日米の差は顔文字ではわずか、写真ではほぼありませんでした。写真の実験では差そのものも小さくなっています。
しかも写真の実験では、日本人も「口のほうがうれしそうな顔」を「目のほうがうれしそうな顔」より、少しだけうれしそうと答えていました(平均4.85点と4.65点)。「日本人は目だけを見る」のではなく、「アメリカ人とくらべると目を重く見る」というのが、研究が示した範囲です。
05まとめ
(^_^) と :) のちがいは、ただのデザインのちがいではなかったのかもしれません。くらべると、日本人は目、アメリカ人は口。顔のどこを「気持ちの窓」として重く見るかが、文化によって少しずつちがっていました。
ただし、これは集団としての傾向です。日本人でも口を見る人はいるし、アメリカ人でも目を見る人はいます。英語で話すときは、目だけでなく口でもはっきり笑ってみると、気持ちが伝わりやすくなるかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerJapanese emoticons show feelings with the eyes.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
People in Japan and the United States make happy faces with keyboard symbols. But the faces are different. A Japanese happy face smiles with its eyes. An American happy face smiles with its mouth.
Researchers showed faces like these to 95 Japanese students and 118 American students. The students said how happy each face looked. The eyes mattered more to the Japanese students. The mouth mattered more to the American students.
71 words ・ CEFR A2
和訳を見る
日本とアメリカの人は、キーボードの記号でにっこり顔を作ります。でも、その顔はちがいます。日本のにっこり顔は目で笑います。アメリカのにっこり顔は口で笑います。
研究者たちは、このような顔を日本の学生95人とアメリカの学生118人に見せました。学生たちは、それぞれの顔がどれくらいうれしそうかを答えました。日本の学生にとっては、目のほうが大事でした。アメリカの学生にとっては、口のほうが大事でした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
日米の顔文字のちがいと、目・口のどちらを見るかの研究の話なので B。
Q2. How many Japanese students took part?
95 Japanese students and 118 American students とあるので A。118人はアメリカの学生。
Q3. In the passage, what does "symbols" mean?
keyboard symbols は、キーボードで打てる点や線などの記号のこと。A。
Japanese emoticons show feelings with the eyes. In a happy one, the eyes are two upside-down V shapes. American emoticons, made with a colon and a parenthesis, show feelings with the mouth.
A team of researchers in Japan and North America wondered whether this difference had anything to do with how people read real faces. In a study published in 2007, they showed six emoticons to students at Hokkaido University and Ohio State University.
Some had happy eyes and a sad mouth, and some had the opposite. Japanese students rated faces with happy eyes as happier than American students did. American students rated faces with a happy mouth as happier than Japanese students did. The same pattern appeared when the team used edited photos of real people.
127 words ・ CEFR B1
和訳を見る
日本の顔文字は目で気持ちを表す。うれしい顔文字では、目が2つの逆さのVの形になっている。コロンとかっこで作るアメリカの顔文字は、口で気持ちを表す。
日本と北米の研究チームは、このちがいが、人が本物の顔をどう読むかと関係しているのではないかと考えた。2007年に発表された研究で、チームは北海道大学とオハイオ州立大学の学生に6つの顔文字を見せた。
うれしそうな目と悲しそうな口を持つものもあれば、その逆のものもあった。日本の学生は、うれしそうな目の顔をアメリカの学生よりもうれしそうだと評価した。アメリカの学生は、うれしそうな口の顔を日本の学生よりもうれしそうだと評価した。チームが本物の人の顔写真を加工したものを使ったときも、同じ傾向が出た。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the researchers want to find out?
wondered whether this difference had anything to do with how people read real faces とあるので B。
Q2. Which faces did American students rate as happier than Japanese students did?
American students rated faces with a happy mouth as happier とあるので A。
Q3. Why does the writer mention the edited photos?
The same pattern appeared when the team used edited photos of real people から、顔文字だけの結果ではないと示すため。C。
In Japan, a happy emoticon has eyes shaped like little arches, and a crying one has tears running down from the eyes. In the United States, people type a colon for the eyes and a parenthesis for the mouth. The eyes usually stay the same, and the mouth shows the feeling. A 2007 study by Masaki Yuki of Hokkaido University and two colleagues asked whether this reflects a deeper habit.
When 95 Japanese and 118 American students rated emoticons on a nine-point scale, the Japanese gave more weight to the eyes than the Americans did, and the Americans gave more weight to the mouth. A second study with 60 edited photos of real faces pointed the same way, though the gaps were smaller. The authors linked this to emotional control.
Muscles around the eyes are harder to move on purpose than those around the mouth, so in a culture where people often hide their feelings, the eyes may be the more honest signal. A focus on the eyes has a cost, too. In a 2009 eye-tracking study at the University of Glasgow, East Asian viewers kept looking at the eyes and had more trouble recognizing fear and disgust.
198 words ・ CEFR B2
和訳を見る
日本では、うれしい顔文字の目は小さなアーチの形をしていて、泣いている顔文字は目から涙が流れている。アメリカでは、目にはコロン、口にはかっこを打つ。目はふつう同じままで、口が気持ちを表す。北海道大学の結城雅樹さんと2人の共同研究者による2007年の研究は、これがもっと深い習慣を映しているのかどうかを問うた。
日本の学生95人とアメリカの学生118人が9段階で顔文字を評価すると、日本人はアメリカ人より目を重く見て、アメリカ人は日本人より口を重く見た。本物の顔を加工した60枚の写真を使った2つ目の研究も、差は小さくなったものの同じ方向を示した。著者たちはこれを感情のコントロールと結びつけた。
目のまわりの筋肉は口のまわりの筋肉より意図的に動かしにくいので、人々がしばしば気持ちを隠す文化では、目のほうが正直な信号になるのかもしれない。目に注目することには損もある。グラスゴー大学の2009年の視線計測研究では、東アジアの人は目のあたりを見続け、恐れと嫌悪の表情を見分けるのがより苦手だった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
日本人はアメリカ人より目を、アメリカ人は日本人より口を重く見るという研究が中心なので B。
Q2. How did the second study differ from the first?
A second study with 60 edited photos of real faces pointed the same way, though the gaps were smaller とあるので A。
Q3. What can be inferred from the 2009 study?
目のあたりを見続けた人は恐れと嫌悪の表情を見分けるのが苦手だったので、目に頼ると読み取りにくい感情がある、と推測できる。C。
重要単語
- emoticonB1名詞顔文字My friend ends every message with an emoticon.
emotion(感情)+icon(アイコン)を合わせた語。絵文字は emoji。 - facial expressionB1名詞顔の表情Her facial expression changed when she heard the news.
facial は face の形容詞形。expression は「表現」。心理学の英文で頻出。 - cueB2名詞手がかり、合図The eyes can be a useful cue to how someone feels.
queue(行列)と同じ発音。take a cue from ~「~を手本にする」。 - rateB1動詞評価する、点数をつけるPlease rate each face from 1 to 9.
名詞では「割合、料金」。rate A as B「A を B と評価する」。 - disgustB2名詞嫌悪、むかつきHe looked at the old food with disgust.
形容詞は disgusting(むかつくような)。fear・anger・sadness と並ぶ基本感情の1つ。 - interpretB2動詞解釈する、読み取るPeople may interpret the same face in different ways.
名詞は interpretation。「通訳する」の意味もあり、interpreter は通訳者。
公式・一次情報をチェック
- 論文の著者最終稿(北海道大学学術成果コレクション HUSCAP)hdl.handle.net
このネタ、誰かに教えたくなった?
日本の顔文字 (^_^) は目で笑い、アメリカの :) は口で笑う。北大などの実験で日米の大学生213人に顔文字を見せると、日本人はアメリカ人より目を、アメリカ人は日本人より口を重く見て気持ちを判断していた。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(3件)タップで表示
- Yuki, M., Maddux, W. W., & Masuda, T. (2007) Are the windows to the soul the same in the East and West? Cultural differences in using the eyes and mouth as cues to recognize emotions in Japan and the United States, Journal of Experimental Social Psychology 43(2)doi.org
- Jack, R. E., Blais, C., Scheepers, C., Schyns, P. G., & Caldara, R. (2009) Cultural Confusions Show that Facial Expressions Are Not Universal, Current Biology 19(18)doi.org
- Jack, R. E., Garrod, O. G. B., Yu, H., Caldara, R., & Schyns, P. G. (2012) Facial expressions of emotion are not culturally universal, PNAS 109(19)doi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
本館
マジカ!?サイエンスで読む、ことばの研究
論文でウラ取りした科学の「マジか!?」。言語・脳・学習の研究も





